たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

2018年『ルーブル美術館展』-「レンブラント」

2020年07月19日 16時19分11秒 | 美術館めぐり
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン(1606-1669)
《ヴィーナスとキューピッド》
1657年頃
油彩/カンヴァス
118×90㎝
絵画部門

実は50代のレンブラントを支えた内縁の妻と子供を描いているという解説でした。

28歳で出会った妻サスキアは、「夜警」の完成とほぼ同じ時期に30歳で、幼い末の子を残して病で他界。レンブラント、36歳の時でした。

レンブラントは、妻の死後、息子の乳母と関係を持ったり、家政婦を内縁の妻にしたり女性との仲が絶えなかったそうです。

「オランダ西部、ライデンの製粉業者の家に生まれたレンブラント少年には、3人の良き理解者がいた。勉強もせず、ひたすら絵とデッサンに明け暮れる息子を絵画の道に進ませようと決心した父親。光と影、明暗法による奥行きなどの技法を伝え、20歳に満たない弟子を、色調と明暗の配合によるドラマチックな画面づくりの虜にした師、ラストマン。そして新進の画家の才能を見出し、ヨーロッパ中に紹介した総督秘書官ハイヘンスである。3人の期待にこたえて、レンブラントは名声を獲得していく。25歳でアムステルダムに活動の場を移した画家。その未来を約束したのは、翌年描いた集団肖像画『チュルプ博士の解剖学講義』だった。当代最新の解剖学をテーマに、受講者が名士ばかりだったこの絵は評判を呼び、集団肖像画の注文が殺到するようになったのだ。

 多忙になったレンブラントは、さらなる幸運にめぐり合う。サスキアとの出会いだ。彼女と結婚し、人生の絶頂期を迎えるレンブラント。だが、最愛の妻は画家を残して30歳の若さで世を去ってしまう。そして、この時期の大作『夜警』を描き上げた頃から、画家の運命は次第に暗転していくことになるのである。

 「レンブラントが再婚した場合、息子ティトゥスに残した遺産は私の姉へ」。サスキアはこう遺言した。

 その妻の死後、息子の乳母ヘールトヘと愛人関係に陥ったレンブラントだったが、遺産を失うのを恐れてか結婚しなかった。その後、若い家政婦を愛し、ヘールトヘに婚約不履行の裁判を起こされる。ヘールトヘは精神のバランスを崩して施設へ。そして家政婦ヘンドリッキュは女児を出産。教会から不道徳をとがめられ出入りを禁じられるが、終生、伴侶として尽くし、晩年には内縁の妻として教会に認められている。ヘールトヘも自身の遺産をティトゥスに遺した。3つの人生は、一人の女の遺言に翻弄されたのである。」

(『週刊世界の美術館-アムステルダム国立美術館』より)



2020年7月17日;2018年『ルーブル美術館展』-「マリー・アントワネット」
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/e26be63e18364741739a46f04bfd29f0






「ここでレンブラントをイメージしながら絵画の根底にアプローチしたいと思う。シュポール(キャンパスなどをさす)とメティエ(技法)を切り離すことはできない。シュポールを丁寧に整えるために時間がさかれる。綿密な手順を踏みながら、舞台がかたちづくられてゆく。どのような絵を見るときにでも、創造を目指す行為のために経過した時間、画家の時間体験を思い浮かべてみる必要がある。時間も、画家の<生>も、作品に、シュポールに住みついているのである。その大小にかかわらず、作品とは空間そのものであり、それとともに、時間そのものだ。行為、制作、創意工夫、試み、ためらい、展望、想像力、記憶、モチーフ、見ることに集約された行為、技法を伝える手などが、作品に住みついているのである。

 作品とは、時間の経過のすべてを表現するものであり、持続的経過、たえまなしの試み、進行中の創造的行為そのものである。

 画家は描きつづけないわけにはいかない。一点の作品の制作にピリオドが打たれたとしても、作品はなおも持続的である。ある制作の終止符はつぎの仕事のスタート地点の確認といえるのではないだろうか。先へ先へ、はるかな地平へ、画家は突き進む。絵画はまことに意欲的で創造的な試み、このうえなく人間的なドラマなのである。なぜなら、芸術作品を体験するということは、疑いなく人間への回帰だからだ。そうした体験は人間の発見と理解、宇宙的な広がりをもつ世界そのものの発見と理解に深く結びついているといえるだろう。人間と世界との結び目に花開いた光景、それが絵画なのである。

 エッチングに見られるレンブラントの線、光と影、それらは微妙な状態で空間の表情を表現しており、驚くほどすばらしい。彼は自画像の人であり、各年代の自画像に年輪の深まりが見られる。彼ほど鏡と向き合った画家はいないだろう。なかでも「夜警」はレンブラントの最大の自画像であり、絵画史を彩る記念碑的な作品である。」

(山岸健『絵画を見るということ-私の美術手帖から-』より)




 『ロンドン・ナショナルギャラリー展』ではレンブラントの34歳の自画像に会うことができました。この世にいる間にオランダのアムステルダム国立美術館を訪れることはできそうにないですが、2018年の『フェルメール展』で「牛乳を注ぐ女」に会えたし、こうして来日してくれたレンブラントにたびたび会えることができているだけでも十分すぎるほど奇跡でありがたいことです。363×437㎝の「夜警」にはオランダまで行かないと会えないですけどね・・・。

2018年12月19日:2018年『フェルメール展』_牛乳を注ぐ女

https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/e809174918db11b05913f7c8c31e76f3