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資本主義の貧困大国アメリカに広がる社会主義の波

2016年02月21日 21時46分26秒 | その他の国際問題


 前回記事の最後でつぶやいた上記ツイートの内容について改めて説明します。

 まず「今まで米国大統領選なんて茶番劇とバカにしていた」理由について。
 知っている人もおられるでしょうが、米国大統領選挙の仕組みは大変複雑です。単純に国民の直接投票によって大統領が選ばれる訳ではありません。

出典:オール・アバウト

 米国は二大政党制の国です。4年に一度、同時に行われる大統領選挙と上下両院選挙に出馬できるのは、事実上、民主党か共和党の人物に限られます。その他にも政党は一杯あるにはありますが、どの党も泡沫政党ばかりです。
 その二大政党の中で、各州の党員集会や予備選挙で最も多くの代議員を獲得した候補者が、その党の全国大会で大統領候補に選ばれます。そこまでが前半戦です。そして後半戦では、いよいよ二大政党の候補者二人による選挙が行われますが、そこでも有権者が選べるのは、あくまでも「大統領選挙人」という代議員だけです。誰を大統領に投票するかあらかじめ分かっている「大統領選挙人」が各州で選出され、その「大統領選挙人」同士の投票で、ようやく次期大統領が誕生します。

出典:同上

 なぜ、米国の大統領選挙がこんな複雑な仕組みになっているのか。それは、米国は国土が広く、連邦国家で各州の独立性も強いので、直接選挙ではなく州ごとに間接選挙を行うようになったのだと、よく言われています。しかし、馬車しか移動手段のなかった米国建国当初ならいざ知らず、航空機もあるこの21世紀に、なぜいまだにこんな昔の制度に固執しているのか。本当は、財界や軍需産業をバックに持つ政治家が、今まで通り政治を独占したいからです。
 この米国大統領選挙の問題点については、(1)二大政党以外からの立候補には様々な制限が加えられ、事実上、二大政党による政治のたらい回しになっている。(2)「大統領選挙人」の選出についても、最多得票の陣営がその州の全ての選挙人を獲得してしまう「勝者総取り方式」を採用している為に、場合によっては、総得票では上回っているにも関わらず、選挙人の数で負けて敗北してしまうという点で、極めて不公平な制度である。(3)その為に、「勝てば官軍」とばかりに金権選挙やネガティブキャンペーンが横行。(4)米国では住民基本台帳に相当するものがないので、有権者は選挙のたびに選挙登録をしなければならない・・・など、さまざまな弊害が指摘されてきました。
 そんな理由から、近年では米国大統領選挙の投票率も4割から5割に低迷し、選挙どころではない貧困層はほとんど投票にも行かなくなってしまっています。それが「茶番劇とバカにした」理由です。

出典:ウィキペディア

 そんな米国大統領選挙が今年も始まりました。今はまだいくつかの州で予備選挙が始まったばかりで、今度どうなるかまだ分かりませんが、今までと少し様相が違うようです。
 共和党陣営では、「メキシコ国境に万里の長城を築いて不法移民を入国させないようにする」「イスラム教徒は入国させない」などの発言で、保守強硬派から熱狂的に支持された不動産王のドナルド・トランプ(上の左端写真)が、保守乱立のあおりを受け、まさかの首位脱落。
 その一方、民主党陣営では、今まで最有力と目されてきたオバマ路線継承の元国務長官ヒラリー・クリントン(同、真ん中の写真)が、社会主義者を自称する高齢のバーニー・サンダース(同、右端写真)の猛追で、予想外の苦戦。民主党陣営内では、この二人がデッドヒートを繰り広げています。

 その中で私が注目するのは、何と言ってもバーニー・サンダースです。資本主義の総本山とも言える米国で、社会主義者を自称する大統領候補が、二大政党の一角から出て来て、首班指名を争う事なぞ、今までなら考えられませんでした。前述したように、米国にも共産党や社会党はありますが、いずれも泡沫政党で、市町村議会の選挙ですら当選する事ができない状態にあります。
 米国とはそんな国なので、先進国なら大抵の国にある公的な健康保険制度ですら、「社会主義」「アカ」の象徴のように思われ、導入に反対する人が大勢います。その為に、民間保険に加入できない貧困層は、盲腸の手術一つ受けるにも百万円以上も払わなければならず、その費用が払えない為に命を落とす人が後を絶たないのです。
 マイケル・ムーア監督の映画「SiCKO(シッコ)」には、そんな話が一杯出てきます。仕事中に指を2本切断した大工が、薬指だけなら1万2千ドルで縫合手術が受けられるが、中指も含めると7万2千ドルかかると言われ、中指の縫合を諦めざるを得なかった話とか。


映画「SiCKO(シッコ)」の宣伝パンフレットより

 ところで、日本の現状はどうでしょうか。一応、公的な健康保険制度はありますが、以前は1割負担だった保険料が今では3割に引き上げられました。国民健康保険に至っては、年収200万円以下のワーキングプアや無職の人間でも、月に4~5万円もの保険料を払わなければならない仕組みになっています。でも、現実にはそんな高額な保険料なぞ払える訳がありません。この日本にも、そうやって病気になっても医者に通えない人が大勢います。現に、私の会社のバイトの中にも、ひざが痛いのに医者にも通えず、我慢して仕事を続けている人がいます。
 前回記事で取り上げたサンダースの演説の中にも、せっかく大学を卒業できたのに、低賃金で不安定な仕事にしか就けずに、奨学金の返済に苦しむ若者の話が出てきます。これなぞも、今の日本の現状と何も変わらないじゃないですか。とても他国の事とは思えませんでした。

 幸い日本では、米国とは違い、かつては社会党が野党第一党として大きな力を持っていました。そして、社会党が衰退した今も、共産党が一定の力を持っていて、戦争反対や格差是正の要求を掲げて、安保法制や弱肉強食の経済政策を進める自民党や財界と対峙しています。
 でも、今の共産党の演説を聞いていると、教育費の問題一つとっても、せいぜい「学費値下げ」どまりの要求に留まり、サンダースのような「公立大学の無料化」までは主張していないのではないでしょうか。

―多くの人々が立ち上がって”バーニーさん!大学行ったんだ、大学卒業したんだ、で、今、6万ドル、8万ドル、9万ドルの借金を抱えている”とおっしゃるのを聞きました。
 狂ってる。これは狂ってる。彼らはまともな教育を受けようとしただけです。罰せられるべきではない。これこそが 2016年に、公立大学は学費無料になるべきだと信じる理由です。この主張に対しては私の批判者たちはこういうでしょう「バーニーさんよ、そりゃいい考えだ。タダだってね。でもどうやって財源を確保するの?」と。財源の確保をどうするか言いましょう。ウオールストリートの投機筋に課税すりゃいいんですよ。貪欲で無軌道で不法なウオールストリートの振る舞いは、この国の経済を無茶苦茶にしました。国民はそのウォールストリートを助けたんです。今度は、ウォールストリートが中流層を助ける番です。(以上、アイオワ州予備選でのバーニー・サンダースの演説より)

 このサンダースが言うように、若者が知識を身に付け、立派な社会人として貢献できるようにする為には、少なくとも国公立大学については、どんな貧困層の学生でも通えるように、学費は無料にすべきだと思います。それは「バラマキ福祉」なんかではなく、むしろ将来への教育投資として積極的に推奨されるべきものです。そして、大学だけでなく公立高校の学費や給食費も無料にすべきだと思います。その為の財源は、小泉構造改革やアベノミクスによって今まで散々美味しい思いをして来た奴らが負担すれば良いのです。内部留保をため込んだ大企業とか、ワイロをもらった大臣とか、己は株買い占めに奔走しながら国民には偉そうに「戦場に行け」とほざくネトウヨ議員や、不倫で育児休暇を申請するような議員、黒人差別するしか能のないタレント議員などからドンドン取り立てたら良いのです。
 そこまでハッキリ言ってやってこそ、初めて、日本の国民もようやく権利意識にめざめるようになるのではないでしょうか。ところが、「学費値下げ」どまりの要求や公約に留まっていると、安倍首相も表向きは「子育て支援」とか、一見似たような事も言っている中では、逆にアベノミクスに取り込まれてしまうおそれがあります。同じ「子育て支援」なら、「野党の共産党より与党の自民党の方が頼りになる」と考える有権者がいてもおかしくはありません。

 もちろん、安倍が本心ではそんな事なぞツユほども考えていない事は明らかです。「大日本帝国の復活」しか安倍の頭の中にはありません。マイナス金利なぞという禁じ手に安易に頼ってしまうのも、アベノミクスが本当に景気浮揚や国民生活の事を考えて採用した経済政策ではなく、単に自民党が選挙に勝って憲法改正しやすくする為に、国家予算をつぎ込んで無理やり一時的にバブルを演出しているだけだからでしょう。
 でも、そこまで見抜く事のできる有権者はそう多くありません。そんな中で「学費値下げ」や「格差是正」だけの要求に留まっていると、共産党の意図とは逆に、アベノミクスの土俵に取り込まれてしまうだけではないでしょうか。だから、警鐘を鳴らす意味も込めて、「共産党よりもサンダースの方がよっぽど革新的ではないか。そんな事ではいつまで経っても安倍や橋下には勝てないぞ」と書いたのです。

 もちろん、サンダースとて完璧な人物ではありません。それどころか、彼が「社会主義者」と自称している点についても、私はどこまで本当か危ういものだと思っています。格差是正の世直しを主張するだけで社会主義者になれるのでしたら、安倍や公明党やナチスですら社会主義者になってしまいます。自民党の別動隊呼ばわりされた、かつての民社党も、表向きは「民主社会主義」を唱えていましたし、ナチスも「国家社会主義」を唱えていました。かつてナチスが引き起こしたホロコースト(ユダヤ人大虐殺)や第二次世界大戦、かつて日本の政府・軍部による韓国併合や2.26事件や太平洋戦争も、建前上は「失業者や貧しい労働者に職とパンを与える為に、それに見合う資源と領土をよこせ、金持ちの不労所得を没収せよ」と言って始めたものです。

―私は、以前、上院復員軍人委員会の委員長を務めました。そしてその職掌として、復員軍人の権益を守るために粉骨砕身しただけではなく、我々と我々の生活を守るために貢献した沢山の人々とお会いすることができました。そうした軍人たちが守ってくれたアメリカの民主主義は、一人一票であって金持ちが選挙を買収することではないはずです!(同上のサンダースの演説より)

 一見何の変哲もない、サンダースのこの演説の中にも、その危うさが見て取れます。サンダースの言う「軍人たちが守ってくれたアメリカの民主主義」によって、北米大陸の先住民や中南米の人々、広島・長崎の被爆者、フィリピンやベトナム、アフガニスタン、イラクの人々、米国の核実験場にされた南太平洋の島々の人々がどんな目に遭わされたのか。それを少しでも知っていたら、本当の社会主義者ならこんな言葉は吐けないはずです。

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 しかし、たとえ、そのような限界があったとしても、なお、サンダースの演説には、日本の共産党の演説にはない、ある種の力強さや人を引きつける何かが宿っているように思えます。その何かが、ひょっとしたらヒトラー張りのデマゴギーである可能性もないとは言えませんが。その魅力があるからこそ、今まで誰も格差是正の主張には見向きもしなかった資本主義大国の米国においても、史上初めて「社会主義者」の大統領が誕生する可能性が出てきたと言えるのではないでしょうか。
 これは日本にとっても他人事ではありません。かつて「天安門事件」や「ベルリンの壁」崩壊が起こった時に、「資本主義が社会主義に勝った」という宣伝が散々流されました。しかし、その資本主義が今やどうなっているかと言うと、その後何十年も不景気が続き、失業や格差が広がる一方です。そして今や、ピケティという経済学者の書いた「21世紀の資本論」が世界的ベストセラーとなり、中南米やギリシャ、スペイン、ドイツで新たな左翼勢力が躍進を続け、コービンという左翼の闘士がイギリス労働党の新党首に就任するまでになりました。その中で、ひとり日本人だけが、いまだに安倍や橋下の暴走を許し、橋下らの垂れ流す「貧乏なのは個人の自己責任」の洗脳術にまんまと乗せられてしまっています。本当に変わらなければならないのは、サンダースでも共産党でもなく、むしろ私たちの方ではないでしょうか。

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