
※写真よりも美しい映像で蘇ってます。
今回の映画レビューは、公開から35年。4Kでスクリーンで蘇ったロードムービーの傑作「バグダッド・カフェ」です。
ミニシアターの火付け役として知られ、リバイバル上映やDVDでの鑑賞でファンの多い名作バグダッド・カフェ。僕もずいぶん前にDVDで鑑賞してたのですが、すっかり記憶の片隅に追いやられてました。そんな矢先のタイミングで鑑賞できたのが4Kでレストアされ未公開部分も含めた本作です。
舞台はアメリカ西部の砂漠地帯に佇む寂れたカフェに場違いのドイツ人旅行者が訪れます。彼女の名はヤスミン(ジャスミン)夫婦喧嘩の末に置き去りにされた彼女の登場でカフェは活気付いていきます。
常に家族の行動や態度に不機嫌な女主人ブレンダ。やる気のない従業員、ボーイハントで遊びほうけている娘に幼い子を抱えながらピアノに夢中な息子、トレラーハウスに住む正体不明の老画家、カフェの私有地に住み着いたバックパッカーに、無口なタトゥーイストなど個性的な面々ときれい好きで朗らかなヤスミンとのふれあいがユーモラスに展開され、ほのぼのとする作品です。
また、原色が巧みに使われた映像美に数多くのアーチストがカバーする「コーリング・ユー」の名曲が流れ乾燥無味な舞台に独特な色味にメロディーを奏でています。
昨年3月に亡くなったパーシー・アドロン監督はより美しさを加えた本作を「あらゆる肌の色、バックグラウンド、信条の違いを理解し受け入れる温かさを描いた。この物語は、現代における癒しの源になるのだと感じたんだ」とメッセージを残しています。
どこか殺伐として未来の見えない世界にこの一石を投じるような希望の映画ではないかと僕は思うのです。