世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●対米従属・日本の将来 「移民国家」による再構築か?

2018年07月21日 | 日記
現代社会はどこに向かうか――高原の見晴らしを切り開くこと (岩波新書)
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「日米基軸」幻想 (詩想社新書)
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問題は右でも左でもなく下である (時代への警告)
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●対米従属・日本の将来 「移民国家」による再構築か?

安倍政権が国内外関連法案等々の成立をみる。以下に概ね時系列に沿って、その性格を考えてみる。このように冷静に安倍政権の主たる政治過程を観察すると、米国からの要望に沿って、骨格となる政治日程が組まれていることが理解出来る。安倍政権の骨太の政治日程は、ことごとく米国主導であることは決定的で、どこに、どのような形で、日本国民の意志を反映させることが出来るのか、呆然とする。

重要法案のすべてに米国の関与乃至は影響力が及んでいるのだから、日本が植民地だと云う認定になっても文句は言えない。これらの法案の成立が、日米同盟の保全上、喫緊の課題とは思えないが、なぜ安倍政権にいて、かくもおびただしい数の対米従属法が成立することになったのだろう。おそらく、米国・ネオコンと、その係累に連なる日本の霞が関組織による共同謀議なのだと思う。偶然と云うべき衆参両院で2/3議席を与党で確保できている今こそ、日部同盟を深化させ、確固たる体制に固めきる時代はない、と認識した結果、これだけの赤裸々な暴挙が行えたものと推量する。

衆参で与党が2/3議席を占めることは殊の外容易なことではなく、将来的に安定継続的に、この状況が続くとは、日米のネオコン勢力は考えていないようだ。筆者自身も、与党による両院の2/3議席の確保、イコール「憲法改正発議」のことにばかり目が向いていたが、どちらかと言えば、日米ネオコン勢力による、日本の構造改革が主眼だったのではないかと気づく次第だ。憲法改正論議は、目糞鼻糞的な改正であり、安倍晋三個人のメンツを立てるだけの改正発議であることからみて、憲法改正が主目的ではなかった事に、今ごろ気づいた。

安倍政権下の政治的あゆみを観察すると、二つのメインストリームがあることが判る。ひとつは、日米同盟の深化と固定化だ。二つ目が、新自由主義経済の餌食として、日本人の富の収奪が目論まれている。もしかすると、日本と云う国を、再度戦後のように焼け野原からの再構築させる目論見で、形状の変わったフロンティア地域に置きかえるイデオロギーが生まれたのかもしれない。新自由主義者にとって、フロンティア地域の枯渇が、悩みの種だったわけだが、異種のフロンティア地域を誕生させることで、擬制フロンティア地域と云う空間を創出しようとしているようにも見えてくる。

この日本と云う国が、異種のフロンティア地域を誕生となるには、「移民政策」が欠かせない要件になるだろう。常に米国が発展途上国型経済で成長をしているように、移民マーケットとして、日本は絶好のターゲットなのかもしれない。このまま、安倍自民党政治が継続すれば、「移民政策」の強化は絶対条件になる。まぁその結果、日本の国体が変わろうが、再度成長に繋がるのであれば、一つの選択だとは言える。ただ、江戸時代までに培った日本文化は語り草になるのだろう。20代、30代、40代の「コミュ力」(コミュニケーション能力)重視の時代のマッチング上も最適化されている可能性はある。敵も猿ものひっかくものだ(笑)。


 ■安倍政権の6年弱の動き(★印が米国関連法等)
★アベノミクス3本の矢(金融緩和・財政出動・成長戦略)、
★TPP交渉参加表明、
消費税8%へ、
★国家安全保障会議設立、
★特定秘密保護法成立、
★武器輸出三原則見直し、
★原発再稼働方針明示、
★集団的自衛権行使容認閣議決定、
★TPP署名、
オバマ広島訪問、
消費税率10%引き上げ再延期、
18歳以上公選自民勝利、
★トランプ氏と就任事前会談、
プーチン来日、
★米連邦上下院で演説(安保法改正夏までに成立を国内に先立ち表明)、
★集団的自衛権行使容認含む安保法成立、
慰安婦問題日韓合意、
天皇陛下退位一代限り容認、
★共謀罪成立、
米エルサレムをイスラエルの首都と認定、
名護市長選・自民勝利、
★TPP11に署名(米国除く)、
★民泊新法施行、
佐川国税庁長官辞任、
★経済財政諮問会議「骨太の方針」外国人の受け入れを拡大する政策
★働き方改革成立、
★水道民営化を含む水道法改正案が衆議院で可決、
参議院定数6増改正可決、成立、
★カジノ法実施法案成立、
立憲など野党6党派提出内閣不信任案否決、
国会閉幕


≪通常国会、事実上閉会 森友・加計など疑惑解明置き去り
 カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が20日夜の参院本会議で、自民、公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。この日、事実上閉会した通常国会は森友・加計(かけ)学園問題が焦点となり、公文書改ざんなどの問題が噴出。だが安倍晋三首相は、これらの疑問に正面から答えなかった。
 朝日新聞社が14、15両日に実施した全国世論調査(電話)では、カジノ実施法案を今国会で「成立させるべきだ」とする回答は17%にとどまった。立憲民主党などの野党は、ギャンブル依存症対策の実効性などについて批判。だが、与党は会期末までの成立を譲らなかった。これにより2020年代前半にも最大3カ所のIRが開業することになる。
 カジノ実施法成立に先立ち、立憲など野党は20日、内閣不信任決議案を衆院に提出した。
 「首相は『丁寧な説明』と繰り返したが、実態は逃げ回る一方だ」。立憲の枝野幸男代表は本会議での趣旨説明で2時間43分にわたり安倍政権を批判した。財務省の文書改ざん問題については「行政が国会に改ざんしたうその文書を出したら、国会は成り立たない」と指摘した。
 だが、内閣不信任案は衆院本会議で与党と維新などの反対多数で否決された。
 与党は、カジノ実施法のほか、野党が「過労死を助長する」と批判した働き方改革関連法、「参院6増」とする改正公職選挙法も相次ぎ成立させたが、数で押し切る手法には強引さが目立った。
 「この国会を政府は『働き方改革国会』と銘打った。厳しい国会となったが、70年ぶりの大改革を成し遂げることができた」。首相は20日の自民党代議士会で成果を強調した。
 約半年間の今国会では、森友学園との国有地取引に関する財務省の決裁文書の改ざんや、加計学園の獣医学部新設をめぐり首相と学園理事長との面会が記された文書の存在、陸上自衛隊のイラク派遣日報の問題など、さまざまな問題が噴出。佐川宣寿・前国税庁長官の証人喚問での証言が虚偽だった疑いも指摘された。だが首相や政府側は野党の質問に十分答えず、疑惑解明はほとんど進まなかった。
 首相と野党側との議論も深まらなかった。党首討論は2回開かれたが、首相の長い答弁もあって双方「言いっ放し」になる場面が少なくなかった。首相は「党首討論の歴史的使命は終わってしまった」とさえ言った。
 政府は20日、公文書改ざんへの処分強化などを盛り込んだ再発防止策を決めた。だが、問題の一因となった公文書のあいまいな定義や保存期間の見直しなど抜本的な対策には踏み込んでいない。事実上閉会した今国会では、審議されることもない。
 ≫(朝日新聞デジタル)


本当に日本人は流されやすいのか (角川新書)
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ファクトチェックとは何か (岩波ブックレット)
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憲法の良識 「国のかたち」を壊さない仕組み (朝日新書)
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●EUと日本の見識の違い 植民地の民主主義というもの

2018年07月21日 | 日記
日本の崩壊 (祥伝社新書)
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知ってはいけない 隠された日本支配の構造 (講談社現代新書)
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日米同盟のリアリズム (文春新書)
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●EUと日本の見識の違い 植民地の民主主義というもの

欧州委員会が、Googleに対して、独禁法に違反したと云うことで、5700億円という過去最大の制裁金を課した。昨年にも同違反で3200億円を課しているので合計で8900億円の制裁金になる。Googleによる寡占問題は、単に独禁法に違反すると云う水準を超えている可能性もある。独禁法の範囲を超えた、情報の独占は、個人情報の収集や、そのデーターベース化によって、振るいわけ仕訳され、分類化される恐怖さえある。

後半のエコノミストの記事によると、米国でも、Googleによる独占、独善的な態度に対して、異議を認める傾向があるようだが、かなり政治性を帯びた問題であり、理念的にGoogleへの危険性を指摘しようと云う動きには思えない。EUの理念は、米国による独善的支配に断固抵抗する意志が明確に現れているように見える。このような傾向は、遺伝子組み換え食品(GⅯ)への対応でも明確な態度が示されている。

我が国では、かくも簡単に種子法が廃止され、遺伝子組み換え食品(GⅯ)の抬頭が懸念される事態が起きている。稲・麦など主要食品が遺伝子組み換えがなされた種子を利用するしか方法がなくなる事態が、今そこに迫っているようだが、マスメディアの報道に危機感はない。無論、大きく報道されないのだから、世論がどうこう騒ぐこともない。しかし、EUが、その使用に強い制限を加えていると云うことは、理念的だろう。実利的には、育ちが早く、病害に強い種子による栽培は安直だが、安全性についてのエビデンスは充分とは言えない。

このような問題意識の根底には、善悪基準なのか、損得基準(市場原理主義)なのか、そう云う問題に置きかえることも出来るだろう。無論、詳細に語れば、もう少し話は複雑だろうが、前者が、人間基準で、後者が利益基準のように思えてくる。原子力発電の禁止に踏み切ったドイツの選択にも見られることだった。発電コストを考えれば、原発が有利かもしれないが(コスト高の指摘あり)、敢えて、コストが高くても再生可能エネルギーにシフトした。ネトウヨらは、ドイツ人は電力料金に殺されかけている等との風聞を流しているが、現地では本筋の議論ではない。

善悪と損得の鬩ぎ合いは、多くの場合、その時々の政治によって左右される。所謂、保守政党にとって、歴史的な経験値を覆すことは容易ではない。ゆえに、日本では、遺伝子組み換え食品に対する規制は、それなりに機能していたのだが、安倍政権によって、いとも簡単に覆された。旧態依然の体質から抜け出せないJAではあったが、歴史的経験値は守っていたのだと思う。しかし、米国の市場原理主義に押しまくられ、損得を選択した。安倍政権は、得だと思ったろうが、将来的に損に繋がることもあり得るのだが……。

この種子法廃止も、米国など多国籍種苗企業群からの圧力だろうが、米国圧力にヘナヘナな安倍政権が存在しているうちに、やっつけてしまうと云う意図が明確だ。水道民営化にも同じような問題が含まれている。ただ、不思議なことだが、遺伝子組み換え食品に対して、米国内ではアンチテーゼが盛んになっており、多国籍種苗企業群が窮地に陥っており、そのトバッチリを日本が引き受ける羽目になったと云う説もある。こうなると、まさに一周遅れの市場原理主義を一身に引き受け、ボロボロになる我が国なのか……、ゾッとする話だが、Googleは今夜も無料で、わが個人情報をせっせと掻き集めている。AMAZONもしたりだが、提供するサービスに勝てない我が身である(笑)

しかし、それにしてもだ、大局的にアメリカの植民地的立ち位置の我が国において、幻想とも言える“民主主義”が成り立つ余地があるのかと云う問題だ。特別、“民主主義”に恨みはないのだが、どうもアメリカと云う他国に支配されて国家の“民主主義”と云うものは、どう云うものなのかと考える政治的現象が増えてきている。もしかすると、国会は不要なのではないか?無論、国会議員も不要だし、地方の議員も不要だろう。米国執行官が頂点で、すべてを命じてもいいのではないか、そんな気分になってしまう。

まぁ、こんな気分になることが、“民主主義”にとって、最も危険なことかもしれないのだが、現状の事実関係をなぞっていくと、そんな結論が見えてくる。安倍晋三が行っている政治は、本筋で、アメリカに命じられたままのことをしているわけで、市場原理主義を導入しているのは、安倍の政治によるところとは言えない。安倍が個人的にしていることは、国家権力を利用して、ささやかにコソ泥のような行為をしているだけではないのか。単に、今までの政治権力者との違いは、コソ泥をしているかしていないかの違いだけではないのか?そんなことを考える。

安倍のコソ泥の件は別にして、アメリカの植民地的立ち位置の国家で、民主主義が成立するものかどうかと云う疑問は消えない。この辺りが、安倍内閣の支持率が岩盤的に低下しない原因なのかもしれない。最近の20代、30代、40代の人間は、生まれた時から、アメリカ支配の日本だったのだから、単なる生活者の立場からすれば、アメリカの言う通りするしかない日本だと云うことを自覚してしまっている人々なのだろう。彼らの考えが間違っていると言っても、いずれは、彼ら以降の人々が日本人になるのだから、団塊世代が口出す問題ではないのかと、フト思うのだが、間違っているのだろうか。


 ≪「OKじゃない」グーグル 欧州委が指摘した違反とは
 欧州連合(EU)の行政機能を担う欧州委員会は18日、米検索最大手グーグルが携帯端末向けの自社のアプリ(応用ソフト)を使うよう取引先に強要するなどし、EU競争法(独占禁止法)に違反したとして、43億4千万ユーロ(約5700億円)の制裁金を科すと発表した。欧州委が1社に科す制裁金では過去最高額だ。
 欧州委によると、グーグルはアプリやネット検索サービス市場での支配的な地位を使い、自社のスマートフォンなどの携帯端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を採用する携帯端末メーカーに、同社の検索エンジンアプリ「グーグルサーチ」と、インターネット閲覧アプリ「グーグルクローム」をあらかじめ搭載するよう強要したという。
 また、グーグルサーチだけを搭載することを条件に、携帯端末の大手メーカーや携帯電話会社に「奨励金」も払っていたという。欧州委はこうした要求で独占をさらに強固にし、他社のアプリの販売や開発を妨害したなどとしている。グーグルが欧州委の決定に従い、ビジネス手法を改めれば、アンドロイドを搭載するスマホなどを使う日本の利用者にも何らかの影響がでる可能性がある。
 ただ、グーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は「アンドロイドはすべての人に対し、より多くの選択肢を作り出している。(欧州委の決定に)異議を訴える意向だ」との声明を発表した。
 欧州委の調査では、欧州及び世界全体のスマホやタブレット端末の約8割がOSにアンドロイドを使う。グーグルは欧州の大半の国で、アンドロイド向けに提供されているアプリ市場や、検索サービスで90%以上のシェアがあるという。
 グーグルはEUの競争法違反で2017年6月、自社の商品比較サイトを不正に目立つようにしていたなどとして、これまで過去最高だった24億2千万ユーロの制裁金を命じられたが、不服として争っている。ほかにネット広告サービス「アドセンス」についても同様の調査を受けている。EUの競争法は、世界全体の売上高の10%を上限に制裁金を命じられる。
 ≫(朝日新聞デジタル:ブリュッセル=津阪直樹)


≪グーグル、米でもついに独禁法違反の対象へ?
ITの巨人に迫る包囲網  
「以前は、当社の言い分を聞いてもらうことなどまったくできなかった」──。
 こう語るのは、米口コミ情報サイト、イェルプ(Yelp)の最高経営責任者(CEO)、ジェレミー・ストッペルマン氏だ。同社は6年前からグーグルの検索結果の表示を巡って、この巨大IT(情報技術)企業と争ってきた。だが、ここへ来て米当局がグーグルに対する懸念を強めはじめている。
 ■米国でもミズーリ州がグーグルの独禁法違反調査に乗り出す
 11月13日、米中西部ミズーリ州のジョシュ・ホーリー司法長官が、同州が定める独占禁止法と消費者保護法にグーグルが違反していないかどうかの調査に乗り出した。起業家たちもストッペルマン氏のグーグル批判を称賛している。以前だったら、起業家たちがそんな行動に出るなど考えられなかったことだ。
 これまでグーグルへの逆風が吹いていたのは、主に欧州だった。今年6月には欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会(EC)が、グーグルにEU競争法(独占禁止法)に違反したとして24億ユーロ(約3200億円)という過去最高額の制裁金を払うよう命じたと発表した。
 グーグルが検索サイトでの結果表示順で、グーグルと競合するネット通販サービスを不利に扱ったというのがその理由だ。欧州でのグーグルの行為については、ほかにも独禁法違反を巡る調査が進行中だ。  米国はこれまでは、自国で生まれたこの巨大IT企業をさして問題視してこなかった。独禁法の監督当局の1つである米連邦取引委員会(FTC)が以前、数年かけて同社の反競争的行為の有無を調査したが、グーグルがサービスの在り方に若干の変更を加えることに同意すると、2013年1月にFTCの全5人の委員の賛成によって調査を打ち切った。
 ■複数の州で調査広がれば連邦政府が動く可能性も
 米国は今後、グーグルへの“特別待遇”をやめて、「独禁法上問題あり」として欧州と同様の方針を取るのだろうか──。この点について、米国の態度は既に変わったと考える理由が複数ある。
 その1つは、グーグルの消費者に関するデータ収集法に問題がないか、イェルプのような比較的小さな企業に対して反競争的行為をしていないか、精査を始める州が増えてきているという事実だ。
 ミズーリ州の場合、グーグルがホーリー司法長官の要求する情報を60日以内に提出しなければ、訴訟になる。
 2018年11月の米連邦上院議員選挙に共和党から出馬するホーリー氏が今回、グーグルへの調査を決めたのは、全米規模で注目を集めることにも目的があるかもしれない。巨大企業に戦いを挑むことは、自分の選挙にとってはプラスになるからだ。
 来年の中間選挙に向けて、ほかの多くの政治家も動きだしている。グーグルやフェイスブックなどの米SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手が、2016年の米大統領選挙でロシアによるSNSへの広告やコンテンツ掲載を使った情報操作工作をほとんど排除できなかったことから、米国の国益を損ねた、と信じている米国民は多い。
 グーグルについては、もっと調査すべきだと考えているのはホーリー氏だけではない。去年、首都ワシントンのカール・ラシーン司法長官とユタ州のショーン・レイエス司法長官も、FTCにグーグルに対する調査を再開するよう求めた。ほかの州にもグーグルの調査開始を検討している司法長官がいる。
 複数の州による調査が続けば、連邦政府に対しても調査を実施すべきだという圧力は高まる可能性がある。実際、かつてそういう事実はあった。1998年に連邦政府が米マイクロソフトに対して独禁法違反の訴訟を起こしたのは、複数の州の動きに押されたからだ、と指摘するのは当局と協力してマイクロソフトと対決した弁護士の1人、ゲーリー・リーバック氏だ。
 ワシントンには今、企業の独禁法違反に目を光らせる新たな一団がいる。いずれも昨年の大統領選挙でIT業界からはほとんど支援を受けずに当選を果たしたトランプ氏が指名したFTCなどの責任者たちだ。
 オバマ前大統領の場合、トランプ氏とは対照的にIT企業との結びつきは強く、中でもグーグルとは強力な関係を築いていた。特にグーグルの親会社であるアルファベットの会長を務めるエリック・シュミット氏は、オバマ大統領時代に私的な顧問として影響力をふるったことで知られる。
 オバマ氏との関係が近かったおかげで、グーグルは連邦政府による監視を免れてきたとみる向きは多い。ホーリー氏は、「オバマ政権はグーグルと多くの面で密接に結びついていたことから、FTCの調査はあまり独立性のあるものとは言えなかったかもしれない」と指摘する。
 ■独禁法運用強化に転じたとみられる米司法省とFCC
 トランプ大統領にFTC委員長に指名されたジョゼフ・シモンズ氏の前職は民間の弁護士だが、以前FTCの競争局長を務めたこともあり、厳しい独禁法の運用を進めるだろうとみられている。
 「共和党が政権の座にある限りシモンズ氏は何もやるまい、というのが大方の見方なら、大方の人は驚くことになるだろう」。こう語るのは、かつてFTCでシモンズ氏の同僚だったジョージ・ワシントン大学法科大学院のウィリアム・コヴァシック教授だ。
 グーグルなどのIT企業にとって独禁法を巡る不安要因はほかに2つある。企業間の競争問題を所轄する司法省が独禁法違反に対する監視の目を強めつつあること、そして連邦通信委員会(FCC)の存在だ。
 11月20日、司法省は米通信最大手AT&Tによる米メディア大手タイムワーナーの買収は独禁法違反になるとして、買収阻止を求めて提訴した。翌21日、今度はFCCが、オバマ政権が定めた「ネットワークの中立性」のルールを撤廃すると発表した。このルールは、ブロードバンド事業者にすべてのコンテンツを平等に扱うことを義務づけている。だが、このルールが見直されるとなれば、グーグルは傘下の動画共有サービス「YouTube」がゆくゆくは不利になるのではないかとの懸念を抱くかもしれない。
 ■米独禁法制の全面的強化も十分あり得る
 最大の問題は、この先、独禁法制の全面的強化があるのかどうかだ。米市場調査会社イーマーケターによれば、グーグルは米国におけるデジタル広告の約42%、ネット検索広告の約80%を占めている。
 これまでの独禁法の監督当局は消費者保護を旗じるしとしてきたが、IT巨大企業が提供している多くのサービスは無料なだけに、消費者の利益が侵害されていると証明することは難しい。
 だが、欧州委員会は、競争を阻害すること自体が消費者の利益を侵害することになるとの観点に立っている。グーグルはこれまでは米国の消費者や政治家による高い好感度に頼ってきたが、今後はもはや故郷の米国でも安心してはいられなくなりそうだ。
©2017 The Economist Newspaper Limited. November 23rd | From the print edition, All rights reserved.  
≫(日経ビジネス・The Economist)

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