Various Topics 2

海外、日本、10代から90代までの友人・知人との会話から見えてきたもの
※旧Various Topics(OCN)

ガルブレイスの期待を裏切って

2010年07月25日 | 人物

経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスの、『ガルブレイスわが人生を語る』(日本経済新聞社2004)より抜粋:

「国防産業も軍需産業の強い影響を受けている。ジョージ・W・ブッシュ政権下で起きたイラクの悲劇も、企業経営と軍事パワーが結びついたことによって生じた。

マクロ経済政策では、企業の利益に配慮して、必ず減税が行われてきた。恩恵を受けるのは企業経営者などの富裕層である。こうした政策こそが、経済全体を浮揚させるのに役立つという考え方に基づいている。これも現在のブッシュ政権に受け継がれている。

しかし、私の考え方はこれとは全く異なる。所得配分が公平になり、需要の流れが安定的であればあるほど、経済は良くなると信じている。

ゆとりの少ない中間層や貧困層は、受け取った所得を確実に使う。そこに選択の余地はない。その意味では、需要の流れを生み出すという点では頼れる層と言える。

一方、富裕層はお金を消費に使うか、貯蓄して資産を増やすか、という選択史がある。貯蓄に回る分だけ全体の需要は制約されることになる。経済を支える役割という点では、必ずしも頼れる層ではない。恵まれない層に配慮した政策の方が、富裕層配慮よりも経済にプラスになるのだ。」

「民主党のクリントン大統領は教育や医療に目を配り、平和と安定をもたらした。クリントンとは彼がアーカンソー州知事の時代から面識があり、経済学についても語りあったことがある。非常に知的な男である。

大統領時代には、私に栄誉ある自由勲章を授けてくれた。ただ、共和党は企業重視、民主党は人びと全体の利益重視というように両党の政策が明確に分かれているわけでもないことも指摘しておかなければならないだろう。それが米国の政治の現実である。」

ガルブレイスのこの本は、2004年の日経の『私の履歴書』の連載を編集したものです。彼は2006年に亡くなっているので、サブプライムローンからリーマンショックまで見ないで済んだわけですが、ご存命だったら、これをどのように分析したことでしょうか。

それにしても、ガルブレイスが言う、富裕層優遇、民主党と共和党が実はそんなに大きく変わらない、ということは、このまま米国では変わることもないでしょう。

(ガルブレイスは、日本は米国と違うと思ってこの点では区別していましたが、残念ながら今の日本は米国の悪い面を”輸入“してしまっているようです。)

また、この本のなかの『日本への期待』という章で彼は、

「私が日本を見ていて一番うれしく思うのは、経済が軍事的な影響力から逃れている点だ。軍事にかかわらない分野だけで、強い経済を維持してきたということである。これはこのままでずっといて欲しいし、他の国々もこの点をみならってほしい。

唯一残念に思うのは、戦争の被害という多大な不幸を経験してはじめて、日本が世界平和を希求する国となれたことである。」

と書いています。

しかし、残念ながらこの点については、2005年から武器輸出三原則がなし崩しになってきていることもあり(日本の産業界の要請や、米国政府の要請)、心もとなくなっています。

今朝はニュースで『米国の要請を受けて、日本が迎撃ミサイルを第三国輸出も』http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010072502000063.html)

というものがありましたが、日本が最近大切なものを一つ一つ捨て去っているのではないか・・・という憂鬱な気分になっています。

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