路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【考察】:葛西敬之 国鉄を改革した男はいかにして「国商」になったか

2023-01-23 07:05:30 | 【経済・産業・企業・IT・ベンチャー・起業・インバウンド(訪日外国人客)事業】

【考察】:葛西敬之 国鉄を改革した男はいかにして「国商」になったか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【考察】:葛西敬之 国鉄を改革した男はいかにして「国商」になったか

 JR東海元名誉会長 息のかかった官僚を次々と官邸に送り込み政権を裏から支配し、 安倍晋三の後見人とも呼ばれた財界の大物――

 〈今年5月、一人の男がこの世を去った。「最後のフィクサー」と呼ばれた、東海旅客鉄道(JR東海)元名誉会長の葛西敬之である。彼の足跡、政治家との交わりなど、そのすべてを描いた渾身のノンフィクション『国商 最後のフィクサー葛西敬之』が12月14日に刊行された。同書の著者である、ノンフィクション作家・森功氏がレポートする〉

’14年、ケネディ元駐日米大使(左端)とともにリニアに試乗した安倍元首相。リニア開通は葛西(右端)にとって見果てぬ夢だった

 この十数年、日本を動かしてきた人物は? 仮にそんなアンケート調査をすれば、憲政史上最長の政権を築いた元首相の安倍晋三が1位ではないだろうか。’06年9月26日からきっちり1年で終わった第1次政権から’12年12月26日、首相に返り咲いた。1次政権と’20年9月16日までの第2次政権を足し合わせると、首相在位は8年半におよぶ。おまけに安倍は事実上、女房役だった官房長官の菅義偉を後継指名した。安倍・菅のコンビで10年近く政権に居座り続けたことになる。

 安倍と菅は自民党内の勢力を押さえ込み、霞が関の高級官僚たちを人事で震え上がらせてきた。過去の首相たちも自らの権力強化に力を注いできたが、安倍ほどの力を持てなかった。巷間(こうかん)言われてきた通り、その歪な官邸一強支配が長期政権の礎になってきたのは間違いない。

 なぜ、安倍はこれほど長く強大な権力を維持できたのか。しかし実のところ、本当の理由は解明されていない。

 その答えが、東海旅客鉄道(JR東海)元名誉会長の葛西敬之(よしゆき)の存在である。安倍晋三の財界応援団「四季の会」を主宰し、政権の後ろ盾になってきた。永田町や霞が関では知らない者がないほどの大物経営者である。

 もっともJR東海の葛西といっても、一般には馴染みが薄いかもしれない。それは、政治家と異なり、マスコミの露出が少なかったからだろう。文字通り、葛西は安倍・菅政権における黒幕にほかならない。

 かつて日本にはときの政権と通じ、政策に乗ってビジネスを展開してきた黒幕が数多く存在してきた。日頃はほとんど表舞台に立たない。が、時折その姿を現し、話題を呼ぶ。田中角栄の盟友と称された「国際興業」社主の小佐野賢治や中曽根康弘のブレーンだった「伊藤忠商事」元会長の瀬島龍三たちの顔が思い浮かぶ。彼らは政権のフィクサーとして、国の政策に大きくかかわり、時代を彩った。葛西もまた歴史に残るそんな黒幕の一人であり、もはやこの先現れない最後のフィクサーだといえるかもしれない。

 ◆「安倍さんを励まし続けた」

 葛西敬之は紛れもなくこの十数年来、日本を動かしてきた。安倍・菅政権の裏側にいて、数多くの政策にかかわり、それが国策となったと言って差し支えあるまい。

 国鉄官僚時代は「国鉄改革三人組」の一人として、’87年4月の国鉄分割民営化を成し遂げ、その後、JR東海の社長や会長を歴任してきた。葛西は中国嫌いの反共、保守・右翼思想の論客として知られる。靖国神社の「崇敬者総代」や「日本会議」の中央委員を務めてきた。安倍はそんな葛西の保守思想を仰ぎ見て頼り、葛西もそれに応えた。

 「葛西さんは第1次安倍政権をつくろうと四季の会のメンバーを動かし、安倍さんは総理になりました。ところが、持病の潰瘍性大腸炎が悪化し、政権を投げ出してしまった。葛西さんはそこから安倍さんを励まし続けた。『ステロイドを服用しているので辛い』と安倍さんが四季の会に出てきてこぼしていたのを思い出します」

 そう語る四季の会のメンバーもいる。安倍はアサコールという特効薬のおかげで病状が回復し、葛西とともに政権カムバックに向けて走り出す。それもまた、葛西の支えがあればこそだった。

 そうして’12年12月、再び首相となった安倍は、第1次政権の轍を踏まないよう肝に銘じた。第2次安倍政権で目指したのが、徹底した官邸機能の強化とマスコミ対策である。安倍は信頼できる官僚たちを首相官邸に呼び寄せ、政策立案を託した。「総理の分身」となり、アベノミクスを取り仕切った政務秘書官の今井尚哉をはじめ、「官邸の守護神」と異名をとって官房副長官と内閣人事局長を兼務した元警察官僚の杉田和博、さらに杉田の後輩の北村滋は内閣情報官や国家安全保障局長に就いた。彼らは「官邸官僚」と政官界で恐れられる。

 実はそんな官邸官僚たちは、葛西が大事にしてきたブレーンでもあった。つまり葛西は安倍のみならず官邸官僚たちも従え、おかげで安倍は一強の名をほしいままにし、安定政権を築けたのである。
葛西敬之は国を舞台にビジネスを展開した。ときの首相に国策を指南する「国商」といえる。

 奇しくも今年、日本を動かしてきた葛西と安倍の二人が相次いで命を落とした。そこから岸田文雄政権の迷走が始まった。

(文中敬称略)

’92年、副社長時代の葛西。左は竹下登元首相。社長、会長と権力の階段を登るごとに政権への影響力も強めていった
 
12月14日刊行の本書では、名経営者とされてきた葛西のフィクサーとしての実像が初めて明かされる
 
 『FRIDAY』2022年12月23日号より
  • 取材・文:森 功 ノンフィクション作家

 元稿:講談社 主要出版物  週刊FRIDAY DIGITAL 【社会・事件】 2022年12月15日 07:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【検証⑤】:「今のNHKは税金を使って国益に適わない放送をしている」‟安倍政権のフィクサー“JR東海・葛西敬之が剛腕を振るった「NHK改革」における‟大誤算”

2023-01-23 07:04:50 | 【経済・産業・企業・IT・ベンチャー・起業・インバウンド(訪日外国人客)事業】

【検証⑤】:「今のNHKは税金を使って国益に適わない放送をしている」‟安倍政権のフィクサー“JR東海・葛西敬之が剛腕を振るった「NHK改革」における‟大誤算”

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証⑤】:「今のNHKは税金を使って国益に適わない放送をしている」‟安倍政権のフィクサー“JR東海・葛西敬之が剛腕を振るった「NHK改革」における‟大誤算”

 発売即話題騒然の問題作『国商 最後のフィクサー葛西敬之』(森功著)の見せ場の一つが、安倍政権のフィクサー葛西敬之がNHKを支配しようとした一部始終だ。天皇として君臨していたとはいえ、あくまで一企業であるJR東海のトップだった葛西氏が、なぜ国民全員の持ち物ともいえる公共放送NHKを支配できたのか。その裏側を明かす。         『国商 最後のフィクサー葛西敬之』連載第3回後編

 ■前編記事【「安倍政権最大の後見人」が‟メディアの左傾化“をここまで忌み嫌った「根深い理由」…JR東海・葛西敬之はこうしてNHKを支配した】

 10年11月、アサヒビール元会長の福地茂雄のあとを受ける新たなNHK会長選びが始まった。次期会長候補として有力だったのは、葛西の腹心であるJR東海副会長・松本正之と元慶應義塾塾長の安西祐一郎の二人だった。前編に引き続き、NHKの会長選びにおける葛西の動きをお伝えする。

 ◆傀儡をトップに据えた鶴の一声

 NHKの会長候補になるためには、まず経営委員会のメンバーによる推薦が必要となる。その上で、経営委員による候補者投票がおこなわれ、12人のメンバーのうち9人が賛成すれば、次期会長に選任される。

 安西と松本のどちらを選ぶか――。当初、会長選びは安西でほぼ決まりかけていたという。だが、それが葛西の一声でひっくり返るのである。

 NHKの会長として下馬評にのぼった二人のうち、安西については古森の後任の経営委員長になった福山通運社長の小丸成洋(しげひろ)が、「信頼できる人物だ」と太鼓判を押していた。原則として委員長の票も他のメンバーと同様一票に過ぎない。

 ◆まさかのスキャンダル

 しかし、やはり委員長の推薦には重みがある。なにより良心ある経営委員には、葛西・松本というJR東海ラインに対する警戒感があった。いきおい安西が会長候補の最右翼となったという。ところが、その安西に経費や待遇問題が持ち上がったのである。NHK経営委員だったある法人の役員が、2011(平成23)年当時の経営委員会の出来事を思い出し、こう語った。

 「あのときはずいぶん経営委員会が揉めましてね。安西さんのスキャンダルがスポーツ紙にすっぱ抜かれ、会長就任を辞退する羽目になりました。経営委員会では早急に次の会長候補を推薦しなければならない。代わる会長は誰が適任か、となったところ、古手の経営委員だった北原(健児・元読売新聞政治部記者)さんがおもむろに携帯電話を取り出し、電話をかけ始めたのです。電話の相手が葛西さんでした」

 2010年12月、NHKの次期会長候補として浮上した安西の言動がスポーツ紙に漏れ、次期会長レースが大荒れになった。

「東京の会長社宅を用意できるか」
「公用車や接待費はどうなっているのか」

 安西は会長に選任される前からNHK職員に執拗に尋ね、NHK局内の顰蹙(ひんしゅく)を買っていたという。当時の経営委員が振り返った。

 「あのときは、『こうなったら、経営委員会として人柄を判断しなければならない』 と委員ほぼ全員集まって安西さんのお話を聞きました」

 ◆葛西と旧知の間柄の記者

 すると、あろうことか安西は慶大のゼミ生に「今度NHKの会長になる」とコンパで自慢げに話していたことまで判明したのである。先の元経営委員はこう言葉を足した。

 「経営委員会では選考中の会長人選案について極秘扱い。なのに、学生に漏らしているなんて、考えられませんでした。こんな軽い人ではNHKの会長は務まらない。しかも、それがスポーツ紙にすっぱ抜かれる始末ですからね。とうぜん女性の経営委員から安西さんの会長就任へ反対意見が相次ぎました」

 揉めた末、経営委員長の小丸が慶大まで行って安西に頭を下げ、安西の会長就任辞退となり、緊急の経営委員会が開かれた。そこで、安西に代わる会長候補は誰が適任か、と議題にのぼり、その場で、経営委員の一人である元読売新聞政治部記者の北原健児が改めて松本を推薦したのである。

 北原は葛西と旧知の間柄で、もとより葛西と打ち合わせ済みだったのだろう。経営委員会の席上、携帯電話を取り出して葛西に電話をかけ、松本のNHK会長就任について了解を取り付けた。

 「電話はアリバイ作りのセレモニーのような感じだった」

 当時の経営委員はそう話した。

 ◆葛西の目論見通り

 葛西は元来、国策としての公共放送のあり方に独自の見解を展開してきた。当人が表だってNHKに介入したのがこのときだ。会長人事を巡るこのときの迷走は、3月8日付の経営委員会議事録にも、〈新会長任命に至るまでの過程についての検証と総括〉と題されて次のように総括されている。

 〈経営委員会は、平成23年1月15日、指名委員会の審議を経て松本正之新会長任命を議決しました。しかし、ここに至るまでの過程に対する多くの厳しいご批判を真摯に受け止め、監査委員会からの「新会長任命に至るまでの過程についての調査報告書」(以下、監査委員会調査という)も踏まえて、経営委員会として検証を行うとともに今後の改善に向け総括を行いました。

 何よりもまず、安西祐一郎慶応義塾大学前塾長に対しましては、いったん会長就任を要請しながら今度は辞退を促すかのような受け止めをされても致しかたない事態となり、結果としてご名誉を大きく傷つけ、大変なご迷惑をおかけしました。心から深くお詫び申し上げます。また、国民、視聴者の皆様に対しましてもご迷惑、ご心配をおかけし、深くお詫び申し上げます〉

 福山通運社長の小丸成洋は11年1月まで経営委員長を務めた。このときNHK会長になったのがJR東海副会長の松本である。もとより松本のNHK会長就任は、かねてよりの葛西の要望でもあった。

 経営委員会が混乱を極めるなか、葛西裁定により決着がついたのである。葛西の目論見通り、JR東海の松本がNHK会長に決まり、とうぜんのごとく局内で松本は葛西の傀儡会長と目された。またJFE社長の數土は、松本会長時代の2011年4月、NHKの経営委員長に就任し、12年5月までその任に就いた。

 ◆腹心の思わぬ反抗

 松本は国鉄時代から葛西を支えてきた。尖鋭的な労働組合に対する労使交渉などで手腕を発揮してきた葛西の腹心中の腹心だ。すでに自民党から民主党内閣に移っていたが、松本をNHKに送り込むにあたっては、民主党政権下にあってなお、保守タカ派の財界人の思惑が働いたといえる。

 NHK局内では、葛西の肝いりで乗り込んできた松本の会長就任を警戒した。だが、結果的に葛西の目算が狂ったというほかない。松本はかつての上司である葛西の思いどおりには動かなかった。その一例がNHKの副会長人事だった。

 「諸星衛(まもる)さんを副会長にどうか」

 複数のNHK関係者によれば、葛西はNHK会長に就任した早々の松本にそう打診したという。諸星はNHKの天皇と呼ばれ、自民党との太いパイプを誇る海老沢の最側近の元理事として知られる。政界遊泳術にも定評があった。

 早稲田大学政治経済学部からNHK入りした茨城県出身の諸星は、出身県、大学の学部、最初の赴任地、いずれも海老沢と同じだ。おまけにNHKでは、海老沢のあとを追うように政治部長や理事を歴任している。エビジョンイルと呼ばれた海老沢に対し、諸星は「小エビ」と局内で揶揄された。海老沢の後継会長確実といわれながら05年、ボスの海老沢失脚とともに同じ憂き目に遭う。関連会社のNHKインターナショナルに更迭された。

 NHKインターナショナル理事長はアガリポストだ。当人にとっては、葛西の送り込んだ松本会長体制が復権のチャンスに映ったのであろう。政界における諸星のパイプは、政治部時代に番記者を務めてきた中曽根康弘ルートだとされる。実際、副会長としてカムバックすべく猟官運動を繰り返したようだ。NHKの中枢幹部が明かす。

 「諸星さんはアサヒビールの福地会長のときも中曽根元首相に頼んで副会長の椅子を狙ったといわれています。福地さんがそれを断ったのでダメでしたが、次に諸星さんの頼った相手が杉田和博さんでした。杉田さんは中曽根内閣の後藤田官房長官秘書官で、諸星さんとはそのころからの付き合いだったのでしょう」

 ◆「今のNHKはけしからん」

 折しも松本が会長に就いた11年といえば、自民党が政権を奪回する前年にあたる。葛西の応援する安倍が総裁選に名乗りを上げるために準備していた時期にも重なる。好機と見た諸星が葛西・杉田ラインを使って副会長として復権しようと狙っていたのは、そうした人脈の上に成り立ってきた行動なのだろう。

 しかし、その諸星副会長人事について、松本は元上司である葛西の申し出を断った。副会長をはじめとしたNHKの理事、役員選びは会長の専権事項である。11年1月25日に正式に会長に就任した松本は、そこから2週間かけ、候補者を中心に個人面接を繰り返した。

 むろんNHKインターナショナル理事長の諸星も面接の対象となる。が、松本は諸星の猟官運動を快く思わなかったようだ。松本は副会長にNHKエンタープライズの小野直路(なおじ)を選んだ。小野は1960年からNHK総合テレビで放送されてきた教養番組「自然のアルバム」を担当し、制作畑で政治色のない無色透明な人物だった。むしろそこが気に入ったのかもしれない。松本の副会長選びは、公共放送のトップとしての覚悟を決めた結果であり、葛西の言いなりにならなかった、とNHK内部で松本本人の株があがった。

 葛西にとってこの副会長選びは腹立たしい出来事だったに違いない。葛西は警察庁の国家公安委員や財務省の財政制度等審議会など、いくつもの政府委員を兼任してきた。NHKの松本会長体制の終盤、葛西はある政府審議会の会合が終わると、隣に座っていた委員の一人にぶちまけた。

 「今のNHKはけしからん。税金を使って国益に適わない放送を垂れ流している」

 それを聞いて隣席の政府委員は思わず葛西をたしなめた。

 「いや松本会長はよくやってらっしゃいますよ。それにNHKは税金で賄われる国営放送ではなく、受信料で運営されている公共放送ですから」

 葛西は財界や政府の関係機関の会合で松本批判を繰り返し、それが松本の耳にも届いた。国鉄改革から剛腕を振るってきた葛西につかえてきた松本は、その強引なやり方も熟知している。NHK人事に関する葛西からの直接の指令を嫌がり、やがて葛西からかかってくる電話にも出なくなったという。

 発売即話題騒然の問題作

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【検証④】:安倍政権が政界を牛耳る「最後のフィクサー」の“野望”に3兆円を注ぎ込むまでの「全内幕」

2023-01-23 07:04:40 | 【経済・産業・企業・IT・ベンチャー・起業・インバウンド(訪日外国人客)事業】

【検証④】:安倍政権が政界を牛耳る「最後のフィクサー」の“野望”に3兆円を注ぎ込むまでの「全内幕」

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証④】:安倍政権が政界を牛耳る「最後のフィクサー」の“野望”に3兆円を注ぎ込むまでの「全内幕」

 安倍・菅政権の「フィクサー」として政界を牛耳っていたJR東海名誉会長の葛西敬之。ついにはリニア中央新幹線のために、財政投融資3兆円が注ぎ込まれることになる。融資なので返済するとはいえ、市場金利より安く抑えられていることを思えば、金利分の国家のカネがJR東海につぎ込まれた、と見ることもできる。
ジャーナリスト森功氏の新刊『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動きが、生々しく明かされている。

             『国商 最後のフィクサー葛西敬之』連載第2回後編

 ■前編に引き続き、第二次安倍政権時代のある官邸関係者の証言をみていく。

 ◆官邸の介入

 情勢が変わったのは、やはり官邸が介入してからだ、とこう続けた。

 「ある日、安倍首相自身が、『経済政策の大きな目玉としてリニアの大阪延伸を早めてほしい』と自民党の稲田(朋美)政調会長を訪ね、依頼したのです。安倍首相が葛西さんに直接伝えればいいようにも感じましたが、その前の根回しのつもりなのかもしれないし、あるいはまず葛西さんの意向を確かめたかったのかもしれません。それで、稲田さんが早期大阪延伸案を葛西さんに投げた。といっても稲田さんには葛西さんとのパイプがなく、経産官僚があいだをつないだと聞いています。葛西さんは宇宙開発に関心があり、宇宙政策委員会という内閣府の審議会にも参加していて、窓口になってきた片瀬(裕文元経産審議官)という親しい経産官僚がいるんです」

 ◆3兆円を捻り出す「3つのやり方」

 ここから官邸や自民党は、大阪までの工事を一挙に進めるために3兆円が必要になる、と試算した。むろん財務省としては想定外の“予算”であり、決して乗り気ではなかった。実のところ、当初財務省で3兆円を捻り出す方法は、財投の活用だけではなく、3通り検討されたという。

 一つは「整備新幹線並みの公共事業予算に組み入れる方法」、もう一つが「税制上の特別な措置」、そして「財投」だ。本来、鉄道の建設事業認可は国交省所管のはずだが、3兆円の捻出方法を説明するため、財務省の官房長だった岡本が葛西のいる品川のJR東海東京本社を何度も訪ねた。

 「リニア計画を予算化するには、国会で審議しなければなりません」
 「税制の優遇措置をするにも、税法の改正案を国会へ提出しなければなりません」

 岡本は葛西にそう説明した。財投以外の2案はどちらも国会審議を経なければならないため、注目を浴びて批判の矛先がJR東海に向かいかねない。残るは財投しかない。官邸関係者は財投決定までの内幕を明かした。

 「そこにも課題はあります。かつての財投は使い道がないので無理やり貸し付けてきましたが、今はなぜ必要かという説明責任が政府にあります。本来は、現状のまま名古屋までの開通を先行させてJR東海にやってもらったほうがいい。でも、この問題については官邸がらみで稲田政調会長まで介入してきている。国交省は何も口を出さない。それで、気心の知れている財務省の岡本さんが葛西さんのところへ説明に通ったのです。葛西さんに選択肢を与え、向こうに決めてもらうという形になった。その答えは財務省経由ではなく、稲田政調会長を通して安倍総理に直接返ってきたと聞いています」

 ◆「稲田政調会長が一所懸命やってくださった」

 そうして葛西は財投しか方法がないと決めたのだという。その真意は、安倍政権の経済政策をバックアップするためだったのだろうか。あるいは首相のメンツを重んじた結果だろうか。

 財投の投入に関しては、国鉄改革の取材の流れで、初代JR東海社長の須田寛にも尋ねたことがある。須田は苦笑いしながら、現在の3兆円の財投投入について評価した。

 「無利子ではありませんが、昔の8%と比べたら平均0・8%なんてないようなものです。JRはコロナで大減収になっていますけど、財投を活用した借入金を使用して工事を進めることができるので、工事を止めずに済んだ。そういう意味でも非常に意味があったのです。稲田政調会長が一所懸命やってくださったというのは聞きました」

 もっとも、葛西が財投を受け入れた背景は資金繰りの事情だけではない。財投を使った3兆円の融資を申請した16年の春、葛西は病魔に襲われた。命を奪った間質性肺炎である。あまり知られていないが、難病指定されているこの病気は、実は国鉄の動労委員長だった仇敵の松崎明からも命を奪っている。

 そんな恐ろしい病気にかかって余命5年を宣告された時期が、まさに財投申請の半年ほど前の出来事なのである。自らの余命を知らされた葛西は、焦り始めていたのではないだろうか。

 一方、リニア中央新幹線の終点となる大阪では、日本維新の会が2025年の大阪・関西万博とカジノIRの同時オープンをぶち上げてきた。結果的にカジノ計画はうしろにずれ込んだが、安倍は政権発足以来ずっと維新の会の政策を後押ししてきた。リニア計画の前倒しとともに大阪の政策は、行き詰まりを見せ始めたアベノミクスの起爆剤とも位置付けられた。

 財投受け入れは、支援してきた首相を助ける有効な一手――。限られた命を告げられた葛西敬之には、そう映ったのではないだろうか。

 ■森功著『国商 最後のフィクサー葛西敬之』講談社より12月14日発売!

 

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【検証③】:政界を牛耳る「最後のフィクサー」JR東海・葛西敬之が安倍晋三と密談して国から「3兆円」を引っ張るまでの一部始終

2023-01-23 07:04:30 | 【経済・産業・企業・IT・ベンチャー・起業・インバウンド(訪日外国人客)事業】

【検証③】:政界を牛耳る「最後のフィクサー」JR東海・葛西敬之が安倍晋三と密談して国から「3兆円」を引っ張るまでの一部始終

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証③】:政界を牛耳る「最後のフィクサー」JR東海・葛西敬之が安倍晋三と密談して国から「3兆円」を引っ張るまでの一部始終

 安倍・菅政権の「フィクサー」として政界を牛耳っていたJR東海名誉会長の葛西敬之。ついにはリニア中央新幹線のために、財政投融資3兆円が注ぎ込まれることになる。融資なので返済するとはいえ、市場金利より安く抑えられていることを思えば、金利分の国家のカネがJR東海につぎ込まれた、と見ることもできる。
ジャーナリスト森功氏の新刊『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動きが、生々しく明かされている。

             『国商 最後のフィクサー葛西敬之』連載第2回前編

 ◆ブレーンは財務省の事務次官ライン

 葛西は数多くの政府審議会の委員となり、霞が関の高級官僚たちと政策勉強会を兼ねた懇親会を開いてきた。なかでも葛西の大事にしてきた省庁が財務省であり、財務官僚には葛西を取り巻くブレーンが少なくない。ざっとあげれば、元国税庁長官の牧野治郎にはじまり、勝(かつ)栄二郎や香川俊介、岡本薫明(しげあき)といった事務次官ラインが葛西と懇親を深めてきた。

 1980(昭和55)年6月から82年6月まで2年間、防衛庁に出向して経理局会計課に勤めた牧野は思想的に葛西と近く、主計局総務課時代に公共事業担当として旧国鉄の窓口となる。その後、牧野は97年7月に主計局総務課長に就任し、24兆円にのぼる旧国鉄の債務処理を担った。

 JR東日本社長の松田昌士やJR西日本社長の井手正敬は、政府の主張したJRの債務負担法案に反対した。彼らは、株式を上場している民間企業が旧国鉄時代の債務を背負うのは株主に対して理屈が立たない、と主張した。

 ◆葛西の歯に衣着せぬ過激な発言

 ちなみにJR本州3社の株式上場は、JR東日本が93年10月、JR西日本が96年10 月、JR東海が97年10月という順番だ。その3社のなかで最後に上場したJR東海の葛西だけが、政府案に賛成した。JRによる債務負担は、国の財政をあずかる財務省にとっても好都合だ。結果、JR側の負担は政府案の半額にあたる1800億円で決着した。

 また75年大蔵省入省の勝は小泉純一郎政権時代、2年先輩の牧野に葛西を紹介され、国鉄改革を進めた自民党代議士の野呂田芳成(ほうせい)とも知り合いだったことから葛西と親しくなっていく。

 勝は民主党の菅直人内閣や野田佳彦内閣で財務事務次官となり、後輩次官となる香川を葛西に引き合わせ、さらに岡本へと省内の葛西人脈が引き継がれていった。

 勝は民主党政権で活動を止めていた「財政制度等審議会」(財政審)復活の声が高まったことを受け、事務次官退官の置き土産として復活後の財政審入りを葛西に働きかけた。

 財政審は政府予算や決算をはじめとする国の財政全般の審議をする財務大臣の諮問機関だ。勝から香川、岡本と葛西人脈が引き継がれていった財務省では、岡本が第二次安倍政権で財政審担当の主計局次長となる。

 葛西はその財政審で歯に衣着せぬ過激な発言をして政府に対する影響力を増していった。岡本は葛西が催した朝食会や夜の会合に呼ばれ、付き合いを深めていった。

 リニア新幹線に対する財投投入は、その岡本が官房長のときに決まる。むろんそれは関西出身の国会議員に迫られたからではない。第二次安倍政権時代のある官邸関係者が打ち明けてくれた。

 「早くから関西の自民党議員たちが、『リニアは大阪まで一気通貫で早く造るべきだ』と言い出してきたのはたしかです。しかしそれは前々からあった話でした。JR東海の副社長だった金子慎(しん)さんが自民党の集まりに呼ばれ、『財投は受け入れられません』と弁明していた記憶があります。大阪の早期開業についてJR東海は自民党議員に押し切られたわけではなく、むしろその逆。のらりくらりとかわしていました」

 ■記事後編【安倍政権が「最後のフィクサー」の“野望”に3兆円を注ぎ込むまでの「全内幕」】に続きます。

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【検証②】:「安倍政権最大の後見人」JR東海・葛西敬之が安倍晋三よりも昵懇だった“意外な政治家の名前”

2023-01-23 07:04:20 | 【経済・産業・企業・IT・ベンチャー・起業・インバウンド(訪日外国人客)事業】

【検証②】:「安倍政権最大の後見人」JR東海・葛西敬之が安倍晋三よりも昵懇だった“意外な政治家の名前”

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証②】:「安倍政権最大の後見人」JR東海・葛西敬之が安倍晋三よりも昵懇だった“意外な政治家の名前”

 2022年は、この10年のあいだ日本を動かしてきた「二人の大物」が続けざまに死んだ年として、後世語られるかもしれない。一人は安倍晋三。もう一人が、安倍のブレインにして安倍政権の「フィクサー」と呼ばれた、JR東海名誉会長の葛西敬之だ。

 講談社から12月14日に発売される本格ノンフィクション、

『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、硬派のジャーナリスト森功氏が、そんな葛西の知られざる素顔に迫る。JR東海は日本を代表する広告主のため、葛西については新聞テレビはもちろん、文春砲を筆頭とする週刊誌メディアもこれまで触れることができなかった。タブーの扉が、いま開く。   
                                                 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』連載第1回後編

 ◆政界の黒幕と呼ばれてきた大物財界人

 現首相の岸田文雄は葛西の訃報が流れた明くる5月28日、山梨県都留(つる)市にあるリニアの実験線を視察した。もとよりあらかじめスケジュールに入っていたのだろう。岸田は記者団を前に、未着工区間である名古屋~大阪間の環境影響評価(アセスメント)を進める、と次のように述べた。

 「(リニア中央新幹線の)全線開業の前倒しを図るため、来年から着手できるよう、沿線自治体と連携しつつ指導、支援していく」

 超電導リニアは、葛西の悲願であった。享年81。日本国有鉄道の民営化を成し遂げた「国鉄改革三人組」の一人と称された。国鉄民営化以降、JR東海を率いた葛西は近年、政界の黒幕と呼ばれてきた大物財界人である。

 ◆安倍のカムバックを強力に後押し

 葛西は2度首相の座に就き、日本の憲政史上最長となった安倍晋三政権における最大の後見人と目されてきた。それゆえ政界とのつながりが深いようにイメージされてきたかもしれない。だが、実のところはそうでもない。

 国鉄の民営化に奔走した頃は、自民党の運輸・鉄道族議員たちを動かした。半面、懇意の政治家はそう多くはない。最も篤(あつ)く結ばれてきた国会議員は、自民党と民主党を渡り歩いた与謝野馨(かおる)だ。与謝野との縁で安倍と知り合い、互いの親米、保守タカ派の思想が共鳴し合い、安倍を首相にしようと支援するようになった。

 葛西は小泉純一郎が安倍に政権を譲る少し前に国家公安委員に選ばれ、教育再生会議のメンバーとしてときの内閣との結びつきを深めていく。自民党が下野したあとの民主党政権時代にも、東日本大震災に見舞われた政府の政策に関与していった。葛西は福島第一原発事故により、経営危機に陥った東京電力の経営・財務調査委員会ならびに原子力損害賠償支援機構運営委員会の委員に就任する。そこでも独特の持論を展開した。

 「社会インフラである電力事業を政府の役人に任せきりではろくなことにならない」

 脱原発や電力自由化の気運が高まるなか、葛西はそこに異を唱え、むしろ原発再稼働の旗を振るようになる。そうして安倍の政権カムバックを強力に後押しし、実際にそれを実現させた。

 ◆閣僚や官僚の人事も葛西の指示だった

 第二次安倍政権の発足にあたり、安倍の側近として旧知の官邸官僚を送り込んだ。その一人が警察庁出身の杉田和博であり、経産省出身の今井尚哉(たかや)だった。警察庁でもっぱら警備・公安畑を歩んできた杉田は、国鉄改革時代から極左の労働組合運動と対峙してきた葛西にとって頼りになる友人といえた。

 また、今井は第一次安倍政権時代に事務担当の首相秘書官を務め、政権の奪還に汗をかいてきた。葛西が信を置く経産官僚の一人でもあり、交友を重ねてきた。ときに葛西は安倍から内閣の主要閣僚や官僚人事の相談を受け、アドバイスしてきたといわれる。

 葛西の悲願だった超電導リニアの実現は、安倍政権の経済政策アベノミクスにおける成長戦略の目玉に位置付けられた。リニア事業はここからまさに政治と一体化したビジネスとなる。財投という政府の資金を使うことになったJR東海は工事を急いだ。

 そして葛西と政権との蜜月は、安倍のあとを引き継いで首相に就いた菅義偉にも受け継がれる。岸田政権が誕生したあとも、葛西の影がさまざまな場面でちらついてきた。

 奇しくも岸田が参議院選挙に臨んだ投票日2日前の7月8日、安倍は奈良県近鉄大和(やまと)西大寺(さいだいじ)駅前で応援演説をしている最中に凶弾に見舞われ、命を落とした。葛西の死からわずかひと月半後の出来事である。この10年のあいだ、葛西と安倍の二人は日本の中心にいて、 この国を動かしてきた。それは疑いようのない事実であろう。

 一国の首相が「憂国の士」と敬愛してやまない葛西は、財界のなかでも類を見ない愛国者に違いない。半面、日本という国を舞台にビジネスを展開し、政府や政策を操ろうとしてきた。政策の表舞台に立たない黒幕だけにその実像はほとんど伝えられなかった。最後のフィクサーと呼ばれる。

 講談社から12月14日に発売される、

 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』は、葛西敬之の知られざる素顔に迫るノンフィクションである。

 ■森功著『国商 最後のフィクサー葛西敬之』講談社より12月14日発売!

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【検証①】:安倍晋三を裏で操った「最後のフィクサー」JR東海・葛西敬之の知られざる正体…安倍が「国士」と称えた男が最期に抱えていた“爆弾”

2023-01-23 07:04:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【検証①】:安倍晋三を裏で操った「最後のフィクサー」JR東海・葛西敬之の知られざる正体…安倍が「国士」と称えた男が最期に抱えていた“爆弾”

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証①】:安倍晋三を裏で操った「最後のフィクサー」JR東海・葛西敬之の知られざる正体…安倍が「国士」と称えた男が最期に抱えていた“爆弾”

 2022年は、この10年のあいだ日本を動かしてきた「二人の大物」が続けざまに死んだ年として、後世語られるかもしれない。一人は安倍晋三。もう一人が、安倍のブレインにして安倍政権の「フィクサー」と呼ばれた、JR東海名誉会長の葛西敬之だ。

 講談社から12月14日に発売される本格ノンフィクション、

 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、硬派のジャーナリスト森功氏が、そんな葛西の知られざる素顔に迫る。JR東海は日本を代表する広告主のため、葛西については新聞テレビはもちろん、文春砲を筆頭とする週刊誌メディアもこれまで触れることができなかった。タブーの扉が、いま開く。 
            『国商 最後のフィクサー葛西敬之』連載第1回前編

 ◆安倍が死ぬ1ヵ月半前に世を去った「フィクサー」

 葛西敬之(かさいよしゆき)が死の床についた。5月25日朝に息絶えたという。27日になって東海旅客鉄道(JR東海)が公表し、多くの人が新聞、テレビで訃報に接したが、ごく親しい知人は少し前から病状を知っていたようだ。安倍晋三もまた、その一人かもしれない。真っ先に国会内でこう哀悼の意を発表した。

 「濃密なおつきあいをさせていただき、本当に残念で、さみしい気持ちです。(故人は)ひとことで言えば国士で、常に国家のことを考えている人だった。安倍政権では有識者会議のメンバーとして集団的自衛権の行使を可能とする解釈の変更について、取りまとめをおこなっていただいた。先見性と実行力のある方で、心からご冥福をお祈りしたい」

 ◆死を覚悟していた

 唐突な死のように見える。だが、本人はすでに死を覚悟していたに違いない。実は葛西は6年前に間質性肺炎を発症し、余命宣告を受けていたという。訃報に接したあるJR関係者はこの間の事情について冷静に打ち明けた。

 「葛西さんは主治医から5年の命だと告げられていたと聞きます。余命はご本人も自覚されていました。死の宣告より、1年長く命がもったということでしょう。ご家族にもある程度の心構えがあったのではないでしょうか」

 葛西の命を奪った間質性肺炎は、肺の間質部分に炎症や線維化病変などが起きる疾患の総称である。病気の原因は多岐にわたり、現代医学でも解明できていない。皮膚や筋肉、関節、血管、骨などのたんぱく質に慢性的な炎症が広がる膠原病(こうげんびょう)、あるいは眩しい光を受けて目が痛くなるようなサルコイドーシスと呼ばれる疾患のあとに発症するとされる。

 原因が特定できない患者も数多くいる。原因を特定できない症状は特発性間質性肺炎(IIPs)と呼ばれ、難病指定されている特発性肺線維症(IPF)など7疾患に分類される。IPFと診断された後の平均生存期間は3~5年と報告されている。

 葛西は恐ろしい爆弾を抱えたまま病魔と闘ってきた。6年前にそう診断されたとなれば、間質性肺炎に見舞われたのは2016(平成28)年以前となる。

 奇しくもJR東海はその2016年の11月、リニア中央新幹線の建設費として国交省所管の独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(鉄道・運輸機構)に総額3兆円の財政投融資による長期借り入れを申請している。

 あれほど徹底的に政府の介入を嫌ってきた葛西が、なぜ旧国鉄時代に赤字の元凶と呼ばれた財投を受け入れたのか。ずっと謎だったが、それは当人の病気と無縁ではないように感じる。葛西は財投の受け入れと同時に、それまでの東京~名古屋間の開通を優先する方針から一転、東京~大阪間の全線開通の前倒しを表明した。

 ■記事後編『「安倍政権最大の後見人」JR東海・葛西敬之が安倍晋三よりも懇意にしていた“意外な政治家の名前”』に続きます。

●葛西敬之年表

●『国商 最後のフィクサー』章扉デザインを特別公開!

 

 ●葛西敬之ギャラリー

リニアを視察したレイモンド・フラット米国運輸長官と(2010年)phto by gettyimages
 
インドのシャルマ商工大臣(左)らとの会談の場にて photo by gettimages
葛西の「最後の夢」だったリニア photo by getyyimages
山梨県立リニア見学センター photo by gettyimaes
山梨県立リニア見学センター photo bygettyimages

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【HUNTER2023.01.16】:これが「コロナ治療薬」?冗談でしょう

2023-01-23 05:27:50 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【HUNTER2023.01.16】:これが「コロナ治療薬」?冗談でしょう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2023.01.16】:これが「コロナ治療薬」?冗談でしょう 

 新型コロナウイルスのワクチンを開発できなかった日本の製薬会社が、ついに治療薬の開発に成功したという。塩野義製薬が北海道大学と共同で開発した「ゾコーバ」である。昨年11月下旬に厚生労働省が治療薬として緊急承認し、医療機関への供給が始まった。

 本来なら、「これで一安心」と祝福したいところだが、この「コロナ治療薬」、どうもおかしい。コロナ患者の治療にあたっている医師たちがほとんど使っていないのだという。理由はハッキリしている。あまり効き目がないからだ。

 厚生労働省や塩野義製薬の発表資料をよく読むと、このコロナ治療薬「ゾコーバ」は1日1回服用すると、鼻水やせき、発熱などの症状が7日間ほどでなくなり、服用しない場合に比べて症状が1日早く治まるのだという。それって、個人差あるいは誤差の範囲内ではないのか。

 おまけに、この薬は「軽症や中程度の症状の患者用」で、重症化するリスクが高い患者には向かないのだとか。これでは、医師が処方したがらないのも当然だろう。12月30日付の朝日新聞によると、この薬の供給が始まってから1カ月ほどで処方されたのは7,700人余り。毎日20万人前後のコロナ患者が確認されていることを考えれば、「ほとんど使われていない」と言っていい。

 そんな薬を厚生労働省は塩野義製薬と事前に「100万人分購入する」と契約し、緊急承認した後、さらに100万人分、合計で200万人分も購入する契約を結んだ。常日頃、厚生労働省の仕事ぶりに首をひねっている筆者としては「また、税金の無駄遣いになるのではないか」と疑いたくもなる。

 新型コロナウイルスの感染症対策が急務なのは言うまでもない。従って、昨年5月に法律を改正して治療薬の「緊急承認制度」を作ったことまでは理解できる。「ゾコーバ」はその緊急承認制度が適用された第1号の治療薬である。

 だが、薬の調達は処方される量に応じて確保する、というのが常道ではないか。どの程度使われるか分からないうちから、「200万人分買います」と約束して税金を投入する必要がどこにあるのか。

 ましてや、塩野義製薬の「ゾコーバ」は日本国内で治療薬として緊急承認されただけで、アメリカなどでは治療薬として承認されていない。「効き目があるかどうか分からない」ような薬を承認しないのは当たり前だろう。

 コロナの感染が広がってから、政府は国産ワクチンの開発を支援するため、2020年度の補正予算に2,577億円、2021年度の補正予算に2,562億円を計上し、合わせて5,139億円の税金を投入した。にもかかわらず、国産のワクチンは開発できず、米英の大手製薬会社のワクチンを使うはめになった。5,000億円余りの補助金はムダ金になったと言うしかない。

 国産のコロナ治療薬の開発にも多額の税金が投じられている。その結果が「症状を1 日短縮するだけの治療薬」の開発である。しかも、それを気前よく購入する契約を結んだ。日本の医療を担う厚労省の幹部たちは、恥ずかしくないのだろうか。

 塩野義製薬のコロナ治療薬の開発経過を調べていて気になるのは、早い段階から政治家がうごめいている気配があることである。自民党の甘利明・元幹事長は去年の2月4日、この治療薬の薬事承認の手続き中に「(塩野義製薬の薬は)日本人対象の治験で副作用は既存薬より極めて少なく、効能は他を圧している。外国承認をアリバイに石橋を叩いても渡らない厚労省を督促中だ」と自身のツイッターに書き込んだ。

 治験の結果もまだ明らかになっていない段階で「効能は他を圧している」と書き込む神経にあきれる。塩野義製薬側から伝えられた情報をうのみにして発信したのだろう。政財官がどのように癒着しているか、問わず語りにその一端を語ってしまった、といったところか。

 ああ、また私たちの貴重な税金が政治家と企業、官僚の談合で消えていく。

(長岡 昇:NPO「ブナの森」代表)

長岡 昇(ながおか のぼる)
 山形県の地域おこしNPO「ブナの森」代表。市民オンブズマン山形県会議会員。朝日新聞記者として30年余り、主にアジアを取材した。論説委員を務めた後、2009年に早期退職して山形に帰郷、民間人校長として働く。2013年から3年間、山形大学プロジェクト教授。1953年生まれ、山形県朝日町在住。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・医療・新型コロナウイルスの感染拡大】  2023年01月16日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER2022.11.14】:佐々木允福岡県議に公職選挙法違反の疑い|田川市内に大量の違法ポスター

2023-01-23 05:25:20 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【HUNTER2022.11.14】:佐々木允福岡県議に公職選挙法違反の疑い|田川市内に大量の違法ポスター

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.11.14】:佐々木允福岡県議に公職選挙法違反の疑い|田川市内に大量の違法ポスター

 福岡県議会の佐々木允議員(田川市選出。民主県政クラブ)が、大量の違法ポスターを、選挙区である田川市内に掲示していることが分かった。前例のない悪質な売名行為ともとれ、公職選挙法違反に問われてもおかしくない事態だ。

 ■田川市内に氾濫する佐々木県議の顔と名前

 佐々木氏の身内が代表を務める政治団体が掲示しているのは、大書された佐々木県議の氏名と顔写真のアップが掲載された縦84㎝、横59㎝の大型ポスター。選挙区である田川市内には、下の写真のように“裏打ち”された佐々木氏のポスターが数えきれないほど掲示されている。

 ポスターの横にはやはり大きな字で『掲示責任者 佐々木まこと』とあるが、近くに寄ってみると、下の方に小さな書体で“リベラル福岡市民の会”とあり、続けて“街頭演説会 とき2023年3月25日(土) ところ伊田大橋交差点”の記載。さらに、なぜか佐々木氏とは別の掲示責任者の氏名と住所が記されている(下の画像参照)。

 ポスターの右下にある『田川のために。』には、“田川の未来を変えるには政治家の「思い」が大切です。16年の議員経験とクリーンでまっすぐな政治姿勢で、田川のため、皆さまと共に前に進んで参ります。”という文章が添えらえている。どうみても佐々木氏個人の宣伝文句だ。

 結論から述べれば、現認されている佐々木氏のポスターは、二つの点で違法。さらに、公選法の抜け道を使った「あくどい脱法行為」も疑われる。

 ■「裏打ちポスター」「掲示期間」の2点で違法

 公職選挙法は、政治家がその氏名や氏名を類推できる事項を選挙区内に掲示することを「売名行為」にあたるとして原則禁止にしているが、一定のルールを守った掲示物にだけは、公職の種類(国会議員、都道府県知事、都道府県議会議員、市長・市議、町長・町議など)によって設置数を決めた枚数が認められる。

 一般的には町中で見かける「看板」。これには大きさの規格があり、縦150㎝以下、横40㎝まで。しかも、当該選挙を所管する選挙管理委員会に枚数や設置場所を届け出て、交付された証票」を貼らねばならない。県議会議員なら政治家本人用が6枚、後援団体用が6枚の計12枚だけだ。前述したとおり、ベニヤ板、プラスチック板その他これに類するものを用いて掲示される政治活動用ポスター(いわゆる裏打ちポスター)は禁止である。

 上掲の写真が示しているように、佐々木氏の氏名と顔写真が大きく掲載された問題のポスターは、すべて「裏打ち」されたもの。公職選挙法は、政治家個人やその支援団体のものを除く政治活動用ポスターの掲示を認めてはいるが、「ポスターを掲示するためのベニヤ板、プラスチック板その他これらに類するものを用いて掲示されるもの」(同法143条16ー二)=「裏打ちポスター」は禁止。つまり、佐々木氏の顔写真と氏名が掲載された裏打ちポスターそのものが、違法とみなされる。

 次に違法性が問われるのは、政治活動用ポスターの掲示が許される時期。公選法の規定によれば、政治家個人が類推される掲示物の使用は、「地方公共団体の議会の議員又は長の任期満了による選挙にあっては、その任期満了の日の6月前の日から当該選挙の期日までの間」は禁止。福岡県議会議員の任期満了日は来年4月29日であることから、佐々木氏のポスターは、先月29日の段階で「違法」な掲示物となっている。

 そもそも、公選法は選挙区内の売名行為を禁止する目的で、政治家や支援団体の看板の大きさを規定し、設置枚数まで決めている。リベラル福岡県民の会という政治団体の活動を装って、事実上は佐々木氏の宣伝となっている問題のポスターは、そうした厳しい規制をすり抜けるための、法の抜け道を使った脱法行為に他ならない。

 佐々木氏のポスター掲示手法が容認されれば、国内すべての市区町村が、金持ち政治家のポスターだらけになってしまう。法令を作る側の立場であることを自覚せず、違法・脱法行為を行う人物が、まともな政治家といえるのだろうか。

 ■「リベラル福岡県民の会」とは

 では、違法ポスターを多数掲示している「リベラル福岡県民の会」とはいかなる団体なのか――?県選管に情報公開請求して入手した「政治団体設立届」によれば、同団体の設立は2014年(平成26年)10月15日(選管届出は17日)。代表者も会計責任者も佐々木氏の身内だ。

 県議会議員選挙に立候補すことを表明していた佐々木氏は、2015年(平成27年)1月に2期目の途中だった田川市議会議員を辞職している。リベラル福岡県民の会は設立当初、県議選を目ざすことを決めていた佐々木氏の支援を目的とした団体として発足し、数日後に活動目的から佐々木氏支援の文言を消す形で規約を変更していた。

 規約を変更してごまかしても、ポスターの掲示実態や政治資金の動きなどから、リベラル福岡県民の会が佐々木氏を支援する団体であることは疑う余地がない。同団体が設立された平成26年の収入は総額60万円だったが、全額が佐々木氏の寄附によるもの。27年50万円、28年10万円、29年20万円、30年20万円、令和元年40万円と毎年の収入のすべてを佐々木氏が賄い、支出の大半は「宣伝事業費」だった。佐々木氏のための宣伝事業費であったとみられる。

 下の写真のポスターは、小さく告知された街頭演説の実施日が「2020年3月30日」。佐々木氏が、少なくともこのはるか前の時期に、こうした違法ポスターを掲示していた証拠だ。

  ■答えに窮する佐々木県議

 11日、佐々木氏本人にポスターの違法性を認識しているのかどうか確認したところ、「ポスターが掲示期間を過ぎていることに気付いたため、2連ポスターを発注したところ」と説明。しかし、裏打ちポスターの違法性については「選管と協議しながらやっている」として、認めようとしなかった。

 佐々木氏は、かねてから周辺に「選管と協議してやっている」と話していたことが分かっている。この点について福岡県選管に事実確認をしたが、回答は「協議した事実は確認できない」。佐々木氏に選管とのやり取りについて伝えたところ、答えに窮したようで「協議して対応して参ります」という訳の分からないコメントが返ってきた。念のため、県選管に佐々木氏のポスターの画像データを示した上で、“このポスターを掲示していいかと判断を求められた場合、「はい、どうぞ」と言えますか?”と聞いたところ、間髪を入れず「言いません」――。あたり前である。

 公選法の趣旨をはじめ、政治家が守るべきイロハが理解できていないのなら、選挙に出る資格はあるまい。じつは佐々木氏の違法行為が、他にもあったことが分かっている。その証拠が下の写真だ。

 一見すると合法の立て看板のようだが、いずれも公選法が貼付を義務付けている選管発行の「証票」がない違法看板。つい最近まで田川市内に数多く設置されていたが、ハンターが今村寿人田川市議や二場公人市長の違法看板について報じた直後に、ほとんど撤去されている。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・地方自治・福岡県議会】  2022年11月14日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【HUNTER2022.10.27】:二場公人田川市長も公選法違反|いたるところに違法看板

2023-01-23 05:25:10 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【HUNTER2022.10.27】:二場公人田川市長も公選法違反|いたるところに違法看板

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.10.27】:二場公人田川市長も公選法違反|いたるところに違法看板 

 当選2回の市議会議員が、選挙区内に違法な政治活動用看板を多数設置していたことが分かった田川市で(⇒既報)、地方政治家の規範となるべき市長も、法を無視した看板を市内のいたるところに設置していたことが分かった。

 ■違法看板数十枚

 違法看板を設置していたのは、二場公人田川市長。25日に報じた今村寿人市議の違法看板を取材する中、ハンターの記者が、市内のいたるところに設置してある二場市長の看板のほとんどに設置の前提となる「証票」がなかったり、あっても有効期限が切れているものばかりであることに気付いた。看板のデザインは何種類もあり、新しく作るたびに替えたのではなく、古いものをそのままにして単に設置場所を増やしただけであることがうかがい知れる。

 設置可の掲示物であることを示すのが、当該選挙を管理する選挙管理委員会が発行する「証票」である。政治家とその後援団体などが政治活動のために看板を設置するためには、当該選挙を所管する選挙管理委員会に枚数や設置場所を記入した「証票交付申請書」を提出して、証票の交付を受けなければならない。

 証票は、市長及び市議については政治家本人用が6枚、後援団体用が6枚の計12枚。看板の大きさにも規格があり、縦150㎝以下、横40㎝までと決められている。証票」が貼られていない、あるいは有効期限切れの「証票」しか貼られていない看板は違法となる。

 二場市長の看板について改めて調べてみると、「違法看板」は分かったけでも数十枚。法の規定を守って有効期限内の証票を貼った看板は、1枚もなかった

 有効期限内の証票を貼った看板が1枚もないのは当然。二場市長とその支援団体は、少なくともここ数年、「証票交付申請書」を提出していなかったのだ。下がその証明である。

 ハンターは今月17日、今村市議と二場市長の看板設置状況を確認するため、田川市選管に両氏とそれぞれの支援団体が提出した「証票交付申請書」および「異動届」を開示請求した。その結果が上掲の「非開示決定書」(*赤い囲みはハンター編集部)。つまり、二場市長と彼の支援団体は、有効な証票を取得するための手続きを怠っていたということだ。これまでに確認できているのは、有効期限が「平成31年6月まで」の証票ばかり。市選管への確認で、二場氏の場合、令和元年6月から、少なくともハンターの記者が二場氏の看板をチェックした今月20日までの間、証票の交付申請が行われていなかったことが分かっている。

 今村市議の違法看板設置も悪質だったが、既定の証票を貼ったものが何枚かあったのは確か。しかし、確認できた二場市長の看板で有効期限内の証票を貼ったものはなく、より悪質と言うしかない。

 二場市長の政治姿勢を巡っては昨年8月、ハンターの調べで、同市長の陣営が後援会活動の実態を隠し、政治資金収支報告書に虚偽の記載を行っていた疑いがあることが判明(既報)。同月24日、報道を受けた形で、市長の支援団体「ふたば公人後援会」が2018年(平成30年)及び19年(平成31年)分の政治資金収支報告書を大幅に修正したことが明らかになっている。

 また、それより以前の同年6月にハンターが二場市長の「選挙運動費用収支報告書」を開示請求してまもなく、二場陣営が2年以上前の選挙収支について新たに複数回分の報告書を市選管に提出。その後さらに再修正するなどしており、でたらめな政治資金処理が常態化していたとみられている。違法看板といい、杜撰な政治資金処理といい、二場氏に規範意識が欠如しているのは確か。基本的なルールを平気で破る彼に、政治家を続ける資格はあるまい。

 ところで、違法看板を競い合うように設置していた今村寿人市議と二場氏は、どうやら特別な関係にある。下の写真はその証明のようなものだ。

 2枚の違法看板は、写真奥にある福祉施設の塀に設置されており、ここは今村市議の身内が理事長を、市議自身が理事を務めている社会福祉法人「里ごころ」が運営している施設だ。実は、同法人が別の場所で運営する施設の「土地」に、ある疑惑が存在する。その土地は、今村市議が専務取締役を務めている「里ごころ有限会社」に田川市が売却したもの。決裁権者は、言うまでもなく二場市長である。(以下、次稿)

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・行政 【行政ニュース・地方自治・福岡県田川市の二場公人市長を巡る数多くの疑惑】  2022年10月27日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【HUNTER2023.01.11】:右へ急旋回の岸田首相|「防衛費倍増」「増税」を争点に総選挙?

2023-01-23 05:24:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【HUNTER2023.01.11】:右へ急旋回の岸田首相|「防衛費倍増」「増税」を争点に総選挙?

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2023.01.11】:右へ急旋回の岸田首相|「防衛費倍増」「増税」を争点に総選挙? 

 昨年、唐突に右へと急旋回を図る形で「防衛費倍増」の方針を打ち出し、増税にも言及した岸田首相。正月4日に開いた年頭の記者会見会では、「増税前に選挙があることも可能性の問題としてあり得る」、「(解散総選挙は)専権事項として時の首相が判断する」などと発言。さらに「それまで(2025年秋の衆議院議員の任期満了)に、衆院選はいつでもあり得る」と踏み込んだ。解散をちらつかせて党内の引き締めを図ったということだろう。

◇   ◇   ◇

 こうした発言について、「岸田首相はうまくごまかしたつもりでしょうが、防衛費倍増はやる、解散総選挙で信を問う、増税もやるという思いがにじみ出たような会見だった」と感想を語るのは自民党の大臣経験者。別の若手議員も「いつ解散になってもいいように、新年からあいさつ回りの件数を去年の倍以上に増やしています。年内解散は確実でしょう」と危機感を隠せない。

 確かに、解散総選挙は総理の専権事項だ。しかし、岸田首相がやろうとしているのは防衛費倍増についての信を問う、いわば「防衛増税解散」であることを忘れてはならない。

 首相は就任時、子ども施策の予算倍増、脱炭素カーボンニュートラルを重視すると述べていた。だが、子ども関連予算はまったく手つかず、カーボンニュートラルについても大きな進展はない。「公約」にはなかった防衛費倍増を突然持ち出してその是非を問おうというのだから、どこから見てもおかしな話だ。

 会見当日の4日、首相はBSフジの番組に出演し、「(解散総選挙は)首相が判断すべきもので、いつでもあり得る」と同様の見解を繰り返した。この日、同じ番組に出演したのは連立を組む公明党の山口那津男代表。そしてもう一人は、何故か国民民主党の玉木雄一郎代表だった。

 いずれも、単独インタビューという形での番組出戦だったが、自・公プラス国民民主党という組み合わせが、永田町に「憶測」を呼ぶことになった。。

 昨年の国会で自公政権の予算案に賛成した国民民主党が、連立政権に参加するのではないかという話は消えていない。事実、昨年12月には時事通信が同党の連立参加を報じる記事を配信。こうした動きを肯定するかのように、国民民主の玉木代表は「今年秋までには解散総選挙がある」と自信ありげに断言している。

 この点について、ある官邸関係者がこう話す。

 「自民党の執行部と玉木氏はかなり通じている。それでなければ、時事通信があんな記事を書くはずがない。あの記事が完全に間違っていたら、時事通信は出入り禁止程度では済まない。しかし、時事通信には何のおとがめもなく、自民党の本部でも普通に取材している。要するに、岸田首相は低迷する支持率回復、防衛増税にあわせて、国民民主党を取り込むことも見据えているということです。ただ、支持率をみればわかりますが、国民民主党はメディアの世論調査で1%か2%しかない。これは、れいわ新選組や参政党と同じようなレベルです。どうも防衛増税だけではない狙いがある」

 かつては、玉木氏と同じ釜の飯を食っていた立憲民主党の幹部からも「昨年秋くらいから玉木氏の動きが明らかに変わってきた。自公政権に軸足を置き始めたのが同じ国会にいてよくわかる」といった声が聞こえてくる。

 現在、自民・公明を合わせると、衆議院と参議院で過半数をおさえており、ねじれはない。そこに、国民民主党の国会議員20人が加わると、憲法改正に必要な「3分の2」も視野に入る。自民党には、日本維新の会という、もう1枚のカードも存在する。

 「岸田首相に、安倍元首相の悲願だった憲法改正を実現させたいという強い思いがあるのは事実。その前に防衛増税という、憲法改正に匹敵する大きな政策をぶちあげた。国民民主党との接近は、防衛増税を想定してのもの。それがとん挫するなら維新にも手を伸ばすだろう。立憲民主党、共産党をのぞく大連立として、憲法と安全保障という2つの大きな山を乗り越えようとしているのではないか。そのためにはまず国民民主党を引き寄せたいということ。茂木幹事長ら執行部がその意を汲んで、玉木氏と頻繁に連絡を取っているというのが現状だろう。岸田首相が菅元首相とちょくちょく会うのは、明らかに維新対策です」(前出・自民党の大臣経験者)

 だが、この国とっての喫緊の課題は、新型コロナで破壊された経済の再生とコロナ後を睨んだ対策であり、さらには30年近くも放置されてきた賃上げ問題がある。少子・高齢化対策も待ったなしだ。それを無視してたまま防衛増税解散に打って出て、勝機はあるのか――?

 かつて、小泉純一郎という絶大な人気を誇る総理大臣が退任した後、安倍晋三→福田康夫→麻生太郎とほぼ1年おきにトップが変わった。最後はリーマンショックに対する経済対策の失敗が大きなポイントとなり、2009年には旧民主党が政権奪取に成功する。ある古参の自民党議員は、下野した当時を振り返ってこう嘆いた。

 「国民民主党を取り込むというが、玉木が20人全員を引き連れてくるなんて絶対にできない。半分も来ないんじゃないか。維新も連立となれば割れる可能性がある。岸田総理は解散総選挙の争点を防衛増税と語ったも同然だが、小選挙区制度においては1回の選挙で政権交代が起こりうる。増税が争点で勝てるわけがない。総理はそれが分かっていて、なぜ危ない橋を渡ろうとするのか……」

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・行政 【政治ニュース・岸田政権】  2023年01月11日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER2023.01.04】:笑撃!「噴飯もの」北海道警ヤジ訴訟提出動画を一挙公開

2023-01-23 05:23:10 | 【警視庁・警察庁・都道府県警察本部・警察署・刑事・警察官・警部・監察官室・...

【HUNTER2023.01.04】:笑撃!「噴飯もの」北海道警ヤジ訴訟提出動画を一挙公開

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2023.01.04】:笑撃!「噴飯もの」北海道警ヤジ訴訟提出動画を一挙公開

 2019年7月に札幌市で起きた首相演説ヤジ排除事件で、2人の排除被害者が北海道警察を訴えた国家賠償請求訴訟の控訴審が12月22日、札幌高裁(大竹優子裁判長)で初弁論を迎えた。排除に関与した警察官1人の尋問が行なわれたほか、控訴人の道警が新たに証拠提出した多数の映像の存在が明らかになり、弁論後の報告集会ではその荒唐無稽な内容に訴訟支援者らから大きな笑いが起こることとなった。

  •  

 ■つきまとい女性警官「ウィン・ウィン」の滑稽

 本サイトや北方ジャーナルで報じてきた通り、ヤジ排除事件の国賠訴訟が提起されたのは19年12月のこと。「安倍やめろ」「増税反対」などと叫んで安倍晋三元首相の演説現場から排除された札幌市の大杉雅栄さん(34)と桃井希生さん(27)の2人が、排除行為は言論・表現の自由侵害にあたるとして道警に損害賠償を求めたものだ。被告の道警は排除の根拠として警察官職務執行法を引き合いに出し、当時の演説現場が「危険な状態」にあったため同法に基づいて大杉さんらを避難させ(同4条)、あるいは制止した(同5条)と主張し続けたが、その「危険な状態」を裏づける客観的な証拠を示そうとせず、匿名の「ヤフーコメント」を証拠提出するなどで原告らをしばしば呆れさせた。

 こうした立証活動が奏功することはなく、道警の主張をことごとく一蹴した一審の札幌地裁(廣瀬孝裁判長)は22年3月、警察官らによる表現の自由侵害を認めて道警側に計88万円の賠償を命じる判決を言い渡す。完敗を喫した道警は直ちに控訴。これにより争いは上級審に持ち込まれ、札幌高裁で非公開の進行協議期日が続いていたところだった。

 控訴審初弁論では、女性警察官1人の証人尋問が行なわれた。証言に立ったのは「増税反対」と叫んだ桃井さんの行動を制限し、約1時間半にわたってつきまとい続けた警察官の1人。道警側代理人による主尋問では何度も「(桃井さんは)激しく暴れていた」「大声で叫んでいた」「安倍総理に固執していた」などと発言し、道警の主張する「危険な状態」を強調し続けた。

 その警察官が“自爆”といえる発言を残したのは、一審原告側代理人による反対尋問が終盤にさしかかったころのこと。

――桃井さんが「自民党反対」「安倍やめろ」とか「増税反対」などの発言を聴衆の近くですることによって、トラブルが生じると思ったんですか?
女性警察官:はい、そうです。

――そうすると、桃井さんの想定される発言内容がその場にふさわしくないという考えだったわけですか?
女性警察官:……うーん、……その場にふさわしくないって……

――つまり、聴衆とのトラブルを引き起こしかねない内容だったと?
女性警察官:……そう、ですね。あとはあの、止めた警察官にまた暴れたりとかして、ぶつかったとか、そういうことがあったら困るなあと思ったんですよね。

――桃井さんの発言が大声だったということではなくて、内容が自民党支持者の聴衆を刺激する内容だったから追従したんですよね?
女性警察官:うーん……。そう、……そうですね。はい。

 現職の公安警察官が「発言内容によって行動を規制した」事実を認めてしまった瞬間だった。さらにこの後、事件当時に自ら口にした発言について問われた警察官は、次のような意味不明の弁明を繰り出すことになる。

――あなたは、桃井さんに「大声を出さないように」と求めた発言の流れで「ウィン・ウィンの関係になりたい」と発言しています。この「ウィン・ウィン」っていうのは、双方に利益がある関係という意味ですよね?
女性警察官:…ええと、たぶん会話の前後で私が話してると思うんですけど、……そのなんか、ありますか、『ウィン・ウィン』って言った場面とか?

――いや、記憶でけっこうですよ。「ウィン・ウィン」って言った記憶はありますよね?
女性警察官:はい、はい、あります。

――桃井さんに「大声を出さないで欲しい」とあなたがお願いしている場面で「ウィン・ウィン」と発言してます。
女性警察官:あ、そうです。はい。

――だから、あなたにとってのウィンと桃井さんにとってのウィン、両方に利益がないと成り立たない会話だと思うんだけど、双方の利益とは何ですか、という質問です。
女性警察官:あ、私のウィンじゃないんですけど、彼女のウィンはあの、私たちについてこないで欲しいとかいろいろあると思うんですけど、たぶんその前段で『周りの人がちゃんと安全に演説とかを聴ける自由も守ってあげたいよ』というような話をたぶんしてると思うんですよね。それと彼女のウィンとで、ウィン・ウィンっていう。……親しみを込めて、若い人の間で流行ってた言葉だから、ちょっと近づこうと思って、そういう言い方をしたんです。

 反対尋問を担当した小野寺信勝弁護士(札幌弁護士会)は、同日午後の報告集会で次のような率直な感想を述べている。
 「正直、ちょっとよくわからない。今日の彼女の尋問を聴いて『排除もやむなし』と思った方は、おそらくいないと思います」

 ■架空事件動画を税金で制作

 今回の控訴にあたり、道警はこの警察官を含む複数の証人を申請したほか、一審では採用を求めなかった新たな証拠を提出することになった。その多くを占めていたのが、独自に制作した映像の数々。具体的には、排除当日に“起きていたかもしれない出来事”を再現した映像作品だ。つまり道警は「もしもヤジの主を排除していなかったらこんな危険なことが起きていた」という主張を補強するため、架空の危険な出来事を映像化して裁判に提出していたのだ。

 たとえば、下の〈動画1〉は、大杉雅栄さんが選挙カーに向かってボールなどを投げつける様子を“再現”した映像。繰り返すが、実際にはこのような事件は起きておらず、当時の大杉さんは飽くまでヤジを飛ばしたのみ。

動画プレーヤー
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 〈動画1〉

 さらに次の〈動画2〉では大杉さんが警察官の制止を振り切って選挙カーの屋根に上ろうとする場面が、また〈動画3〉では同じく候補者名の書かれた垂れ幕を取り去る場面が再現されている。撮影場所は、札幌市南区の道警機動隊庁舎前。当時の警察官や大杉さんなどを演じているのは警備部門の現職警察官たちだ。

動画プレーヤー
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〈動画2〉
動画プレーヤー
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〈動画3〉

これら“架空の事件”は以上の3種を含めて全8パターン“創造”され、1パターンにつき3カ所のアングルから各場面が撮影されることになった(ボールなどを投げる様子を選挙カー側から撮った下の〈動画4〉や、車に上る大杉さんを別角度から撮った〈動画5〉など参照)。

動画プレーヤー
 

〈動画4〉

動画プレーヤー
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〈動画5〉

 いうまでもなく、これらすべては税金を使って撮影されたもので、各登場人物を演じる警察官たちの人件費ももちろん税金由来だ。

 初弁論後の報告集会で映像の一部を視聴した支援者らはこれを「噴飯もの」と評し、当事者の大杉さんも次のように皮肉ることになった。

 「ぼくは本当に『道警ってどこまでギャグセンスが高いんだ』と思ったんです。道警は、一審でヤフーコメントを証拠提出するっていう信じがたいことをして我々に大きな笑いをもたらしてくれたんですけど『二審はそこまで面白くないのかなあ』と思ったら、あの再現動画が出てきて……」

 一連の映像は、大杉さんが論じる通り笑い飛ばしておくのが正しい見方なのかもしれない。だが控訴後に提出された映像は、必ずしもこのような馬鹿馬鹿しいものばかりではなかった。

 すでに述べた通り、道警は排除当時の演説現場が「危険な状態」にあったと主張し続けている。だが札幌地裁の国賠一審では、これを客観的に裏づける証拠が提出されていなかった。今回の控訴審では、これが初めて陽の目を見ることとなる。道警が排除当日に撮影していた自前の映像が、ようやく公開されたのだ。

 道警はなぜ、今になって新たな映像の存在をあきらかにしたのか。それを語るにはまず、問題の映像を実際に観てもらう必要がある。

動画プレーヤー
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 この動画は、JR札幌駅前で演説する安倍氏に大杉さんがヤジを飛ばす様子を、選挙カー側から捉えた映像。開始から7秒ほどが過ぎた後、ある事件が起こる。画面右端でスマートフォンの自撮り棒を持っている男が、左手で2回、大杉さんの身体を強く押す行為に及ぶのだ。道警の主張によれば、この男は当時の参議院議員候補・高橋はるみ前北海道知事の選対事務所関係者で、当日は安倍氏らの演説を動画撮影してフェイスブックで生配信していたところだったという。

 道警がこれを証拠提出した理由は、繰り返しになるが、現場が「危険な状態」にあったことを示すため。ここでは、選対事務所の男と大杉さんとの間でトラブルが起きそうになっていたと主張したいようだ。実際、男はすでに暴力を振るっており、そういう意味では一定の「危険」があったといえる。

 だがそれならば、排除すべきは暴行の被害を受けた大杉さんではなく、暴力をふるった男のほうではないのか。万が一暴行の瞬間が確認できなかったとしても、2人の間に割って入るなどの対応もできた筈だ。ところが映像からわかる通り、現場の警察官たちは男の暴力行為には眼もくれず、問答無用で被害者の大杉さんに掴みかかり、現場から離れたところへ引っ張っているのだ。

 察しのよい読者ならば、これで道警が映像を封印し続けてきた理由がわかるだろう。暴行の公訴時効は3年。排除事件が起きたのは19年7月で、仮に先の男の行為が罪に問われる可能性があったとしても、22年7月には丸3年の節目を迎えることになっていた。つまり道警は、あきらかな暴力事件の時効成立を待って当時の封印映像を解禁し、その映像を臆面もなく自らの裁判に証拠提出してきたわけだ。

 これだけで充分に驚くべき立証活動だが、同じ趣旨で提出された映像はもう一つある。

動画プレーヤー
<video id="video-15813-7_html5" class="wp-video-shortcode" src="https://news-hunter.org/wp-content/uploads/2022/12/%E5%8B%95%E7%94%BB7.mp4?_=7" preload="metadata" width="1376" height="776"></video>
 
 この動画は、演説現場から排除された大杉さんが遠くの選挙カーに向かって「安倍やめろ」と叫び続ける場面を捉えたもの。画面右端に写る黒上着の短髪の男が、その大杉さんを睨みつけながら「選挙妨害やめろ」と怒鳴っているのがわかる。ほどなく、画面中央にいる女性がスマートフォンを高く掲げ、男を撮影しようと試みるのだが、それに気づいた男はどうしたか。女性の正面に回り込み、スマホを持つ手をねじり上げる暴力行為に及ぶのだ。

 ここでも警察官らは大杉さんのみに眼を向け、男の暴力を不問に付している。はからずもこの動画により暴力行為が裏づけられることになったわけだが、暴力の主は今後も決して罪に問われることがない。警察からなんら咎めを受けないまま、すでに3年が過ぎてしまったからだ。

 一審原告の桃井希生さんは「道警は一審で敗けたヤバさを感じていないのか」と首を傾げる。

 「再現動画にしても30人ぐらい出ているやつがあって、その費用も税金ですし、こんな人たちが私たちの命とか自由を奪う権利を持っているって…。裁判で道警が何か主張するたびに、ちょっとずつ社会の信頼を失っているなあと思います」

 排除事件後から3年半を過ぎてなお続く国賠訴訟は、今年3月7日の第2回弁論で終結し、年度明けにも二審判決に到る見込みだ。

 (小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・2019年7月に札幌市で起きた首相演説ヤジ排除事件】  2023年01月04日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER2023.01.06】:10増10減で試される岸田首相の「決める力」

2023-01-23 05:22:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【HUNTER2023.01.06】:10増10減で試される岸田首相の「決める力」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2023.01.06】:10増10減で試される岸田首相の「決める力」

 年末の土壇場で、復興相だった秋葉賢也氏と差別的な言動が問題になっていた総務政務官の杉田水脈氏が更迭された。岸田文雄首相が、年明けの通常国会を乗り切るため、重要日程がすべて終了した年末のどさくさに紛れて人事に踏み切ったという見方が大半だ。「任命責任を重く受け止めています」と記者会見で述べた岸田首相だが、何度も繰り返されるこのフレーズを信じる国民は少数だろう。

 その岸田首相が巻き込まれるのを避けたいと考えているのが、「10増10減」に伴う衆議院の選挙区調整である。

 ■注目集める安倍氏亡き後の山口県

 「誰も岸田首相の聞く力なんて信用してませんよ。聞くだけでなにもしない。それって力じゃないでしょう」と話すのは、二階派の国会議員だ。年明けの通常国会では、予算案に加えて旧統一教会への解散命令や防衛費増税などの難題が山積する。そこに、極めてやっかいな判断が求められるのが、衆議院の10増10減である。

 自民党は昨年12月、10増10減の対象となる小選挙区の支部長を発表したが、定数が1減となるのは10県のうち、宮城、滋賀、和歌山、山口、長崎の5県はすべての支部長決定が先送りになった。広島なども調整がついていない。

 一方、今年4月には安倍晋三元首相亡き後の山口4区や岸本周平氏が県知事に転出した和歌山1区、政治資金疑惑で東京地検特捜部の捜査を受け議員辞職した薗浦健太郎氏の千葉5区などで行われる予定の補欠選挙は、現行制度のまま執行されることになる。10増10減が実現しても、衆議院の解散総選挙がない限り、補欠選挙は対象外となっているためだ。

 そうした中、安倍元首相のおひざ元だった山口4区にあった「安倍事務所」が年末に閉鎖された。「待望論があった昭恵夫人の出馬も結局はダメになった。安倍家から後継者が出ないから仕方ない。寂しい年末だ」と安倍元首相の後援者が、消え入りそうな声で話す。

 安倍事務所が閉鎖されても自民党として不戦敗は許されない。安倍元首相に近い下関市議の吉田真次氏を擁立することになった。しかし、山口4区は10増10減で山口3区と一体となることが確実。現状、安倍王国のままの山口4区で吉田氏の勝利が揺らぐことはないが、解散総選挙があれば山口3区を地盤とする林芳正外相との選挙区調整となる。仮に補選で当選しても、実績の乏しい吉田氏は不利とみられている。その点については、安倍派の国会議員でさえ顔を曇らせる。「今の時点で新山口3区の支部長なんて決められるわけがない。吉田氏は補選に勝てば安倍元首相の名代です。やすやすとは引き下がれないが……」

 ■二階支配の和歌山で虎視眈々の世耕氏

 山口以上に大きな混乱が予想されるのは、和歌山1区の補欠選挙だ。自民党は、2021年の総選挙で岸本氏に敗れた門博文元衆院議員を擁立する見込みだというが、関係者の間では、世耕弘成参院幹事長が補選を機に衆院に転出するのではないかとの情報が駆け巡っている。

 1減となる和歌山は、現在の1区の変動は少なく、2区と3区がひとつになる形だ。世耕氏にとってゆかりの深い地域である和歌山3区は、二階俊博元幹事長の選挙区でもある。世耕氏は新和歌山2区を狙いたいが、2区には石田真敏元総務相がいる。「そこで」と、世耕氏の後援会関係者が打ち明ける。

 「二階先生は『喧嘩上等、やってやる』というタイプ。世耕氏は真逆で波風を立てることを避ける。二階先生や石田氏という大物2人を相手にするのは厳しい。そこで、和歌山市内にも事務所を置いていることから、和歌山1区の補選に出て、勝利して新和歌山1区に横滑りを狙うべきだと、後援会が後押ししているんです」

 だが、門氏は二階氏の側近。地元の県議は次のように危惧する。
「二階氏も門氏をなんとか国政に戻したがっている。補選で当選すれば、解散総選挙の場合、門氏は小選挙区で出馬できなくとも1度は比例優遇も認められる公算が大。門氏は二階派なので派閥としても好都合だ。ただ世耕氏も総理を狙うというなら、そろそろ重い腰をあげないといけない。仮に世耕氏が補選に手を上げて門氏と激突すれば、二階先生との代理戦争が勃発する」

 ■首相の地元にも火種

 総務相を“クビ”になった寺田稔氏の広島5区も支部長発表が見送られている。広島の1減によって、広島4区と広島5区が合体して新広島4区となる。そこを岸田側近とみられていた寺田氏と現在の広島4区の現職で茂木派の新谷正義氏が争うことになるのだが、寺田氏は分が悪い。「寺田氏が総務相になったこと、おまけに総裁派閥の岸田派とあって、新広島4区は決まったも同然との感じだった。それが、政治とカネのスキャンダルで寺田氏が吹っ飛んだ。イメージが悪くなった寺田氏ではなく新谷氏でという意見が強い」(自民党の広島県議)

 寺田氏は、義理の祖父が池田勇人元首相というサラブレッド。しかし、亡くなった人物を会計責任者として政治資金収支報告書に記載するなど、違法性が問われる政治資金処理に不信感は根強い。また、広島は3年前の参議院選挙で河井克行・案里夫妻の公職選挙法違反事件が記憶に新しい土地だ。すでに、寺田氏は市民団体から政治資金規正法違反などで刑事告発されており、広島地検が捜査に乗り出せば、刑事訴追される可能性も十分にある。仮に不起訴となっても、検察審査会に申し立てられて「起訴相当」という議決になることも想定できる。事実、菅原一秀氏は検察審査会の手によって不起訴から一転して略式起訴となり、議員バッジを失い、公民権停止になった。

 岸田内閣の支持率低迷が続いており、首相が早期の解散総選挙に打って出るのではないかという声も根強い。自民党のある閣僚経験者は、次のように懸念を示す。
「解散総選挙になった場合、10増10減の選挙区調整を決断しなければいけない。聞くばっかりで閣僚の更迭すら的確に決断できない岸田首相に、かつてない難しい選挙区調整を決めることができるのか疑問だ。事と次第によっては、二階さんや世耕さんという大物はもちろん、それぞれの所属派閥までも敵にまわすことになる。とはいえ、ズルズルと先送りすれば、支持率は下がるばかりで何もできなくなる。大丈夫なのかねぇ」

 岸田首相は、何人もの議員の政治生命がかかった10増10減という難題に、「決める力」を発揮できるのか――?

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・行政 【政治ニュース・国会・衆議院「10増10減」に伴う選挙区調整】  2023年01月06日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER2023.01.05】:カネまみれ五輪、裁判で浮き彫りになった森元首相の存在

2023-01-23 05:21:50 | 【事件・犯罪・疑惑・詐欺・旧統一教会を巡る事件・ネット上の誹謗中傷他】

【HUNTER2023.01.05】:カネまみれ五輪、裁判で浮き彫りになった森元首相の存在

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2023.01.05】:カネまみれ五輪、裁判で浮き彫りになった森元首相の存在

 東京五輪・パラリンピックの舞台裏で起きた贈収賄事件。スポンサーやライセンス商品の選定で便宜を図ってもらおうと組織委員会の理事だった高橋治之被告に賄賂を渡したとして、贈賄罪で逮捕された紳士服大手「AOKIホールディングス」の前会長・青木拡憲被告ら3人の初公判が先月22日に東京地裁で開かれ、3被告とも検察の起訴内容を認めた。検察側の冒頭陳述や関係者の供述調書から明らかになったのは、森喜朗元首相の事件への関与だった。

 ■冒頭陳述で明らかになった森元首相の存在

 青木被告らは、大会のオフィシャルスポンサー選定や公式スーツのライセンス使用を認めさせようとして高橋被告を頼った。その見返りが、2017年10月から2022年3月にかけて高橋被告の会社「コモンズ」に送金された5,100万円だとみられている。時効の関係で立件された贈賄額は2,800万円となったが、冒頭陳述や証拠採用された供述調書から、高橋被告の背景に、組織委員会の会長を務めていた森喜朗元首相の存在があったことが分かった。

 冒頭陳述で検察側は、理事会の決議で森氏にスポンサーなどの決定が一任されており、その森氏はマーケティング担当理事の高橋被告にスポンサー集めを任せていことを明かしている。

 高橋被告が紹介したスポンサー候補は、組織委内部で「高橋理事案件」として特別扱いされ、できる限り実現するよう配慮されていたという。その一つが、青木被告関連の事案であり、次々に摘発された他の事件にも発展していた。

 高橋被告は、以前から親しかった青木被告に「TIER3のカテゴリーなら5億円か6億円の協賛金でスポンサーになれる」と持ちかけたとされる。通常10億円以上とされていたスポンサー料からみれば、ほぼ半額。青木被告らは、最大の商機だと捉え、高橋被告と面会していた。この際、「他のスポンサー企業が支払う協賛金額を下回る見込み」と伝えられていた。

 高橋被告は、部下に自身の意向通りに事が運ぶよう命じたが、その前に立ちふさがったのが権限を有する森氏だった。

 「別のスポーツイベントに関連して森会長と青木会長の間に誤解がある」(冒頭陳述より)と判断した高橋氏は、2017年7月3日に自身の経営するステーキ店「そらしお」において、森氏、青木被告らの会談をセットし、誤解を解く工作を行っていた。その直後、組織委の「優先順位検討会」でAOKIの優先度がアップ。同年5月30日には森氏が、AOKIの5億円という格安スポンサー料契約を了解していた。

 その後青木被告らは高橋被告に、公式スーツ採用にあたっての取り計らいも要請。2018年9月5日、森氏、青木被告、高橋被告らが再度会食し、森氏に「要望事項8項目の書面を渡し、高橋被告の後押しを依頼した」ことも、冒頭陳述で述べられている。

 冒頭陳述を通じて明確になったのは、森氏が、高橋被告とともに青木被告らから請託を受ける立場だったということ。青木被告の要望は森氏をバックにした高橋被告が実現させ、森氏はその後、青木被告から「入院のお見舞い」として200万円を受領していた。一般的な見舞い金からすれば、桁違いの金額だ。

 AOKIの特別扱いは、他にもあった。東京五輪・パラリンピックが新型コロナウイルス感染拡大で1年延期となった際、すべてのスポンサー企業は追加協賛金1億円を求められた。だが、青木被告は高橋被告に泣きを入れ、最終的には1,000万円の追加金に落ち着いていた。

■森氏を逃した特捜部

 公判では、起訴事実を全面的に認めている青木被告らの、証拠採用された供述調書の朗読も行われた。森氏に高橋被告を推薦したのは、元JOC会長で組織委員会副会長だった竹田恒和氏。同氏は供述で「組織委員会にはスポンサーや、マーケティングに詳しい理事がいませんでした。私が電通で詳しい高橋さんがどうかと推薦。理事になった」と高橋氏が組織委の理事になったいきさつを説明。一方、森元首相は「高橋さんは、スポーツビジネスに詳しく、知見がある。スポンサーとのライセンス契約に関する電通とのパイプ役になってほしいと考えた。はやり電通出身が理事にも必要ではないかと思いました。高橋被告には(金銭問題など)よからぬウワサもあるが、広告業界での人脈や実績もあり、やってくれるはずと信用して理事に推した」と供述していた。

 高橋被告、青木被告との会食について森氏は、「会食した時、青木被告の印象はよいものでした」とスポンサー選定にいたった経緯も語っている。

 東京地検特捜部の捜査に、当初は容疑を否認していた青木被告。しかし被告人質問では一転、疑惑が拡大したことを受け「証拠はシュレッダーにかけろ」「手帳など、危ないものは燃やせ」などと部下に命じていたを、青木被告自身が認めている。

 その青木被告の供述調書によれば、森氏との会談について「高橋被告からの勧めで会食をしました。なんだかんだ言っても最後は森さんだと高橋被告は言っていました。そう私も思いました。森さんに好印象を持ってもらわねばと(思った)」と、高橋被告ではなく森氏こそが最高権力者だと認識していたことを自白。10億円以上とされるスポンサー料が半額程度になったことについては、「本当の正規の金額では、大き過ぎてうちでは無理でした。そんな(金額が出せる)力はありません」などと、事実上高橋被告に賄賂を贈った理由を明かす供述を行っていた。

 青木被告の初公判を見ていると、なぜそこに森氏が「被告」として名を連ねていないのか首をひねりたくなるほどだ。森元首相は、2度も高橋・青木両被告との会談に同席し、その場で請託の証拠ともいえる書面まで高橋被告には手渡されている。なぜ罪に問われないのか――?その疑問に対し、ある捜査関係者は、苦虫を嚙み潰したような顔でこう話す。

 「森元首相には破格の見舞金とはいえ、200万のカネの動きしか見えなかった。確かに、最高決定権は元首相にある。しかし贈収賄事件とするには理由に乏しく、金額も低い。高橋被告から森元首相にカネが渡ったという供述があれば、切り込めたのだが……」

 「見舞い金」名目で青木被告から森氏に渡ったカネは確かに200万円だ。事件化するには額が小さいというが、庶民にとっての200万円は大金。盗めば必ず捕まるだろう。現に、これまでに全国で立件された地方公務員や首長などの事件を見れば、数十万円でも贈収賄事件となっている。高橋被告が青木被告のスポンサー料を半額にするにあたっては、最終的に森氏の判断が必要だったと検察は冒頭陳述で指摘している。特捜部はいったい、どこをみて捜査をしていたのか――。

 今からでも遅くない。五輪を汚した疑いがある森元首相や竹田元JOC委員長について、再捜査すべきだろう。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・東京五輪・パラリンピックの舞台裏で起きた贈収賄事件】  2023年01月05日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【HUNTER2022.11.03】:五輪疑惑で注目集める竹田恒和元JOC会長

2023-01-23 05:21:40 | 【事件・犯罪・疑惑・詐欺・旧統一教会を巡る事件・ネット上の誹謗中傷他】

【HUNTER2022.11.03】:五輪疑惑で注目集める竹田恒和元JOC会長

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.11.03】:五輪疑惑で注目集める竹田恒和元JOC会長 

 東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、広告大手「ADK」とぬいぐるみ製造業の「サン・アロー」から約5,400万円の賄賂を受け取ったたとして、東京地検特捜部は19日、受託収賄容疑で大会組織委員会元理事・高橋治之容疑者(78)を再逮捕。贈賄側のADKホールディングス社長、植野伸一容疑者ら3人も逮捕された。

 だが、いま注目を集めているのは高橋容疑者ではなく、日本オリンピック委員会(JOC)の元会長、竹田恒和元会長の関与だ。

◇   ◇   ◇

 ADKは、高橋容疑者を通じて駐車場大手「パーク24」のスポンサー参入を後押しした。約4,000万円の報酬がADKに渡ったが、半分の2,000万円は高橋容疑者側に支払われた。両者の仲介をしたのが、パーク24の社外取締役だった竹田氏ではなかったのかとされるているのだ。

 「竹田氏は、連日東京地検特捜部に呼ばれて事情聴取を受けている。竹田氏のXデーまで流れたこともあった。11月はじめが高橋容疑者らの勾留期限となる。その間に、竹田氏が逮捕されるかどうかが最大の山場だ」と東京地検に詳しい関係者は話す。

 高橋容疑者は、紳士服メーカー「AOKIホールディングス」や出版大手 「KADOKAWA」、大手広告代理店「大広」と3つのルートで3度の逮捕済み。今回の4回目で、収賄金額は1億円を超えた。それでも、否認を続けている高橋容疑者。特捜部経験者の弁護士は、こう話す。

 「高橋容疑者にすれば、『世話をした場合のお礼は業界の慣例であって何が悪いのか』というような主張をしている。理事という立場でのお礼はもらっていないということだ。だが、4回も逮捕されて、すべてで無罪を勝ち取るというのは非常に難しい。すでに贈賄側の被告らで保釈を認められている人間がいるのは、彼らが高橋容疑者の関与や賄賂性を認めたから。そこでガッチリ固められていると、どれだけ無罪主張をしても、すべて無罪にするのは至難の業。このままいけば、すべてを主導した高橋容疑者が一番悪いというストーリーになるだろう。なぜ、高橋容疑者はそこまで頑なに頑張るのか分からない」

 全面否認の高橋容疑者だが、このままいくと保釈は認められず、公判前整理手続きに入ることとなる公算が大で、そうなると裁判がはじまるまで最低2年程度はかかる見込みだ。その前に贈賄側被疑者の裁判が先行し、次々と認めて執行猶予付き判決が出るはず。高橋容疑者に対する検察側の求刑は、少なくとも5、6年ほどにはなるとみられており、そんな中で無罪を勝ち取るのは、極めて困難だ。

 これまで浮上した竹田氏、そして森喜朗元首相という大物も特捜部から事情を聞かれている。また、神宮外苑再開発についても、特捜部はすでにゼネコン関係者に事情聴取を開始している。

 進められている計画は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を移転して3棟の高層ビルを建設するというもの。三井不動産は、高さ185mのビルを建設する計画で、伊藤忠商事も現在の本社ビルを高さ190mに建て替える予定だ。

 「神宮の森」と呼ばれ自然豊かな場所だが、この計画では1,000本以上の樹木が伐採される。市民の反対もあり簡単にはいかないはずの計画がスムーズに進んだのは、“政治の関与があったからではないか”との疑惑が浮上しており、特捜部が捜査に乗り出している。その件では、森氏と竹田氏に加えて菅義偉元首相の名前まで浮上、秩父宮ラグビー場の駐車場運営は竹田氏が社外取締役のパーク21が請け負っているというのだから、疑いの目が向くのは当然だろう。

 「高橋容疑者の1億円を超える収賄は、『森さんと竹田さんの威光があったからこそ可能だった』ともいわれている。賄賂の中から森氏や竹田氏に渡ったカネがあったのかどうか――。さらには、特捜部が神宮外苑再開発に着手するのかどうか――。高橋容疑者が否認を続けている背景には、よほどの何かがあるはずですが・・・」(特捜部経験者の弁護士)

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・東京五輪を巡る数多くの疑惑】  2022年11月03日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【HUNTER2022.09.13】:【汚れた五輪】拡大する汚職の範囲|浮上した森喜朗元首相の疑惑

2023-01-23 05:21:30 | 【事件・犯罪・疑惑・詐欺・旧統一教会を巡る事件・ネット上の誹謗中傷他】

【HUNTER2022.09.13】:【汚れた五輪】拡大する汚職の範囲|浮上した森喜朗元首相の疑惑

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.09.13】:【汚れた五輪】拡大する汚職の範囲|浮上した森喜朗元首相の疑惑 

 9月6日、東京地検特捜部は東京オリンピック・パラリンピックの汚職事件に絡んで、大会組織委員会の元理事・高橋治之容疑者を再逮捕した。大手出版社で上場企業でもある「KADOKAWA」から6千900万円の賄賂を受けとった受託収賄の容疑だ。

 特捜部は、KADOKAWAの芳原世幸元専務と元担当室長馬庭教二容疑者を贈賄容疑で、高橋容疑者の電通時代の後輩でコンサルタント会社「コモンズ2」の社長深見和政容疑者も共犯として逮捕している。捜査網は、どこまで広がるのか――?

 ■異例の3度目逮捕か?

 KADOKAWAは、出版業界に東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー枠がないことから、高橋容疑者に新設を依頼。その対価として、賄賂にあたるとみられるカネををコモンズ2に支払ったとみられている。

 「安倍晋三元首相の国葬が目前に迫る中で、東京地検特捜部はどこを狙っているのだ」と苛立つのは自民党の幹部。高橋容疑者はこれで2度目の逮捕となるが、特捜部は9月5日に業界4位の広告代理店「大広」(本社大阪市)に対しても「ガサ」を打っており、カネまみれ五輪の汚染地域が拡大する一方となっているからだ。確かに、事態は深刻である。

 オリンピックの広告業務は電通が一手に受注していた。だが「販売協力代理店」として電通傘下に入れば、広告の受注ができる。大広は、コモンズ2に1,000万円以上の顧問料を支払っており、それが賄賂にあたるのではないかと特捜部は見ている。

 この状況から、高橋容疑者がAOKI、KADOKAWAに続いて、大広への便宜供与についても立件される可能性が濃厚となっている。ある東京地検特捜部OBの弁護士は、こう指摘する。

 「高橋容疑者がもう一度逮捕されれば、3度目ということになる。東京地検特捜部が、同じ容疑者を3回も逮捕するというのは極めて珍しいことだ。通常は再逮捕までで、残りの疑惑は追送検でという処理が大半。3度目があるなら、政界が視野に入っているとしか思えない」

 では、特捜部が狙う政界の人間とは誰か――?報道関係者や永田町が固唾を呑んで見守っているのは、組織委員会の会長だった森喜朗元首相動向である。

 ■注目集める森元首相への200万円

 9月1日、産経新聞が放った『<独自>「森元会長に200万円」青木前会長供述』という見出しのスクープ記事で、永田町に激震が走った。記事は、「AOKIホールディングスの青木拡憲容疑者が東京地検特捜部の調べに対し、大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相(85)に「現金200万円を手渡した」と供述していることが31日、関係者への取材で分かった。青木容疑者は、現金を渡したのは森氏が会長だった時期と説明しており、特捜部は現金を渡したとされる経緯や賄賂性の有無などについて、慎重に捜査しているもようだ」「関係者によると、青木容疑者は調べに対し、2回に分けて森氏に現金を直接手渡したと供述。趣旨については『がん治療をしていた森氏へのお見舞いだった』としている」という内容だった。青木容疑者は、高橋容疑者に森氏を紹介され見舞いに行ったのだという。

 大手メディアの地検担当記者が、次のように解説する。

 「これが外れた内容なら、特捜部からすぐに出入り禁止になりますよ。産経新聞の記事の後、どこも後追いを書いていますが、特捜部からストップはかかっていない。事実関係としては当たっているということの裏返しでしょう。200万円の提供だけではなく、森氏と青木容疑者が複数回会食していると報じられていますが、特捜部はこれについても沈黙しています。間違いではないということなんです」

 森元首相への200万円提供が事実とすれば、特捜部はその趣旨を詰めるだけである。

 一般的に「がん治療のお見舞い」に200万円というのは、いくら元首相であっても破格。青木容疑者は高橋容疑者に相談して200万円を持参した可能性があり、何らかの便宜を期待していたとみられても、おかしくない。森氏は組織委員会の会長であり、理事の高橋容疑者を遥かに上回る権限を有していたのは間違いない。青木容疑者が事実関係を認めたのに対して、高橋容疑者はAOKI、KADOKAWA、どちらの容疑についても否認を続けており、保釈される見込みはない。

 ■展開次第で政局になる可能性も

 高橋容疑者と東京地検特捜部との間には、深い因縁がある。1995年、経営破綻に陥った東京協和信用組合、安全信用組合を巡る巨額背任事件で、元理事長らとともに逮捕されたのが高橋容疑者の弟、高橋治則氏(故人)。治則氏はバブル期に、「イ・アイ・イ・インターナショナル」を率いて不動産事業を展開し、「リゾート王」の異名をとった人物だ。二信組事件当時、特捜部に在籍したヤメ検弁護士が当時を振り返りながら、五輪疑惑の行方を見通す。

 「特捜部の逮捕直後、治則氏は容疑を否認しました。この時特捜部は、二信組幹部と治則氏だけでなく、その先を見据えた捜査をしていたんです。ターゲットは山口敏夫元労働大臣。最終的に治則氏は特捜部の取調べに容疑を認め、山口氏についても関係を自供したことで、山口氏逮捕となりました。治則氏の兄である高橋治之容疑者の再逮捕や捜査も、治則氏のケースとそっくりで、特捜部は政治家の立件を目指しているようにみえる。

 五輪疑惑の3つの事件で、一番むつかしいのがAOKI。高橋容疑者はオリンピック前からAOKIと関係があったので、『オリンピックと関係ない』と突き通されると特捜部も苦しいところがあった。ところが、KADOKAWAと大広については、高橋容疑者との関係がオリンピックの招致が決まり、高橋容疑者が理事になってからなので立証のハードルがそう高くない。これから特捜部は、政治家ルートを狙い担当検事を決めて取り組むはず。森氏ら政治家に着手するとなれば、高橋容疑者の3度目の逮捕は起訴後になるだろう」

 安倍元首相の「国葬」に対する世論の反発は、大きくなる一方。安倍氏と関係が深かった旧統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)の問題でも、自民党は窮地に陥っている。そこへ、安倍派事実上ドンである森氏疑惑が追い打ちをかけそうな展開だ。

 「安倍元首相が銃撃事件でこの世を去って、一気に負の遺産が噴出しているように思う。いま振り返れば、なぜ森さん組織委員会会長だったのかという疑問に突き当たる。森さんは、組織委員会会長を辞任する原因となった『女性蔑視発言』だけではなく、『神の国発言』などの失言暴言問題を繰り返してきた人物だ。安倍一強政治の中で派閥ドン厚遇したということだろう。旧統一教会の問題でも、一強だったから強引に押し通せ、表面化しなかっただけ。それが崩れて、収拾がつかなくなっている。岸田政権安倍一強政治尻拭い失敗すれば、大きな政局となりかねない」(自民党のベテラン議員)

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・東京地検特捜部・東京オリンピック・パラリンピックの汚職事件】  2022年09月13日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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