世相を斬る あいば達也

民主主義、資本主義とグローバル経済や金融資本主義の異様な違いについて

●安倍逃亡の中東外交 またひとつ日本の危機を撒き散らす

2018年05月01日 | 日記
戦火の欧州・中東関係史: 収奪と報復の200年
クリエーター情報なし
東洋経済新報社

 

9.11後の現代史 (講談社現代新書)
クリエーター情報なし
講談社


●安倍逃亡の中東外交 またひとつ日本の危機を撒き散らす


安倍晋三と昭恵夫人と云う、戦後内閣最強最悪な夫婦が、恒例のゴールデンウイーク外遊で中東を訪問、豪奢な旅を愉しんでいる。中東訪問と聞くと、混乱状態にある国々の仲介の労を取ろうと健気な話に聞こえるが、友好的国々に気晴らしの旅に出ただけのようだ。UAE、ヨルダンは人畜無害。イスラエルは安倍にとって「積極的平和主義」のスローガンのもと、事実上の「同盟関係」の国だ。筆者の知る限り、安倍自民が、イスラエルと同盟関係を結ぶなど選挙公約で聞いたためしがない。

パレスチナ訪問は、金をめぐみに行く、軽いボランティア気分で、森友幼稚園を訪問した時と同レベルの外交である。イスラエル、パレスチナ双方と友好関係を築く日本が「橋渡し役」になどは、20世紀外交官谷内の言葉であり、いまや、無意味。隣国韓国、中国とさえ仲良くなれない男に、「中東の平和と安定に貢献をしていきたい」とかピント外れなことを言い、イスラエル、パレスチナの橋渡し?馬鹿じゃないのか。

中東で、仮に訪問するとしたら、日報問題で揺れるイラクや南スーダン、或いは戦火衰えないシリア、イランの訪問であれば、多少は、流石右翼だけあって、蛮勇があるなと評価したいところだが、安全ベルトだけの訪問では零点外交だ。以下は、現在の中東問題の元凶が、アメリカであることを示唆している、二つのコラムを紹介しておく。特に、ひとつ目の酒井氏のレポートは意味深い。今夜は予定があるため、短いコメントで失礼するが、ともあれ、アメリカが意味もなく中東に関与したことが混乱の引き金なのはたしかだ。しかし、欧米メディアは、蛇に睨まれた蛙の如く、その事実を語らない。安倍夫婦の悪行の数々を、日本のメディアやコメンテーターが語らないのも、レベルは違うが、同じ根に生えている。


 ≪「中東はいつから危険な場所となったのか」を知るための糸口
これが分かれば解決も見つかる
【「中東の歴史こそが、世界の現代史の縮図」。発売即重版となった中東政治の第一人者・酒井啓子氏の著『9.11後の現代史』の冒頭部を特別公開します。】
 
■中東はいつから危ない場所になった?
筆者が教鞭を執る大学で、ときどき、中東報道に携わるジャーナリストや中東勤務の外交官、NGO職員などをお呼びして、話していただくことがある。
:その際、学生たちから必ず出る質問がある。
:「なぜ危ない場所だとわかっていて、行くのか」
:なぜ危険地に行くような仕事をするのか、という、就職活動を間際にした学生の疑問である。
:筆者とお呼びした講師の先生は、その都度苦笑いする。
:筆者と同じ年代かその前後の世代にとっては、未知の場所に赴くとか、途上国で援助活動をするとか、誰もやったことのない国との商談にチャレンジするとか、そういうことは青臭い学生の夢だったからだ。
:だが、危険への心配がまず頭をよぎる今の学生も、仕方がないかもしれない。
:今年度大学に入学した学生は、生まれて3歳で9.11米国同時多発テロがあった。物心ついてからずっと、アフガニスタン戦争やイラク戦争や、安定しない中東の治安とシリア内戦と難民の急増を見て育ってきたのである。その間に、少なからぬ日本人も紛争のなかで命を落としてきた。
:生まれてこの方、中東は危ない場所、という情報と知識に囲まれてきたのである。

■増え続ける被害者数
:確かに、21世紀に入って世界は「テロ」に悩まされ続けている。
:アメリカのメリーランド大学が作成しているグローバル・テロリズム・データベースをもとにまとめられた「グローバル・テロリズム・インデックス2016」によれば、2000年にはテロ事件による死者数は世界中で4000人弱だったのが、2014年には3万2000人以上に増加した。
:2015年以降、そのうち半分がイラクとアフガニスタン、ナイジェリアで起きたテロ事件で占められている(図1)。

図1






:やはり「中東やアフリカは怖いところ」、と言われる所以だが、近年はヨーロッパでも事件が頻発している。
:同「インデックス」によれば、2015年にはイラクやナイジェリアでの死者数は減り、その分先進国での死者数が増えた。「インデックス」が「先進国」として取り上げているのはOECD(経済協力開発機構、北米・ヨーロッパなどの先進国35ヵ国からなる国際機構)加盟国のデータだが、先進国でのテロ被害者数の増減を見ると、2015年には前年から7.5倍に急増し、2001年、9.11米国同時多発テロ事件が起きた年の被害者数に次ぐ数に至っている(図2)。


図2


:その主な原因は、2017年11月にフランスでおきた襲撃事件だ。
:以降、「イスラーム国(IS)」を名乗る「テロ事件」が、ベルギー、イギリス、ドイツなどで頻繁に発生することとなる。
:こう見ると、「もともと中東やアフリカは紛争やテロの多い、危険なところで、それが最近先進国にも及んできた」と見えがちだ。
:だからなのだろう。先進国の間には、「中東から流れ込む危険をブロックしなければ」という風潮が蔓延している。
:アメリカのドナルド・トランプ大統領が、就任早々「中東や北アフリカの7ヵ国からの渡航者は、ビザがあっても入国を禁止する」との大統領令を出して、物議を醸した。
:2017年4―5月に行われたフランスの大統領選挙では、エマニュエル・マクロンが勝利したものの、移民反対の右派、マリーヌ・ルペンの台頭が囁かれた。ヨーロッパに激震が走ったイギリスの「EU離脱」選択の背景にも、移民受け入れ政策への懸念があったと言われる。
:しかし、本当にそうなのか。
:「もともと中東やアフリカは紛争やテロが多くて、それが21世紀に入って世界の他の地域に拡大している」のだろうか。

■テロの時代=21世紀
:前述したメリーランド大学のデータベースを見ると、世界の「テロ」件数が急速に増加し、そのうち多くが中東か南アジアで発生するようになったのは、21世紀に入ってから、とくに2004年頃からである。 :それ以前の「テロ」と呼ばれる事件は、その多くがラテンアメリカやヨーロッパで起きていた。紛争も同様だ。
:スウェーデンのウプサラ大学平和紛争研究学部はその紛争研究で有名だが、そこで収集している世界の紛争データセットをみれば、世界中の紛争のうち中東が占めるシェアは、一貫して低い。
:わずかに増えたのは1960年代の独立戦争の時期と、80年代のイラン・イラク戦争やクルド人など少数民族の反乱が発生した時期だけだ。
:9.11事件の前後、つまり20世紀終わりから21世紀初めの頃は、中東での紛争発生件数は、それ以外の時期に比較しても少ない。
:つまり、「21世紀に入って中東からテロが世界に流れだしている」というほど、中東は世界の他の地域に比べて特段に紛争が多かったわけでも、テロが蔓延していたわけでもないのだ。
:では、「中東にテロが蔓延」したのはいったい、いつからなのか?
:メリーランド大学のデータでもウプサラ大学のデータでも、はっきりしているのは、こういうことだ。
:「中東でテロや紛争が増加したのは21世紀以降、特に2003年のイラク戦争以降」。
:そして2011年、シリアが内戦状態になってそれは右肩上がりに上昇の一途を辿る。
:それに比例して、シリアやアフガニスタン、リビアから流出する難民の数も急増する。
:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のデータによれば、世界の難民(国内外含む)総数は1990年代から2005年まで年間200万人前後で推移していたのに、その後急激に増えて2014年には550万人に上る事態となった。現在でも、難民を大量に乗せた小舟が地中海で転覆するなど、UNHCRは「1日平均14人の命が失われている」と発表している。
:なぜこんなことになってしまったのだろう。
:20世紀はこんなふうではなかった、と、筆者や同じ世代で中東にかかわってきた人たちは、思う。

 ■蜜月だった日本と中東
:1970年代、日本が高度成長を果たした時期、ちょうどオイルマネーがふんだんに手に入って同じく高度成長を目指していた中東諸国は、日本製品のいい輸出相手先だった。
:一時期、中東地域に駐在する日本人ビジネスマンは、1万人を超え、70年代末から80年代初めには、イラクやイラン1国で4000〜5000人、さらにはそれ以上のビジネスマンが滞在していたこともある。
:日本企業が「行け行け」だったこの時期の、日本の海外プラント輸出の相手国トップ5を見ると、イランやイラク、さらにはサウディアラビアがアメリカを抜いて上位にランクされていた。
:金払いのいい産油国は、道路から病院、工場から住宅まで、何から何まで安くて質のいい日本の建設会社に任せたい、と考えていたのだ。大きな商談を成功させるために、70年代の日本人ビジネスマンは、中東の砂漠や山岳地帯を縦横に駆け巡っていた。
:それが今や、多くの中東諸国が、日本外務省が「渡航に注意・警戒を要する」と指定しなければならない国になってしまった。
:学生が夏休みに「せっかく中東のことを勉強したのだから、一度訪れてみたい」と相談しに来ても、「この国なら絶対大丈夫」といえる国がなくなってしまった。中東だけではない。イギリスやフランスなど、欧米諸国でも「絶対安全」はない。
:いったいなぜ、こんなことになってしまったのだろうか。

 ■ISが終息すれば、世界は安全になるのか?
:そこに大きな転機となる3つの事件がある。
:まずはイラク戦争だ。世界でテロが増えたのは、イラク戦争後である。 :そしてそのあとは、シリア内戦、特にISが登場したことだ。
:さらにいえば、イラク戦争やIS出現の土台を作った9.11米国同時多発テロ事件も、看過できない。
:猛威を振るったISも、今や大幅に縮小して終息に近づきつつある。喫緊の問題とされたヨーロッパへの難民の波も、収まりつつある。上記の統計でも世界のテロ件数は、2016年になってようやく下降傾向にある。
:じゃあ、世界は危険な時代を越えたのか?これからは、中東がらみのさまざまな問題は、収まっていくのだろうか?
:忘れてはならないことは、これらの大事件が、ただ一過性の大事件だっただけではなく、中東政治、ひいては国際政治の構造を大きく変えた、ということだ。
:ISがシリアとイラクに勢力を広げたとき、筆者は「中東にメルトダウン(溶解)が起きている」と表現した(『朝日新聞』2015年5月20日付)。
:中東からは、これまでもさまざまな武装集団が出現して世界を震撼させてきたが、ISの登場は、その残酷さも活動の在り方も、なにより「カリフ国を再興する」という点で、これまでの中東現代政治の常識を打ち破る出来事だった。
:また、ISとの戦いの過程で、クルド少数民族やシーア派武装組織の活躍など、これまで国際政治で陽の目を見なかった非国家主体が、脚光を浴びた
:さらには、これまでアメリカなど外国に安全保障を依存してきたペルシア湾岸のアラブ産油国が、シリア内戦やイエメン内戦に、積極的に軍事参加するようになった。
:こうした一連の展開は、20世紀が終わったときには、想定もされなかったことである。
:これらの出来事は、全て、9.11事件やイラク戦争やシリア内戦と、数珠つながりになっている。

■アメリカと世界の構造
9.11事件後にブッシュ政権が「対テロ戦争」という形で安全保障、戦争概念を変えたことは、国際政治学でもよく指摘されるが、それは中東地域の域内関係をも大きく揺るがせてきたからだ。
:事件後のイラク、アフガニスタンでの戦争が、前代未聞の反米活動の蔓延を世界中で引き起こし、それに懲りて「世界の警察官を辞める」としたオバマ政権のアメリカは、シリア内戦への対応に大きな矛盾を生んだ。
:そのように見れば、当面の危機が去ったように見えたとしても、中東と世界を不安定にしている構造自体は、改善されたわけではない。 むしろ近年では、過去にここまで角突き合わせたことはないのではないかと思われるほどに、サウディアラビアとイランという、ペルシア湾岸地域の二大大国間の緊張が高まっている。
:アメリカの中東研究の重鎮、グレゴリー・ゴーズは、この地域大国間の対立に伴う今の中東の危機を、「新しい中東の冷戦」と呼んでいる。目の前にある危機は、そこまで深刻化しているのだ。
:そして、ペルシア湾岸のアラブ産油国に原油輸入の8割を依存している日本としては、ペルシア湾岸の不安定化は、全くの他人事ではない。
:1万人を超す難民申請者に対してわずか28人、人道的理由で特別に在留を認められた者を含めても125人しか認定しない日本(2016年、法務省発表)は、1万~2万人規模で難民を受け入れている欧米諸国に比べて圧倒的に少ないとして、国際的に圧力を受けている。
:現在内戦と封鎖で人口の7%が国内避難民となっているイエメンの、バーブ・アルマンデブ海峡を挟んで30㎞程度の距離の対岸には小国ジブチがあり、そこには自衛隊の海外拠点がある。実はこれだけ近い中東に、日本は「遠く無縁な場所」でいられるわけがない。
:本書は、21世紀の中東しか知らない若者には、「今見ている世界と中東がこんなに怖いことになってしまったのは、そんなに昔からじゃないんだよ」と伝え、20世紀の中東を見てきた少し年嵩の人たちには、なぜ世界と中東がこんなことになってしまったのかを考える糸口を示すために書かれたものである。
:そしてその目的は、「世界と中東がこんなことになってしまったのにはちゃんと理由がある」ことを示すことにある。なぜならば、理由があるからには、解決も必ず見つかるはずだからだ。
 ≫(現代ビジネス:国際・酒井啓子)



≪シリア内戦は「アメリカの攻撃」でむしろ悪化したかもしれない
当事者の市民は置き去りにされたままだ
■米英仏「シリア攻撃」の狙いと効果 :2018年4月14日の現地時間未明、米英仏によるシリア領内への空爆が始まった。
:米国は、同月7日にダマスカス郊外県東グータ地区ドゥーマにおいて、アサド政権が化学兵器を使用し多数の死傷者が出たと断定し、その対抗措置として軍事行動を実施したと説明した。
:米国によるシリア「内戦」への直接介入は、1年前の4月7日の軍事行動に続き、2度目となる(参照「米軍がシリアをミサイル攻撃した意味〜中東混迷の転換点となるか」)。
:今回は、投入戦力の規模も標的も拡大され、「化学兵器使用を許さない」という米国の断固たる姿勢をより強く示すことになった。
:しかし、その一方で、攻勢に見える米国主導の今回の軍事行動も、その内実に目を向けてみれば、2011年からのシリア「内戦」への対応に苦慮する同国の姿が浮かび上がってくる。
:トランプ大統領は、化学兵器が使用されたとされる4月7日の翌日の段階で、アサド政権とそれを支援するロシアとイランを名指しで非難し、「大きな代償」を払うことになると警告した。そして、11日には、いずれはミサイルによる攻撃を敢行すると宣言した。
:だが、その「大きな代償」にアサド政権の打倒が含まれていないことが米英仏の政府筋からも語られるなど、今回の介入によってシリア「内戦」の趨勢を大きく変える意思がないことも明らかになっていた。
:つまり、今回の軍事行動においても、理由はあくまでも化学兵器であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。
:事実、化学兵器関連施設をターゲットとした空爆は第一波のみで直ちに「完了」とされ、その成否よりも行動それ自体が目的であったかのように見えた。
:では、化学兵器使用を理由とした米国による今回の軍事行動には、どのような効果が想定されていたのだろうか。米国の狙いはどこにあったのだろうか。
 ■米国が抱える「ジレンマ」
:シリア「内戦」における米国の関心は、「イスラーム国(IS)」をはじめとするイスラーム過激派の殲滅から、イランの勢力拡大の阻止へとシフトしている。
:周知の通り、アサド政権は、ロシアとイラン(とレバノンのヒズブッラー)の支援によって、「内戦」に勝利しようとしている。
:今では、ISはもとより反体制諸派も壊滅的な状況にあり、各地での戦闘もアサド政権側の一方的な攻勢が目立つようになっている。
:こうした状況に対して、米国の姿勢は少々複雑である。ジレンマと言ってもよい。
:すなわち、ロシアに泥沼化した事態の収拾を委ね、アサド政権の存続を既定路線としていったんは「内戦」を終わらせていく。
:しかし、ロシアに完全なフリーハンドを与えてしまうと、シリアにおける米国の影響力が減衰し、さらには、「仇敵」イランの勢力拡大を招きかねない。
:つまり、米国は、少なくともシリア「内戦」の文脈において、ロシアの動きに対して肯定と否定の狭間で一貫した姿勢を打ち出しにくい状況に陥っているのである。
:ロシアの動きに「一定の」歯止めをかける そうしたなかでの今回の軍事行動である。そこには、こうしたジレンマを抱えた米国が事態打開の手立てを模索する姿が見てとれる。
:すなわち、ロシアに対して政治的な攻勢を仕掛けながらも、軍事的な衝突は回避し、シリア「内戦」への影響力を示す手立てである。
:今回の軍事行動が昨年4月のそれと異なるのは、ロシアへの政治的な攻勢が強められた点である。
:トランプ大統領は、化学兵器を使用したとされるアサド政権だけでなく、それを支援するロシアに対しても激しい非難の言葉を浴びせた。
:加えて、英仏両国を抱き込むことで、国際社会でのロシア、そして、イランの政治的な孤立をもたらす効果を生み出した。
:その一方で、昨年4月の軍事行動がほぼ完全な奇襲だったのに対して、今回は作戦発動までに数日を費やすことで、結果的にロシア軍に時間的な猶予を与えた事実は重要である。
:そう考えると、「準備しておけ、ロシア。素晴らしく新しく「賢い」それら(ミサイル)は必ずやってくる!」(4月11日)というトランプ大統領によるツイートは、ロシア軍に迎撃ではなく退避を呼びかけるメッセージであったものと読むことができる。
■化学兵器使用事件の「利用価値」
結局のところ、米国は、シリア「内戦」をロシアの手に委ねなくてはならない状況に変わりはなく、したがって、シリアをめぐってロシアと真正面から衝突する意思は有していない。
:少なくとも、ロシアとアサド政権に代わって自国が「内戦」を一手に引き受けようなどとは考えていない。
:事実、今回の軍事行動の約2週間前の3月29日には、トランプ大統領は、シリアから米軍は「間もなく」撤退すると述べている。
:その後「もう少し」だけ駐留するとの翻意を見せたものの、いずれにしても、米国がシリアに特段の関心を持っていないことは明らかであった。
:もし仮に米国が人道や民主化の観点からシリア人の命を何よりも重視していたならば、過去のどのタイミングでも介入できたはずである。死傷者の数という点で見れば、化学兵器よりも通常兵器の方が問題は深刻である。
:にもかかわらず、米国が化学兵器使用にこだわった理由は、それが国連安保理決議や国際条約に違反することから軍事行動の正当性を得やすいことに加えて、ロシアに対する政治的な攻勢を強め、国際社会での地位を揺さぶる上での「利用価値」が高かったためだろう。
:「化学兵器を使用するアサド政権を擁護するロシア」というかたちで化学兵器とロシアを紐付けすることで、批判の度合いを強めることできるからである。
:むろん、誰が、何の目的で、化学兵器を使用したのか、証拠や十分な情報が提示されていない現段階(4月14日)においてそれを断じることはできない。
:だが、いずれにしても、4月7日に化学兵器使用が報じられたことは、米国が対シリア政策、あるいは対ロシア政策を打ち出す上での1つのきっかけとなった。
 ■イスラエルの安全保障
:米国が化学兵器にこだわった理由はもう1つある。
:同盟国のイスラエルである。大量破壊兵器の一種である化学兵器がシリア国内で使用され続けることは、その主体が誰であれ、イスラエルの安全保障上の脅威となる。
:「誰であれ」というのは、アサド政権に関わらず、シリア国内で活動しているあらゆる勢力が「反イスラエル」の傾向を持っているからである。
:そのため、米国が今回の軍事行動で本当に「化学兵器の研究開発施設」や「貯蔵施設」をターゲットにしたのだとすれば、その破壊はイスラエルの安全保障に資するものとなる。事実、イスラエルは今回の米国の判断への支持を表明した。
:アサド政権が「内戦」で勝利を収めつつあるとすれば、それは、同盟国のロシア、そして、イランの勝利でもある。イスラエルが危惧するのは、そのイランがシリア領内で大量破壊兵器を手にすることである。
:イスラエルは、かねてから自国を敵視してきたイラン――核開発の疑惑が向けられてきた――のシリア領内での勢力拡大に神経を尖らせてきた。
:4月9日のイスラエル国防軍によるものと見られたシリア領内の空軍基地への空爆では、イラン人兵士7名の死亡が伝えられている(イスラエルは、この軍事行動への関与について肯定も否定もしていない)。
:ただし、イスラエルとしては、アサド政権の崩壊を招くような軍事行動を歓迎していない。
:警戒すべきはあくまでもイランと大量破壊兵器であり、アサド政権やロシアに代わってISなどのジハード主義者の伸張を招いてしまっては身も蓋もないからである。 イスラエルもまた米国と同様に、シリア「内戦」においてジレンマを抱えているのである。
 ■米ロの大規模衝突はあるのか?
結局のところ、米国による今回の軍事行動は功を奏したのだろうか。
:米国は、英仏両国を抱き込むことで、化学兵器使用の禁止という国際規範の旗振り役としてのイメージの向上には相応の成功を収めたと言えるかもしれない。
:そして、それは、翻って、アサド政権とそれを支援するロシアやイランの国際社会における地位を揺さぶる可能性を有している。
:しかし、それによって、シリア「内戦」、さらにはシリアの人びとの今後に何らかの光が差すことになったかと言えば、そうではないだろう。
:結局のところ、冒頭で述べたように、米国には「内戦」の収束やその後の国家再建を引き受ける意思はなく、「ロシア頼み」が既定路線となっているからである。
:むしろ、今回の軍事行動は、シリア「内戦」をいっそう長引かせ、シリアの人びとをさらに苦しめるきっかけになっただけなのかもしれない。
:それが、ロシアの動きに「一定の」歯止めをかける一方で、米ロ両国間の協調の営みを停滞させることにつながるからである。
:つまり、米ロの政治的な対立の結果として、それぞれを支持する諸国や同盟国のあいだの不和をいっそう固定化し、国際社会が一丸となってシリア「内戦」の平和的解決に取り組むための機会や気運を損ねることになるのではないだろうか。
:そもそも、「内戦」が泥沼化した背景には、米ロの対立と国際社会の足並みの乱れがあった。
:大国どうしの政治的・軍事的な駆け引きの裏で、本来の当事者であるシリアの人びとは、今まだ置き去りにされたままなのである。
 ≫(現代ビジネス:国際・末近 浩太)


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