【筆洗】:一九五〇年代は米国ジャズの黄金期だろうが、当時のミュージシ…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:一九五〇年代は米国ジャズの黄金期だろうが、当時のミュージシ…
一九五〇年代は米国ジャズの黄金期だろうが、当時のミュージシャンの伝記などを読んでいると胸が痛くなる場面がある。麻薬問題である。才能ある多くのミュージシャンたちが麻薬におぼれた▼スタン・ゲッツは薬欲しさに薬局に押し入って逮捕されている。マイルス・デイビスの麻薬使用がひどくなったのはジュリエット・グレコとの別れが原因だったそうだが、麻薬を買うため、一時期は自分のトランペットまで質草にした▼その麻薬がさらに危険な麻薬への入り口になりかねないことを強く認識すべきだろう。大麻である。所持などの大麻事犯の摘発者数は年々増加しており昨年は過去最多。最近も東海大学野球部員が大麻を使ったとして無期限活動停止となった▼摘発者の約六割が二十代以下の若者という。人一倍、身体に気をつけるはずの大学運動部の学生まで使っていたと聞けば、若者の間に急速に広がっていないか心配である▼合法な国もあるし、害は少ないのではと、甘く考えてしまうらしい。が、その入り口をくぐればさらなる刺激を求め、覚醒剤など薬物の深みへとはまる危険が高い▼より強い麻薬へと向かう道は「つるつる」しているらしい。マイルスが書いていた。「ひどい麻薬常習癖への長くて暗くて、冷たく、つるつるした道をまっさかさまに滑り落ちつづけていた」。入り口に近づいてはならない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】 2020年11月04日 07:59:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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