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「裸の王様」支える「奴隷の勤労」

2023年02月15日 07時24分46秒 | 職場人権レポートVol.3
 
 
私の勤務する物流センターの部署でも、昨日からカゴ車ではなくカートで商品を仕分けする事になりました。「カートの方が小回りが利くので、商品をカートに積んだまま売り場に搬入出来るから」だそうです。
 
でも、カートはカゴ車とは違い、奥行きがないので、大きな商品を積むのには向いていません。特に農産物は、大きな段ボールで納品される商品が大半なので、そのままカートに積んだら商品がカートからはみ出てしまいます。
 
しかも、横幅が縦幅の3倍ぐらいしかないので、牛乳ケースのような立方体の箱でないと、3列にぎっしり積んで置いていく事が出来ません。写真の春キャベツのような長細い箱では、縦に置くとはみ出るので、横に置くしかありません。そうすると1列に7段ぐらいしか積めず、横に中途半端な隙間が出来てしまいます。その隙間を埋めないと収まりが悪くなり、商品が落下してしまいます。しかし、そんなに都合よく形の揃う商品が入荷して来る訳ありませんから、仕分けすればするほど、中途半端に隙間の出来たカートが現場にあふれかえる事になります。
 
その上、出荷ラベルの枚数はまだカゴ車積み付けを基準に発行されるので、10ケースぐらいだと1枚しか発行されません(15ケースぐらいになって始めて10ケースと5ケースに分割発行されるようになる)。10ケースを5ケースずつ2台に分けて積もうとしても、ラベルは1枚しかないので、2台のうちの1台は出荷ラベルも貼られずに出荷する事になります。これでは作業中に行方不明になってしまいます。
 
ラベルに合わせてカート1台に無理に収めようとすれば、もう写真のように縦に段ボールを積むしかありません。商品によっては、ネギやアスパラガスのように、天地無用(積み方に指定のある商品)の物もあるのに。これでは何も積めなくなってしまいます。
 
このラベル発行システムについては、所長から見直す旨の返事がありましたが、それで問題が解決する訳ではありません。前述したように、カートは非常に積載効率が悪いので、そのまま棒積みしただけでは、商品とカートの間に隙間が出来てしまい、商品が落下してしまいます。その為、落下防止の為に、運転手が全車ラップで巻いて配送車に積み込まなければなりません。お陰で、運転手はトラック1台配送するたびに、ラップのロールを持ち歩かなければならなくなりました。そのラップ代が既に百万円を超えたそうです。
 
これでは何の為にカゴ車からカートに変えたのか分かりません。店の都合だけで、積載効率の悪いカートに変えて、現場を大混乱させた上、百万円も無駄金使っていたら世話ないです。
 
 
そもそもカートなんて、少量多品種の商品をバラ仕分け・運搬する為の台車でしょう。そんなカートで、重くて嵩張る段ボールで梱包された商品を仕分け・運搬しようとしても、運びきれなくなる事ぐらい、誰が考えても分かります。(モノタロウのサイトに載っていたカートラックとカゴ車の上記写真を比較すれば一目瞭然)
 
いわば、宝石や時計のショーケースに、業務スーパーで売っているような玉葱やジャガイモの段ボールを、そのまま陳列するようなものです。「カゴ車だと嵩張り小回りが利かないのでカートに切り替える」のであれば、取り扱う商品の形状や仕分け方法も、それに見合う形に変えてから導入すれば良いのに。また、同じカートに変えるにしても、背もたれの仕切り板が付いたタイプにすれば、わざわざ百万円も出してラップを巻かずに済むのに。
 
カート導入の件は、半年ぐらい前から分かっていた事です。仮に、商品の形状を全て変える事は出来なかったとしても、背もたれの仕切り板のあるカートに変更するぐらいの時間は、充分あったはずです。なのに、何故それすらやらなかったのか?
 
目先の事しか考えていなかったからです。見てくれだけ取り繕う事しか考えていなかったからです。「店舗従業員の労働時間を減らさなければならない。だったら商品を売り場に直接運べるように、カゴ車からカートラックに変えれば良い。その結果、物流センターでどんな問題が起ころうとも、そんな事は店の知ったこっちゃない」。おそらくそんな感じで導入したのでしょう。
 
「日本人の働き方は、長時間労働の割には労働生産性が低い」と長年言われて来ました。それを改善する為に、働き方改革が導入されたはずですが、タイムカード上の労働時間削減ばかり気にして、社員のサービス残業や下請けの長時間労働は視野の外。だから、いつまで経っても長時間労働や過労死がなくならないのです。
 
むしろ逆に長時間労働を美化する傾向すらあります。労働基準法では、あくまで1日8時間労働が基準なのに、17時で定時退勤しようものなら、逆に「残業している同僚の仕事を手伝え」と言われる。そんな事しなくても良いように、全員が定時で帰れるようにするのが、上司や経営者の手腕なのに。
 
私に言わせれば、そんなものは「奴隷の勤労」でしかない。昔はどこの小学校にも二宮金次郎の銅像が建っていました。薪を背負って運びながら本を読んで勉強した二宮金次郎の銅像が。「お前たちも、あの銅像を見習ってよく勉強するのだぞ」。今、そんな事言ったら、逆に「児童労働を美化するのか」と問題になります。
 
ところが日本人は、いまだにこの二宮金次郎を美化する人がまだまだ少なくない。外国人が日本のそんな働き方を見て「ニホン、スゴイ!」と称賛するテレビ番組が受けたりするのですから。そりゃあ、長時間労働も過労死もなくなるはずがない。
 
このカート導入の件でもそうです。誰が見ても失敗するのが目に見えているのに、偉い人や親会社の命令には逆らえないと、何でも言いなり。まるで「裸の王様」そのものです。日本人は、北朝鮮のマスゲームの映像を観て、「あんな独裁国家に生まれなくて良かった」と思う人がほとんどですが、たかがカートの導入ひとつ再考を求める事も出来ずにいる日本人も、本質的には、あの北朝鮮のマスゲームに動員された人々と似たり寄ったりではないでしょうか。
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