
(乳幼児精神保健学会誌Vol.7 2014年10月より)
「絵本の力、生きる力~子どもと大人が共に育つこの世界へ~柳田邦男
「絵本の力、生きる力~子どもと大人が共に育つこの世界へ~柳田邦男
思いやりのある心の発達
子どもの心の中で起こる気付きや成長、そういったものは数限りなくありますが、もう2つほどお話します。思いやりのある心の発達という意味でこの「いもうとのにゅういん」です。
学校から帰った長女のあさえちゃんが家に帰ると、お母さんがいろいろと用意して高いお熱が出ている妹をつれて入院してしまう。残されたあさえちゃんは、1人で留守番をしなければいけない。お父さんは夜にならないと帰ってこない。どうしたら妹をなぐさめることができるだろうか、妹に笑顔を取り戻してあげられるだろうかと考えて、千羽鶴をおりますがどうも物足りない。そこで思いきって、自分が一番大切にしていた、ほっぺこちゃんというお人形を妹にあげよう。今までは妹もほっぺこちゃんが好きでときどき黙って抱っこしていたりするとお姉ちゃんに怒られる、よくある風景ですよね。兄弟げんかの元になってしまう。その大事にしていたほっぺこちゃんを思い切ってあげちゃおうと決断するんですね。そして翌日、お父さんに連れられて病院に行ってプレゼントすると妹がほんとに満面の笑みを浮かべて、「これくれるの?ほんと?」って大喜びするんです。そういう絵本です。
この絵本を読んだ荒川区の小学校2年生のまつざきゆいちゃんという子です。こんな風に書いてくれました。
やなぎだ先生はじめまして。わたしはいもうとのにゅういんをよみました。このお話にはあさえちゃんとあやちゃんがでてくるんだよ。あさえちゃんはあやちゃんのおねえちゃんでふたりはなかよしきょうだいなんだね。でもね、ある日いもうとのあやちゃんがびょうきでにゅういんしてしまうんだよ。わたしのいもうとも小さいころににゅういんしたことがあります。おかあさんはずっとびょういんにいるし、わたしはおいしゃさんにびょうしつにはいってはいけないといわれておみまいにもいけませんでした。いつもはわたしがべんきょうしているのにじゃましてくるいもうとがいやだなあとおもってはいましたけど、いもうとのにゅういんでいもうともおかあさんもいないおうちの中はとてもしずかにさびしくかんじました。いつもおかあさんといもうとと、夜いっしょにねるんですが、この日の夜はずっとひとりでねていました。とってもさびしかったです。あさえちゃん今度はえほんの話になりました。あさえちゃんはおみまいに行った時、自分が大切にしていたほっぺこちゃんをあげました。おねえさんらしくなったなあと思いました。わたしもあさえちゃんをみならいたいくらいです。かぞくってひとりでもかけるととてもさびしいです。わたしはこの本を読んでとても大切なそんざいだと思いました。これからもおとうさんおかあさんいもうととなかよく元気にすごしていくようにしたいです。
別れの悲しみと心の成長というので、とても感銘深い私自身の経験であります。
非常に素直で単純ですけれど、ちょうど小学校へ入ったころ妹はまだ保育園で手間がかかる。その辺りから姉と妹の衝突が起こりがちですよね。その中でこの絵本をかいして、妹に対する感じ方が変わって、他者に対する痛みの心を持てるようになる1つのきっかけになった。自分中心主義でなく他者の心の痛みやあるいは病気をする人に対する理解力が身についてきた。
時にはすごいことが起こるんです。これは6年生の女の子の話ですが、「なきすぎてはいけない」って内田麟太郎さんの書いた絵本があります。大好きなおじいちゃんが亡くなったあと、主人公の少年がさびしくてさびしくて、いつもおじいちゃんと一緒に散歩した田んぼ道とか、いろんなことを思い出してずっと泣いてばかりいた。6年生の鈴木みなみちゃんという子も、自分も大好きなおじいちゃんが亡くなった後泣いてばかりいたんです。でもこの「なきすぎてはいけない」という本を見た。内容はこの絵本の中の少年はあんまり1人で思いにふけっているうちに、どこからかおじいちゃんの「泣くということはすばらしいこと、そえは他人の辛さを理解する、素晴らしい心の持ち主だってことを示すことだ。しかし、泣きすぎてはいけない。なぜならわしはおまえが笑っている顔の方がずっと好きだからだ。泣くのは悪くないがそれより笑ってくれ」と天国からの声が聞こえてくる。そして少年が立ち直っていくという絵本なんです。そしてこれを読んだみなみちゃんがどういう手紙を書いてきたかというと、『自分はやがて恋をして結婚をし、子どもを育てるだろう。そして、年老いて自分もいつの日か旅立っていく、その時に自分は孫に泣いてほしくない。それより笑ってほしい。そう、願う』なんと、絵本を一冊読んで自分の結婚から老後のことまで考えちゃう。まあ、6年生くらいの女の子になるとすごいなあと思いました。」








