世相を斬る あいば達也

民主主義、資本主義とグローバル経済や金融資本主義の異様な違いについて

●在宅介護の推進、医療費削減 この政策も棄民の臭い

2018年02月08日 | 日記

 

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●在宅介護の推進、医療費削減 この政策も棄民の臭い

今夜は時間がないので、気になっていた、在宅医療制度に関する、医師と看護師の対談を参考掲載しておく。対談の内容は、自作品の宣伝等々も含まれているので、幾分内容が薄いが参考にはなる。今後、この在宅介護、終末医療などについても、少し考えてみようと思う。特に、家族が少なくなっている都会の生活者にとって、在宅介護は地獄絵と同等の臭いがすると思っている筆者にとって、興味深いテーマだ。人間の尊厳のひとつである「死」が、国家予算の都合云々で判断されるのは、不快だ。


≪「小説でも現実でも、在宅介護は大変」医師&看護師作家の告白
【特別対談】患者とともに歩むために 南杏子, 小原周子 医師であり看護師でありながら小説を書いている、南杏子さんと小原周子さん。医療と介護の今を知る現役ドクター&ナースが、それぞれの作品を通じて現場を語る特別対談――。

 ■同じ小説教室にいた二人
小原 南さんの『サイレント・ブレス』は、切実、というのが読んだ印象でした。私の作品も同じ介護を書いていますけど、『サイレント・ブレス』ではすごくシリアスに書かれていますよね。こういう書き方もあるんだなと、とても勉強になりました。 筋ジス(トロフィー)の患者のお母さんが終わりの見えない介護から逃げ出したくなる気持ちはわかります。胃瘻(ろう)の詰まりを吸引して患者が嘔吐してしまう場面は目に浮かぶようでした。私もたまにやってしまうので。他にも、わかるわかると思わせられたところがたくさんあって面白かったです。

『サイレント・ブレス』 水戸倫子は大学病院から、在宅で「最期」を迎える患者専門のクリニックへの“左遷”を命じられた。倫子はそこで死を待つだけの患者と向き合うことの無力感に苛まれる。けれども、いくつもの死と、そこに秘められた切なすぎる“謎”を通して、人生の最後の日々を穏やかに送る手助けをする医療の大切さに気づく。そして、脳梗塞の後遺症で、もう意思の疎通がはかれない父の最期について静かな決断を下す。現代の終末期医療の在り方を問う、感涙のミステリー。 定価 本体1600円(税別) 幻冬舎

南 ありがとうございます。現場を知っている看護師さんにそう言っていただけるのは嬉しいです。
小原 この作品はもとは私と南さんが通っていた小説教室に提出されていたものですが、そのときにはミステリーの色はなかったですよね。
南 ミステリーの部分はゼロでした。でも二年ぐらい掛けて手を入れましたから、日本推理作家協会が年刊で出している『ザ・ベストミステリーズ2017』に『サイレント・ブレス』から一編「ロングターム・サバイバー」を入れてくださったのはありがたかったです。
小原 私の作品もそういう面がありますけど、連作短編ではやはり個別の話の他に全体を流れるストーリーが必要ですね。
南 そうですね。『サイレント・ブレス』では父の介護についてがそれです。話の順番をどうするかとかもかなり悩みましたし、二倍ぐらい書いた話を半分は捨てました。
小原 そうなんですか!
南 小原さんの『新宿ナイチンゲール』も、原形は教室に出されていたと聞いていますが、私が入る前だったから読んでいなかったんです。でも、小原さんの作品にはいつも本音が炸裂していましたね。 本になった『新宿ナイチンゲール』も面白く読みました。主人公のひまりちゃんがいいですね。いわゆる白衣の天使じゃなくて、そこがリアルです。がめつくてずるくて、なんだか落ち着かないんだけど、応援したくなる。 嬉しかったのは、プロの力をもってしても介護ってこんなに大変なんだということが書かれているところ。主人公は「こんな患者はもう看ていられない」というようなことを何度も考えます。プロでさえそういうふうに思うのだから、現実に介護を担っていることが多い奥さんだったりお嫁さんだったりという人たちがそう思ってもいいんです。 愛情不足だとかいうように自分を責めている人が多いんですが、そんなふうに思わなくてもいいんだよという応援歌になっていると思います。かと言って生真面目な物語でもないんですが(笑)。
小原 患者もナースも、きれいなところは書きたくなかったんです。ナースの小説ってみんなきれいじゃないですか。高い理想を持っていたりして、私はやるわよみたいな。でも現実にはそんなナースはなかなかいないですよ。
南 理想に燃えているナースがいたら、病院では浮いてしまいますか?
小原 そうですね。「あの人、ちょっとおかしいんじゃないの」と言われるんじゃないかな(笑)。

 ■夜勤のお菓子はダイエットの敵
南 『新宿ナイチンゲール』には、終末期の患者が食べたいと言うので、主人公が季節外れのスイカを探しに行くところがありますね。そういう、患者さんに寄り添っている感じは、やっぱり白衣の天使じゃないですか。で、一面では承認欲求というか、患者さんの期待に応えてまわりの家族に褒められたいというようなところもあるのかと。

『新宿ナイチンゲール』 看護師の桑原ひまりは新宿のネットカフェで暮らしている。ネット経由で依頼を受け、患者の自宅に泊まり込んで介護をするのが仕事だ。不衛生な環境、終末期の患者、料金交渉してくる家族など、派遣先の事情はさまざまだが、それでも、布団で眠れる日は恵まれている。患者と家族と看護師と、本当の弱者は誰なのか。現代の介護の問題に鋭く切り込んだ、第十二回小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。 定価 本体1450円(税別) 講談社≫

小原 そうですね。褒められたいというか、これだけやってるんだから少しは感謝してほしいというか、「ありがとう」ぐらい言ってよって思ってしまうことも、正直に言えばありますね。
南 作中ではひまりが誰かにとても感謝されるというところはなかったですけど、実際にはそういうこともあるんじゃないですか。
小原 なくはないですけど、少しですよ。ただ、あんまり感謝されるのも困るっていうか、逆に少し距離を置きたいぐらいに思ってます。何か物を渡されたりお金を置いていかれたりしてもね。ハンカチぐらいだったらいいかなっていただいちゃいますけど、本当に現金を置いていく人もいて。 それは必ずお返しするようにします。そうしないと次にまた入院されたときに、「あのときお金を渡したんだからやってちょうだい」と言われると困るので。先生方はどうなんでしょう。
南 それはもちろん断ります。病院としてルール化されていますし。もしもいただいてしまったら過剰に期待されてしまって、トラブルの元です。
小原 私がまだ看護学生だったころは、休憩室に行くとお菓子が山のように置いてありましたけど、最近はお菓子も減りました。お菓子ぐらいならいただいてもと思うんですけど、患者さんたちの方がわかっているから(笑)。
南 お菓子ぐらいならって思っていても、「お断りします」って院内の壁にでかでかと掲示されていますからね。夜勤だと途中でお腹が空きますよね。看護師さんもお菓子を楽しみに、ここの作業が全部終わったらおやつの時間にしようとかいうモチベーションになりますよね。
小原 そう。だから看護師は太るんですよ。ダイエットするなら夜勤のお菓子は厳禁ですね。夜勤と言えば、ドクターの当直って日勤やって夜勤やってそのまま日勤なんですよね。
南 そうそう。これは問題なんですよ。だから勤務の最後はもう朦朧としてきて、ものすごいハイテンションになったりとかします。
小原 どこの病院でもそうですけど、なぜなんでしょう。あれだと判断ミスがあっても無理ない気がします。看護師は夜勤の入りと明けがあって、明けの日はそのまま帰れますけど。
南 普通に平日勤務をしているうえに、週に一回とか月に一回の当直があって、当直明けも平日勤務が続くんですね。医師の当直というのは「病室の定時巡回など軽度短時間の業務」というのが法律上の原則なんです。病棟に行ってめいっぱい診療をするという想定ではないんです。
小原 でも実際は呼ばれますよね。私たちは早く来てくださいとか言いますし。
南 ええ。病棟に行って一定時間以上仕事したら、当直じゃなくて普通に夜働いたことにしようという動きもあるようです。

■医師も看護師も離婚が多い
小原 うちの病院もいろいろな病棟があるから、夜間は救急の患者さんも病棟の患者さんも内科の先生が一人で診ているので大変です。休んでる暇はないですよ。
南 ないですね。急性期で救急車が来るような病院だと、まず寝られないでしょうね。寝るとしてもそうとう細切れです。
小原 で、翌日は外来を診るんですね。
南 そうですね。朝からぼうっとしながらね。当直明けで帰るっていうのは是非やってみたいなあ。小原さん、なんとかしてください(笑)。
小原 でも、夜勤するのは若い先生だけですよね。ある程度年齢がいったらやらなくなる。

*南杏子 みなみ・きょうこ 1961年、徳島県生まれ。日本女子大学卒業。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、都内の大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを務める。帰国後、都内の終末期医療専門病院に内科医として勤務。デビュー作『サイレント・ブレス』が話題に。

南 それがね! 私が研修医だった頃は「当直四十歳定年」だったんですが、私は今でもやっていますし、もっと歳が上の人もです。人手不足でやらざるを得ないところはあります。学べる機会の多い大学病院などにはたくさんいますけど地方には少ないとか、小児科、産婦人科、外科のような手がかかって医療訴訟も多いような科では人が減っているとか、偏在しているってことでしょう。 当直は若くてお金を稼ぎたい人以外はなるべくしたくないですよ。たとえば睡眠時無呼吸症候群の研究をするために徹夜して患者さんを診るというようなことはあるでしょうけど。
小原 最近は大学新卒のお医者さんの給料はよくなってるんですよね。昔は五、六万円てところで、だからみんなアルバイトをしてました。
南 そうですね。研修医のアルバイトというと大体当直とかで、それで収入を安定させていましたね。
小原 看護師の人材もまったく不足しています。学校はあるから毎年卒業してきますけど、なかなかモチベーションが続かないし、結婚してからは旦那さんの理解を得なければまず無理です。 夜勤もあるし、日勤でも定時で帰れないことはしょっちゅうです。八時九時まで働いているのが普通ですから。家族の理解を得られないからやめるという人もいます。とくに、結婚してから免許を取った人。お医者さんも同じじゃないですか。
南 そうですね。離婚経験者も多いです。二回離婚したとか。
小原 看護師も多いですけど、離婚しても生活には困らないから、むしろ足かせがなくなってよかったって感じだったりします。
南 結婚しない人も多いです。医者は忙しくて仕事中の食事に気を使わない印象がありますが、実際同じカップ焼きそばを大量に用意して、毎食それですませていたり。そういえば、コーヒーをいれて飲もうとしたらポケベルで呼び出されて、それが三回続いたのが嫌になって病院をやめちゃった人もいました。

■在宅介護か施設介護か
小原 病院勤めではないけどプロとして、主人公のひまりも、お金をもらっているから一所懸命介護するんです。
南 ネカフェで暮らしている看護師っていう設定は現実にあってもおかしくないと思いましたけど、一日の介護料金が八万円って高くないですか!
小原 それは私が作りました。夜勤ナースの日給って大体三万五千円から四万五千円の間なんです。施設とか病院とかではね。だけど、ひまりは患者の自宅に行って一対一で仕事をするし、時間も二十四時間しっかり看るんだから倍だなと。本当はもっと高くしたかったんですが、十万円を越えると今度は払う方が嫌だろうと。
南 二十四時間で八万円なんですね。 小原 そう。だから時給にするとそんなに高くはないですよ。病院だったら二十五人の患者を一人で看る。施設だったら下手したら百人を一人で看ることもあります。それで四万円とかの当直手当。ひまりは一対一で看てあげるんだから八万円はお安いですよ(笑)。 でも私だったら逆に八万円でもやらないです。他人の家庭に入っていかなきゃいけなくて、大体そういうご家族は「うちのおじいちゃんが」「うちのおばあちゃんが」って言ってすごく熱い。そのなかでこまごまとやらなくちゃならないよりは病院でみんなを看ている方がいいですよ。
南 八万円はやっぱり高いと思うけど、それぐらい労力をかけてやってるってことでもあるんでしょうね。でもそれだったら施設介護でよくないかと(笑)。施設なら集団で診ますが、月に六十万円、一日二万円も出せば手厚い介護が受けられるところがいろいろあります。 施設にはレクリエーション担当とか栄養士、調理師、介護士、看護師、医者だっていることがあります。そういう人たちが少しずつ手をかけてくれて一日二万円ですからね。だから今後は在宅介護ではなく施設介護なんだなということが、この作品を読んだことによってますます見えてきましたね。それは私の持論でもあるんです。
小原 私もそれには賛成です。退院して自宅に帰られる方のご家族にもショートステイでもかまわないから施設を使った方がいいとお勧めしています。介護保険でできる範囲内でと。二十四時間、三百六十五日、介護するのは無理なので、デイサービスでもいいからとにかく必ず利用してくださいとご説明します。

*小原周子 おはら・しゅうこ 1969年、埼玉県生まれ。春日部准看護学校卒業の現役ナース。2000年頃から小説を書き始め、2017年、『新宿ナイチンゲール』で第12回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞した。ペンネームの小原は好きな作品『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラに、周は敬愛する山本周五郎に由来する。

南 そうですね。在宅介護から共同介護っていうかそういう感じにしていければいいですね。でも、政府はむしろ在宅介護を推進していますよね。 小原 それはお金の問題ですね。
南 そう。家にいる奥さんとか子供たちとか家族を動員できれば、社会保障費を抑制できますからね。でも、財源がこれだけだからどうするってことじゃなくて、三十年後に私たちが幸せでいられるためにどうすべきかを考えてほしいです。私たちだって子供の世代に介護を押しつけるのは嫌じゃないですか。もちろん押しつけられる子供たちだって嫌でしょうし。
小原 そうですよ。私の正直な気持ちを言えば、他人のオムツ交換はいくらでもできるけど、自分の親のはしたくないですから(笑)。父親が最後の入院をしたときに、リハビリパンツをはいているのを見てびっくりしましたから。とても見ていられないと思って怖くなって。
南 それってわかります。泣けますよねえ。私も十八歳のときに、脳梗塞で十年ぐらい寝たきりだった祖父の介護を手伝いました。で、初めてオムツ換えをしたときはすごい衝撃を受けました。物語の最後に関連しますけど、四百五十万円もらえたら、小原さんは親の介護を気持ち良くできますか。
小原 できません! 親も自分の娘がナースだと、きっとわがままをいっぱい言ってくると思います。それだったら、お金をもらって赤の他人を介護する方がずっといいです。お金の問題だけじゃなくて、精神的にもその方が楽です。
南 時間の問題もあるし。
小原 そう。仕事なら時間ですから帰ります、ってできますけど、親だと同じ家にいて、決まった時間もないですから。プライベートも仕事もごっちゃになってストレスがいっぱい溜まりそうです。 実際には私の父は胃がんで亡くなりましたから、介護らしい介護はしていなくて。しかも一年という期間がわかってましたから、手術して三ヵ月でこうなって、次の三ヵ月でこうなってっていう目処がついていたので辛くはなかったですね。 人工呼吸器を使うと患者を生かし続けることができますが、私はあれも善し悪しだと思ってます。家族の方がアップアップになることがありますよ。ずっと寝たきりだからだんだんお見舞いにも来なくなったりして。

■孤独死ではなく「自立死」に
南 人工呼吸器は確かにケースバイケースで考えないといけませんね。心臓だけ動かして目が覚めないとなると、いったい誰のための医療かなということにもなってしまいますから。
小原 人工呼吸器をつけて寝たきりになっている患者さんのご家族で、そこから元気になって復活すると考えている方もいらっしゃいます。もしそうなったら本当の奇跡なのに、そういう望みを持たせてしまうというのはどうなのかなと思うんです。
南 その誤解を解くのは医師の役割ですね。
小原 そうなんですが、そういうご家族は先生がいくら説明してもわかっていただけなかったりするんです。南さんの作品では、胃瘻を造設するかどうかの問題も書かれていましたね。私はナースとしては作ってほしいんです。マーゲンチューブ(胃管カテーテル)だと抜かれてしまったりするので。そうすると長生きしちゃうから困ると言ってきたご家族もいましたけど。
南 患者さんが九十歳だとご家族が七十歳前後だったりして、ご自身の将来にも不安があって、「親より自分の方が先に逝っちゃうよ」とかおっしゃいます。
小原 そうそう。私もよく聞きます。「自分が介護されたいのに」ってね。
南 胃瘻が入るとひと口ひと口匙で食べさせるという時間が短縮できますね。鼻から入れるのは、鼻も痛いし一時的なものという考えで論外なんですけど。ただ、口から食べられなくなった後の栄養補給をどうするかをめぐる選択では、最近はご家族の考えも変わってきています。 以前はちゃんと栄養を入れるために胃瘻希望が多かったんですが、今はもう自然でいいですとか、点滴も止めてくださいとか言われるようになってきました。もしかしたら『サイレント・ブレス』を読んでくださったのかなとか思ったりして(笑)。
小原 そういう方いました。何もしなくていいって。だからただ看取っただけでしたね。
南 無理な延命を拒否する日本尊厳死協会の会員は、十万人を超えています。だんだんそういう考えも浸透してきたんですね。
小原 だから自宅で介護している人たちって本当に偉いなって思います。自分が在宅介護の指導をしながら実はそう思ってるんです。
南 やっぱり特にお手洗いのことになると個人に任せるのは無理があるというか、施設に頼るべきだと思います。自分のことを考えても、まずできる限り自宅で暮らして、いよいよダメだとなったら入る施設を決めておきたいです。もしその途中で自宅で亡くなっても、孤独死とかって言われますけど、孤独死で何が悪いのかと思います。
小原 あ、私もそうです。人に迷惑かけないんだからいいですよね。
南 孤独死した人って最後まで自立してたってことじゃないですか。だから孤独死じゃなくて「自立死」って言ってほしいんですよ。「孤独死してかわいそう」とか悪いことしたみたいなイメージじゃなくて、自立死で偉かったと。

■看護師は患者の代弁者
小原 南さんがいらっしゃる病院は大きいんですよね。
南 民間病院で七百床あります。
小原 民間で七百は大きいですね。うちは三百なんです。
南 小原さんは急性期をやってるんですよね。
小原 やってないです。急性期の内科病棟もありますけど、今、私がいるのは療養型なので。だから夜勤のときは胃瘻ばっかりやってます。 夕方出勤したらまず患者さんへの栄養補給で胃瘻に経管をつないで、終わったら端から取ってきて、朝起きたらまた胃瘻につないでまた取って、夜中はひたすらオムツ交換です。今は医療らしいことはほとんどやってないんです。逆に楽と言えば楽ですけど。患者さんは話しもしないし文句も言わないし。
南 ひまりちゃんの大好きなタイプの患者ばっかり。
小原 そうそう。少々粗雑に扱っても大丈夫(笑)。
南 いやいや、一応まだ看護師さんなんですよね(笑)。
小原 そういう病棟ですけど、今は長期入院はさせない方針になってます。どんどんお家に帰しましょうっていう。昼間は退院支援が主な仕事で、だから胃瘻を作りたがるんですよ。在宅でマーゲンチューブだと管理が大変ですから。
南 なるほど。
小原 介護施設でも胃瘻じゃないと入れてもらえないところがすごく多いんです。夜はヘルパーさんしかいなくて、マーゲンチューブを抜かれると困るから。
南 自分だったら胃瘻を作ってもらいたいですか?
小原 いいえ、私は結構です。もし作るんだったら焼酎かビールを入れていただければ充分です(笑)。人間食べられなくなったら死に時ですよ。ヨーロッパではそういう考え方が一般的みたいですね。だから寝たきりの人もそんなにいないという。
南 そうですね。なかなか割り切れないというか、その許容範囲は医者の方がもしかしたら遅れているかもしれませんね。自分にはこういう治療ができると思えば点滴だとか薬だとか、治療に向かいますから。その点、看護師さんは、手足を縛り付けて点滴してどうするのって思いますよね。嫌がってるじゃないのって。
小原 確かに。患者さんが嫌がってるからやめていいですかって先生に聞くことはあります。さらに、患者さんが嫌だと言っているから薬をスキップしますって言い切っちゃうこともありますね。いいですかじゃなくて飲ませませんって。そういう患者さんは言っても飲みませんから。
南 看護師さんは患者の代弁者ですよね。医者はけっこうルーチンでやってますから、患者さんにむくみが出ていても気づかずに点滴入れちゃったりとか。
小原 私たちから言うこともありますね。だいぶむくんできたから点滴の量を減らすか、そろそろ利尿剤を使ってもらえませんかって。
南 その辺りの見極めがきくとは、小原さんはすごくデキるナースなんですね。
小原 いやそんなことないですよ。医者より看護師の方が患者さんといる時間が長いからわかるんですよ。先生は回診の何分かしか見てないし、話もしないですから。
南 うーん、耳が痛い(笑)。

 ■介護を押しつけている人たちに
小原 先生は外来も診ないといけないし、仕方ないですよ。うちの院長は看護師の話をよく聞いてくれます。「この患者さんはどう」とか「ご家族はなんて言ってる」とか聞かれることもありますし。
南 いい院長ですね。患者さんにとっても、看護師さんとのコミュニケーションは大事ですよね。楽しく過ごす方が患者さんは長生きできるんです。 教科書的には正しくても、患者さんを拘束しながらの治療はやはりよくなくて、看護師さんに適当におだててもらったり遊んでもらったりしながらいい気持ちで治療を受けた方が、やっぱり生き生きとしてきて、ごはんも食べるようになるし元気になりますからね。
小原 看護師には何でも言えるけど先生には言えないっていう患者さんもいます。大事なことは回診のときにでも先生に直接言った方がいいと話すんですけど、言えないんです。不思議なもので。
南 「痛い痛い」って言って看護師さんに手を握ってもらったりしているのに、診にいくと、「大丈夫です。問題ありません」とか澄ました顔で言っちゃって(笑)。
小原 そうそう。で、先生がいなくなったとたんに「看護師さんちょっと」とか言うんです。
南 『新宿ナイチンゲール』に話を戻しますが、作中でひまりちゃんが群馬へ行く話もよかったです。介護を受けるおじいさんは看護師には距離を置いているのに、奥さんには全部おまえがやればいいと言う。あるあると思いました。
小原 あれは典型的なパターンです。病院にいる間は看護師に気を使ってオムツをしているのに、家に帰るとトイレに連れて行けっていう。家族にはなんでも言えるけど看護師には言えないっていうの。
南 老々介護になるとどっちもよろよろだからもう無理ですよね。「介護も家事も女がやればいい」と思い込んでいる人もいまだにいます。
小原 「嫁がやればいい」とか「娘がやればいい」とか家族の中で誰か一人に押しつける介護が多いんです。「誰々がやるから自分は退院指導を受けない」っていう。それはよくないと思います。介護って家族全員で協力してやらないと続かないですよ。一時はできるでしょうけど、いつまで続くかわからないのが介護だし。必ず家族で協力してくださいというのはお願いしますね。
南 家族がいっぱいいればいいですけど。
小原 それもいないですね、今は。最近入院されていたある患者さんの家族は、娘さんが自分の両親と旦那さんの両親を両方看てました。一人で四人をです。だからその娘さんは、どんなかたちであっても歩いてトイレに行ってもらわないと困ると言い切ってました。旦那さんは仕事、子供たちも何もしてくれない。だからストレスも溜まっているし、必死さが気の毒なほどでした。
南 その旦那さんや子供たちのような人に、小原さんの作品を読んでほしいですね。 小原 介護を押しつけている人たちにですね。

 ■二人の二作目のテーマは
南 二作目の単行本になる『ディア・ペイシェント』は千晶という女医の物語で、さまざまなクレーマー患者と向き合いながら、それにどう対応していこうかという成長物語なんです。世の中にはいろいろな医療ミスがあったり、医者と患者との信頼関係が低下していると思うんですが、その回復を願って書いた作品です。 患者さんにもときどきクレーマーみたいな人がいて、こちらがこういう検査でこういう治療方針でって進めていても、「ネットにはこう書いてあった」とか「その点滴で本当に大丈夫なの」とか、医者を信用してないことを前面に出してくることがあるんです。 そういう患者さんに会うとがっかりするというか、黙っている人たちもそんなふうに考えているんじゃないかと思ってしまいます。本当は病気に対して患者さんも医師も看護師もみんなで立ち向かわないといけないのに、患者対医者になっていたりするのは淋しいですね。歩み寄れる方法はないのかなと。

 *『ディア・ペイシェント』 病院を「サービス業」と捉える佐々井記念病院の常勤内科医・千晶は、押し寄せる患者の診察に追われる日々を送っていた。そんな千晶の前に、執拗に嫌がらせを繰り返す患者・座間が現れた。病める人の気持ちに寄り添いたいと思う一方、座間をはじめさまざまな患者たちのクレームに疲弊していく千晶の心の拠り所は先輩医師の陽子。しかし彼女は、大きな医療訴訟を抱えていた。医療に携わる人々の苦悩と喜びを綴る、著者第二長編。1月25日発売予定。 定価 本体1600円(税別) 幻冬舎

小原 『サイレント・ブレス』の続編ではなく、まったく新しい小説ですね。 南 そうです。ただ、読者が読みやすいようにと考えて、同じくミステリータッチにはなっています。 小原 南さんは今後はミステリー作家としてやっていかれるんですか。
南 ミステリーじゃないものも書けるようになりたいですが、ミステリーの要素というか、「あれ?」とか「どうしてだろう」と読者が思うようなことは大切にしていきたいと思います。読み進めるのが楽しみになる仕掛けと言うんですかね。
小原 私は長編二作目の前に、短編をまず書きました。それは医療ものではないですが、長編はまた医療で書こうかなと今のところ考えています。やっぱりきれいなところではなくて汚いところをえぐり出したいです。 南 また本音のところを読めるのが楽しみです。  ≫(現代ビジネス)


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