路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【宗教2世が答えた】:「脱会届けを受理してくれない」──ステルス勧誘、脱会拒否、宗教的つきまといの実態とは

2022-12-28 07:55:10 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【宗教2世が答えた】:「脱会届けを受理してくれない」──ステルス勧誘、脱会拒否、宗教的つきまといの実態とは

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【宗教2世が答えた】:「脱会届けを受理してくれない」──ステルス勧誘、脱会拒否、宗教的つきまといの実態とは

 ◆荻上チキ(評論家、社会調査支援機構「チキラボ」代表)

 <荻上チキ氏が代表を務める「社会調査支援機構チキラボ」が宗教2世1131名を対象に実態調査を実施した。脱会者からは、教団によるしつこい再勧誘の実態や、「脱会の手続き自体が不明」という声が数多く寄せられている>

(写真はイメージです) caracterdesign-iStock

 連日、「宗教2世」の問題が国会で取り上げられている。この問題については、野党が先んじて救済法案などを提出する一方で、与党の消極性が目立ってしまっている。

 創価学会を支持母体とする公明党はもちろんのこと、自民党もまた、複数の宗教団体から支援を受けている。与党各議員におかれては、「我が身可愛さでブレーキを踏んでいるのではないか?」という市民の疑念を払拭するためにも、問題を起こす団体と一線を画した上で、「2世の権利擁護」のためのリーダーシップを発揮することを期待したい。 

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 さて、筆者が代表を務める「社会調査支援機構チキラボ」では、宗教2世の実態調査を行なっており、1131人の有効回答を得た。本連載ではその調査から見えてきた、「あまり論点化されていない課題」を整理している。

 今回、まず問題提起したいのは、「宗教的つきまとい」である。これは、入会を断っているにも関わらず、あるいは脱会の意図を表明しているにも関わらず、しつこく勧誘・再勧誘を繰り返されることを指している。

 調査では、「現在では脱会している2世」に対して、脱会した後に経験したことについても尋ねている。その結果を分析してみると、脱会回答者の35%が、「教団や家族から何度も再入団を求められた」と答えていた。

 また、脱会回答者の22%が、「家族から脅迫・非難・暴力を受けた」と回答、11%が「教団関係者から脅迫・非難・暴力を受けた」と回答していた。

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 「宗教2世」当事者の実態調査より 提供:社会調査支援機構チキラボ

 宗教的つきまといの典型は、教団関係者からの度重なる訪問である。以下、調査に寄せられた具体例をいくつか紹介したい。
 (※具体的な記述が含まれるので、ストレスやフラッシュバックなどに注意してください)

 ●脱会・転居後も、教団の人間からの連絡や訪問が続いて、病んでしまった。

 ●しつこく再勧誘に来る信者を追い払うのが面倒だった。

 ●教団には「牧羊訪問」というものがある。教えから距離を置いた「迷える子羊を正しく群れへ戻すため」の行為。ただただ迷惑。

 ●県外に逃げても住所を記録されるので、その地域の活動家が訪問してくる。

 ●引っ越し先に地域の女子部の信者が何度も訪ねてきたため(母親が連絡したものと思います)、ずっと居留守を使いました。1年ほどで訪問は止みました。

 ●私は今は未活動ですが、信者の人が家庭訪問に来て、「あなたはご両親の信心のお陰で今は恵まれた生活をしているが、このまま未活動のままでは福運が尽きてしまうよ」と言われた。

 ●アポ無しで自宅に訪問し、何かしらの行事への参加を、こちらが折れるまでとにかくあの手この手で誘い出そうとしてきた。

 ●いま全く活動はしていないが、私の住所などの個人情報が教団に伝達されていて、いまだに信者の人に電話されたり、直接家に訪問されるのがストレス。選挙が近くなると特に。

 ◆ストーカー規制法の穴

 ●学生の頃一人暮らしをしていたのですが、その時に住んでいた地域の信者さんから連絡があり、家に来られ、会合への参加や新聞を取るように言われた。親が私の知らない間に、携帯番号や住所を教団側に教えていた。

 ●勝手に組織の支部内で情報を回して、同じ大学の人が突然新居に挨拶に来て迷惑だった。もう来ないでくれと言ったら来なくなった。組織内で勝手に住所を共有されたので今でも気持ち悪く思っています。

 ●私は家族の中で唯一、今もたった一人反対というか無関心・興味がない立場なので、非常に迷惑だ、巻き込まないでほしいと感じていましたし、終わりなき勧誘はとても重圧にストレスになっていました。とりわけ自分の頭で考えるようになってきた高校生の頃は深く絶望し、信仰を強要されることが(言葉は強くなりますが)精神的レイプだ、とすら感じていました。

 ●実際には、家出同然で逃げ出したのであり、手続きを経て「脱会した」わけではないため、私の個人データは残ったままだった。親は教団組織を駆使して、何度引っ越しても居所を突き止め、信者カードを住所地の組織へまわし、地域の信者が訪ねてきて会合参加や新聞購読を勧誘された。見も知らぬ人に名前や素性を知られていることに恐怖感を抱いた。まるで親も含め教団挙げてストーキングされている感覚だった。

 いかがだろうか。典型的なケースは、脱会の意図を伝えたにも関わらず、教団が連絡先を保持し続けているというケース。そして時には、地域や支部をまたいで、再勧誘を繰り返すというケースがある。

 家族が教団に転居先などを通達し、再勧誘を促すケースも珍しくない。また、「信者がかわるがわるやってくる」というケースも見られた。

 調査への回答にもあるように、「信教の自由」に基づいた勧誘行為も、度を過ぎれば他人に対し、生活上の不自由を与えることとなる。そのことで、精神的健康を悪化させたという者も少なくなかった。

 こうした事例の数々を見る限り、宗教法人に対しても、「脱会意図を明確化している人に対し、再勧誘するようけしかける行為」などを規制したり、他の法人と同様に個人情報保護を徹底するよう求めることも、必要となるのではないだろうか。

 なお、現行法の「ストーカー規制法」は、「宗教的つきまとい」を想定していない。ストーカー規制法において「つきまとい」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者又はその家族等に対して行うもの」とされており、「アンチ感情」「スカウト目的」などは対象外となる。

 ストーカー規制法は、その要件の狭さがかねてから問題視されているが、では「宗教的つきまとい」をどうすればいいか。規制法に盛り込むか、他の法改正や新法で対応するか。これも議会で取り上げるべき重要な論点であると考える。

 ◆「ステレス勧誘」とは何か

 続いて問題提起したいのが、「ステルス勧誘の規制」と「脱会手続きの明示義務」である。

 「ステルス勧誘の規制」は、宗教カルトなどの問題に限らず、マルチ商法やネットワークビジネスなどの「商業カルト」にもよく見られる手法である。勧誘目的であることを伏せて誘い出したり、宗教法人とは別のフロント団体を作って入会させ、頃合いを見て勧誘を行うのだ。

 ちなみに筆者も昔、都内の駅前で、何度も「手相を見せてください」と声をかけられた。一度立ち止まり、話を合わせていたら、「すごい見どころがあります!これもご縁だと思うのですが、私たちと学習するために、ビデオセンターという場所に行きませんか?」と誘われたことがある。

 当時私は、旧統一教会などの宗教右派をテーマに論文を書いていたので、「話が合う」のは当然なのだが、実際に誘われてみると、「おお、これが噂に聞いていたやつか」と強い恐怖を覚えたことを記憶している(その時は、行きたいジュンク堂が閉まるので行きません、と断った)。

 マルチ商法などについては、勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であること等を告げることが義務付けられている。宗教の勧誘もまた、一種の「契約」に類似した行為だと考えるならば、持続的・意図的に行われるステルス勧誘についても、ルール作りが必要ではないかと考えられる。

 もちろん、ステルス勧誘時に合わせて行われがちな、「不退去」(帰ってくれない)や「退去妨害」(帰してくれない)についても、厳格な対応が必要であろう。

 ◆「脱会手続き」を明示せよ

 もう一点の「脱会手続きの明示義務」だが、当事者への調査でも、「そもそも脱会の仕方がわからない」「脱会しようとしても邪魔された」「脱会者が想定されていない」という回答が多く見られた。具体的な記述を見てみよう。

 ●脱会、というのがどういう状態を指すのか正直わかりませんでした。個人的には宗教から距離をおいていますが、脱会届など出したこともなく、わざわざ出すつもりもないので......。

 ●脱会届をなかなか事務局が受付しなかった。

 ●脱会した書類が本当に受理されたかはわからない。ただ幹部に渡すのみ。「地獄に落ちる」と罵られ続けた。

 ●自分は脱会しているつもりだが、親が勝手に会費を払い続けている。

 ●教会に脱会を告げた際、信者台帳の破棄を希望したが、神父に「前例がない」と断られた。個人情報保護法を持ち出したり、自分の身内がオウム真理教の名簿にのっていたらどう感じるかと問うたりと説得を試みたが、台帳の破棄を渋ったため、台帳に脱会した旨を明記することを提案し、先方も渋々ながら受け入れた。

 ●脱会したい旨を幹部に伝えましたが、のらりくらりでなかなか受け付けてくれず、時間がかかりました。時間が経てばあきらめると思っていたようです。父は、私と母が脱会した後も私の名前で献金していて、後で判明した時にやめてもらいました。

 ◆「脱会の仕方が分からない」

 ●脱会していないと回答しましたが、入会も生まれた時からしていたのでどうやったら正式に脱会出来るのかがわかりません。

 ●父母の離婚後、家を出て絶縁したので脱会できているかどうか定かではなく確認する事自体に恐怖を覚える。

 ●私は教団とは一切の関わりを断ちましたが、親は信仰を続けています。また、手続きの方法がわからず脱会できずにいますが、出来ることなら脱会したいです。

 多くの場合、2世が脱会を決断する行為は、フィットネスを脱会するとか、メルマガ購読の配信停止を希望するといったように、カジュアルなものでは決してない。家族や信者集団を「裏切った」という罪悪感に苛まれたり、その後の関係性を断ち切るにまで至ったりするなど、ストレスフルな体験となりうる。

 そもそも多くの教団が、教えとして「脱会」をタブー視したうえで、「脱会手続きが不透明」「強烈な反対や引き留めが予想される」という状況を維持していることも、脱会を躊躇させる要因となっている。そのため「脱会者」の中には、「形式的には脱会しないが、フェードアウトだけした」という者も多い。

 他の法人などにも求めるように、宗教法人に対しても、「脱会方法を規定する」「脱会フォームを設けるなど、分かりやすく脱会手段を伝える」「脱会届けの不受理やしつこい引き留めは禁止する」といったようなルールづくりを行うことも不可欠ではないだろうか。「自分のところはよい宗教である」という自信があれば、各団体もまた、自発的な取り組みを進めて欲しいと願っている。

 元稿:NewsWeek 日本版 主要ニュース 社会 【旧統一教会を巡る様々な問題から注目された宗教2世の問題改善に欠かせない「宗教的虐待」問題 】  2022年11月23日  12:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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