粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

橋下徹の利用価値

2015-06-15 21:56:36 | 国内政治

この大阪市長、自分自身にとっても評価で相半ばして非常に難しい。人間性にも魅力を感じるところもあるが、少し首を傾げる部分がある。

評価できるのは、憲法改正や国防、教育、歴史認識が極めて保守的であり、レベラル左派とは完全に袂をわけていることだ。また一昨年に物議を醸した慰安婦問題では多少は軽率な発言もあったが、根本的な点では正論を主張していた。つまり「性奴隷」ではないことを断言していたのは評価できる。

彼が推進していた大阪都構想では評価が難しい。方向性は理解できるが、方法論では首疑問が残る。大阪市だけでなく、堺市や東大阪市などの周辺都市を巻き込んで600万人くらいの大大阪市をつくってから大阪都に移行すべきだった。その点では橋下市長は急ぎすぎた感じがする。たたし、5月の住民投票はわずか1万票の僅差で大阪都構想が否決されたが、これは橋下市長にとっては敗北というより「引き分け」と考えられる。図らずも橋下市長の存在価値を図らずも誇示する結果になったといえる。

原発政策でも彼は強く反原発の姿勢を示したが、これも自分は同意できなかった。しかし、被災地のがれき広域処理には進んで応じるなどの現実的な対応をとったことは評価できる。これは橋下市長自身が原発政策をイデオロギーで考えていない証拠といえる。

橋下市長の人間性については好悪半ばだ。旧弊の破壊し改革に向けて邁進する姿勢は共感するが、やたら敵をつくって激しく攻撃する態度には時々辟易する。自分自身は彼が攻撃する立場にはなりたくないと思う。

そんな橋下市長だが、先の住民投票後、年内の市長任期終了をもって政界を引退することを表明した。しかし結果が「引き分け」ともいえるものであったため、いまだの彼の存在感は無視できず、橋下待望論が根強い。

そんな橋下徹市長が、松井大阪府知事とともに安倍首相、菅官房長官と本日東京で会談した。首相、市長どちらの要請かはわからないが、その目的は今国会で議論されている安保法制に関する協議であることは間違いない。つまり、橋下市長が最高顧問を務める維新の党が、政府が進める安保関連法案の成立に協力するかどうかだ。

最近の国会では、この法案を巡り野党がかつての社会党のように「反対のための反対」に終始して混乱の極みになっていた。法案の中味やその必要性について論議されることがなく、もっぱら「合憲か違憲か」という神学論争に明け暮れていた。

こうした状況で橋下市長が安倍首相と会談した意義は大きい。これまで維新の党は野党的立場で民主党と協調して政府、与党と対決する姿勢をとってきた。しかし、最高顧問としてそのカリスマ的な影響力をもつ橋下市長が安倍政権と協調する姿勢を示せば今後の国会運営は潮目が大きく変わることになる。安倍首相もそれを期待して橋下市長の政治力を当て込んだといえる。

ただ、橋下徹という男、なかなか一筋縄にいかない。政府にとっては毒にも薬にもなる。安倍首相がどれほど手綱捌きをするかによる。まあ、朝日新聞辺りは戦々恐々としていることだろう。安保法制で安倍首相との最終決戦に挑んでいる最中、この新聞にとって災いでしかない男がどんな立ち回りとみせてくれるか、楽しみだ。