【社説①】:核ごみ知事発言 国の主導求める真意は
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:核ごみ知事発言 国の主導求める真意は
鈴木直道知事は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、梶山弘志経済産業相との会談で、国が主体的に文献調査を進めるように求めた。
現行の選定は、交付金を示して市町村からの立候補を募る形だ。知事は、住民の合意形成が得られないままに応募が続出し、地域の分断につながることを恐れ、見直し発言に踏み込んだとみられる。
ただ、発言は国主導ならば、道内での処分場調査を容認しているようにも受け取れる。
知事は処分場選定については、第1段階に当たる文献調査を含め反対の考えを示している。整合性に欠けるのではないか。
選定はどうあるべきだと考えているのか。真意を説明すべきだ。
知事と経産相の会談は今月上旬、後志管内寿都町が文献調査への応募を検討していることを巡って行われた。
国が核のごみの処分適地を示す科学的特性マップでは、候補地となる最適地がある市町村は全国で約900あり、道内は86に上る。
関係者によると、知事は国が事前に調査を行う候補地について、大幅に絞り込むべきだと要望したとされる。
梶山氏から具体的な返答はなかったという。
会談の約1週間後には、神恵内村で応募検討の動きが表面化した。自治体が交付金を狙って調査に応じようとする「応募ドミノ」が実際に発生した。
知事の提案が実現すれば、国が自治体側の同意なく選定作業を進めかねない。その地域の判断に制約が生じることにもつながる。
現行の法律では、第2段階の概要調査以降は知事と地元首長の同意がなければ続行できない規定だ。だが国主導の選定になれば、この歯止めの空洞化が懸念される。
道政上の重要課題に関し、知事の発言がぶれているのも心配だ。
昨年、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の道内誘致について、見送りを表明した際、知事は引き続いて誘致を検討する考えも示した。理解に苦しむ発言だった。
新型コロナウイルスを巡る経済対策やJR北海道への財政支援、人口減少への対応など、知事が最終判断を下すべき課題はめじろ押しとなっている。
知事が明確な方向性を示さなければ、道政運営は安定せず、支障を来す。道民の不安感も強まりかねない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年09月28日 05:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。