【社説②・03.24】:保護費減額違法 国は命綱の重み認識を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・03.24】:保護費減額違法 国は命綱の重み認識を
安倍晋三政権下の生活保護費の大幅引き下げは違法との判決を札幌高裁が言い渡した。
厚生労働相に広い裁量権を認め引き下げを合法とした一審札幌地裁判決を覆し、恣意(しい)的な算定を正面から非難した。
受給者らが引き下げ処分の取り消しを求める訴訟は各地で起こされ、高裁では引き下げを取り消した判決が8件中4件となった。国は司法判断の広がりを重く受け止める必要がある。
生活保護の申請件数はコロナ下の2020年に増加に転じ、その後も増え続けている。
生活保護制度は憲法25条の生存権に基づき、健康で文化的な最低限度の生活を国が保障する国民の命綱である。
重みを一層増すその役割を国は改めて認識し、速やかに基準を見直し受給者に寄り添った制度運用に努めるべきだ。
国は13~15年、生活保護費のうち食費や光熱費など日常生活に必要な費用に充てる生活扶助費の基準額を平均6.5%、総額670億円削る過去最大の引き下げを行った。その際、厚労省は「デフレ調整」として物価の下落を主な根拠とした。
問題なのは、本来使うべき総務省の消費者物価指数(CPI)とは別に、「生活扶助相当CPI」という独自の指数を専門家に諮らずに作り、それを用いて扶助費を減らしたことだ。
生活扶助相当CPIは生活保護受給世帯が買い替える機会の少ない家電製品などの価格低下が過大に反映される仕組みになっており、物価の下落が大きい期間のデータを使っていた。
12年末に政権復帰した自民党は、生活保護の給付水準の10%カットを公約とした。
その実行を迫られ、厚労省が無理な算定方法をひねり出したのが実態ではなかったか。
これに対し札幌高裁判決は「物価下落率が大きくなる方向で算定した点で、客観的数値との関連性や専門的知見との整合性を欠いている」と指摘した。
その上で「受給者への影響からみて憲法や生活保護法の趣旨・目的に反する過誤、欠落があり、厚労相には裁量権の逸脱または乱用がある」と断じた。
引き下げの経緯や受給者の置かれた状況を丁寧にくみ、生活保護制度本来の趣旨を踏まえて導いた判断と言える。
国の裁量で受給者の暮らしが左右されることがあっては生活保護制度の根幹が揺らぐ。
保護費の引き下げで苦しくなった受給者の暮らしに、現在は深刻な物価高が追い打ちをかけている。このことも国は直視してもらいたい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月24日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。








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