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2016年05月07日 18時50分59秒 | 職場人権レポートVol.3
 遅くなりましたが、4月28日(木)の午後から本社で行われた業務改善発表会「改善大賞2015」の報告をしておきます。
 この業務改善発表会も、今年で4回目になります。当日は、138件の応募総数の中から、12の業務改善事例が選ばれ、「改善大賞2015」において、それら12事例のプレゼンテーションが行われました。この12事例には、「改善賞」として5千円の商品券が、受賞者全員に贈呈されました。
 そして、この「改善賞」の中から、会場参加者による投票によって、2つの「優秀改善賞」と1つの「改善大賞」が選ばれ、「改善大賞」受賞者に3万円相当の賞品が贈呈されました。「優秀改善賞」の賞金額については分かりませんが、やはり、それ相当の賞品が授与された事でしょう。

 私の改善事例は、残念ながら「改善賞」には選ばれましたが、「改善大賞」の受賞までには至りませんでした。
 私は、当日はトップバッターとして、先の記事に書いた原稿の内容で発表しました。発表では、途中で上がったりトチッたりする事もなく、持ち時間をオーバーする事もなかったので、「これは、ひょっとしたら改善大賞も狙えるかも!」と思ったのですが、現実はそんな甘くはありませんでした。後で述べるように、「LED投光器設置で夜間の整備作業も可能に!」「ベトナム語の作業トレーニングVTRを作成しました!」など、私とは比べ物にならないほどレベルの高い改善事例が、後から次々と紹介されて行きましたから。これでは勝負になりません。
 でも、他の提案者は全員、部課長クラスや所長などの役職者だった中で(男女ペアで登壇した発表者の中に一人女性のパートがいたらしいですが)、唯一、非正規雇用の契約社員に過ぎない私が「改善賞」受賞にまでたどり着いた事で、「役職者による独占状態」を打ち破る事が出来て気持ち良かったです。



 当日プレゼン会場で配布された改善事例集にも、私の事例が掲載されました。
 該当ページのコピーを作業場の壁に掲示していますので、職場読者の方は是非ご覧下さい。

 私のプレゼンテーションの内容については、今まで何度も書きましたので、もう詳細については省きます。ここでは、それ以外のプレゼン内容の中から、興味深いものを幾つか紹介していきたいと思います。

 まず一つ目は、大阪港の倉庫を間借りした整備工場の改善事例。この整備工場では、私の勤務先グループ企業で扱っているトラックやフォークリフトの整備を請け負っていました。ところが、港湾の倉庫街にあるレンガ造りの古い倉庫を整備工場として使っていた為に、夕方になると、もう周囲が薄暗くなって作業が出来なくなり、業務を翌日回しにしていました。
 そこで、整備工場のリフォームに着手する事になりました。まず、倉庫の屋根を引きはがして、明かり取りの天窓を大幅に広げました。そして、工場の内部や周辺のあちこちにLED投光器を設置し、夜間も業務ができるようにしました。また、固定式の投光器とは別に、ドラム缶を改造して、移動式の投光器付き作業台も2台作りました。そして、ドラム缶にイラストを施し、それぞれ「ガチャピン」「ピカチュウ」と愛称で呼ぶ事にしました。それが下記の写真です。「改善大賞」に選べるのは1人3事例までなので、最終的に投票には至りませんでしたが、なかなか面白いプレゼンでした。



 二つ目は、ある物流センターの事例です。その物流センターでは、出荷や在庫管理についての統一したルールが、全くと言ってよいほど整備されていませんでした。
 驚いた事に、ロケーション(棚割り)すら組んでいなかったので、商品の収納も行き当たりばったり。大口の商品も小口の商品も、全部一まとめにパレットに積んでいたので、後で商品を探そうにも、どこに何があるか全然分からず。また、袋詰めに加工して出荷しなければならないのに、その袋詰めの手順すら決められていませんでした。それどころか、袋詰め用の袋や空箱すらないので、まだ在庫で置いておかなければならない商品まで、無理やりバラして空箱を確保しているような状態でした。
 これでは、もはやマニュアルやレイアウトを整備する以前の話です。ところが、それを改善しようとしても、物流センターのオーナーがなかなかウンと言わないのです。オーナーとしては、昔は自分たちがやっていた業務に対して、下請けの我が社からあれこれ言われる事に、我慢がならなかったのでしょう。
 しかし、我が社も負けてはいません。「それでは仕事になりません!」と、時にはオーナーにも強面で臨み、ついにオーナーからセンターの改造資金を全額引き出す事に成功しました。そうして、ようやく抜本的なシステム改革に着手する事が出来て、今では見違えるほどスムーズに仕事が回るようになり、オーナーからも全幅の信頼を得る事が出来るようになりました。
 ともすれば、「我々は下請けの作業会社だから」「オーナーには頭が上がらないから」と、卑屈な奴隷根性に絡め取られて、業務改善に全然取り組もうとしない。そんな例を今まで嫌と言うほど見て来た私でしたが、「中には、そんな気骨ある事業所もあったのか」と、この会社を少し見直す契機になりました。自分のプレゼンに投票後、まず、このプレゼンに一票を投じました。



 三つ目は、中部地方にある生協物流センターの事例です。その物流センターでも、今の私の職場と同様に、多くのベトナム人が、パートやアルバイトとして働いていました。そのベトナム人のパート・バイト向けに、作業用トレーニングのVTRを作りました。(下記写真参照)
 VTRを制作する際には、近畿地方の生協にも出かけて行って、作業の様子を見学して来たそうです。それを参考にして、VTR動画の基になる絵コンテの制作から始めて行ったそうです。必要なシーンを全部絵コンテに収めた上で、アニメを作る要領で動画を編集し、その動画にナレーションやテロップを入れ、ちょうどテレビニュースの画面みたいな感じに仕上げていったそうです。
 同じベトナム人バイトの教育でも、こちらは動画仕上げ。方や、私の方は、ただ日本語の作業マニュアルの漢字にルビを打っただけ。いわば、紙芝居のようなものです。動画と紙芝居では、到底勝負になりません。やはり現実はそんなに甘くはなかった。私は最後の一票をこの事例に投じました。



 このようにして、12事例の発表が全て終わった後、「優秀改善賞」と「改善大賞」の選考が行われました。その結果、「優秀改善賞」に、二つ目のオーナーに強面で臨んだ事例と、三つ目のベトナム人向け作業用VTRを作った事例が選ばれました。しかし、「改善大賞」には、そのどれでもない、全く予想外の事例が選ばれる事になりました。

 それが四つ目に紹介する食品加工場の事例です。この食品加工場では、手巻き寿司のパック詰めや精肉のトレー詰め食品を製造しています。この加工場では、数年前にアクリフーズ群馬工場で起こった農薬混入事件を教訓に、食品への異物混入を防ぐ為に、「作業着のポケットには何も入れるな」と、更衣室のロッカーの鍵も持ち込めなくなりました。
 そこで、ロッカーを鍵式からダイヤル式に替えようとした所、ロッカーの台数が圧倒的に足りない事が分かりました。派遣社員も含めて600名からの従業員がいるのに、320人分のロッカーしか無かったのです。
 それを機に、ロッカーを個人別使用から共有に変え、勤務中しか使用できないようにしました。退勤したらロッカーを次の出勤者に明け渡すようにしたのです。では、勤務中に着ていた作業着はどこに収納するのか?それは、自分の名前が書かれたネームバンドを付けて、外のハンガーに吊り下げるようにしました。そして、ロッカー使用時も、自分の首にかけて吊り下げていた名札をロッカーのドアに挟むようにして、誰が使用しているか一目瞭然になるようにしました。
 その結果、ロッカーの占有もなくなり、より少ない台数でロッカーを効率的に使用できるようになりました。そして、作業着と私服や私物の置き場を完全に分離する事で、私服に付いたホコリなどが作業着に付着して加工場内に持ち込まれる「交差汚染」も防げるようになりました・・・という事例です。



 この異物混入防止の事例が、タイムリーな改善例、推奨事例として、「改善大賞」に選ばれました。
 しかし、私は、この報告に対して非常に違和感を感じました。何故なら、アクリフーズの農薬混入事件も、「鬼の製造課長」による暴力的な労務管理が背景にある事が、当時の週刊誌の報道でも明らかになっていたからです。以下、当時の私のブログ記事から引用します。

●アクリフーズの旧社名は雪印冷凍食品。元々は雪印本社の冷食部門だったのが、グループ会社の食中毒事件を機に子会社化を経てマルハニチロの系列に。
●4年前にマルハ本社から出向してきた製造課長が大幅なコストダウンを断行。それまで牧歌的だった社風が急に殺伐としたものに。
●ラインの回転が速くなり、あわただしくなった。各ラインの実績が張り出され、破損個数を何個出したか反省文も提出させられる様に。
●残業も月80時間超に(←厚労省が過労死ラインとして労災認定の目安としているレベルでもある)。ノイローゼになり辞めていった人も。
●1日2000円の早番手当、同1000円の遅番手当、皆勤手当、有休買上げ制度、準社員の退職金も廃止に。時給は820円から900円に上昇も、全体としては大幅な賃下げに。(また別の情報では、昔あった年間10~20万円の賞与も廃止に)
●この製造課長が曲者で、機械のトラブルがあったりすると、工場内に響き渡る様な大声で「何やってんだ!」と。工場長も実際はこの課長の言いなり。去年4月に課長が異動になって以降も体質はさして変わらず。

 このような労務管理上の問題も指摘されていたのに、上記の改善事例では、その事には一言も触れず、「異物混入防止対策」だけに矮小化してしまっています。まあ、所詮は営利企業による業務改善のプレゼンなので、労務管理の問題にまで立ち入る事は出来なかったのでしょう。

 同じ事は、次の五つ目に紹介する時間外労働削減の取り組みについても言えます。本社内に時間外労働削減チームを立ち上げ、従業員に時間外労働の報告書を提出させて、削減を迫っていったという取り組みです。一応、厚労省が「過労死ライン」として労災認定の目安にしている月80時間以上の従業員に、重点的にアプローチをかけていったそうです。ところが、報告の中身はと言うと、とにかく「残業時間数の削減まず先にありき」で、その為には「残業は悪であるという意識を従業員にまず持ってもらう」と、精神論に逃げ込んでしまっています。
 しかし、誰が好き好んで残業なんかしますか?誰しも、早く仕事を終えて帰りたいです。その為には、個人の意識変革だけでなく、人手不足の解消や業務改善などの具体的なアプローチが必要です。では具体的にどういう手立てを取ったのか?それが、この取り組みには一切書かれていませんでした。私は、この報告を聞いて、「『臭い物に蓋』の典型的な事例だな」と思いました。

 もちろん、それでも、このような業務改善のプレゼンや交流会は大いにやるべきです。それが今まで何もされて来なかったからこそ、取りあえず目の前のノルマを消化する事ばかりに追われ、仕事の作業精度もモチベーションも上がらなかったのです。しかし、せっかくのこの取り組みも、ただ単に「プレゼンの為の改善」に終わっていては何の意味もありません。
 具体的に一つ事例を上げます。このプレゼンの数日後に、私の職場でこんな事がありました。
 取り扱い品目の増加に伴い、一部の曜日については、別の場所で農産物の仕分けをする事になりました。ところが、そのレイアウト変更の連絡が農産加工センターの方に伝わっていませんでした。仕分け予定の商品が、以前の置き場に置かれたままになっていました。そこで、まずは、置き場所変更の注意書きを、以前の置き場に貼っておきました。しかし、それでも伝わらなかったので、今度は注意書きの漢字に全てルビを打ってみました。ところが、それでも伝わりませんでした。

 おそらく外国人のアルバイトが、私の注意書きを読めずに、以前の置き場所に仕分け予定品を持って行ったのでしょう。実際、後で加工センターの職員に確認すると、やはり日本語を全然理解できず、カナも読めないベトナム人が二人いるようです。その二人は、他の人から「チンプン」「カンプン」と、あだ名で呼ばれているようです。二人合わせて「チンプン・カンプン」コンビです。
 そんな状態を放置しておいて、「一体何が業務改善か?!」と思います。日本語を全く理解できない人をなぜ安易に採用したのか?そして、採用しておきながら、なぜそんな状態で今まで放置して来たのか?もう、ここまで来たら、「業務改善が出来ていない」どころの話ではありません。立派な人権侵害です。

 そこで、私の方で、日本語・ベトナム語の両方で書かれた注意書きを用意しました(下記写真)。機械翻訳によるベトナム語なので、どこまで通じるか分かりませんが。念の為に、私の職場のベトナム人留学生バイトにも見てもらいましたが、何とか意味は通じるようです。お陰で、今日は何とか上手く行きました。
 言葉も満足に通じない職場で放置されたら、誰だって自暴自棄になりますよ。それで、もし「チンプン」と「カンプン」が会社を恨んで、アクリフーズの農薬混入や東京・秋葉原の無差別殺傷事件みたいな事を起こしてしまったら、一体誰が責任を取るのでしょうか?「異物混入対策」よりも、むしろ、こちらの対策の方がよっぽど重要ではないでしょうか。

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