路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【文春オンライン】:政治学者・御厨貴「知事たちの通信簿 東日本編」 ②-①

2020-07-10 00:15:50 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【文春オンライン】:政治学者・御厨貴「知事たちの通信簿 東日本編」 北海道鈴木、愛知大村は○、宮城△、石川、千葉、神奈川×、小池都政は? 

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【文春オンライン】:政治学者・御厨貴「知事たちの通信簿 東日本編」 北海道鈴木、愛知大村は○、宮城△、石川、千葉、神奈川×、小池都政は? 

 新型コロナウイルス対策が進むなかで、全国の知事たちの存在感が増している。多くの議論で知事たちが永田町をリードする前例のない“異常事態”だ。政治学者の御厨貴氏(東京大学名誉教授)に、全国の知事の評価と、いま日本政治に何が起こっているのかを聞いた。

               ◆◆◆

◆コロナ対策をリードする知事たち

 都道府県の知事が、これほど中央に影響力をもった時代は現代日本政治史上なかったでしょう。

 5月4日に緊急事態宣言の延長が決まりましたが、事前に知事会から「全国一律に延長して欲しい」という突き上げが4月末にありました。休校が続く学校を「9月入学」に切り替えようとする提案も、東京の小池百合子知事や大阪の吉村洋文知事らが議論をリードしています。

 今回の新型コロナをめぐる事態は、特定の地域だけに起こった自然災害ではありません。全国で一挙に危機が起こったため、安倍政権はここまで危機管理能力をまったく発揮することができず、積極的な意思決定ができていません。その間、各都道府県が独自に自分たちで状況を把握して対策を打っていかなければいけなかったのです。

 そこが、全国の知事たちが多彩な政策を訴え始めた理由です。ただ、知事たちの間でも対策に成功している人もいれば、空回りしてしまっている人もいる。メッセージを発信し続ける各都道府県の知事たちの活動を、それぞれ通信簿的に評価しながら振り返ってみたいと思います。

◆北海道・鈴木直道「○」 最年少知事が道筋をつけた

 今回のコロナ禍で全国的にもっとも名を揚げたのは、北海道の鈴木直道知事(39)でしょう。日本のコロナ対策の道筋を付けたのは彼だといっても過言ではありません。昨年4月に全国最年少の知事として初当選してから1年足らずですが、彼は「待っていても誰も北海道のことを助けてくれない」という事の本質を理解していたのです。


   北海道の鈴木直道知事(39)への御厨氏の評価は? ©時事通信社

 鈴木知事は、2月28日に北海道での感染者数が63人となった時点で、道としての「緊急事態宣言」を全国に先駆けて出しました。その直前の26日には、道内すべての公立小中学校の臨時休校を決めています。こちらも全国初です。そして感染者の増加に歯止めをかけた。初期の対応は見事でした。 

 活躍の背景には、鈴木知事の経験があります。彼はもともと東京都衛生局の職員でしたが、夕張市に派遣されたことをきっかけに2011年から2019年まで夕張市長を勤めました。当時の夕張は、市が自由に使える財源の約8倍となる約350億円以上の負債を抱えた財政破綻のまっただ中。そこから蛮勇をふるって大改革し、町を立て直していった。今回はその経験が生きています。

 つまり夕張での経験は、彼に「他に学ぶべきモデルがない時、手探りの状態でどうするべきか」という教訓を与えた。中央をアテにしても話は進まない。それを分かっているから、思い切って独自路線を歩むことができたのです。

 今回、鈴木さんが先陣を切って一気に動いたことで、他の都府県の知事たちも自分たちに合った方法で動くようになった。それが現在まで続く日本全体のうねりを生み出していきました。これだけ危機的な状況の中で、まさに地方から中央政府を動かしたのですから、今回の初動対応は文句なしの「○」といわざるを得ないでしょう。

◆宮城県・村井嘉浩「△」 3.11疲れが出たか

 鈴木知事が経験を生かした一方で、過去の体験を生かし切れていないのが、宮城の村井嘉浩知事(59)です。

 3.11のとき、村井さんの頑張りは特筆するものがありました。私が議長代理を務めた「東日本大震災復興構想会議」でも、委員として大変活躍された。積極的な復興策などで、陸上自衛隊出身らしい危機管理能力を遺憾なく発揮しました。

 今回も期待していますが、いまのところ特に目立ったところはなく、本来の能力から比べると寂しい。私にいわせれば、彼は「3.11疲れ」なのだと思います。この9年間、彼に限らず被災地の知事たちはずっと3.11の事後処理に当たり続けています。その中で、新たな事態にも対応しなければいけなかった。今回は本来のリーダーシップを発揮できませんでした。 

◆東京都・小池百合子「○」 “脅し”も使いこなす首都圏のMC

 いま感染者が最も多いのは首都圏です。その首都圏の知事は、千葉県の森田健作知事(70)は俳優出身、神奈川県の黒岩祐治知事(65)はフジテレビの元キャスター、埼玉県の大野元裕知事(56)もラジオでコメンテーターをやっていたことがありました。そんな「メディア慣れ」したメンバーのなかでも、東京都の小池百合子知事(67)の存在感は図抜けています。

 私が「時事放談」(TBS系)で司会をしていた際、彼女をゲストに迎えたことがあります。そのときの振る舞いは見事なもので、すべての議論が彼女の演出で進行していきました。驚いている私に、小池さんは「だって、私はMC出身ですよ」と笑顔で言い放ったものです。

 彼女は、女性キャスターのパイオニアの一人。首都圏のコロナ対策においても、彼女が「メインキャスター」でした。「感染爆発 重大局面」というフリップを手にしながら要請した外出自粛についても、休業要請についても、首都圏で先をいっていた。“都の対策がいかに先を行っていて、国の対策がいかに遅れているか”を連夜の会見で“MC”として流し続けました。

 もちろん、負の側面もあるでしょう。たとえば、彼女が「ロックダウン」という言葉を口にしたことで、欧州諸国のような強制力のある都市封鎖が行われるかのような緊張感が生まれ、みな戸惑いました。あれは一種の「脅し」のテクニック。首長が「こんなことも起こるんだぞ」と、あそこまで唐突に市民を脅かすことなど普通はやりません。実際に、その煽りによって、一部で買い占めが進むなど、市民生活に混乱が生じたというマイナス面もあった。

 しかし、この「脅し」が効いて、国が動いた。安倍政権も「このまま全ての対策が東京都の後手後手に回っては大変だ」と慌てて動き始めたのです。

 この「脅し」のメリット・デメリットを承知の上で、「いまは政府を引き付けて引っ張っていかないといけないんだ」と、過激な表現を使うことを選んだ。その結果、実際に国を動かしているわけですから、その意味では現状までの小池さんの危機対応は満点に近い。この7月に行われる都知事選に向けたパフォーマンスだと言う人もいるかもしれませんが、嫌ったところで、彼女がやっていることに国もついて行かざるを得ないのは事実なのです。 

 この小池知事の「演出巧者」ぶりを見たあとに、ほかの首都圏の知事たちを見ると、全員が後手を踏んでいるように見えます。休業要請にしても東京がすると言った後になって、じゃあ千葉はどうする、うちの財政はどうだ……とズルズルと後追いをしているようにしか見えません。

 俳優の森田知事も、キャスターの黒岩知事も、自分で演出するというよりは周りのお膳立てがあって初めて動く“プリンス”だったことがバレてしまいました。首都圏の知事は小池知事以外は全員「×」ですね。

  元稿:文藝春秋社 主要出版物 【週刊文春】 2020年05月05日 18:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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