アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

弱者を見殺しにする国

2011年03月20日 21時12分16秒 | 福島の犠牲の上に胡坐をかくな
 震災・原発事故関連ではまだまだ言いたい事が一杯ありますが、記事作成がそれに追いつきません。今回取り上げる内容についても然り。本日はもうこれで三本目の記事となるので、簡単に紹介だけに止めますが、はっきり言って、私の腹の中は煮えくり返っています。
 その内容というのが、厚生労働省が出した通達で、何と「震災や計画停電に伴う休業については、労働者に休業手当ての支払いをしなくて良い」というものです。これがその通達です。

・[平成23年3月15日・基監発0315第1号]
 厚生労働省労働基準局監督課長発・都道府県労働局労働基準監督課長宛
 「計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として(労働基準)法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと」
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/other/110316.html

 これでは、国が率先して企業に脱法行為をそそのかしていると、言われても仕方ないですね。派遣ユニオンが、現在この件で厚労省に通達撤回の申入れを行っています。これは私にとっても決して他人事ではありません。私の様な日払いや日給月給の非正規雇用労働者にとっては、休業というのは減収を意味し、失業・解雇にも繋がる事態なのですから。実際、同ユニオンには、派遣労働者からも次の様な声が寄せられています。

●事例1: 神奈川県・男性(大手派遣会社→自動車部品工場)
「3月12日から自宅待機。とりあえず3/20までと言われているが、材料が入ってこないため、その後の見通しは立っていないとのこと。ところが、派遣会社は『休業中の賃金保障ができるかどうか、会社の方針が決まっていない』と。もし賃金を保障してもらえなかったら生活できないので不安」

●事例2: 愛知県・女性(フルタイムパート/自動車部品検査)
「震災の日から23日まで休むよう言われている。その間の給与は出さないと言われている。検査は正社員だけでやるので、パートは休業とのこと」

●事例3: 東京都・女性(派遣/事務)
「地震の影響があるので休むよう言われた。派遣会社に『賃金の保障はあるのか』と聞いたら『ないと思ってくれ』と言われた」

●事例4: 東京都・男性(正社員/営業)
「地震発生のため新規事業の見通しが立たなくなったので今週いっぱい(3/18)で辞めてほしいと言われた。いま転職は難しいので辞めさせられたら困る」

 これが悲しいかな、この国の実態です。マスコミも、こういう事は絶対に報道しません。こういう現実を頬かむりしたまま、一方的に「現場の労働者かく奮闘せり」とか、「愛する人が亡くなって気の毒」とか、「今は原発建設の是非を論じている場合じゃない」とか、「この非常時でも日本では略奪も起こらず避難民がきちんと行列して配給を待つ」とかいう話ばかりを、これ見よがしに垂れ流されても白々しいだけです。

 私も、現場の第一線労働者の奮闘努力には敬意を評しますし、被災地の惨状には心を痛めます。私自身も阪神大震災の時には、神戸ほどではないにしても、同じ様な目に遭いましたから。だから、勤務先での震災義捐金募金にも、率先して協力させて貰いました。
 しかし、その現場の奮闘や、草の根の純粋な「挙国一致」の上に胡坐をかいて、自身の金儲けと今の地位を守る事にのみ汲々としている電力会社幹部や政治家については、これっぽっちも同情する気になりませんね。これは、今の民主党政権だけでなく前与党の自民党も含め、原発建設や新自由主義(格差社会化)を推進してきた政治家・財界人全てに言える事です。「津波は我欲に対する天罰だ」とほざいた石原慎太郎も含め、「お前らこそ天罰を食らうべきだ」「お前ら全員被災者に代わって人柱になれ」ぐらいにしか思いませんね。

 「今は原発建設の是非を論じている場合じゃない」?じゃあ、いつ論じるのか。そうやって、有無を言わさず原発を推進してきたからこそ、今の惨状を招いたのではないか。福島の原発にしても、過去に何度もその危険性(老朽化・低耐震性・活断層の存在)が指摘されてきた筈だ。その批判を今まで封殺しておいて、事が起こったら今度は「批判は後にしろ」とは、言う事が余りにも虫が良すぎる。
 別に「略奪して良い」とまでは言わないが、「きちんと行列作って」云々も「時と場合によりけり」だ。いつでも「男は黙って××」では、只の「長いものには巻かれろ」の奴隷根性でしかない。怒るべき時には怒らなければならない。それを今まで何でも言いなりになってきたからこそ、過去の戦争も、今の財界の金儲け至上主義や原発の安全軽視も、止められなかったのじゃないか。

 そもそも、今の政府の対策は、矛盾だらけじゃないですか。福島第一原発から半径20~30キロ圏内の避難民に対しては、圏外ではなく屋内退避の指示が出ています。しかし、震災・津波で住居や移動の足も奪われた避難民に対して、こんな指示が出た所で、一体どうしろと言うのか。これでは、配給も通信も途絶したまま、避難所で餓死しろというに等しい。
 こんな事は子どもでも分かる事です。それに対する言い訳がまたふるっている。「これはあくまでも念のための措置にしか過ぎない」(枝野官房長官)のだと。そうやって、「屋内退避を選んだのはあくまでも避難民の自己責任」という形で、姑息にも責任転嫁を図っているのです。

 

 姑息と言えば、「今の放射能濃度は心配する程の事は無い」「レントゲン照射や航空機内で浴びる放射能濃度よりも遥かに少ない」といった、判で押したような官製報道についてもそうです。一回こっきりの外部被爆で済むレントゲン照射や航空機での旅行と、放射能汚染地域からの脱出もままならず、毎日汚染された空気を吸わざるを得ない30キロ圏内避難民とを、同列に論じられる訳が無い。外国の在外公館が、既に当該国民に相次いで80キロ圏外への避難を呼びかけ、鳴り物入りではせ参じた米軍空母ですら、風上の同圏外に避難したという情報も、海外で報道されてから、ようやく国内でも報じられるようになりました。
 しかも、この国のこういう姿勢は、何も今回の震災に限った話ではない。過去にも、電力会社と結託して原発のデータを改竄したり、原爆被爆者認定においても二次被爆の影響を無視し続けたりと、挙げればキリがない。

 都内の計画停電にしてもそうでしょう。前日の夕方になってから唐突に言い出して、そこから時間割・区域割を決め始めて、病院などに伝わったのは深夜9時も回ってから。それで早ければ翌日早朝から停電されても、どうしようもない。しかも、荒川区などの下町地域から停電させて、都心の千代田区や新宿区は一番後回しにしたそうじゃないか。電力消費量は後者の方が遥かに多いのに。こんな露骨な弱者差別をしておきながら、自分の都合の良い時だけ「挙国一致」だの「批判は後でしろ」と言われても、誰が聞く耳を持ちますか。言う事がど厚かましいにも程がある。

 2005年にハリケーンで米国ニューオーリンズが水浸しになった時も、勝ち組はさっさと自動車で郊外に逃げおおせ、貧しい黒人やヒスパニック、プアホワイトに犠牲が集中した。今回の震災・津波についても、犠牲になったのはみんな、「脱北」もままならない地方の生活弱者じゃないか。こういう現実を抜きに、上辺だけの「挙国一致」を呼びかけられても、全然応える気にはなれません。こんなエセ「挙国一致」の名の下に、弱者の存在そのものを抹殺しようとする企みに対しては、こちらも「挙民一致」で抵抗していかなければならない。 
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5 コメント

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「弱者を」どころか「全員を」見殺しにするつもりじゃない? (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2011-03-22 19:26:43
http://www.youtube.com/watch?v=rMssj9rqXSQ&feature=related
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見殺しじゃなく、皆殺し!w (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2011-03-23 00:12:48
ヒトラー・ドイツとか、かつての軍国ニッポンもそうだったけど、破れかぶれの自暴自棄や無知の傲慢って、全員見殺し皆殺しに行き着いちゃうんだよね。弱者を見殺しにするだけじゃ済まず、弱者を手始めにして強者までも殲滅してしまう。東京大空襲や広島・長崎で犠牲になったのは弱者ばかりとは言えなかったでしょ。
つまり、「安全だから東京湾に原発を」みたいな暴言野郎は、ホロコーストの時限スウィッチみたいなものだってことですよ。東電幹部だとかナベツネ、石原、金正日みたいな連中は、カタストロフィーの導火線にもなり得るから危険なんです。

こういうゴーマニストどもを早く一掃したいね。
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嘲笑の的 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2011-03-23 20:24:14
http://www.chuden.co.jp/energy/nuclear/nuc_safety/taisaku/index.html

早く書き換えればいいじゃんよなぁwww
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原発の運転は自転車操業 (プレカリアート)
2011-03-24 08:53:59
http://www.chuden.co.jp/energy/nuclear/nuc_safety/taisaku/index.html(中部電力HP)
>原子力発電所の安全対策>何重もの安全対策

 ここに書いてある事が如何に「机上の空論」か、今回の事故でよく分かりました。
 まず第一に、如何に「何重もの安全対策」が施されていたとしても、それを作動させる為の電力や冷却水の供給が止まり、システム自体がダウンしてしまったら、全く意味を為さなくなる。
 そして第二に、原発そのものが緊急(自動)停止出来ない代物だという事。これが、例えば工場のベルトコンベヤーや電車・自動車などの「普通の機械」だったなら、いつでも緊急停止させる事が出来る。鉄道の場合も、ATSで事故はある程度防げる。しかし原発では、緊急停止によっても、原子炉内の核反応を完全に止める事は出来ない。炉心冷却によって幾分か反応スピードを減速させる事が出来るのみ。それも「暴発」の危険と隣り合わせの中で。

 言わば、幾ら水をかけても完全消火出来ない火種を抱えているようなもの。これでは、まるで自転車操業(倒れない為にずっと漕ぎ続けなければならない)じゃないか。
 そういう意味では、空中で緊急停止出来ない航空機と同じだが、少なくとも航空機事故には放射能汚染の危険は無い。しかし、原発は半永久的に放射能を出し続け、大地を汚染し続ける。
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「日本人は非常に貪欲で、使える空間を全て利用します」 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2011-03-25 14:51:31
チェルノブイリの尻ぬぐいにも携わったロシアの原発事故対策専門家・ユーリー・アンドレーエフ氏って面白い皮肉(↑↓)を言うよねw

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/iaea-e42b.html

日本の電力会社は、使用済み燃料棒の行き先探しで頭抱えてるって、以前から世界中で評判だったらしいですよ。
原発告発やってた鎌田慧氏の本や7~80年代の「前衛」誌、捨てちゃったの失敗でしたわ。
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