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アクリフーズこそが最大のテロリスト

2014年01月29日 22時30分38秒 | 職場人権レポートVol.3


 アクリフーズ群馬工場での農薬混入事件の容疑者として逮捕された元契約社員が連日マスコミに叩かれまくっています。まあ、やった事がやった事なので叩かれても仕方ないし、私もこの容疑者の顔写真をニュース等で見て「変な奴だなあ」と思っていました。しかし、その一方で、容疑者が勤務先での待遇の悪さを口にしているのに、会社の記者会見やニュースではその具体的な内容が全然報道されないので、「どうも胡散臭い。実際は会社もとんでもないブラック企業だったのでは?」という疑いをずっと抱いていました。
 
 そうしたら、やっぱり出てきました。週刊新潮や日刊ゲンダイ、NEWSポストセブン等が、アクリフーズの労働実態について取材していました。その中から、1/30日付週刊新潮の記事で取り上げられていた内容を抜き書きしました。下記にリンクも張っているので、元の記事も是非読んでみて下さい。

●アクリフーズの旧社名は雪印冷凍食品。元々は雪印本社の冷食部門だったのが、グループ会社の食中毒事件を機に子会社化を経てマルハニチロの系列に。
●4年前にマルハ本社から出向してきた製造課長が大幅なコストダウンを断行。それまで牧歌的だった社風が急に殺伐としたものに。
●ラインの回転が速くなり、あわただしくなった。各ラインの実績が張り出され、破損個数を何個出したか反省文も提出させられる様に。
●残業も月80時間超に(←厚労省が過労死ラインとして労災認定の目安としているレベルでもある)。ノイローゼになり辞めていった人も。
●1日2000円の早番手当、同1000円の遅番手当、皆勤手当、有休買上げ制度、準社員の退職金も廃止に。時給は820円から900円に上昇も、全体としては大幅な賃下げに。(また別の情報では、昔あった年間10~20万円の賞与も廃止に)
●この製造課長が曲者で、機械のトラブルがあったりすると、工場内に響き渡る様な大声で「何やってんだ!」と。工場長も実際はこの課長の言いなり。去年4月に課長が異動になって以降も体質はさして変わらず。

 また、アクリフーズの実際の労働条件についても、ジョブセンスリンクに掲載されていたハローワーク館林(群馬県)掲出の募集内容を下記に抜き書きしておきます。こちらも同じくリンク先をたどって元のサイトにも是非アクセスしてみて下さい。

●職種:冷凍食品(ピザ・グラタン等)の製造・包装。立ち仕事で体力・集中力を要す。ある程度の訓練期間が必要。
●賃金:
 時給900円、基本給(月平均)142,425円。他に通勤手当が実費支給で上限なし。
 (昔は時給こそ820円と安かったものの、これに各種手当が付き、月約20時間位の残業で17~25万円位にはなっていたらしい)
●勤務時間:
 交替制で5:00~23:00の間の7時間以上。別の募集要項では5:00~13:30、7:00~15:30、13:30~22:00の三交替となっていた。
 毎日1時間の休憩を除くと1日実働7.5時間となり、先の月平均基本給の金額とも概ね一致する。
●休日等:
 日曜とそれ以外の1日による変則週休2日制。週休は会社カレンダー(勤務ローテーション)により交替で取得。年間休日113日。他に育児休暇あり。
●その他:
 4ヶ月ないし6ヶ月の契約更新の繰り返しによる有期雇用の契約社員で、社会保険には加入。2週間の試用期間も賃金は同額。
 農薬混入事件で通常業務がストップするまでは毎年大量募集を繰り返していたらしい。

 これを見ると、昔は時給こそ820円と安いものの、各種手当がついて昔は月17~25万円、年300万円もの収入があったようです。私からすると、もはやワーキングプアというより中流下層とも言うべき待遇で、羨ましい限りです。でも、それは独身者の私だから言える事であって、所帯持ちの中年男性にとっては、これでも相当生活は苦しかっただろうと思います。
 しかも、悪賢い事に、時給(基本給)部分は相当低いのに、手当やボーナスで思いっきり水増しして、それで何とか生活していけるようにしている。手当やボーナスが幾ら多くても、そんな物は只の賞与(ご褒美)にしか過ぎず、会社の業績悪化を口実にどの様にも引き下げられるし、退職後にもらう年金も、算定の基礎になるのはあくまで基本給だけなので、もらえる年金額もホンの僅かになってしまう。でも、当座の手取りはそんなに悪くないので、みんなそこで満足してしまうのです。まるで、猿にやるエサを朝三つから四つに増やしたら総量は変わらないのに感謝されたという、「朝三暮四」の故事さながらに。如何にも「雪印」の考えそうな事です。

 しかし、その「牧歌的な社風」も、雪印の食中毒事件を機に、M&A(企業買収)でマルハニチロの子会社になった途端に、コストダウンの嵐に翻弄されるようになります。鬼の製造課長によって時差出勤手当等が全てカットされて、年収は300万から200万へと大幅ダウン。もっとも、基本給だけでは年収200万円すらいかないので、多分これは残業代や通勤手当も含めての額なのでしょう。それでも今の私と同じ給与水準で、しかも通勤手当は満額実費支給と、私よりはまだ恵まれている。私は時給こそ変わらないものの、通勤手当は月1万円が上限ですから。
 でも、それも独身で実家住まいの私だから言える事であって、妻子もいて公共料金の支払いもあるのに、年収200万では到底無理でしょう。幾ら時給が900円に引き上げられた所で、これでは「焼け石に水」にもなりません。さしもの「朝三暮四」も、もはや通用しませんでした。

 マルハニチロと言えば、一説によると、北洋漁業の船の中で奴隷の様にこき使われていた労働者がついに立ち上がる様を描いた、あの戦前のプロレタリア小説「蟹工船」のモデルにもなった会社だそうですが、21世紀になった今も会社の体質はさして変わらないようです。
 しかも、工場の所在地が群馬県大泉町。三洋電機の元企業城下町で、職を求めてやってきた日系ブラジル人が町民全体の1割を超える「日本のブラジル」。コンビニやスーパーの店内表示も、日本語・ポルトガル語の二ヶ国語で記される土地柄。研修生・実習生と偽り、外国人を時給400円程度の違法な低賃金で働かせる会社もある中で、群馬県の最低賃金を上回る時給900円もくれるなら、逆に「恵まれている」と評価されかねないのでしょう。
 日本の最低賃金なんて今や先進国の中では最低水準で、未だに時給千円以下なのは日本ぐらいなのに。しかも、その上に長時間労働やサービス残業で過労死するまで働かされても、ストライキも全然せずに、逆に「日本人は何て偉いんだ」と慰め合っている姿の、何ていびつな事か。

 そう考えると、あの容疑者も何か可哀想に思えてきました。最初は「いい歳した妻子持ちの大人が、子供みたいにアニメのコスプレにはまって、改造バイクに100万円もつぎ込んでバカみたい」と思っていましたが、それを維持する為に新聞配達の仕事も掛け持ちしていたのでしょう。私みたいにインターネットやブログをする訳じゃなし、他に何の楽しみもないのに、コスプレぐらいしたって別に悪くないじゃん。「表現の自由」は憲法でちゃんと保障されているんだし。改造バイクで排気ガスや騒音をまき散らかすのはさすがに戴けませんが、それをダメだと言うのなら、周囲の迷惑も顧みず大音量で都心を走り回る右翼の街宣カーは一体どうなる。あれを警察がロクに取り締まらないのに、改造バイクにばかり目くじらを立てるのは不公平ではないか。

 それでも、やはり、あの容疑者にも問題は大有りなのは確かです。前に働いていた自動車整備会社でも、待遇への不満のはけ口として、不良品を製品に混入させていたそうですし、アクリフーズでも「直ぐにキレるトラブルメーカー」として有名だったそうです。農薬混入については、どんな事があろうと言い訳は出来ません。まかり間違えれば死者も出る恐れがあったのですから。
 でも、それも「ブラック企業」だから仕方ないじゃん。この際、敢えて言いますが。ロクに労働者を人間扱いしない様な会社に、誰がまともに来るか。そんな会社でも他にまともな仕事がないから、みんな渋々来るのじゃないか。その中に、たとえロクに仕事をしない人間が少なからず混じっていたとしても、誰がそれを責められる?かつて中国の冷凍餃子事件が起こった時に、あれは中国の特殊事情で日本では起こり得ないと、白ばっくれていた御用評論家は、今頃どんな気持ちでいるのだろうか?

 実は、うちの会社にも、そんなトラブルメーカーがいます。私の前方不注意による職場内での事故に託けて、慰謝料まで要求してきたヤクザまがいのトラブルメーカーに対して、会社は諌めるどころか、「第三者行為」を口実に労災隠しに走りました。たまたま私が一人でも入れるバイト労組に加入していて、組合が労基署にかけあってくれたから良かったものの、もし入っていなかったら一体どうなっていたか。
 アクリフーズの記者会見で、「待遇への不満なぞ何も聞いていない」「容疑者にも何も心当たりはなかった」という工場長の発言を聞いて、私は無性に腹が立ちました。私に対して労災逃れに出てきた、うちの会社の当時の所長と全く一緒じゃないか!

 ブラック企業には、社員や経営者もロクな人間はいない。いても少数です。だから、行き当たりばったりの仕事しか出来ないし、業務改善や待遇改善を図ってそこから抜け出そうとする意欲もない。上の目ばかり気にして下の意見を全然聞かず。「どう改善するか」ではなく「どうやり過ごすか」ばかり考える。バイトには偉そうにガーガー言うくせに、自分たちは朝礼も平気ですっぽかし、問い詰められても言い訳ばかり。そのくせ、先のマルハニチロの破損個数の反省文の様に、何でも下の個人だけに責任をなすりつける技術だけは一人前。
 それでも、一応は大企業の物流センターなので、構内に安全標語や安全ポスターの類は一杯張ってあります。でも、あれも全てアリバイ工作。それを使いこなす能力も意欲も、実際にそこの業務を請負う下請けブラック企業にはありません。業務発注者の大企業もそれを見て見ぬふり。恐らく、安全ポスターや財務状況、株価等の「見てくれ」さえ良ければという考え方なのでしょう。アクリフーズやマルハニチロや雪印も、多分同じ様なものでしょう。
 そんな企業が、自分の事を棚に上げて、労働者個人だけを悪者にして、「テロ防止」や「監視強化」を言うに至っては、もはや論外です。ブラック企業こそが最大のテロリストです。そんな企業に、労働者をテロリスト呼ばわりする資格なぞ微塵もありません。

 
(参考記事)
・「冷凍食品」農薬混入犯の動機は過酷労働!?「アクリフーズ」工員を締め付けた鬼の「製造課長」(週刊新潮)
 http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/newest/
・ジョブセンスリンクに掲載されていたアクリフーズの求人情報(現在は掲載中止)
 http://job.j-sen.jp/hellowork/job_6386855/
・02年に社名変更 アクリフーズの隠蔽体質は雪印の“亡霊”(日刊ゲンダイ)
 http://gendai.net/articles/view/newsx/147094
・アクリフーズとカネボウ化粧品に共通する「負の遺産M&A」の落とし穴(BLOGOS)
 http://blogos.com/article/77584/
・アクリフーズ - Wikipedia
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%95%E3%83%BC%E3%82%BA
コメント (9)
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