世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

検察官を監視するのは誰?

2009年05月06日 | 日記
西松事件が国策捜査なのかどうか、今日はその辺の事はさておいて検察官の権限と云うものについて考えてみることにする。
「検察官とは、日本法上、検察、すなわち、刑事訴訟における捜査及び訴追、裁判の執行の監督などをその職分とする独任制の官庁、又はその刑事訴訟法上の地位をいう」となっている。
なんだが読んでもピンとこない(笑)じっくり読むと、刑事事件の捜査と裁判所にその被告人を起訴して、裁判を維持する(公判維持)役目の役人と云うことだ。その身分は建前上、一人ひとりが独立した検察官としての身分を持つ独任となっている。独任性というのは知事や市長などと同じで、自ら完結した仕事が出来る身分をいう。会社でいうなら監査役の立場と似ている。
しかし、それは建前であって、現実は検事総長を頂点とする強固な組織に所属しているので、他の行政機関と殆ど変らない、いや最も官僚的組織だと言える。準司法機関とも言われ、公訴権が一極集中する。検事総長の地位は給料で言えば法務大臣と同額に位置している。行政の事務方の最高地位事務次官より給料的に上、庶民から見ると凄く偉いのである(笑)
最高検察庁の検事総長(国務大臣級待遇)・次長検事(大臣政務官級待遇)、各高等検察庁の検事長(準副大臣・大臣政務官級待遇)は認証官とされ、その内閣による任免は天皇から認証される。つまり、内閣が任免し、天皇からの認証が必要なほど地位が高いのだ。
極端な言い方をすると、ちょっとした罪でも、検察官の酌量如何で逮捕・拘留・起訴が出来る、時には起訴猶予が出来ると云うことになる。(極端な言い方だが胸一つで、起訴・不起訴が決められる)
司法試験に合格して、裁判官、検察官、弁護士などの選択肢は各個人にあるが、裁判官には弾劾裁判という制度があり、その行状をチェックする機能がある。弁護士の場合、所属弁護士会の懲罰委員会がありチェック機能を有している。ところがこの絶対的権力を握る検察官及びその行政組織なのに準司法機関・検察庁へのチェック機能と云うものがない。
これは恐ろしい話だと言えるのだろう。検察審査会というものはあるが、これは起訴猶予や不起訴の事案を審査するものであり、検察官をチェックするものではない。
一般的な国民の感覚として警察または検察に逮捕されたということは、イコール「あいつは悪い事をした」ということになる。逮捕・起訴と裁判における有罪無罪は別のもであり、「悪い事をした」は裁判で有罪になって初めて犯罪者になるのだが、一般の感覚は逮捕の時点で悪者なのである(笑)
わが国の最近の傾向を見ると、検察に起訴され裁判で無罪となる確率は0.15%になっている。もうこれは逮捕起訴イコール有罪という現実があると云うことだ。個人的に言うなら裁判所並みの権力と実力を持った組織だとも言える。
それだけに、この権利の行使は国民感情を害さないように気は配られているようだ。仮に政治的な偏りなどが歴然としてくると国民の信頼を失うからである。しかし、あくまでも世論への配慮であり、偏りや不正を正すチェック機能ではない。検察のマスコミへのリーク情報などは、この世論への配慮の一環だが、逆に世論操作としても駆使されると云うことになる。
法務省の行政の組織の一部である以上、法務大臣の指揮権はある。過去に一度だけ、その法務大臣の指揮権が行使されたことがある。それが何とも面白いのだが、吉田茂(麻生首相の祖父)内閣に於いてである。
1954年法務大臣犬養健が造船疑獄事件で自由党幹事長佐藤栄作の逮捕を国会会期終了まで延期させたという指揮権発動だった。その後、何故か佐藤栄作幹事長の逮捕は見送られた。
法務大臣の指揮権には「捜査しろ」「捜査するな」の二通りがある。ただし個々の検察官への指揮ではなく、検事総長に対してのみ行える。この点も重視すべきだ。その所為で、民主党の中で検事総長の国会喚問の話題が出ているようだ。
現時点で行える唯一のチェック機能は検察官に刑法194条「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6か月以上10年以下の懲役又は禁錮に処せられる。」の特別公務員職権乱用罪があるのみである。
しかし、この刑法規定を用いて検察へのチェック機能とするにはハードルが高すぎるようだ。7年で時効になる点も注目されている。
多少調べて判ったことだが、検察の独立性(閉鎖性ともいえる)は民主主義の前提ではあるのだが、行政の一部であると云う極めて曖昧な性格を持つ官庁組織であることも判った。
少なくとも、我々はそういう国に生きていると云う事実を知っておくことも必要なのだろう。
それで初めて気づいたのだがアメリカの州の検察官が州民の選挙で選ばれ、数年程度のキャリアと思われている点に合点がいった。検察による起訴独占主義の弊害や行政との癒着をなくそうと考えた米国流民主主義の工夫かもしれない?

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