世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

「小鳩新党」の可能性 暗中模索からフライング気味に分析

2011年07月27日 | 日記
悪党―小沢一郎に仕えて
石川知裕
朝日新聞出版


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「小鳩新党」の可能性 暗中模索からフライング気味に分析


09年マニュフェストの実現に向け、血の出るような努力もせずに、国会運営の為とはいえ、民主党の“髄”を野党に売り払う菅直人、岡田克也の選択は09年に民主党に期待し、政権交代を全面的に支持した有権者への裏切りであることは言うまでもない。

まして、09年マニュフェストを作った中心人物、小沢と鳩山を蚊帳の外においての決定は言語道断である。しかし、現在の民主党は政権交代時に、殆ど仕事らしい仕事もせずに、棚からぼた餅で権力を握った一部の民主党議員によって構成されている。その経緯を詳らかにするのは紙面の都合上省略するが、公明正大に民主党内の権力が移動したとは言い難い部分が多々ある。

元凶は東京地検特捜部の小沢一郎に対する捏造国策捜査の影響によるものだが、いわば火事場どろうぼう的幸運で現在の地位を得、死守しようとしている。思い起こせば、昨年9月の代表選寸前の「鳩山・菅会談」と「仙谷前原・菅会談」が現在の民主党の亀裂を決定的ものにしたのだろう。この時点で民主党は明らかに二分していた。この民主党の二分化は時限爆弾となるわけで、常に危うい権力の綱引きで政権が運営される運命にあった。

事が複雑になったのは、「仙谷前原・菅会談」で同床異夢だった勢力に齟齬が生まれたことである。それにとても政治家とは思えない発想(経産省・経団連)の持ち主、岡田克也が幹事長に就任した事で火に油を注ぐ大惨事になっている。平時でも危ない政権で、何をやらかすか判らない思考経路に、心ある人々はヒヤヒヤしていたに違いない。

そのような綱渡り政権運営の菅民主党政権に、311東日本大震災が襲いかかった。もうこれはひとたまりもない政権だろう、と多くの国民が考えたに違いない。ところが外国人からの政治献金で辞任しかないかと思われていた菅首相が息を吹き返した。余程の蘇生術を施されたらしく、勇気凛凛になってしまった。

野党自民党は大震災の復旧復興や原発処理を菅内閣に任せるわけには行かないと、堪らず衆議院に内閣不信任案を提出した。 ところが、この不信任案の提出は体たらく民主党内の造反を期待して行われたもので、主体的に行動を起こした不信任案ではなかった。自らの勢力と同等の民主党勢力・小鳩の造反を期待したものだった。造反の可能性は大いにあったのだが、またまた「鳩山・菅会談」で鳩山は騙され、造反劇を頓挫させた。

経緯はどうあれ、鳩山は“菅は辞めると言った”と主張し、菅は明確に言っていないと水掛け論。そこに同席した岡田が「菅さんはハッキリ言っていない」の一言で鳩山はピエロ同然に世間に晒された。 ところが岡田が理解した「一定のめど」までがあやふやになり、善意にとれば岡田も菅に騙されたと云う事態となった。

こうなって初めて民主党内は「菅降ろし」の狼煙を一斉に上げることになる。神輿に担いでくれた仙谷・前原・岡田らが寄ってたかって「菅は早期退陣を」と念仏のように唱えだした。小沢・鳩山はそもそも「菅は辞任せよ」だったのだから、菅首相の党内の基盤は一層脆弱なものとなった。しかし、一説によると、10%の議員の支持しかないと言われていたが、粘りを見せる菅は「脱原発の方向」を掲げて以降、20%程度まで回復しているそうである。 その上、痩せても枯れても菅直人は内閣総理大臣なのだ。調べれば調べるほど、議院内閣制の内閣総理大臣の力は絶大なものだ。ちょいやそいやに強制的なリセットや削除は無理なのである。

つまり、現在の民主党内では、マスメディアが報道するほど菅直人が窮地に陥っているわけではない。民主党内20%の支持と内閣総理大臣の権力があるのだから、侮れない。これによって、菅勢力、小鳩の勢力、仙谷前原らの勢力と云う、3層構造になっている。二分割から三分割になった。(小鳩勢力150:菅勢力70、仙前勢力70、その他)

そもそも、昨今の政治家は職業化しているので、議員でなくなった瞬間に路頭に迷う構図になっている。特に民主党の1,2回生議員はこの傾向が顕著だ。つまり、日々己の保身を基軸にグルグルと徘徊する事になる。ところが、突然民主党が与党になれた原因が、彼等が衆参国政選挙で勝ってきたからに他ならない。この浮き草のような議員達がいるからこそ、民主党は現在与党なのである。

或る意味で、右にも左にも靡いてしまう“愚議集団”を200人近く抱えていると見るのが妥当だろう。 こうなると、この200人近い“愚義集団”をどのように扱うかが最大の焦点になる。ゆえに、菅直人は自然エネルギーに激しく傾いたわけである。世論の動向に靡くことで、この“愚義集団”を取り込もうとしている。消費税増税が拙いと思えば、所得税、法人税、相続税にシフトする按配だ。

かたや小沢一郎も負けてはいない、この“愚義集団”の一人ひとりに懇切丁寧に時局を語り、叱咤激励とスキンシップに余念がない。 それでは、仙谷前原軍団の調子はどうかと云うと、彼らを“愚義集団”は危ない連中と思っている部分があるようで、既存の勢力の寄せ集めで対抗しようとしている。前原プラス野田プラスと云う按配で、思った以上に党内のイニシアチブを取るには至っていない。

唯一の拠り所が「次期首相候補NO1前原」だろうが、数%の誤差の範囲で、溺れる者の藁に近い状態だ。その弱点を補うために、将来的原発離脱とか、増税の時期ではないとか、世論迎合で菅直人に対抗している。 本来、前原などは外国人献金問題で直近に辞任したわけで、どう考えても一回休みの筈だったのに、その気満々になり出したようだ。

理由は色々考えられるが、筆者は次期民主党代表が民主党単独の最後の首相になる可能性が高いと踏んだのだろうと思う。それなら、民主党のエースの俺が首相にならずに誰がなる、と思うのは当然かもしれない。もう2年を切っている、今ならなければ一生なれない、そう焦るのもよく判る。

今、前原は、どうやって小鳩の支持を得ようか考えているだろう。消去法だが次期首相は俺しかいない筈、でも今までの経緯を思い出せば、このままで支持をお願いするわけにもいかない。09年マニュフェストを堅持する姿勢を見せない限り無理だろう。しかし、そうなると仙谷の存在が痛い。あれだけ反小沢を見せた仙谷と一緒になって、支持してくださいは虫が良過ぎるし、無駄骨に終わる。前原が仙谷・偽肛門らと袂を別った時、前原に初めて首相の芽が幾分見えてくる。 菅の党内の支持が20%程度と云うことと、菅直人勢力が20%になったと云うわけではないので、菅直人の次期代表支持表明などは両刃の剣で、代表候補は迂闊に受けることはないだろう。嫌菅に火をつけるようなものである。

ところで、肝心の小鳩勢力はどうする腹積もりなのだろう。前原が仙谷切りをしたとしても、迂闊には乗らない可能性が高い。陸山会関連の公判が有利な状況で推移し、小沢一郎完全無罪の判決が目の前に迫っていると云う状況で、何を仕出かすか判らない、菅以上に危険で稚拙な言動を繰り返す前原は民主党の崩壊を加速させるリスクの方が多いと読むだろう。投げ出し癖のある前原のことだ、嫌になったら即刻解散総辞職の可能性さえある。

ただ、小鳩勢力が現在の民主党の顔ぶれでの、今後09年マニュフェストを政策として実行する事は難しいのではないかと判断すれば、一時虚弱体質の前原を民主党の代表にしておく方が得策と云う考えはある。仮に、陸山会公判の答えが出た時点9月26日を境に、大政局が起きる可能性もある。判決が小沢一郎の公判も確定的に有利となれば、小鳩勢力は民主党を見切るかもしれない。前原率いる民主党の将来など全く展望が見えないからである。

10月、11月には小鳩勢力の蜂起は充分有り得る。“愚義集団”もその時は、前原民主党の命運が尽きる事を予感するだろう。小鳩勢力の民主党離脱は与党政権である立場が瓦解する時であり、将来どちらが保身に有利か“愚義集団”は必死で考えるに違いない。なんとも情けない話だが、それが事実だ。

小鳩勢力の蜂起はイコール「新党立ち上げ」であるが、“愚義集団”の動向いかんでは、一気に衆議院第一党となる可能性まで秘めている。 民主党と連立も組める、自民党との連立も組める、公明党その他で連立も可能になる。案外、自民党、民主党から雪崩を打って小鳩新党に靡きだすかもしれない。国家の一部権力により、政治生命を絶たれようとした小沢一郎と云う政治家が公式に復活する。否、政治生命を閉じ込められても、現在の影響力だ。これが解放された時、どんな爆発力を発揮し、どんな抵抗が生まれるか、今から筆者などはかぶりつきの指定席を購入しようと思うくらいだ。(笑)

唯一の懸念材料は、前原が09年マニュフェストの基調を崩さず、現実的な対応と、小沢や鳩山を背景とした党人事、組閣を行った場合、話は少々複雑になる。案外これが厄介だ。このような状況にならないことを祈るしかない。


官僚の責任 (PHP新書)
古賀 茂明
PHP研究所



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