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アジアと小松

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小松基地問題研究会

20210724 『華僑二世徐翠珍的在日』(徐翠珍著2020年発行)

2021年07月25日 | 読書
『華僑二世徐翠珍的在日』(徐翠珍著2020年発行)

 新聞もテレビも五輪に占領され、1年ほど「積ん読」状態だった『華僑二世徐翠珍的在日』を読んでいる。私も著者徐翠珍さんと同年生まれ、同じ時間を生きてきたが、…。

徐さんの母
 徐さんの母は1912年に上海(屈家橋村)で生まれ、7歳のときに、製糸工場の童工(トンコン=児童労働者)として働き始め、20年間働き通した。1920年代には、「満州」や上海に日本企業の製糸工場が設立された。たとえば、満州福島紡績の労働者は約800人で、そのうち60%が女工、50%が童工だった。労働時間は午前6時から午後6時で、中国人男工の賃金は日本人労働者の3分の1、女工は4分の1、童工はそれ以下であった。
 1932年上海事変で、母が働いていた製糸工場は停止し、屈家橋村に戻ったが、村は日本軍に接収され、村民は追い出され、その後、上海の難民収容所に移ったが、21歳の母は、4月29日の上海爆弾事件(尹奉吉)をどのように感じたのだろうか。

徐さんのたたかい
 母は1932年結婚後に渡日し、徐さんは1947年に神戸市で生まれ、神戸中華同文学校に入学し、9年間民族学校で学んだ。高校、短大に進学し、1970年に結婚し、大阪西成区に居を移した。ここで在日やへの差別を自覚した。保育所・幼稚園の仕事を探したが、中国人であることを理由にことごとく拒否された。かろうじてキリスト教系のめぐみ保育園に正職員として採用されたが、条件は夫の姓=林(リン)を「はやし」と呼ぶことだったが、在日韓国・朝鮮人との関係が出来、翌年「リン」として働くことを宣言した。
 1971年、めぐみ保育園が長橋保育所として大阪市に移管されることになり、徐さんは在日中国人であることを理由に採用を拒否・解雇された。大阪人権委員会に「身分保全の異議申立て」をおこなったが、容れられず、大阪地裁に「地位保全の仮処分申請」をおこなった。支援の輪が広がり、1972年「日本人保母と同じ条件で採用する」ことが確認され、国籍条項の一角を食い破り、外国籍公務員の第1号となった。その後1974年には、尼崎、川西、西宮の3市で外国籍公務員が誕生し、大阪、東京などで外国籍の教員、医師採用へと引き継がれていった。

全国に広がる国籍条項撤廃の波
 北陸でも地方参政権訴訟(1991年福井地裁提訴)がたたかわれ、友人たちも支援に駆けつけたが、当時の私は「事情」があって参加できなかった。2001年第2次不二越訴訟に取り組む過程で、原告の李鎮哲さんと懇意になり、その後の国籍条項撤廃運動の端っこに加えていただいた。
 押し入れの段ボール箱をガサゴソやって、出てきたのは15年前に買い求めて読んだ『正義なき国、「当然の法理」を問い続けて』(鄭香均著2006年)である。1986年に在日朝鮮人看護学生のたたかいで、保健師の国籍条項が撤廃され、鄭さんも1988年に東京都の保健所に就職した。1994年管理職試験の受験を拒否され、同年東京地裁に受験資格確認訴訟を提訴し、1996年地裁判決で敗訴、1997年控訴審では逆転勝訴し、2005年最高裁大法廷では再逆転敗訴・終結したが、国籍条項撤廃の波はおさまらなかった。
 2007年の石川県内の自治体の国籍条項についての調査では、「すべての職種で撤廃」がわずか3市町、「撤廃なし」が6市町だったが(『北陸中日新聞』調査)、2010年には逆転し、前者が8市町に増加し、後者は1町だけである(「国籍条項撤廃を求める会・石川」調査)。



徐さんはすぐそこにいた
 ちょっと横道にそれたが、1973年に、徐さんにたいして地域外の保育所への配転命令があり、5年後の1978年大阪市を退職し、学童保育所「芽」を開設した。
 その後の徐さんは、国籍条項撤廃運動、指紋押捺拒否運動、靖国訴訟などに取り組み、ついに1999年指紋押捺制度の全廃、2009年には外国人登録法の廃止を勝ち取っている。本書の中で、靖国合祀反対訴訟の原告西山誠一さん(加賀市・農民)の存在に触れ、日中戦争の被害者と加害者の交歓を謳っている。徐さんは身近にいたのであるが、私自身の怠慢で、ともにたたかう場に参じることが出来なかった。

(注:『華僑二世徐翠珍的在日』は金沢市立玉川図書館に蔵書されている)
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