【社説①】:生活保護の減額 国は「命の砦」守らねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:生活保護の減額 国は「命の砦」守らねば
国が行った生活保護費の減額を「違法」とする司法判断が相次いでいる。憲法は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障する。国は恣意(しい)的に減額せず、適正に給付しなければならない。
国は2013~15年、デフレによる物価下落を理由に生活保護の日常生活費分に当たる生活扶助の基準額を平均6・5%引き下げた。最大の引き下げ幅だ。
これに対し、29都道府県の受給者千人超が、引き下げの取り消しを求めて提訴。東京高裁は27日と28日、二つの訴訟で原告の主張通り「引き下げは違法」との判決を出した。
これまでの地裁・高裁の計40判決は原告側の25勝15敗。23年以降に限ると21勝6敗で、原告勝訴の流れが固まりつつある。
国の引き下げ決定は異例ずくめだった。
引き下げ根拠に、通常と異なる計算方式を混在させた物価指数を用い、物価下落率を「4・78%」と過大に設定。さらに、大幅値下がりしたデジタル家電の影響が大きくなるようにしたため、貧困世帯の消費傾向と懸け離れた。
これらは通常の改定のように審議会での専門家の議論を経ず、密室で決めた措置だった。
東京高裁が判決で「統計との合理的関連性を欠き、専門的知見との整合性がない」と指弾したのは当然だ。最高裁には同様の、良識ある統一判断を期待したい。
生活保護費の削減は、自民党が政権復帰を果たした12年の衆院選公約で「生活保護の給付水準10%引き下げ」を訴えたことが背景にあることは否定しがたい。
地方自治体が申請を拒んだり、支給を遅らせたりする事例が相次ぎ、SNS上では受給者への批判も後を絶たない。
病気や事故で生活破綻に陥る可能性は誰にもある。生活保護は最後に身を寄せる「命の砦(とりで)」であり安心できる社会の象徴だ。制度への偏見は改める必要がある。
日弁連によると19年のGDPに占める公的扶助への支出割合(医療費を除く)は、フランスが1・41%、米国が0・9%に対し、日本は0・29%と低い。生活保護が国の財政を圧迫しているとの指摘は的外れな思い込みだ。
近年の物価高は貧困層をさらに追い詰めている。本来受給すべき人々に生活保護が行き渡っていない現実こそ問題にすべきだ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月29日 07:25:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。








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