たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

2009年2月‐6月『ルーヴル美術館展』_17世紀ヨーロッパ絵画(6)

2017年11月23日 18時43分28秒 | 美術館めぐり
 ウィキペディアで画像をみつけられなかったのでまた文章だけとなり伝わりづらいですが、ようやく公式ガイドブックを振り返って心に留まった作品の解説を引用したいと思います。

「ペドロ・ヌーニェス・デ・ビリャビセンシオ
 (1635頃‐1695)

《ムール貝を食べる少年たち》

 1685‐1690年
 油彩、カンヴァス
 149×115㎝

 セビリアの画家、ヌーニェス・デ・ビリャビセンシオによる《ムール貝を食べる少年たち》についてのこれまでの解説では、画家が受けた影響の源を辿ることで、生涯におけるこの絵の位置が論じられていた。作品は、特にムリーリョから多くのものを負っている。ムリーリョは、よく知られているとおい、「黄金の世紀」と若い乞食とを結び付けてくれる。そうした乞食は、軽い媚びのようなものを含む甘美な様式で描かれた。本作品にも一抹の媚びを感じざる得ない。

 このような絵画は今日においてもなお、画家ヌーニェスに博愛主義的な意図があったと仮定させてしまう。街路で戯れる子供たちの貧困が、真実味をもって描かれているように見えるからである。だが、アンダルシアの紳士であり、「騎士」であるこの画家は好きで絵を始め、スペイン王カルロス2世の寵愛を得ることを望み、そして成就したのであり、幼き放浪者を描いた絵は単に興趣をそそる光景を目指したものにすぎないのかもしれない。ここにあるイメージは確かに貧困や飢餓を示唆している。それはぼろ着、地面で食べる簡素な食事、拾い物を疑わせる食材などによって明らかに示されている。これらによって、明らかに示されている。だが、このイメージは人工的な再構成物にすぎないのである。通りの上でも港(岸と遠くに見える海がそれを示唆している)でもなく、平穏にアトリエで描かれたヌーニェス・デ・ビリャビセンシオの絵は、画家が、貧困、つまりこの時代、スペインだけではなくヨーロッパにおいても人口の多数を占める人々が分かちもっていた負担を視覚芸術の中に描き込むにあたって、どのように苦心したかを示している。画家は、主題が本来持っている乱雑な汚さを拒否し、魅力的な対象をそこから描いている。これは感動や哀れみを呼び起こすものであり、恐怖や不快感を感じさせるものではない。しかし、すべての感情が貧困への凝視の中に混ざり合っている。甘さを売り物にするようなこの作品は、それを受け入れる市場の存在を証明している。」



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