【主張・アイドル刺傷】:「泥縄」法整備ではストーカーは取り締まれない 規制対象は「あらゆる通信手段」とし“いたちごっこ”に終止符を
乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【主張・アイドル刺傷】:「泥縄」法整備ではストーカーは取り締まれない 規制対象は「あらゆる通信手段」とし“いたちごっこ”に終止符を
アイドル活動をしていた女子大生が、ファンの男に刺され、重体となっている。憎むべきは、ゆがんだ感情で刃物を握った容疑者である。
だが女子大生の被害を防ぐことは、本当に不可能だったか。
警視庁は事前に、ツイッターへの執拗(しつよう)な書き込みについて相談を受けていたが、ストーカー事案とはみていなかった。女子大生の110番通報を受けて自宅に向かったが、犯行現場はライブ会場だった。
ファンが撮影した冨田真由さん(提供写真)
検証すべき事案は数多いが、一つ弁明の余地がないのは、ストーカー規制法の不備である。泥縄式法整備の怠慢が、犯行抑止の機会を失わせたともいえる。
「泥縄」とは「泥棒を捕らえてから縄をなう」の略で、事が起きてから準備をしても間に合わないことを意味する。
ストーカー規制法は「桶川ストーカー殺人事件」を契機に議員立法で成立し、平成12年11月に施行された。25年には「逗子ストーカー殺人事件」を受けて法が改正され、つきまとい行為の定義に「電子メール」が加えられた。
規制法の対象行為が電話とファクスに限られており、執拗なメール攻撃を相談していた逗子事件に対応できなかったためだ。
犠牲者の存在が法を成立、改正させたが、改正法にもSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やツイッターについては明記がなく、女子大生の訴えをストーカー事案としない理由に数えられた。
事件を受けて自民、公明両党などにSNSを明記する規制法改正への動きはあったが、国会はすでに閉会した。次の国会まで事件が待ってくれるか。対応はすべて、泥縄の後手後手である。
26年に警察庁の有識者検討会がまとめた報告書は規制法の対象にSNSも加えるよう求めていた。検討会には桶川事件で長女を失った猪野憲一さんも参加し「『助けて』という人を守れる態勢を整えてほしい」と訴えていた。
その思いに応えることなく、法は放置されたまま、今回の事件が起きた。立法府は自らの怠慢を猛省すべきである。規制対象を「あらゆる通信手段」として、時代に追いつけない無意味ないたちごっこに終止符を打つべきだ。
法は、人を守るためにあるのであり、保護や捜査をしばることが目的ではあるまい。
元稿:産経新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2016年06月04日 15:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
事件を受けて自民、公明両党などにSNSを明記する規制法改正への動きはあったが、国会はすでに閉会した。次の国会まで事件が待ってくれるか。対応はすべて、泥縄の後手後手である。
26年に警察庁の有識者検討会がまとめた報告書は規制法の対象にSNSも加えるよう求めていた。検討会には桶川事件で長女を失った猪野憲一さんも参加し「『助けて』という人を守れる態勢を整えてほしい」と訴えていた。
その思いに応えることなく、法は放置されたまま、今回の事件が起きた。立法府は自らの怠慢を猛省すべきである。規制対象を「あらゆる通信手段」として、時代に追いつけない無意味ないたちごっこに終止符を打つべきだ。
法は、人を守るためにあるのであり、保護や捜査をしばることが目的ではあるまい。