世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

長期拘束・密室取り調べの弊害は内務省仕込み 世界で唯一の強権司法

2012年02月24日 | 日記

 

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長期拘束・密室取り調べの弊害は内務省仕込み 世界で唯一の強権司法


 司法制度改革とか、警察庁主導の有識者会議とか、検察の在り方検討会議とか、多方面からアプローチらしきジェスチャーを行政側はしているが、正論も聞かれるが、多くは枝葉末節な討議に矮小化されている。取り調べの可視化も内容的にはアリバイ作りの臭いがプンプンで、可視化とは程遠いものである。

 日本の刑事司法制度の異様さは、国際比較をしてみると歴然としている。各国の制度が間違いで、日本の制度が犯罪の発生率抑制にも強く関与しているのだから、こちらの方こそ正しいのだ、と云うのが、現状の捜査方法を容認する陣営の論拠である。この論理風な言い草は、間違っても論理性はない。既存の刑事司法の歴史を容認しているだけで、論理の欠片も見出すことは出来ない。

 小室直樹が「日本はいまだ近代国家に非ず」の中で、“日本の三権分立は死んだ。日本国憲法は、既に改正された”と叫んでいるが、その通りだ。日本人はすべからく、自国の憲法を自分なりで良いのだから、読むべきだ。アメリカに押しつけられたからと云って、矛盾だらけの事が書かれているわけではない。或る意味で、平和的理想の民主主義国家を押しつけてきた、と云う穿った読み方も可能だ。所謂、平和民主主義のハード・ストレス・テストの格好の実験として、日本憲法は生まれたような気がする。

 戦後、ソ連邦の覇権主義でイデオロギー闘争が勃発した為に、この壮大な平和民主国家構築の実験は、あえなく頓挫したわけだ。その結果、日本は西側国家の共産主義思想の障壁となる事を求められ、その前に成立してしまった憲法は孤児的境遇に追いやられた、と考える事が出来る。しかし、東西冷戦の終結が社会主義経済の終結を生んだものの、今や資本主義経済さえ、終結する危機に瀕している。そのような状況で、あらためて、我が国の孤児的境遇だった憲法が、平和民主国家のモデルケースの存在として議論されても良い筈なのだが、そのような機運が起きる気配はなく、小手先の議論に終始する雰囲気には知性の欠片さえ見られない。

 筆者も、小室と観察する時代性は異なるが、小沢一郎事件を通して、我が国の憲法をあらためて読む機会に恵まれた。日本の刑事司法制度が、このような憲法下において考えられない歪みを生んだ原因は、おそらく戦前の内務省の鉄壁なまでの組織力によるものだと推測している。当初、米国自体が旧内務省を解体しようと考えていたが、あまりの盤石度に度肝を抜かれ、仲間に引き込んだ方が得策と方針を転換した史実が残されている。この内務省生き残り勢力が、くだんの努力を続け、憲法の精神を運用面で骨抜きにした、と考えるのが妥当だろう。気がつくと、日本は二権分立(立法・行政司法)と云う権力構造が顕著になっていた。骨抜き憲法の運用を許した時代背景があるのだが、戻れる境遇になっても戻らない、戻れない。そう云うものが垂直統合システムの強さであり、弱点でもある。

 この内務省(注:1873年11月10日に設置され、1947年12月31日に廃止された日本の中央官庁。地方行政・警察・土木・衛生な どの国内行政を担った。)は司法省の領域までを実質支配する権勢を欲しい儘にしていた。特に、特高警察などの捜査手法が悉く継承され、物理的拷問こそ少なくなったが、精神的拷問や強迫、誘導、教唆と云った類の捜査は常識で、それが真実を暴くと信じている部分は、今の警察・検察の捜査現場に色濃く残されている。

 そもそも、民主主義における法治主義の精神など毛ほども思わない人々が中心になって、“仏作って魂入れず”を延々と行ってきたのだから、逮捕イコール罪人だし、逮捕状も自動販売機のように判事が発行する。逮捕後の弁護士立会いもまったく認められず、可視化するビデオも録音もなく、自由を奪われ、23日間、毎日10時間も責められ続ける事が可能な日本の捜査手法は世界一の人権蹂躙国家なのである。弁護士の立ち会いもない、23日間、代用監獄で、暇さえあれば取調室に引っ張り込まれ、10時間「やっただろう」「吐いて楽になれ」「裁判で否認する手もあるんだ」、当然罵倒は日常的に相違ない。

 逮捕後に弁護士の立ち会いを認めないのは日本だけと云っても良い状況。拘束期間も各国は数時間から数日であり、23日間などと云うのは常軌を逸している。取り調べと収監は必ず、別の場所において用意されるのが大原則だが、日本では代用監獄法により、警察署内の留置所にしばしば留め置かれ、暇さえあればなぶり者的に取り調べを行うのだから、自白率は異様に向上する。逆にいえば、自白があれば検察も起訴相当と認めるし、裁判所も有罪じゃ、と99%判決を言い渡すと云う、奇妙奇天烈な刑事司法制度なのである。

 こんな制度を、有識者が集まろうと、何を語ろうと、改善している風に見えるだけで、そもそもの精神に、民主主義・法治国家、そして憲法の精神が欠片もないわけだから、正直治しようはないだろう。仮に治るとすれば、自白重視主義をやめること、最長数日の拘束、弁護士立ち会いによる取り調べ。この三つが実現しない限り、日本人の基本的人権は守られないし、推定無罪を成り立たないし、三権分立の成立もあり得ないだろう。

 そもそも“空気”で世間を構成している我が国において、心証とか、状況証拠とか、自白とか、これらを重視する精神は、より一層の“空気”に左右されるのは自明の理であり、我が国こそ、空気に流されない捜査が必須なのである。物証が明確なものにまで、筆者の考えを及ぼせとは言っていない。確たる物的証拠もない事件において、自白主義を、現在の過酷な取り調べ環境で行う事は、到底民主主義国家のなすべき刑事司法ではないだろう。

 今回の小沢一郎に関する裁判おいては、石川議員の捨て身のICレコーダ戦術がなければ、“まっ黒け”になっていただろう。村木事件も、検察内部からの告発により救われたわけで、そうでなければ、村木氏は今頃刑務所に入っていた可能性すらあるのだ。特に、政治事件や経済事件は、行政司法の癒着が激しさを増すわけで、更なる民主的捜査手法が追求されない事には、捏造疑獄事件は後を絶たないのだろう。最後に、お節介だが、刑事司法に関わりの深い、憲法条文を添付する。

*前 文

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による 成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民 に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めて ゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

*憲法条文抜粋

 第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられな い。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
  第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
  第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
  第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
  第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
 第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
   2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
 第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その 生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
  第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
  第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
  第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
  第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
 2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
  第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
  第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
 2 刑事被告人は、 すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
 3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
  第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
 2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
 3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
  第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
  第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
 第76条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
 2 特別裁判所は、 これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
 3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
  第77条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
 2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
 3 最高裁判所は、 下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
  第78条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
  第79条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
 2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
 3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
 4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
 5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
 6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
  第80条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
 2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
  第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
  第82条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
 2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する 犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。   以上




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