脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

側頭葉性健忘症Q&A

2019年01月14日 | 側頭葉性健忘

側頭葉性健忘症の家族の方から質問がありました。(このブログ右欄カテゴリーの「側頭葉性健忘」にも目を通してください〉
「その場その場ではとても適切で感情豊かな対応ができるのですが、そのやり取りなど新しい記憶が入っていかないのです」という側頭葉性健忘の説明に対して、家族の方から質問がありました
1.「すべて忘れているわけでもありません。覚えていることはしっかり覚えていて驚かされるほどです」
2.「時々忘れていたことを思い出すこともあります。朝はわからないのに夕方には思い出すことができることがありました」
河津正月桜。1/11にもう満開。

私の説明です。
「All or nothingというわけにはいきません。側頭葉性健忘症は『ざるで水をすくうように』記憶がとどまることなしに出ていってしまうという表現をよく使います。
それはざるの目よりも大きい記憶が残ることもあるという意味でもあります。ただ、何が大きな記憶になるかというと、それはわかりません」
下田市爪木崎水仙まつり。1/11

「むしろ、何が残るのかを詳細に観察してみると、一定の決まりがあるのかもわかりません。見つかるとおぼえこむ方策が一つ見つかったことになります。ただ私はそのようなことを今まで聞いたことはありません。つまりないのかもわかりません…」
黄水仙

「2も同様で『そういうこともある』という事実があるだけだと思います。この件についても1と同様に、詳細で緻密な観察の結果、何かがわかるかもしれませんが、その機序の解明はかなり難しいと思います」
伊東市松川湖畔の蠟梅。1/12

「分かったことを一緒に喜んであげることは、感情の交流という点でとてもいいと思いますが、そうしさえすれば、改善に直接つながるというふうに考えることは問題があります。脳の器質的な問題はそんなに簡単なものではありませんから。
『記憶が入らない』という事実にどのように対処するか、つまり、記録することを習慣化する方が患者さんのお役に立つと思います」だいたい以上のようにお話ししました。
その後、質問者から
「ざるで水をすくう。なるほどわかりやすい」という返信が届きました。よかった!
お正月用の鉢植えボタン。松江市大根島から届きました。

忘れてはならないことは前頭葉機能が万全だということが、側頭葉性健忘症の必要条件ということです。
記憶障害によって失敗を繰り返しいやな気分にさいなまれたり、またその時の周りの人の「また失敗して!」という言葉や態度によって、側頭葉性健忘症の方が自信を無くして、生活から積極性や好奇心をなくして行くことは容易に想像できます。その結果イキイキさや楽しみがない単調な生活になってしまうこともまた。
そのような生活は脳の老化を加速させます(廃用性機能低下)。その時最初に低下が起きてくるのは、前頭葉機能です。
記憶障害がすでにありますから、あっという間に中ボケレベルになってしまうのです。
前頭葉機能が発揮される環境を保証してあげることで、記憶障害を抱えたままでもその人らしい生活の保証ができることになります。そのためには当人も家族も大変ですが、認知症が進んでも本当に疲れます。そのことを思えば、がんばれるのではないかと思います。

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