世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●煮え湯を飲む覚悟 領土棚上げで日ロ経済協力の先攻

2016年11月27日 | 日記

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●煮え湯を飲む覚悟 領土棚上げで日ロ経済協力の先攻

 以下、ロシア・スプートニク日本の記事を読むまでもなく、トランプ大統領の出現によって、ロシア・プーチン大統領側の対日姿勢が僅かではあるが、変ってきていると思える幾つかの事実が報道されている。国家間の外交上存在する問題は、そもそも論で双方の国に温度差がある。国家間の外交上の親密度は、敢えて男女関係で例えれば、愛人関係に近く、決して夫婦関係を望んではいけない領域の次元にあると考えておくものなのだろう。

 ≪ 岸田外相、プーチン大統領と会談へ調整
 日ロ両政府は、岸田文雄外相が12月2日にロシア・サンクトペテルブルクを訪れ、プーチン大統領と会談する方向で最終調整に入った。プーチン氏が北方領土問題の解決を急がない姿勢を鮮明にする中、同月15日に山口県で行われる日ロ首脳会談に向けて交渉加速を働きかける狙いだ。
 日本政府関係者が明らかにした。岸田氏は同月3日にモスクワでラブロフ外相と会談する予定で、その前にプーチン氏にも会い、北方領土問題を含む平和条約交渉の進展に理解を求める考えだ。サンクトペテルブルクはプーチン氏の故郷。
 プーチン氏は今月19日にペルーで行った安倍晋三首相との会談で、ロシアの領有権を前提に北方領土で合弁事業などを進める「共同経済活動」を提案。20日の記者会見では「平和条約締結の準備で駆け出すようなことをあまりしたくない」などと述べた。 ≫(朝日新聞デジタル)


 領土と云うものは、現に実行支配している側にとっては、前にも後ろにも、変らなければならない必然性はない。我が国が、実効支配している尖閣諸島の支配の形を、自らの意志で変えてしまった等と云う出来事は、本来の外交処方箋からは導き出せない、いびつな意思決定だった。この件を詳細に語る積りはないが、歪な思想を持つ政治家の個人プレイによって、火中の栗を拾う行為をした事実は消えないだろう。我が国は、凪状態の海原に渦をみずから作る国なのだから、ロシアが、その時々の世界情勢に鑑み、解決のエネルギー分散を変更しようとするのは、当然と見るべきだ。国家間の外交において、卑怯とか裏切行為とかのレベルで議論するレベルでは、外交そのものが出来ない国ですと白状しているに近い。

≪ なぜロシアは択捉・国後にミサイルシステムを配備した?
 ロシア大統領府のペスコフ報道官はクリル諸島へのミサイルシステム配備について、露日間の関係発展に影響が出てはならない、と述べた。日本の菅官房長官は、プーチン大統領の訪日準備にも日露間交渉にも影響は出ない、との考えを示した。
 一方、防衛省防衛政策局長の前田哲氏は、クリル南部への地対艦ミサイルシステム配備はロシア艦隊の太平洋への展開を確実化するものであり、極東におけるロシア戦略潜水艦部隊の行動圏を確保するためのものである、という見解を示している。
 22日、太平洋艦隊の公式新聞「軍事当直」の報道で、沿岸用ミサイル複合体「バル」と「バスチオン」がクリル諸島のイトゥルプ(択捉島)、クナシル(国後島)両島に配備されたことが明らかにされた。配備の正確な日時は明らかにされていないが、これが2011年に始まった一連の配備計画の一部であるのは明らかだ。それは、極東に、沿海地方南岸から北極に至る統一沿岸防衛システムを創設するという計画である。23日には岸田外務大臣が声明を出し、日本は事情を調べてしかるべき措置をとる、と述べた。
 来月プーチン大統領が訪日することを考えると、南クリル岩礁の二島に現代兵器を配備するというのはあまり時宜を得た行動とは言えない、と一部のメディアは報じている。が、戦略技術分析センターのワシーリー・カーシン研究員は「これは計画通りのことであり、単に諸島における軍事ポテンシャルを低下させないために行われることである。日本はもう長いこと、ロシアを潜在的な敵国と見なしてはいないし、今、日本との関係は非常に良好に推移している。しかし南クリルはやはり係争領土であり、そこに軍部隊は保持されるのだ。次世代兵器は計画通り、南クリル全域に配備されていくことになる」と話している。
 また、極東研究所日本研究センター長ワレリー・キスタノフ氏も、北東アジアの安全保障環境について語った。「今、軍拡競争が起きており、緊張が高まっている。領土問題を含め、大量の二国間係争があり、それぞれ緊迫化している。北朝鮮の核実験は日米韓の三角形による軍事協力の強化の口実になっている。韓国に次いで日本にも米国の対ミサイルシステムTHAADが配備されるという話もある。ロシアが極東における防衛ポテンシャルを強化するのは、主に米国のこうした計画を警戒してのことだ。」
  極東研究所日本研究センター上級研究員ヴィクトル・パヴリャチェンコ氏はスプートニクに対し、日本は今回のことをあまり心配しなくてよい、と語った。「なぜ他ならぬ今、このような騒ぎが突如持ち上がったのか。ロシアの東の国境付近における安全保障について決定が下されたのは1年前のことで、公式にも発表されていた。二島へのミサイルシステム配備は、ロシア軍の再装備及び国防ポテンシャル強化戦略の枠内で行われていることだ。1990年代から現在まで、ほとんど本格的な兵器はなかった。今問題になっているミサイルは防衛的なもので、これを攻撃用に作り変えることはできない。もちろん国境強化の意向は主権強化の願望を意味する。しかし、それは、1956年にソ連と日本の間で結ばれた条約をはじめとする国際条約の枠内で、我々が日本と交渉を行えない、ということではない。」
  日本の専門家の見解はどうか。東京財団研究員で、ロシア政治に詳しい畔蒜泰助氏は次のように指摘している。「この計画そのものはロシア国防省によって今年3月に発表されており、『年内には実施する』ということも併せてオープンになっていた。その意味では、事前の計画が実施されたにすぎないと言える。一部の日本の報道にあるように、プーチン大統領の訪日を目前にしたタイミングで、ロシア側がミサイル配備をぶつけてきた、というわけではないし、日本政府はこの点を理解している。ただし、日本の世論は別だ。
 それでなくても、先日のペルー・リマにおける安倍首相とプーチン大統領の会談で、特に領土問題に関しては、日本国民は『あまり期待している通りの方向には進んでいないようだ』という感触を受けている。そのタイミングでミサイル配備の報道があったために、さらに世論が過敏に反応する可能性がある。ぺスコフ大統領報道官も発言していたが、ミサイル複合体の配備が日露関係進展の流れに水を差すべきではない。日本の世論に影響が出ているのは確かだが、日露政府の間でちゃんとしたコミュニケーションがなされていれば、悪影響は最小限にとどめられるだろうし、そのように努力すべきであると考えている。」
 ペルー・リマにおけるAPECでプーチン大統領は、ロシアと日本の間に平和条約がないことは時代錯誤であり、それが両国の前進を妨げている、との見解を示した。「ロシアも日本も平和条約締結を誠実に望み、どうすればそれが叶うか、方法を探している。ひとつ確かなことは、この志向をあらゆる手を尽くして支持しなければならない、ということだ」とプーチン大統領は述べた。 興味深いことに、南クリル諸島におけるミサイルシステム配備のニュースは今日に至っても、ロシア国防省公式サイトに掲載されていない。 ≫(スプートニク日本)


≪ 冷水浴びせたプーチン発言 ナイーブな楽観主義的な対露政策を見直せ 新潟県立大学教授・袴田茂樹
12月にプーチン大統領が訪日し、山口で公式の首脳会談、翌日東京で実務会議が行われる。安倍晋三首相は当初、山口での会談に拘(こだわ)った。「静かな環境でゆっくり」つまり、平和条約問題を2人でじっくり懇談したいからだ。しかし経済協力にしか関心のないプーチン氏は、当初は東京での公式会談、それが無理なら山口と東京の双方を望んだ。大型経済代表団同伴が理由だ。結局首相はプーチン氏に押し切られた。
≪役者は露側の方が数段上≫
 9月6日、プーチン氏は記者会見で露記者の「東京でも伊勢志摩でもなく、なぜ山口なのか」との質問に「詮索したくないが、日本は米国追随だからだ」と答えている。伊勢志摩云々(うんぬん)の質問は素人的に見えるし、プーチン氏の答えも異様だ。だが私はこの質疑応答は奥が深いと思う。
 日本は今年先進7カ国(G7)の議長国だ。伊勢志摩サミットの後、同じ場所で首脳会談をすれば議長国が露をG7同様に扱う、つまり制裁の環(わ)を破ることになる。東京訪問にも裏がある。国家元首が公式に東京を訪問した場合、国賓として天皇陛下が会見される。
 これは最高の待遇であり、露がG7の制裁下にある状況では不適切だ。露側は首相が東京での会議を決断する前に、わざわざ「天皇陛下との会見は不要」と日本側に伝えている。首相がプーチン氏の東京訪問を渋るのは会見を避けるためで、それは米国の圧力故だと露が見ていることを示している。
 今年9月にサウジアラビアの国内序列では第3位のムハンマド副皇太子(31)が訪日した際、彼は若いにも拘(かか)わらず最高実力者なので、例外的に天皇陛下が会見された。もちろん安倍首相の配慮だ。こうなると、プーチン氏の東京訪問は、首相に対して「シンゾウ、お前は俺をムハンマド以下に扱えるか」との挑戦状を意味する。
 東京での会合は実務会議だとして天皇陛下と会見を行わないなら、その分首相は経済協力により熱心にならざるを得ない。露側に押し切られたと言ったが、会見が行われるにせよないにせよ、露側の方が役者が数段上の感がする。
≪一挙に冷え込んだ期待値≫
 さて、日露首脳会談と今後の日露関係を考えたい。露の通信社は19日のリマでの会談については平和条約を無視して専ら日露の経済協力進展のみを報じた。今年筆者はロシアで大統領府関係者や国際問題専門家たちと私的に話した。
 最も強い印象は、北方領土問題解決に関する日露の大きな温度差だ。わが国では2島先行論、2島+α論、共同統治論、さらに一部のロシア問題専門家は「2島どころか4島返還シナリオも動き始めた」とさえ言う。多くのメディアも、官邸やその周辺からの情報と称して、領土問題解決の期待値を高める楽観論を多く流した。
 これとは対照的に、露で話した人で、プーチン氏訪日で北方領土問題が具体的に前進すると考えている者は皆無だった。親日的なある専門家は、「たとえ色丹、歯舞が日本に引き渡されるとしても、100年か200年以上先のこと」と述べた。最近、国後島などへのミサイル配備も報じられた。
 日本側の楽観論に冷や水を浴びせたのが、10月末のソチでのプーチン氏主催によるバルダイ会議および今回のリマでの首脳会談後のプーチン氏発言だ。ソチでは平和条約締結に期限を決めるのは有害だとし、「日露間には中露間のような高い信頼関係はない」として、日本がもっと対露協力・信頼醸成に努力するよう促した。
 リマでは、「われわれは平和条約締結を前のめりで急ぎたくない」と暗に安倍批判をした。また、条約締結への道は簡単ではない、クリルは第二次大戦の結果今はロシア領だとし、さらに、56年宣言に基づく2島返還に関しても、何を根拠に、その後どちらの国の主権下に置かれるのか、いかなる条件で引き渡されるのか宣言には書かれていない、とも述べた。これらの硬い発言によって、わが国の楽天的幻想あるいは高い期待値も一挙に冷え込み、メディアの論調も一変した。
≪平和条約は「ふり」にすぎない≫  
実は、これらの強硬発言はプーチン氏自身が近年幾度も繰り返しているのだが、わが国ではメディアも官邸も経済省庁も無視した。あるいは知らなかった。そして、露が求める経済協力に熱心に励めば、目的の平和条約締結の諸条件が生まれるとナイーブに信じ全力をあげて努力している。 しかしこの対応は明らかに逆効果だ。つまり、露側としては平和条約の重要性は強調し大いに関心があるふりをしながら、その締結は無期限に延ばす方が、日本からいつまでも多くの協力を得られるからだ。近年のプーチン氏の言動がすべてそれを証明している。
 ではわが国は露にどう対応すべきか。異なる意味で、これまでの発想にとらわれない新アプローチが必要である。長期的な日露関係の安定も対露経済協力や対話継続も重要だ。しかし現実を直視すれば、ナイーブな楽観主義に基づく対露政策は見直すべき時である。 (新潟県立大学教授・袴田茂樹 はかまだしげき) ≫(産経新聞コラム)


 安倍・プーチンの蜜月情報に、日本の外交筋も、メディアも、墓穴の中で騒いでいただけと云う事実が輪郭を現した。おそらく、トランプ大統領が出現しようとしまいと、プーチン訪日による“サプライズなプレゼント”はないのだろう。ロシアが、日本を外交的に喜ばせなければならない理由がない。中ロと日露では、米国プレゼンスの違いが、議論するレベルにも達していないのだから、二国間の信頼度云々など、語るだけ無駄な状況と言うべきだろう。温度差があり過ぎる二国間問題を少しでも前進させようと、工夫を重ねることは、結果的に、後々重大な重荷になる可能性がある。であるならば、現時点おいては、ロシアやプーチンが望む外交問題の解決への協力を第一義と捉え、オバマとメルケルの意地悪に苦しむ大国を助けるだけで充分だろう。外交とは、時間軸を輪切りにしたとき、常ウィンウィンと云う年輪が見えるものではない。


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