【HUNTER2022.03.09】:「大樹総研」家宅捜索の波紋
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.03.09】:「大樹総研」家宅捜索の波紋
「なぜだ、どうして」――そう怒鳴ったのは、民間コンサル「大樹総研」を率いてきた首領・矢島義也(本名:義成)氏。先月25日に本サイトで速報した東京地検特捜部の家宅捜索を受けた時、冒頭のような言葉を口にしたという。矢島氏を怒らせた特捜部の捜査は、どこに向かうのか――。
■特捜部の自信
特捜部が、矢島氏をターゲットにしたのは2回目だ。これまで報じてきたように、民主党政権下の環境相で、現在は自民党の細野豪志衆院議員に「JCサービス」が5,000万円の資金提供をした際に、大樹総研と矢島氏がターゲットになった。
当時、特捜部長で現在は東京地検次席検事の森本宏氏は、日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告、衆院議員の秋元司被告、元法相の河井克行受刑者など数々の大物を摘発してきた“剛腕”だ。しかし、細野氏―大樹総研・矢島氏のラインは、立件できなかった。
「だけど今度は違う」と、東京地検特捜部のOBで、森本氏と一緒に仕事をしたこともある弁護士はこう話す。
「東京地検特捜部が、ガサを打ってやれなかったなんて事件はそうないよ。今回、大樹総研の矢島氏を再度捜索ターゲットにしたということは、かなり自信があるからと聞いている。あの森本氏だから、2回も失敗することはないはず。もう、矢島氏への容疑はほぼ詰められていると思うな」
では、東京地検特捜部は、矢島氏の何を狙っているのか?
■経産省ルート
矢島氏が2016年5月29日に帝国ホテルで挙式をあげた際の席次表がある(⇒「祝う会」の席次表のPDFデータ)。捜査関係者の一人が、「あの席次表は矢島氏や大樹総研の人的つながりを知る上でとても大事だ。非常に参考になる」と話す。
大樹総研が手掛けるビジネスの中核のひとつが太陽光発電システム。同じ、太陽光発電システム会社「テクノシステム」の生田尚之被告が2021年5月に詐欺容疑で逮捕されたときにも、大樹総研や矢島氏の影がちらついていた。
香川県丸亀市の山間部に位置する「まんのう・丸亀太陽光発電所」という太陽光発電所は、大樹総研の「傘下」ともいわれるほど関係が深い再生可能エネルギー開発会社「JCサービス」が2017年から計画、申請をしていたものだ。JCサービスが細野氏に5,000万円を貸し付けた形をとっていたことは、これまで報じてきた通りである。
2011年3月に発生した東日本大震災が招いた福島第一原発の事故以来、大きなビジネスとなった太陽光発電。だが、簡単に設置できるものではなく、土地所得や経産省へのFIT(固定買取価格制度)の認定、都道府県の許認可など多岐にわたる手続きが必要となる。ある捜査関係者が、許認可絡みのこんな情報を漏らす。
「大樹総研は、香川県の計画を含む太陽光発電システム関連で100億円とも300億円ともいわれるカネを集めたとう話がある。だが、計画は杜撰で地元同意などもなく、図面上だけで進めていた。計画がオープンになり、地元では反対運動が起きた。そこで、慌てた矢島氏は経産省人脈を使って計画変更を出し、許可を取り付けたという。普通では絶対に認められない変更なので、何らかの力が動いたのではないかと噂されていた」
矢島氏の結婚式の席次表を見ると、経産相経験者である二階俊博自民党元幹事長、林幹雄衆院議員、さらには経産省の現職幹部も列席していたことが分かる。矢島氏と経産省の間に太いパイプが見え隠れする。その中で、矢島氏と関係が深いとされるのが経産省のX氏だ。「X氏を通じて、矢島氏が何らかの工作をしたのではないかと、省内では噂になった」(経産省関係者)
太陽光発電を所管しているのは経産省。細野氏を取り逃がした“遺恨”もあり、東京地検特捜部が経産省絡みを狙おうとするのは当然だろう。
■財務省ルート
そして、矢島氏関連でもう一つ浮上しているのが、財務省との関係だ。前出の席次表には、女性記者へのセクハラ疑惑で財務省を実質“クビ”になった福田淳一氏、森友学園問題で大阪地検特捜部から事情聴取をされた迫田英典元国税庁長官などの幹部も出席していた。矢島氏との深い関係がうかがえる。
ジャスダック上場のバイオベンチャー「テラ」(本社:東京都新宿区)の新型コロナ ウイルス治療薬開発に絡んだ金融商品取引法違反(インサイダー取引)事件で、テラと共同事業を展開していた「セネジェニックス・ジャパン」(本社:東京都中央区)元役員の竹森郁容疑者が警視庁に逮捕された。竹森容疑者への容疑は、テラのワクチン開発に「35億円の融資が実行される」と、虚偽のIR情報を発表させたことだ。有価証券報告書は上場企業にとって最も重要視されるIR情報の一つ。日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告が逮捕された際の容疑の一つが、有価証券報告書に虚偽記載した金融商品取引法違反だった。ある証券会社幹部は、次のように話す。
「IRは、金融庁のシステム、EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)で開示されます。企業がIRとして出したい情報は、まずEDINETに提出される。つまり金融庁がチェックしているのです。テラはこれまで、不透明な経営や財務などで金融庁も要警戒の会社。なぜ、35億円の融資のIRがEDINETを通ったのか不思議でした」
そこで、矢島氏が財務省幹部に何らかの働きかけを行ったのではないか、という見立てが出ているのだ。その矢島氏は特捜部の家宅捜索後、「竹森に騙された。きちんと35億円の融資がなされたはずと聞いていた。コロナの新薬にも騙された。竹森が悪い。やつを信じたばか……」と潔白を主張し始めたという。
令和のフィクサー矢島氏に、迫るXデーを回避する「工作」は可能だろうか?
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・民間コンサル「大樹総研」・東京地検特捜部の家宅捜索】 2022年03月09日 13:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。