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●飯塚事件は《足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪」が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……》

2021年12月06日 00時00分20秒 | Weblog

―――――― 《2次再審請求で問い直される「T供述」の信用性 岩田弁護士は「Kさんが目撃したのが犯人であれば急転直下、真犯人の存在とともに久間さんの無実もはっきりする」と述べ、再審請求でK証言の果たす役割を解説した》



 (2021年09月26日[日])
山口正紀さんによる、レイバーネットの記事【検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪〜「飯塚事件」を問う】(http://www.labornetjp.org/news/2021/0911yama)。

 《「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。その第2次再審請求の支援を訴える「飯塚事件の再審を求める東京集会」が9月4日、オンラインで開かれた。この事件で有罪判決の根拠とされたのが科警研(警察庁科学警察研究所)によるDNA型鑑定だった。一方、同じ時期・同じ手法で科警研が行なった「足利事件」のDNA型鑑定が誤りだったことが明らかになり、再審無罪となった。実は、この足利事件で「DNA型再鑑定へ」と報道されたのが08年10月上旬その10日余り後、突然再審準備中の久間さんの死刑が執行された。それを知った時、私は恐ろしい疑惑に駆られた。この死刑執行は、足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……。(山口正紀)》

 《検察による口封じ殺人》《国家による殺人》…。布川事件冤罪被害者桜井昌司さん《無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です》と。当時の首相は麻生太郎氏、飯塚を含む福岡8区の出身。その麻生太郎内閣の法務大臣は森英介氏。2008年10月16日、足利事件のDNA再鑑定で、直ぐに、久間さんの死刑執行は停止されるべきだった ――― しかし、わずか10日ほど後の10月28日、死刑は執行された…。首相や法相、検察・警察の関係者、あまりに冷酷だ…。関わった裁判官も。《各裁判所は、弁護側が指摘したさまざまな疑問・矛盾を無視。結局、科警研の「MCT118型鑑定」によるDNA型鑑定をほぼ唯一の根拠とした死刑判決が確定した》。

   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
                飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』 
 
    「2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
     2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
     2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず
     ……そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、
     久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日
     DNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべき
     だったのに…。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である」

   『●NNNドキュメント’13: 
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、「この重すぎる現実」:
                    無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」
    「リテラの伊勢崎馨さんによる記事【飯塚事件、なぜ再審を行わない?
     DNA鑑定の捏造、警察による見込み捜査の疑いも浮上…やっぱり冤罪だ!】」
    《冤罪が強く疑われながら死刑が執行されてしまったのが、1992年に
     福岡県で起こった「飯塚事件」である。そして、この飯塚事件にスポットをあて、
     冤罪疑惑に切り込んだドキュメンタリー番組が放送され、ネット上で話題を
     呼んだ。3日深夜に日本テレビで放送された
     『死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻』だ》

   『●飯塚事件の闇…2008年10月16日足利事件の再鑑定で
           死刑停止されるべきが、10月28日に死刑執行
   『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
     国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)

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http://www.labornetjp.org/news/2021/0911yama

検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪―「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(上)

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」第14回(2021/9/11 不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(上)

     (*2017年NNNドキュメントより)

 「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。その第2次再審請求の支援を訴える「飯塚事件の再審を求める東京集会」が9月4日、オンラインで開かれた。この事件で有罪判決の根拠とされたのが科警研(警察庁科学警察研究所)によるDNA型鑑定だった。一方、同じ時期・同じ手法で科警研が行なった「足利事件のDNA型鑑定が誤りだったことが明らかになり、再審無罪となった。実は、この足利事件で「DNA型再鑑定へ」と報道されたのが08年10月上旬その10日余り後、突然再審準備中の久間さんの死刑が執行された。それを知った時、私は恐ろしい疑惑に駆られた。この死刑執行は、足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……。(以下、事件・裁判の経過とオンライン集会の模様を3回にわたって報告する)


●疑惑の死刑執行1年後、妻が再審請求

 死刑執行からちょうど1年後の09年10月28日、久間さんの妻が新たなDNA型鑑定などを新証拠(再審を開始すべき理由)として、福岡地裁に再審請求を申し立てた。

 しかし、福岡地裁は14年、科警研が行なったDNA型鑑定を「(久間さんの)犯人性を基礎づける事実とすることはできない」と認めたものの、「DNA型鑑定以外の状況証拠による確定判決は揺るがない」として、再審請求を棄却した。

 再審弁護団は即時抗告したが、福岡高裁は18年、即時抗告を棄却。弁護団は特別抗告したが、最高裁第1小法廷は今年4月21日、特別抗告も棄却した。

 このため、久間さんの妻と再審弁護団は7月9日、確定判決の根拠とされた目撃証言を否定する新たな目撃証言などを理由に、2度目の再審請求を福岡地裁に申し立てた。

 オンライン集会は、この第2次再審請求の意義・内容を報告し、支援の輪を広げていこうと企画され、飯塚事件再審の実現に向けて尽力してきた九州大学の大出良知・名誉教授、再審法改正をめざす市民の会の木谷明代表(元裁判官)、布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さんら幅広い支援者たちの呼びかけで開催された。

 集会では、弁護団から第1次再審請求を棄却した最高裁決定と第1次請求の総括、第2次再審請求の経過と内容が詳しく報告され、再審請求人である久間さんの妻のメッセージが読み上げられた。また、8月に国家賠償請求訴訟(国賠)の控訴審で勝訴したばかりの桜井さんが再審実現に向けて連帯のアピールを行い、「死刑執行は口封じ何というひどい国だろう。久間さんの無念は必ず晴らせると確信しています」と訴えた。

 集会について報告する前に、第1次請求に対する最高裁決定、第2次再審請求書、弁護団が編集したブックレット『死刑執行された冤罪・飯塚事件』(2017年・現代人文社)などをもとに、まず事件と裁判、再審請求審の経過を紹介しておこう。


●福岡県警は事件直後から久間さんを犯人視し、「見込み捜査」

 92年2月20日、飯塚市内で登校途中の小学校1年生女児2人が行方不明になり、翌日、約20キロ離れた福岡県甘木市(現・朝倉市)の山中で遺体が発見された。死因は扼殺、2人の膣内などから微量の血液が検出された。

 福岡県警は、かつて近くで起きた同種の事件で捜査対象にしたことのある久間さんを事件直後からマークし、その動静を監視(見込み捜査)。3月には遺留品発見現場付近で「ダブルタイヤのワンボックスカーを目撃した」とのT証人の調書を作成した。久間さんは、この「目撃証言」に合致する車を持っていた。

 続いて県警は久間さんに毛髪を任意提出させ、遺体周辺から採取された血液とともに科警研に鑑定を依頼。科警研は6月、〈血液型は、犯人のものとみられる血液、久間ともにB型。DNA型は「MCT118型鑑定」の結果、犯人のものとみられる型と久間が提出した毛髪から採取した型が一致した〉との鑑定書を出した。

 県警は7月、その「追試」として帝京大学の石山昱夫(いくお)教授にDNA型鑑定を依頼した。石山教授は「ミトコンドリア法」という当時、最も鋭敏な検査とされた方法で検査。約1年半後の94年1月に出された石山教授の鑑定書は、「久間さんのDNA型は検出されず被害者以外の第三者(犯人と思われる)の型が検出された」と結論した。

 それでも県警は94年9月23日、久間さんを死体遺棄容疑で逮捕した。
 翌日の『朝日新聞』夕刊(東京本社版)は、社会面トップ見開きで《56歳無職男性を逮捕/小1女児2人殺害事件/遺体運び捨てた容疑/DNAと繊維鑑定が決め手》と大々的に報道、久間さんの経歴や一問一答を掲載した。『読売新聞』も、社会面4段で《無職の56歳男性逮捕/遺棄容疑/殺人容疑でも追及》と大きく報じた。

 『朝日』はその後も、続報で《ワゴン車入念に清掃/容疑者、売却直前に》《容疑者に似た男目撃/遺留品の現場、車で去る》などと犯人視の報道を続けた。

 久間さんは66日間に及んだ取調べに一貫して否認した。県警は10月14日、久間さんを死体遺棄罪で起訴し、殺人容疑で再逮捕した。だが、その後も「自白」は一切なかった

 95年2月20日、福岡地裁で初公判が開かれ、久間さんは起訴内容を全面否認。その後も一貫して無実を訴え続けた。しかし99年9月29日、福岡地裁は久間さんに死刑判決を言い渡した。判決は「被告人の犯行との結びつきを証明する直接証拠がなく、個々の状況事実の単独では被告人を犯人と断定することが出来ない」としながら、概略次のような「状況事実」を列挙し、有罪と認定した。

 ①被告人の車のシートから検出された血痕と被害者の1人の血液型が一致する ②遺体から検出された血液型、DNA型が被告人と一致する ③現場付近で目撃された車と被告人の車種が一致する ④被害者の着衣に付着した繊維と車のシートの繊維が同一 ⑤被告人には土地鑑があり、アリバイも不明。

 私が参加する「人権と報道・連絡会」では2010年1月の定例会で、弁護団の徳田靖之弁護士から事件と裁判の経過について詳細な報告を受けた。その中で徳田弁護士は、一審判決が有罪の根拠とした「状況事実」について、次のように問題点を指摘した。

 「①車のシートの血液型が被害者と一致したというが、血液型だけでそれを被害者の血痕と断定することはできない。③④は車種が同じというだけの話。⑤は全くの間接証拠に過ぎない。③の目撃者が目撃した人物は『年齢30~40歳。髪は長めで七・三分け』ということだったが、久間さんは当時55歳、髪はオールバックだった」

 結局、一審判決は「②科警研によるDNA型鑑定に依拠して有罪と認定したことになる。だが、そのDNA型鑑定をめぐっても重大な矛盾があった。実は、科警研は「MCT118型鑑定」のほかに、独自に「HLADQα型」検査も行っていたが、この検査では被害者の血液から久間さんの型は検出されなかった。そして、石山教授の「ミトコンドリア法」による鑑定も不一致だった。つまり、県警は複数のDNA型鑑定を行ったものの、「MCT118型鑑定」以外はすべて「久間=犯人説を否定していたことになる。

 久間さんはこの一審判決に対して直ちに控訴したが、2001年10月10日、福岡高裁は控訴を棄却。さらに06年9月8日、最高裁は上告を棄却した。各裁判所は、弁護側が指摘したさまざまな疑問・矛盾を無視。結局、科警研の「MCT118型鑑定」によるDNA型鑑定をほぼ唯一の根拠とした死刑判決が確定した。


●「足利事件のDNA型再鑑定へ」報道の直後に死刑執行

 その2年後、状況が大きく動いた。同じ科警研鑑定(「MCT118型鑑定」)を証拠に有罪とされた足利事件について、08年10月、東京高裁が再鑑定する方針を決めた

 足利事件とは、1990年5月、栃木県足利市のパチンコ店で4歳女児が行方不明になり、渡良瀬川河川敷で遺体が発見された事件だ。栃木県警は91年12月、科警研のDNA型鑑定を証拠として保育園の送迎バス運転手だった菅家利和さんを逮捕。菅家さんは起訴され、裁判途中から無実を訴えたが、無期懲役の有罪判決が確定、服役させられていた。

 この東京高裁の再鑑定方針について、新聞各紙は、《高裁、DNA再鑑定へ》(10月17日付『朝日』)、《DNAを再鑑定へ》(18日付『毎日新聞』)と、全国版で大きく報じた。

 これは当時、再審請求を準備していた久間さんに大きな希望の光となったはずだ。ところが、この報道から10日後の10月28日、法務省は突然、久間さんの死刑を執行した。

 死刑執行を命じた法務省が、足利事件の再鑑定報道を知らなかったはずはない。森英介法相は「慎重かつ適正な検討を加えた」と述べた。いったいどんな「検討」をしたのか

 それから約半年後の09年5月、足利事件のDNA型鑑定結果が出た。弁護側・検察側が推薦した鑑定人2人が、いずれも「STR法」による鑑定で「犯人と菅家さんのDNA型は一致しない」と結論した。

 弁護側推薦の本田克也・筑波大教授は、「MCT118型」による追試鑑定も行った。結果は、菅家さんが「18―29型」、犯人は「18―24型」。どちらも「16―26型」としていた科警研の鑑定結果は、精度の低い「MCT118法」においても完全な誤りだった

 飯塚事件弁護団は、この本田教授に飯塚事件の再鑑定を依頼した。ところが、飯塚事件では捜査段階で採取された鑑定試料を科警研が全量消費していた」という。このため、本田教授は科警研鑑定のデータ・写真を解析し、再鑑定した。

 その結果は、「科警研鑑定はDNA型も血液型も誤りという衝撃的な内容だった。血液型は、犯人がAB型、久間さんはB型。「MCT118型」によるDNA型は、犯人が「16―25型」、久間さんは「18―30型」だった。科警研鑑定は、犯人・久間さんとも「16―26型」としていたが、それはすべて間違っていた、と本田鑑定は指摘した。

 遺族と弁護団は死刑執行1年後の10月28日、本田鑑定を新証拠に再審を請求した。だがメディアの反応は鈍く、全国紙各紙が社会面3~4段で伝えただけだった。その背景には、逮捕時にメディアが繰り広げた犯人視報道がある。徳田弁護士は「人権と報道・連絡会」で、「九州では東京以上にひどい犯人視報道が行われ、みんな久間さんを殺人鬼と信じ込まされました」と話した。メディアも〈無実の死刑〉に加担していた。(続く)

Last modified on 2021-09-11 22:51:36
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http://www.labornetjp.org/news/2021/0913yama

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」(2021/9/13不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(中)

 久間三千年(くま・みちとし)さんの死刑執行は、「DNA冤罪」が露顕するのを恐れた検察の「口封じ殺人」ではなかったか――こんな恐るべき疑惑をはらんだ「飯塚事件」。その再審を目指して開かれたオンライン集会(9月4日)では、最高裁「特別抗告棄却」決定(4月21日)の問題点、久間さんの妻と再審弁護団が福岡地裁に申し立てた第2次再審請求(7月9日)の内容が詳しく報告された。一連の報告は、①科警研DNA型鑑定のデータ改ざん有罪判決の根拠とされたT目撃証言の不自然さ――など、死刑判決の「証拠」が福岡県警によって改ざん・捏造されたものであることを明らかにした。

     (*写真=徳田靖之弁護士(NNNドキュメントより))


●「もっと早く再審請求していれば」……

 集会ではまず、刑事裁判から弁護活動に取り組んできた徳田靖之弁護士が、第1次再審請求の経過と請求棄却決定の問題点を報告、最初に飯塚事件の3つの特徴を挙げた。

 第1は、死刑が執行されてしまった事件であること。執行は08年10月28日だったが、徳田弁護士は少し前に久間さんに面会し、再審請求について話し合っていた。「あの時もう少し早く再審請求していれば、執行はなかったのではないか。弁護士の怠慢で執行を許してしまった。その過ちを背負いながら再審に取り組んできました」と徳田弁護士は悔やむ。

 一方、死刑執行された事件であることは、裁判官にはハードルの高さになり、慎重な審理を求められる。もし再審無罪になれば、国家による過った殺人を認めることになる。「それが、裁判所が再審開始を拒み続ける理由にもなります」と徳田弁護士。

 第2は、真犯人を特定できる証拠の血痕がありながら、捜査段階で全量消費されてしまったこと。被害者の膣内などから採取された血痕・体液は「100回鑑定ができるぐらい十分な量があった」(石山昱夫・帝京大学教授)のに、科警研の技官たちは3回の鑑定で全部使い切ってしまった」という。しかも、「使い切った」理由も明らかにされていない。徳田弁護士は「これが、無実を証明するうえで大きなハンデになっています」と述べた。

 だが、試料の血痕はほんとうに「全量消費」されたのか、そんな疑問もある。

 第3は、任意取調べを受けた段階から死刑執行の日まで、久間さんが終始一貫無実を訴え、完全否認を貫いた事件であること。わが国ではこれまで、免田事件など再審で死刑囚が無罪になった事件はあるが、その多くは何らかの形で「自白」が取られており、その任意性、信用性が否定されて再審開始の道が開かれてきた。

 本件では、こうした自白が全く存在せず、直接的証拠もない。確定判決も、「間接事実の総合評価によって犯人性を判断するしかない」とした。それだけに、裁判では有罪認定の中核となった「状況証拠」の証拠能力、信用性が徹底的に吟味されなければならない。弁護団は再審請求で、確定判決の証拠構造の中核が、①科警研のDNA型鑑定②遺留品発見現場でのT目撃証言であるとし、この2つに証拠価値がないことを立証した。


●DNA型鑑定、目撃証言のでたらめさを立証した新証拠

 福岡地裁に申し立てた第1次再審請求(09年10月)で、弁護団は2つの新証拠を提出した。1つは、本田克也・筑波大教授によるDNA型鑑定・血液型鑑定に関する法医学鑑定書。2つ目は、厳島行雄・日本大学教授によるT目撃証言に関する心理学鑑定書だ。本田鑑定は、科警研による「MCT118型」鑑定の証拠能力を全面的に否定した。鑑定書によると、「MCT118型」によるDNA型について、科警研鑑定は犯人・久間さんとも「16―26型」としていたが、久間さんのDNA型は「18-30型」であり、明らかに誤っていた。血液型についても「被害者はO型とA型であり、犯人はAB型。B型の久間さんは犯人ではありえない」と結論した。久間さんの無実を物語る衝撃的な鑑定だ

 再審請求審では、科警研がDNA型鑑定の際に撮影したネガフィルムが証拠開示され、本田教授が解析した結果、科警研鑑定書に添付された写真が改ざんされていたことも明るみに出た。ネガフィルムには確定判決で証拠採用された写真より広い範囲が写っていた。そのネガの写真に焼き付けられていない部分に、「久間さんでも被害者のものでもないDNA型」が確認された。これは真犯人のもの以外に考えられない。

 科警研はそれを隠すため、意図的に写真を切断して焼き付けたと考えるほかない。徳田弁護士は「ネガフィルムは科警研による証拠改ざんの痕跡を示す証拠」と指摘した。

 厳島鑑定は、T目撃証言が警察官に誘導されたものであると断定した。T目撃証言とは、女児2人が行方不明になって数時間後、〈遺留品発見現場の近くの山道で久間さんの車と特徴が同じ紺色のワンボックスカーを見た〉という内容だ。厳島教授は現場で再現実験を行い、このT証言の不自然さを指摘した。

 事件発生(92年2月20日)から2週間余、3月9日に作られた供述調書は、T証人が「目撃した」という不審車と不審人物について、極めて詳細に供述している。

 T供述は不審車の特徴として、①ナンバーは不明②標準タイプのワゴン車③メーカーはトヨタやニッサンではない④やや古い型⑤車体は紺色⑥車体にはラインがなかった⑦後部タイヤはダブルタイヤ⑧後輪のホイルキャップの中に黒いラインがあった⑨窓ガラスは黒く車内は見えなかった――という9項目を挙げた。

 不審人物の特徴としては、①頭の前の方が禿げていた②髪は長めで分けていた③上衣は毛糸で④胸はボタン式⑤薄茶色の⑥チョッキで⑦チョッキの下は白いカッターの長そでシャツを着ていた⑧年齢は30~40歳だった――という8項目を挙げた。

 しかし、T証人がこの不審車を目撃したという現場の「八丁峠」はカーブが続く山道。T証人は坂道の下りカーブを時速20~30キロで運転中、左カーブで対向車線に停まっていた「不審なワゴン車」を見た、としている。

 はたして、山道の下りカーブを運転中に、前記のような詳細な「目撃」が可能なのか。車がすれ違うのに要するのはほんの数秒。しかも、「後輪がダブルタイヤだった」というのは、下りカーブで後ろを振り返って見る危険を冒さなければ知り得ない情報だ。

 厳島教授は、現場での走行再現実験の結果に基づき、「目撃はごく短時間であり、対象物の詳しい形状まで記憶することは不可能T目撃証言は作られた供述」と断言した。

 さらに、再審請求審で証拠開示された捜査報告書により、T証言が捜査員の誘導によるものであることを示す事実が明らかになった。実は供述調書が取られる2日前の3月7日、捜査員が久間さん宅を下見して車を調べ、「車体にはボディラインなし」などと報告していた。この捜査員が2日後、T証人の聴取を担当し、調書を作成していたのだ。

 当時、久間さんが乗っていたのは、マツダの「ウエストコースト」というワゴン車。この車種には本来、車体に特徴的なラインが付けられていたが、久間さんはラインを消して乗っていた。そのことを知らなければ、わざわざ「トヨタやニッサンではない」「ラインがなかったなどと供述するわけがない。詳細なT証言は、捜査員による完全な誘導だった


●再審申し立てに判断を回避した最高裁

 確定死刑判決が有罪認定の根拠とした2つの柱=DNA型鑑定とT目撃証言は、弁護団が提出した2つの新証拠と再審請求審で開示された証拠により、完全に破綻した。

 ところが、2014年3月31日付で福岡地裁が出した決定は「請求棄却」だった。

 地裁決定は、科警研のDNA型鑑定については「証明力の評価に変化が生じた」として事実上、証明力を否定した。しかし、T目撃証言については、「厳島鑑定は供述の信用性を揺るがすものではない」「新証拠によって旧証拠の証明力や信用性が減殺されることはない」などとして、証拠能力を認めた。

 山道の下り坂カーブを走行中、わずか数秒間すれ違っただけで、運転者の髪形や詳しい服装から、「車体にはラインがなく、後輪はダブルタイヤだった」などという車の特徴までつかみ記憶していた、などという荒唐無稽な「証言」を、裁判官たちは「信用できる」と言うのだ。そんな裁判官たちの判断を私たちは「信用できる」だろうか。

 そのうえで地裁決定は、「DNA型鑑定以外の状況証拠を総合すれば、事件本人(注;久間さん)が犯人であることについて、合理的な疑いを超えた高度の立証がされていることに変わりはなく、新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではない」と結論付け、再審請求を棄却した。

 さらに福岡高裁は18年2月6日、弁護団の即時抗告を棄却、最高裁も今年4月21日、「記録を精査しても、原決定(再審請求棄却決定)を取り消すべき事由は見当たらない」として、特別抗告を棄却する決定を行なった。

 弁護団は特別抗告で、2つの新証拠をめぐる論点だけでなく、高裁決定の憲法違反も指摘していた。福岡高裁の再審請求審では、裁判官3人のうち1人が、刑事裁判で死刑判決を出した一審・福岡地裁の審理に主任裁判官として参加していた。

 かつて自分が加わり死刑判決を出した裁判の再審請求に対して、ニュートラルな状態で審理に臨むことができるのか。裁判官は、もし再審請求を認めれば、自分が「無実の人に対する死刑」を命じた事実に直面することになる

 弁護団は特別抗告で、「これは憲法37条が定める〈公平な裁判を受ける権利〉に反する」と指摘し、憲法違反を主張したが、最高裁決定はこれについて判断を示さなかった

 この決定について、徳田弁護士は「決定文はわずか6ページ。ほとんど何も書いていないに等しく、これでは分析のしようもない。特別抗告から3年も経っており、最高裁は特別抗告を正面から受けとめて真摯に検討していると思っていたのに、弁護団の申立てに対してほとんど判断を回避した」と憤りをこめて批判した。

 それでも徳田弁護士は、第1次再審請求の到達点として、次の2点を挙げた。

 第1に、DNA型鑑定で久間さんの型が全く検出されなかったことが明らかになり、有罪判決の証拠の主たる柱の1つが破綻したこと。第2に、T目撃証言が捜査員に誘導されたものであることが明らかになり、その信用性が徹底的に揺らいだこと。

 それに、第2次再審請求では、警察が握りつぶしてきた真犯人につながる新たな目撃証言が加わる。この強力な新証拠を前に、裁判所は、司法が犯した「冤罪死刑」という取り返しのつかない過ちに目を逸らし続けることができるだろうか。(続く)

Last modified on 2021-09-15 11:03:30
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http://www.labornetjp.org/news/2021/0915yama

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」(2021/9/15不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(下)

 久間三千年(くま・みちとし)さんの死刑執行は、「口封じのための国家殺人」ではなかったか――「飯塚事件」の再審実現を目指して開かれたオンライン集会(9月4日)で、この事件の捜査をめぐり、「真犯人の目撃証言無視という新たな疑惑が指摘された。弁護団は7月に申し立てた第2次再審請求で「事件当日、被害少女2人と真犯人と思われる人物を目撃した」というKさんの証言を新証拠として提出した。驚くべきことにKさんは事件直後、犯人に直結するこの目撃を警察に通報したのに、福岡県警はこの決定的証言を調書も取らずに握りつぶしていた。事件発生から29年ぶりに浮上した真犯人の影。久間さんに対する見込み捜査に突っ走っていた警察は、「冤罪による死刑」だけでなく、みすみす「真犯人を逃がす」というもう一つの重大な罪も犯していた疑いが濃厚になった。


●「今にも泣きだしそうだった少女の顔」――鮮烈な29年前の記憶

 集会では、徳田靖之弁護士に続き、再審弁護団主任弁護人の岩田務弁護士が第2次再審請求の新証拠と第2次再審請求の課題について報告した。

 新証拠は、福岡県内に住む男性Kさん(72歳)が、「事件当日の1992年2月20日午前11時ごろ、飯塚市内の八木山バイパスを走行中、後部座席に小学生の女児2人を載せたワンボックスタイプの軽自動車を目撃した」という証言だ。

 その現場は、女児2人が行方不明になった場所に近接した場所。Kさんが弁護士に行なった陳述によると、問題の軽自動車は制限を下回る時速40キロ以下でノロノロ運転していた。その後ろについてイライラしていたKさんは、登坂車線で軽自動車を追い越す際、「こんな迷惑な運転をするのはどんな奴か」と思って運転席を見た。すると、「自分より少し若いくらい(30~40歳)の色白で坊主頭、細身の男性」が運転しており、後部座席には「オカッパ頭でランドセルを背負った女の子」が乗っていた。また、後部座席には「もう1人、女の子が横になっていて、その横にもランドセルがあった」――。

 しかし、Kさんはなぜ、そのような30年近くも前の古い記憶をはっきり覚えていたのか。そしてなぜ、今ごろになって「証言」することにしたのか。当然、検察側は突っ込んでくる。これについて岩田弁護士は、①記銘②保持③想起――の3点から説明した。

①〈記銘〉=なぜ記憶に残ったか。理由は、非常に強い印象を受けた出来事であったこと。後部座席に乗っていた女の子は「うらめしそうな」「うらさびしそうな」「今にも泣きだしそうな」表情をしていた。その異常な表情とともに、平日昼前の時間帯にランドセルを背負った子どもが車に乗っているのを不審に感じ、「誘拐ではないか」という思いを抱いた。さらにその夜、「飯塚市内で少女2人が行方不明」というニュースが流れ、「自分が見たのは行方不明の少女たちではないか」と思い、翌朝110番通報して目撃内容を伝えた

②〈保持〉=なぜ記憶を保ち続けたか。110番通報の1週間後、刑事が来て事情聴取を受け、目撃内容を詳細に説明した。ところが、刑事はメモをしただけで供述調書は取らず、その後何の連絡もしてこなかった。しかし、自分が目撃したのは被害少女と真犯人だと確信し、3年後の第1回公判を傍聴して直接確認した。すると、被告人は自分が目撃したのと全くの別人で驚いた。ただ、「DNA型鑑定が一致した」という検察官の冒頭陳述を聞き、自分が目撃した車は事件に関係がなかったのか、と思い直した。

③〈想起〉=なぜ今回、その目撃を思い出したのか。その後も事件について関心を持ち続けていた。2019年、『西日本新聞』が飯塚事件に関する特集記事を連載した。その中に、「DNA型鑑定が崩れた」という記事があり、「それなら、やはり自分が見たのは犯人だったに違いない」と思い、『西日本新聞』に連絡した。それが記事になり、徳田弁護から連絡があって、新証拠となる詳細な陳述書が作成された。その中で、弁護士にこう訴えた――「あの女の子の恨めしそうな表情が28年間、私を離してくれなかった」。


●第2次再審請求で問い直される「T供述」の信用性

 岩田弁護士は「Kさんが目撃したのが犯人であれば急転直下、真犯人の存在とともに久間さんの無実もはっきりする」と述べ、再審請求でK証言の果たす役割を解説した。

 K証言は、第1次再審請求の地裁決定がほぼ唯一の「証拠」とした「T供述」と真っ向から対立する。事件の2週間余り後、「不審なワゴン車を見た」と供述したT証言と、事件翌朝、「少女2人が乗った軽自動車を見た」と通報したK証言。2つの証言の信用性は表裏一体であり、K証言の信用性が強まれば、T供述の信用性は弱まる。

 しかも、T供述は犯行(被害少女)を直接目撃したものではなく、間接証拠に過ぎない。しかし、K証言は「被害少女2人を目撃した」というもので、直接証拠となる。

 この重要な手掛かりとなる目撃通報を受けた福岡県警は、直ちに捜査員を出して供述調書を取るべきなのに、1週間後に刑事が来てメモしただけで放置した。

 その一方、警察は久間さんに対する見込み捜査に走り、「久間=犯人」に合致する証拠集めに躍起になった。そうして作られたのが、「ワゴン車の詳しすぎる特徴」をはじめ、捜査員に誘導された痕跡が顕著なT供述だった。

 岩田弁護士は「第2次再審請求では、T供述の信用性が攻防の中心になる。全部目撃するのは不可能なほど膨大な情報を『目撃した』とするT供述を、裁判官は『誘導はなく、信用できる」と評価した。これをKさんの目撃証言を中心に、いろんな方向から崩していく。それが第2次再審請求の課題です」と報告を締めくくった。


●「久間三千年は無実です」――妻の悲痛なメッセージ

 岩田弁護士の報告に続き、再審請求人である久間さんの妻が集会に寄せた次のようなメッセージが紹介された。

 「久間三千年は無実です。私たち家族の幸せは、平凡な生活の中にあり、夫の優しさ思いやりは、日々の生活の中に満ちあふれていました。夫は一方的に犯人扱いされ逮捕、起訴され裁判にかけられました夫は終始一貫して無実を訴え続けてきました
 私たち家族は、夫を疑ったこともなく、理不尽な仕打ちを受けながらも夫が生かされていることだけを、心のよりどころとして、耐え続けてきました。突然の死刑執行に目の前が真っ暗になり何も考えられなく、途方に暮れました。
 無実を訴え続ける夫に殺人の汚名を着せて、命まで奪う国の法律があるとは、思ってもみませんでした。
 無実を訴え続け命まで奪われた夫の無念を晴らし名誉を回復するために再審請求をしましたが、最高裁での特別抗告も棄却されました。
 令和3年7月9日に、第2次再審請求をしました。
 どうしてなのでしょうか。終始一貫して無実を訴えている者の再審の審理は、無理なのでしょうか。すぐにでも裁判を受ける権利は平等にあるべきです。
 無茶なことを言っているのではなく、裁判が間違っているからやり直して欲しいと願っているだけです。公平な権利さえも与えられないのでしょうか。
 裁判所において、刑事裁判の目的は、「無罪の発見である」、被告人の人権保障にある。
 「百人の真犯人を逃がしても一人の無辜(むこ)を罰してはならない」とする考え方。
 刑事裁判は、憲法に保障されている人権を守るためにあると、ある書籍に書いてありました。このことを原点として裁判に臨んでいる裁判官もいらっしゃいます。
 検察官の職務についても「公益の代表者」と義務づけ、真相究明と同時に被告人の後見的役割を担う、とあり、法的用語や条文など解りにくいところは多いのですが、再審を願っているだけなのです。
 どうか、皆様方のお力添えを宜しくお願い致します。いつ、どんな時でも一人の人間が公平公正な裁きを受けられることを心から望んでいます。
 令和3年9月4日」


●「久間さんの無念を晴らす」――桜井昌司さんの連帯アピール

 続いて、布川事件冤罪被害者桜井昌司さんが連帯のアピールを行なった 「話を聞くたび、ひどい事件だと思います。東の足利、西の飯塚と言われ、DNA型鑑定で有罪にされた。しかし、久間さんは死刑が執行された何という国家だろうと思う。警察はなぜK証人にきちんと聴取しなかったのか。別の事件で警察は久間さんを疑っていたそうで、警察はひたすら有罪証拠をかき集めた。布川でも同じことがありました。

 T供述を検証した八丁峠の映像を見て思いました。現場は九十九折の山道で、道路の左側には溝があり、脱輪するかもしれない。そんな場所で、対向車がダブルタイヤだったなんてわかりっこない。こんなことを優秀な裁判官がなぜわからないのか

 日本の警察はこれまでも証拠を捏造してきました。そうして、どれだけの人が刑務所に入れられ、殺されてきたか。すべてが無責任です。冤罪事件で国家賠償しても、だれも懐が痛まない。そのお金も税金です。足利事件、布川事件、ゴビンダさんの事件東電事件)、東住吉事件だれもその責任を追及しない

 再審法を改正しないといけない。税金で集めた証拠を法廷に出すのは当たり前じゃないですか。久間さんの無念は必ず果たせると確信しています。必ず勝ちます。一緒にがんばりましょう。無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です

 桜井さんは1967年に起きた布川事件で杉山卓男さん(故人)とともに無期懲役刑が確定したが、2011年に再審無罪をかちとった。8月27日、この冤罪の責任を問う国家賠償訴訟の控訴審で勝利し、国・県は上告できず9月10日、勝訴が確定した。桜井さんは13日に会見し、「54年間ずっと背負っていた冤罪の重荷を下ろすことができた」と話した。

 だが、桜井さんの闘いは終わらない。国賠訴訟の一審勝訴後、直腸がんが見つかり、食事療法でがんと闘っている。そうして、冤罪と闘う全国の「獄友」の雪冤のために東奔西走する久間さんの無念を晴らす。それも、桜井さんの大きな目標の1つだ。(了)

Last modified on 2021-09-15 11:00:47
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●木谷明さん《冤罪を回避するために法曹三者…無実の者を処罰しないという強い意志、意欲をもって仕事にあたること》

2019年08月21日 00時00分38秒 | Weblog


マガジン9のレポート【伊藤塾 明日の法律家講座レポート/冤罪の阻止・根絶と法曹の責任 講師:木谷明氏】(https://maga9.jp/190807-4/)。

 《冤罪を回避するために法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)に共通して言えることは、無実の者を処罰しないという強い意志、意欲をもって仕事にあたることです》。

 是非、ご一読ください。裁判官だけでなく、検察官・弁護士への重要なメッセージを含みます。

 大崎事件について、木谷明さんは「無実の人を救済するために裁判所はあるのではないのか」と、裁判所を批判。木谷さん自身は、《裁判官時代に約三十件もの無罪判決を書いた経験を持つ。一件を除き検察は控訴すらできなかった》そうだ。
 その木谷さんからの重要なメッセージ、《冤罪を回避するために法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)に共通して言えることは、無実の者を処罰しないという強い意志、意欲をもって仕事にあたることです》。裁判官・検察官・弁護士、それぞれと立場を考えた重いメッセージが続く。さらに、結論。《最後に、冤罪の阻止・根絶と法曹の責任に関する私の結論を申し上げます。冤罪の阻止・根絶について法曹は重大な責任を負っています。それは、法曹三者、いずれにも共通です。冤罪の阻止・根絶に向けて最大限の努力をすることは、法曹に与えられた最も重要な、そして法曹だけに与えられた崇高な責務です》。

   『●PC遠隔操作…事件…
    《後から「発見」された証拠の危険性 これに続いて、元東京高裁判事で
     現在は片山氏の弁護人の木谷明弁護士が、自身が裁判官中に経験した
     再審請求事件の話を例に、後から「発見」された証拠の危うさを説いた。
     それは、かの有名な白鳥事件。…袴田事件でも、有罪の決め手の1つ
     である血染めの着衣が、味噌工場のタンクから「発見」されたのは、
     事件から1年2か月も経ってから。…やはり再審請求中の狭山事件でも、
     石川一雄氏の自宅の2回にわたる家宅捜索では見つからなかった
     被害者の万年筆が、3回目の捜索で勝手口の鴨居から「発見」され、
     有罪証拠に使われた》

   『●袴田事件…検察=《狼は本音を明かす。
     「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」》
    「《二重の不正義》を認めたくない検察、それを見て見ぬふりする裁判所。
     木谷明さんや熊本典道さんの話や訴えになぜ耳を傾けようともしないのか…。
     4年も待たせて、この仕打ち、さらに待てという」
    《元裁判官の木谷明氏の持論である。裁判官時代に約三十件もの無罪判決を
     書いた経験を持つ。一件を除き検察は控訴すらできなかった。その木谷氏の
     著書「『無罪』を見抜く」(岩波書店)にはこんなくだりがある…》
    《「疑わしきは被告人の利益に」という言葉は刑事裁判の原則で、再審でも
     例外ではない。ところが日本の検察はまるでメンツを懸けた勝負のように、
     再審開始の地裁決定にも「抗告」で対抗する。間違えていないか。
     再審は請求人の利益のためにある制度で、検察組織の防御のためではない

   『●大崎事件…再審するかどうかを延々と議論し、
      三度にわたる再審開始決定を最「低」裁がちゃぶ台返し
    《会見に同席した元裁判官の木谷明弁護士も「無実の人を救済するために
     裁判所はあるのではないのか。大変がっかりしている」と批判した》

   『●《家族への脅迫状…「苦しみ抜いて一人で罪をかぶろう 
         としているのに許せない。もともと無実なのだから」》
    「大崎事件について、《元裁判官の木谷明弁護士…
     「無実の人を救済するために裁判所はあるのではないのか」》と。
     【報道特集】…によると、《”伝説”の元裁判官~冤罪救済に挑む…
     無罪判決を30件も出し、全てを確定させた元裁判官。
     退官後、81歳となった今、冤罪救済を目指す弁護士として裁判所に
     挑んでいる。そこで直面した裁判所の現状とは》。『イチケイのカラス』…
     のモデルの一部になっているらしい」

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https://maga9.jp/190807-4/

伊藤塾 明日の法律家講座レポート
冤罪の阻止・根絶と法曹の責任 講師:木谷明
By マガジン9編集部  2019年8月7日

1979年に鹿児島県大崎町で男性の遺体が見つかった「大崎事件」について、先日(2019年6月26日)、最高裁判所が一審、二審の決定を覆し再審請求を認めない決定をしたことが社会に大きな衝撃を与えました。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%以上と言われており、いったん有罪判決が確定した後に新証拠を提出して行う再審手続は、針の穴に駱駝を通すより難しいとさえ言われているそうです。

今回の講演では、元高等裁判所判事で弁護士の木谷明先生に、具体的な再審事件(恵庭OL殺人事件)を例に引きながら、刑事裁判の現実の姿を明らかにするとともに、冤罪を阻止・根絶するために法曹が果たすべき役割・責任についてお話しいただきました。[2019年7月13日(土)@渋谷本校]


決して「ひとごと」ではない冤罪事件

 ある日、突然、あなたが身に覚えのない罪で警察に連れて行かれたと想像してみてください。いくら弁解しても受け付けてもらえず、釈放してもらえません。最大23日間、家族や社会から断絶され、厳しい取調べが続く中で、あなたは否認を貫くことができるでしょうか。現実には、警察の厳しい取調べと誘導によって自白してしまう人は少なくありません。
 いったん自白してしまえば、検察は警察の作った自白調書が正しいものとして質問してきます。そして、起訴されてしまった場合の有罪率は99.9%以上です。無罪判決は1000件に1件もありません。残念ながら、「公明正大な裁判官なら自分の言い分をちゃんと聞いてくれるだろう」という期待は、よほどの幸運に巡り合わない限りかなわないのです。
 冤罪事件はたくさんあります。特に痴漢事件など比較的刑の軽い事件では、警察に「認めたら罰金にしてやる」と言われて嘘の自白をしてしまう人がたくさんいます。死刑や無期懲役に当たる重罪ですら、冤罪は決して珍しくありません。では、冤罪をなくすために法曹は何をすべきでしょうか。今日は私が現在弁護の一角を担っている「恵庭OL事件」を例にお話したいと思います。


恵庭OL事件とは

 2000年3月17日の朝、北海道恵庭市の雪原上で全身真っ黒こげになった女性の死体が発見されました。解剖の結果、犯人は被害者の首を絞めて殺害したうえ、車で死体を運び灯油をかけて火をつけたと想定されました。
 死体発見前夜の午後11時15分頃、現場近くに住むHさんが犬の散歩に出た際に、現場方向に数メートルに及ぶ大きな炎が立ち上がるのを見たという目撃証言がありました。Hさんの証言によると、散歩中にも現場方向に2回大きな炎を見ており、帰宅後の12時5分頃には最初に見た炎の3分の1ほどの大きさになっていたそうです。
 現場付近からタイヤ跡や複数の足跡が検出されたものの犯人の目星はつかなかったのですが、警察がさらに捜査を進めると、被害者A子さんは会社の同僚のOさんと、ある男性社員を挟んで三角関係にあったということが分かりました。
 事件当日の3月16日、A子さんとOさんは夜9時半頃に連れ立って会社から帰っています。Oさんが言うには、その後駐車場で別れた後はA子さんには会っていないそうです。しかし、OさんがA子さんに対し嫌がらせの無言電話をかけていたことや、Oさんが事件前日に灯油10リットルを買っていたことなどから、警察は三角関係のもつれからOさんがA子さんを殺したと想定しました。
 警察による厳しい取調べが1ヶ月ほど続き、精神状態が不安定になったOさんは神経科に入院してしまいましたが、退院後に逮捕勾留され、5月23日に起訴されました。何かの因縁でしょうか、2000年5月23日というのは私が裁判官を辞めた日でした。


間接事実による立証の難しさ

 この事件では犯人を特定するための直接証拠がないため、間接証拠によって事実を認定しなければなりません。これはなかなか難しい作業です。
 Oさんが犯人だとする想定を根拠づける積極的間接事実として、事件前夜に購入した灯油の処分方法についてOさんが嘘をついていたことが非常に重要視されました。Oさんは警察が自分を疑っていると知って怖くなり購入した灯油を捨ててしまっていたのですが、後に灯油を持っていた方が無実の証明になるのではないかと考え直し、再度灯油を購入し、それを事件前夜に買った灯油だと言い張っていたのです。弁護士がその事実を知ったのは公判が始まってしばらく経ってからでした。
 他方、Oさんを犯人と認める上で障害となる消極的間接事実としては、後に述べるアリバイのほかに、物理的にOさんにA子さんが殺せるのかという問題があります。OさんはA子さんより体格的に劣るうえ、短指症で右手の握力が極めて弱いという障害があります。そのような人が後部座席から助手席に座った女性を殺すことが出来るのでしょうか。仮に殺せたとして、50kg以上もある死体を一人で車から降ろして現場まで運べるでしょうか。現場からは引きずり痕もOさんの靴に合う足跡も見つかっていません。また、Oさんの車内にもA子さんの髪の毛や血液、指紋、DNAなど一切ありませんでした。検察はOさんが車内の清掃をしたのだろうと言いますが、いくら掃除したつもりになっても、痕跡を何一つ残さないということは事実上不可能と考えるべきです。


検察による証拠の偽装工作

 私が決定的だと思うのは、Oさんのアリバイの問題です。Oさんについては、事件当日の午後11時36分頃に現場から15km離れたガソリンスタンドで給油したという給油伝票が発見されました。しかし、付近の住民Hさんは、死体発見当日の事情聴取で、「午後11時15分ころ、死体焼損現場方向から大きな炎が上がるのを見た」という明確な供述をしています。ですから、もしOさんが犯人であれば、この給油伝票の記載を前提としても、Hさんが大きな炎を目撃した午後11時15分からわずか20分の間に街路灯のない雪道を移動しなければなりません。
 検察は20分もあれば十分移動できると言いましたが、実際に実験してみると25分ほどかかりました。しかも控訴審段階になって、マスコミの報道から、正確な給油時刻が記録された防犯ビデオの存在が発覚し、これによって、Oさんが給油を受けた時刻は11時31分であることがはっきりしたのです。検察は、防犯ビデオを隠した上で、給油伝票に記載されている時刻が誤ったものであることを知りながら、その給油伝票を証拠として提出して、虚偽の主張・立証をしていたことが分かりました。
 それだけでは不安だったのでしょうか、検察は目撃者Hさんの初期の供述調書も隠していました。取調べの初期の頃、Hさんは、「犬の散歩を終わって帰宅するまでの間に、何度も大きな炎が上がるのを見た」「帰宅後の12時5分頃にも、最初に見た3分の1くらいの炎を見た」とされていたのです。10リットルの灯油は、3~4分もすれば炎が小さくなって遠方から見えない状態になることが明らかなので、Hさんの初期供述によると、犯人は途中で灯油を継ぎ足しながら1時間くらい現場で死体を燃やしていたことになります。こうなるとOさんのアリバイは完全に成立してしまいます。これでは都合が悪いので、検察はHさんを繰り返し尋問し、最初の目撃時刻を曖昧にさせたり、「その後何度も炎を見た」という記述を消させたりした後、最終的に起訴直前に作成した検察官調書だけを証拠として提出しました。そのため、弁護人は、HさんがOさんの「完全なアリバイを証言している事実」を知らないまま一審判決を受けさせられたのです。
 他方、A子さんのロッカーキーがOさんの車から見つかったという問題は、一見するとOさんが犯人だということを裏付ける事情になりそうです。判決によると、Oさんの車内の捜索中にグローブボックスからロッカーキーが出てきたのでA子さんのロッカーを開けてみたら開いた、と認定されています。しかし、A子さんのロッカーはふだんから鍵をかけられておらず、鍵はロッカー内に放置されていたのです。そのような状況の中、事件当日にA子さんが、この日に限ってロッカーキーを持って出たと考えるのは不自然です。仮に持ち出したとしても、Oさんがそれを奪う必要がどこにあったのでしょうか。さらに、検察が言うようにOさんが殺人の痕跡を消すために車内を完璧に掃除したのであれば、なぜロッカーキーだけが車内に残っていたのでしょうか。こういう疑問を辿っていくと、この問題は、「警察が事前にA子さんのロッカーからキーを持ち出し、それをOさんの車内捜索中にグローブボックスに置いて、あたかもそこから発見されたという外観を作り出したのではないか」という疑問に行き着きます。そして、私はそれが最も合理的な推測であると思います。


なぜ裁判官は判断を誤ったのか

 ロッカーキーの問題について、裁判所は、警察が令状なしにOさんの車内からキーを持ち出した点については令状主義に違反すると認めているのですが、ロッカーキー自体の証拠能力は認めています。そして、裁判所は、警察がA子さんのロッカーからキーを持ち出してOさんの車に置いた(つまり、証拠を捏造した)という弁護人の主張を認めません。裁判所は、正義のために仕事をしている警察や検察が、証拠を捏造するなんて有り得ないと思っているのです。しかし、検事ですら物的証拠を捏造することがあり得ることは、村木厚子さんの郵便不正事件で実証済みです。
 Oさんのアリバイを巡る問題は、証拠開示に関する重大な問題を孕んでいます。弁護側が、正確な時刻が記録されている防犯ビデオの存在を知り証拠開示を求めることができたのは控訴審に入ってからです。また、Hさんの初期供述調書は、確定審では遂に開示されず、それが開示されたのは、再審段階に入ってからでした。つまり一審裁判所は、防犯ビデオの存在もHさんの初期供述調書の存在も知らずに、犯人は死体に火をつけたらすぐに現場から逃げたとしてOさんを有罪と認定したのです。基本的に控訴審もそれを踏襲し有罪判決が確定しました。
 なぜ裁判所はそのような不合理極まりない判断をしたのでしょうか。そこで思いつくのがOさんの嘘の問題です。裁判所は嘘をつく被告人は犯人だと思い込むことが多いです。しかし、犯人として疑われて追いつめられた無実の人間が窮地を脱しようとして嘘をついてしまうことはよくあります。これまでの冤罪事件においても、多かれ少なかれ嘘をついている被告人は多いのです。嘘をついているからといって犯人と決めつけると重大な間違いが起こることはこれまでの冤罪の歴史ではっきりしているのですから、裁判所はそのくらいのことは勉強してくれなければ困ります。
 いま、この事件は第二次再審請求が特別抗告審に係属している段階です。弁護団は、次々に最高裁へ補充書を提出していますが、果たして最高裁が聞く耳を持ってくれるでしょうか大崎事件についてあんなにひどい決定が出てしまったので、情勢は決して楽観できる状況ではありませんが、いつかは必ずOさんの無実を晴らしてあげなければいけないと思っています。


冤罪を回避するために法曹が心がけるべきこと

 冤罪を回避するために法曹三者裁判官、検察官、弁護士)に共通して言えることは、無実の者を処罰しないという強い意志、意欲をもって仕事にあたることです。
 検察官は、なりたての頃はそのような気持ちで頑張りますが、無罪を出すと上司に叱られ有罪にすると褒められるという環境の中でだんだん変わっていってしまいます。しかし、立ち止まる勇気、引き返す勇気は必要です。ましてや違法捜査、違法な公判活動は絶対にやってはいけません。
 弁護士は、無実の人は自分の力で救済するんだという格別に強い意欲と熱意を持って全力でぶつかる必要があります。生半可な気持ちで型通りの弁護活動をやっているだけでは強大な権限を持った国家権力に勝てません。被疑者、被告人の言い分をしっかり聞き取って、被告人に有利な証拠を収集することに全力を尽くさなければなりません。そのためには、刑事訴訟法で与えられた権限を最大限に活用して、検察が開示していない証拠をなんとかして突き止め開示させるように努力することが大事です。
 裁判官は、まず謙虚であることが大事です。真実は神のみぞ知ると言われますが、もう一人、被告人が真実を知っています。『それでもボクはやってない』という映画を作った周防正行監督は、「裁判官は被告人に裁かれているという意識を持たなくてはならない」と言っておられましたが、全くそのとおりだと思います。そのためには、真相は被告人の言っているとおりではないのかと考えるところから出発しなければいけません。また、被告人が嘘の弁解をしたということから短絡的に有罪の判断をするということは絶対にあってはなりません。検察官や警察官も人間である以上、困ったときには違法行為に出ることはあり得るし、検察官の手元には国が公権力で集めた証拠が全部あります被告人側がそれを見るチャンスがないという状況を、なんとか変えていかなければいけません
 私はすでに81歳ですから、これからの活動にはおのずから限界があります。したがって、今後の刑事裁判の質の向上、冤罪の阻止・撲滅・根絶はこれから法曹を目指すみなさんに期待を託すしかありません。どうか、皆さん、頑張ってください。
 最後に、冤罪の阻止・根絶と法曹の責任に関する私の結論を申し上げます。
 冤罪の阻止・根絶について法曹は重大な責任を負っていますそれは、法曹三者、いずれにも共通です冤罪の阻止・根絶に向けて最大限の努力をすることは、法曹に与えられた最も重要な、そして法曹だけに与えられた崇高な責務です

木谷明(弁護士、「法学館法律事務所」所属、元東京高等裁判所部総括判事、元法政大学法科大学院教授)
神奈川県平塚市出身。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。1961年 大学卒業後、司法研修所に入所。1963年判事補任官(東京地裁)。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て2000年5月、東京高裁部総括判事を最後に退官。同年6月公証人(霞ヶ関公証役場)となる。2004年から2012年まで法政大学法科大学院教授を務める。著書の『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(法律文化社)は、痴漢冤罪を描いた映画『それでもボクはやってない』を撮った周防正行氏の映画作りの参考にされた。その他の著書に『「無罪」を見抜く-裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店)、『刑事事実認定の理想と現実』(法律文化社)など多数。
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●PC遠隔操作冤罪事件: 2度目の冤罪を黙殺するマスコミ

2014年05月20日 00時00分04秒 | Weblog


付記(140521): ブログ主にとっては意外な結果になりました・・・・・・●PC遠隔操作”冤罪”事件: 意外な結果に・・・・・・ブログ主自身の無能さを痛感』]

※昨日書いていたものですが、あえて、アップします。ブログ主も頭の整理が出来ていません・・・・・・。今回も片山さんの自宅に記者が来たりしているそうですし、マスコミも警察報道に乗っかって(アベ様のNHKや読売テレビが)「騒いでいる」様にも感じます。佐藤弁護士は「警察は伸るか反るかの大勝負に出てきた」と仰っています。
 まずは、佐藤弁護士の記者会見をご覧ください。神保哲生さんのビデオニュース・ドット・コムで、『『遠隔操作ウイルス事件 「片山氏の無実の確信に揺るぎはない」 『真犯人メールは自作自演』報道を受けて佐藤弁護士が会見』(http://www.youtube.com/watch?v=Wu1Tgk60Bmg&feature=youtu.be)』。
 片山さんには早く佐藤弁護士に連絡をしてほしいです。



asahi.comの記事【PC遠隔操作「真犯人」名乗るメール 複数の記者に届く】(http://www.asahi.com/articles/ASG5J6H6BG5JUTIL03T.html)。

 PC遠隔操作事件、「隠し撮りか何か知らないがあれだけ浮かれた報道をしたマスコミ」、さあどう落し前をつけるのか!

   『●PC遠隔操作冤罪事件: やはり捏造しようとしていないか?

 大ニュースだと思うのですけど、なぜマスコミは大騒ぎしないの? 警察への配慮? 片山さんへの配慮は?? 

   『●「自由はまぶしい」: PC遠隔操作冤罪事件、
             もし無罪となったらマスコミはどう責任を?


 警察は2度の冤罪を生んだんですよ!

   『●遠隔操作ウィルス冤罪事件: 「2人は自白まで」させられた
   『●PC遠隔操作冤罪事件: やはり捏造しようとしていないか?
   『●バカ騒ぎしないマスコミは検察に配慮?:
               PC遠隔操作冤罪事件、さっさと釈放すべきだ
   『●PC遠隔操作冤罪事件:
     マスコミは「お釈迦様の掌の上の孫悟空だった」「検察に踊らされた」


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【http://www.asahi.com/articles/ASG5J6H6BG5JUTIL03T.html】

PC遠隔操作「真犯人」名乗るメール 複数の記者に届く
2014年5月16日22時36分

 パソコン(PC)遠隔操作事件に絡み、「真犯人」を名乗る人物からのメールが16日、朝日新聞などの複数の記者たちに届いた。威力業務妨害罪などに問われている元IT会社員片山祐輔被告(32)のPCをウイルス感染させて遠隔操作したと主張し、片山被告の無実を示唆する内容で、警視庁は送信者を調べている。

 メールでは、「真犯人」は片山被告が使っていた複数のPCをウイルス感染させて乗っ取ったと説明。これらのPCを通じて、他人のPCを遠隔操作したとしている。片山被告がPCで神奈川県・江の島への経路を検索していたことを知り、片山被告が逮捕されるよう、PC遠隔操作事件に絡むウイルスのプログラムが記録された記憶媒体を江の島にいる猫に仕込んだという。

 この日あった公判後の記者会見で、片山被告は「メールは自分が送ったものではない」とし、「(真犯人しか知り得ない)秘密の暴露があり、信憑(しんぴょう)性は高いのではないか」と話した。

 片山被告は、ウイルス感染させた計6人のPCを遠隔操作し、9件の犯罪予告をしたとして起訴された。公判では、デジタルデータなどの間接証拠をもとに有罪を主張する検察側と、「真犯人に被告のPCや携帯電話を遠隔操作され、犯人に仕立てられた」として無罪を主張する弁護側が対立している。片山被告は3月に保釈されている。
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●袴田事件・釈放!: 「捜査機関が重要な証拠を捏造した疑い」「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」

2014年03月28日 00時00分46秒 | Weblog


東京新聞の記事【袴田事件の再審開始決定 静岡地裁「無罪の可能性」】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014032701000806.html)。
asahi.comの二つの記事【袴田事件の再審開始決定、釈放へ 証拠「捏造の疑い」】(http://www.asahi.com/articles/ASG3K6R2XG3KUTPB01C.html?iref=comtop_6_01)と、
【無実の叫び48年、支え続けた姉「うれしい」 袴田事件』(http://www.asahi.com/articles/ASG3T5QVHG3TUTPB015.html?iref=comtop_6_02)。

 出張先で知った衝撃的なニュース。素晴らしい判断、画期的な判決である(当然の判断で、あまりに遅い)。しかも、釈放である。「村山浩昭裁判長は、犯人が事件時に着ていたとされる「5点の衣類」に付いた血液のDNA型が袴田元被告とは一致しないとする鑑定結果を認定。衣類は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する」と判断」「村山浩昭裁判長・・は「捜査機関が重要な証拠を捏造(ねつぞう)した疑いがあり、犯人と認めるには合理的疑いが残る」と判断。「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」と刑の執行停止(釈放)も決めた」。「犬」や「ヒラメ」でないことが証明。

 「無実の叫びが半世紀を経て、ようやく司法に届いた。事件から48年、確定死刑囚となってから33年。27日、静岡地裁が袴田巌(いわお)死刑囚(78)の再審開始を決定した。支援を続けてきた姉は支援者と抱き合い、喜びを分かち合った。だが、死刑囚本人は、その意味を理解できるのかすらわからない」・・・・・・取り返しのつかない48年。死刑囚として精神的に大変な苦痛だったはずであり、これまで袴田事件に関わった警察、検察、裁判所はどう対処する心算だろうか? 「だが死刑囚は長い拘置所生活で精神を病んでおり、その意味を理解できるのかすらわからない」・・・・・・なんて残酷なんだろう・・・・・・激しい怒りがわいてくる。足利事件菅家さんの怒りのコメントと『噂の真相』で有名な宗像紀夫元検事の司法擁護コメントが対照的で、後者のコメントに心底呆れた。
 次は飯塚事件、こちらは既に死刑執行・・・・・・。

   『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審
                           司法の良心を示せるか?

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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014032701000806.html

袴田事件の再審開始決定 静岡地裁「無罪の可能性」
2014年3月27日 13時13分

    (袴田事件で再審を認める決定が出され、喜びを語る袴田巌元被告の
     姉秀子さん=27日午前、静岡地裁前

 1966年6月に静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして、80年に死刑が確定した元プロボクサー袴田巌元被告(78)=東京拘置所収監中=の第2次再審請求審で、静岡地裁は27日、裁判のやり直しを決定するとともに、死刑の執行を停止、元被告の釈放を認めた

 法務省によると、死刑囚の再審開始決定で、拘置の執行停止が認められたのは初めて。 村山浩昭裁判長は、犯人が事件時に着ていたとされる「5点の衣類」に付いた血液のDNA型が袴田元被告とは一致しないとする鑑定結果を認定。衣類は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する」と判断した。

(共同)
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http://www.asahi.com/articles/ASG3K6R2XG3KUTPB01C.html?iref=comtop_6_01

袴田事件の再審開始決定、釈放へ 証拠「捏造の疑い」
2014年3月27日10時55分

    (再審開始が決まり、感想を述べる姉の袴田ひで子さん。
     左は西嶋勝彦弁護団長=27日午前10時3分、静岡市葵区、
     山本壮一郎撮影)

 1966年に静岡県の一家4人が殺害、放火された「袴田事件」で死刑が確定した元プロボクサー袴田巌(いわお)死刑囚(78)=東京拘置所在監=の第2次再審請求審で、静岡地裁(村山浩昭裁判長)は27日、再審開始を認める決定をした。村山裁判長は「捜査機関が重要な証拠を捏造(ねつぞう)した疑いがあり、犯人と認めるには合理的疑いが残る」と判断。「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」と刑の執行停止(釈放)も決めた。

 死刑囚の再審開始決定は免田財田川松山島田無罪確定4事件と、後に覆された2005年の名張毒ブドウ酒事件の名古屋高裁決定に次いで6件目。

 静岡地検の西谷隆次席検事は「予想外の決定。上級庁と協議して速やかに対応する」と語った。刑の執行停止に対しては即日、不服申し立てをする方針。再審開始の判断については、不服申し立てを28日以降に行う方向とみられる。

 事件は66年6月30日に発生。同年8月、みそ工場従業員だった袴田元被告が強盗殺人や放火などの容疑で逮捕され、捜査段階で犯行を認める自白調書が作られたが、公判では一貫して否認。静岡地裁は68年9月、自白調書1通と間接証拠から元被告の犯行と断定して死刑を宣告し、80年11月に最高裁で確定した。

 08年4月に始まった第2次再審請求の最大の争点は、犯行時の着衣の一つとされる白半袖シャツに付いていた血痕のDNA型鑑定だった。確定判決は、シャツの右肩についた血痕の血液型が同じB型だとして、元被告のものと認定。第1次再審請求でもDNA型鑑定が行われたが、「鑑定不能」だった。

 第2次請求で再鑑定された結果、検察、弁護側双方の鑑定ともシャツの血と元被告のDNA型が「一致しない」とする結果が出た。検察側は「鑑定したDNAが劣化しており、汚染された可能性がある」と主張。弁護側と鑑定結果の信用性を巡って争っていた。

 この日の静岡地裁決定は弁護側鑑定について、「検査方法に再現性もあり、より信頼性の高い方法を用いている」と指摘。「検察側主張によっても信用性は失われない」と判断した。そのうえで、犯行時に元被告が着ていたとされる着衣は「後日捏造された疑いがぬぐえない」と指摘。DNA型鑑定の証拠が過去の裁判で提出されていれば、「死刑囚が有罪との判断に到達しなかった」と述べ、刑事訴訟法上の「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」にあたると結論づけた。

 さらに「捏造された疑いがある重要な証拠で有罪とされ、極めて長期間死刑の恐怖の下で身柄拘束されてきた」として、「再審を開始する以上、死刑の執行停止は当然」とも指摘した。

 事件では起訴から1年後の一審公判中、現場近くのみそ工場のタンクから血染めの白半袖シャツやズボンなどが見つかり、検察側は犯行時の着衣を、パジャマから変更。静岡地裁判決は自白偏重の捜査を批判し、45通のうち44通の自白調書を違法な取り調べによるものとして証拠排除したが、5点の衣類を始めとする間接証拠類と自白調書1通で、死刑を選択した。

     ◇

 〈袴田事件〉 1966年6月30日未明、静岡県清水市(現・静岡市清水区)のみそ製造会社専務(当時41)宅から出火。焼け跡から専務、妻(同39)、次女(同17)、長男(同14)の遺体が見つかった。全員、胸や背中に多数の刺し傷があった。県警は同年8月、従業員の袴田巌元被告(同30)を強盗殺人などの疑いで逮捕。一審で死刑判決を書いた熊本典道・元裁判官は2007年、「捜査段階での自白に疑問を抱き、無罪を主張したが、裁判官3人の合議で死刑が決まった」と評議の経緯を明かし、再審開始を求めていた。
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http://www.asahi.com/articles/ASG3T5QVHG3TUTPB015.html?iref=comtop_6_02

無実の叫び48年、支え続けた姉「うれしい」 袴田事件
2014年3月27日12時43分

     (再審開始が決まり、会見で喜ぶ姉の袴田ひで子さん=
      27日午前11時33分、静岡市葵区、福留庸友撮影)

 無実の叫びが半世紀を経て、ようやく司法に届いた。事件から48年確定死刑囚となってから33年。27日、静岡地裁が袴田巌(いわお)死刑囚(78)の再審開始を決定した。支援を続けてきた姉は支援者と抱き合い、喜びを分かち合った。だが死刑囚は長い拘置所生活で精神を病んでおり、その意味を理解できるのかすらわからない。

 再審開始の知らせを手に静岡地裁を出た袴田巌元被告の姉、ひで子さん(81)は、笑顔でくしゃくしゃになっていた。「うれしい。それだけです」。目には涙が浮かんでいた。

 弟を支えるため、一身を捧げてきた48年だった。

・・・・・・・・・。
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●和歌山毒カレー冤罪事件: 安田好弘弁護士と林眞須美被告

2013年05月15日 00時00分05秒 | Weblog


神保哲生さんのvideonews.comの記事(http://www.videonews.com/on-demand/621630/002750.php)。

 林眞須美林真須美)氏に関して、警察・検察・裁判所・マスコミが一体となって「「目撃」証言も非常に恣意的、曖昧であるにもかかわらず、そんないい加減な「状況証拠」だけで」死刑にしようとしている。

   『●『冤罪File(No.06、2009年6月号)』
   『●『創(2009年6月号)』(2/2)
   『●『創(2009年7月号)』
   『●『ドキュメント死刑囚』読了(1/2)
   『●『創(2009年11月号)』読了
   『●『創(2010年4・5月号)』読了
   『●『創(2010年8月号)』読了
   『●『創(2010年9・10月号)』読了
   『●冤罪(その1/2): どんな力学が働いているのか?
   『●和歌山県警科学捜査研究所の鑑定結果捏造事件と
                   和和歌山毒カレー冤罪事件、そして死刑制度

 一方、元大阪〝ト〟知事に罵声を浴びせられ、マスコミから死刑廃止論者と烙印を押され、警察や検察に忌み嫌われている『死刑弁護人安田好弘さん。

   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』:
         バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(1/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(2/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(3/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(4/4)
   『●『特捜検察の闇』読了(1/3)
   『●『だまされることの責任』読了(1/3)
   『●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評
   『●政治的なトドメかな・・・・・・マスコミや裁判所によるこんなことが許されていいの?

 唯一と言っても良い証拠らしきものも揺らいでいるらしい。
 「カレーにヒ素を混入するために使われたとされる紙コップに付着していたヒ素と林さん宅にあったヒ素をより詳細に検証した結果、両者の間には明らかに異なる不純物が見つかったという。河合教授は両者を「別のものであったと結論できる」としている」。
 「しかし、日本では再審の壁はとても厚い。日本の司法界の構造として、裁判官が検察の訴えを退けてまで無罪判決を下すのには相当な重圧がかかるからだ。/今回の新事実を、司法はどう判断するのか」? 司法の哀しい状況を見れば、再審開始など望めそうもない・・・・・・。冤罪被告を死刑にするようなことがあれば、・・・・・・裁判所やマスコミの責任はあまりにも大きい。

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http://www.videonews.com/on-demand/621630/002750.php

マル激トーク・オン・ディマンド 第628回(2013年04月27日)
やはり和歌山カレー事件は冤罪だったのか
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林眞須美死刑囚主任弁護人)

 和歌山カレー事件で新たな事実が明らかになった。もしかすると、これは決定的な新証拠になるかもしれない。
 夏祭りの炊き出しで出されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、4人の死者と63人の負傷者を出した「和歌山カレー事件」は、林眞須美被告が否認・黙秘を続ける中、2009年4月に最高裁で死刑が確定している。今回、その死刑判決の重要な判断材料の一つだった「亜ヒ酸の鑑定」において、新たな事実が明らかになったのだ。
 今回問題となっている証拠は、犯行に使われたとみられる紙コップに付着していたヒ素(亜ヒ酸)と、林氏宅で見つかったヒ素とが同じ組成のものだったとする鑑定結果。林真須美氏の夫の健治さんがシロアリ駆除の仕事をしていたことから、林氏の自宅には普段からヒ素が保管されていたという。この鑑定結果は林真須美氏を有罪とする上で最も重要な証拠の一つだった。
 亜ヒ酸の鑑定については、当時最先端の大規模研究施設「SPring-8(スプリング・エイト)」を使った鑑定によって、科学な裏付けがなされたと考えられてきたが、今回、それを否定する新たな検証論文が京都大学の河合潤教授によって発表された。河合教授が『X線分析の進歩44号』に発表した論文によると、カレーにヒ素を混入するために使われたとされる紙コップに付着していたヒ素と林さん宅にあったヒ素をより詳細に検証した結果、両者の間には明らかに異なる不純物が見つかったという。河合教授は両者を「別のものであったと結論できる」としている。
 この事件はもともと物証に乏しく、犯行に至った動機も解明されていない。林氏の弁護人を務める安田好弘弁護士によると、主な間接証拠も詳細に検討していくと必ずしも信頼性の高いものばかりではないという。安田氏はこの事件は最初から警察による事件の見立てに間違いがあったのではないかと言う。そして、メディアによるセンセーショナルな報道などもあって、捜査当局もそれを修正できないまま殺人事件として突っ走ってしまったとの見方を示す。
 安田弁護士は最高裁判決の直後から林氏の裁判の再審を求めているが、今回明らかになったヒ素鑑定の結果を追加した再審補充書を早速提出したという。確かに、今回明らかになった新事実を前にすると、最高裁が判決で述べているような「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に(林さんが犯人であることは)証明されている」と言えるのかどうかは明らかに疑わしくなっているように見える。しかし、日本では再審の壁はとても厚い。日本の司法界の構造として、裁判官が検察の訴えを退けてまで無罪判決を下すのには相当な重圧がかかるからだ。
 今回の新事実を、司法はどう判断するのか。事件の新事実をもとに、再審の問題、司法の裏側などについて、ゲストの安田好弘弁護士とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。


関連番組

マル激トーク・オン・ディマンド 第420回(2009年04月25日)
和歌山カレー事件はまだ終わっていない
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林真須美被告主任弁護人)

インタビューズ (2013年04月27日)
裁判所はなぜ決断できないのか
インタビュー:木谷明氏(弁護士)

インタビューズ (2009年04月25日)
「ヒ素は自分で呑んだ。真須美はやっていない」
真須美被告の夫・健治さんが最高裁判決の不当性を訴え



プロフィール


安田 好弘やすだ よしひろ
(弁護士・林眞須美死刑囚主任弁護人)
1947年兵庫県生まれ。75年一橋大学法学部卒業。77年司法試験合格、80年司法修習修了。オウム真理教麻原彰晃被告の主任弁護人、山口県母子殺害事件・被告少年の主任弁護人、和歌山カレー事件・林真須美被告の主任弁護人などを務める。著書に『死刑弁護人生きるという権利』など。
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●愚挙: 検察の異議が認められて福島事件の再審開始が取り消しに

2013年03月14日 00時00分08秒 | Weblog


東京新聞の記事(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013030602000229.html)と社説(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013030802000150.html)。

 福井事件の前川さんの件は、一度、書いた。青木理さんの「前川さんの身になってほしい!」という言葉がこの冤罪事件の全てだ。

   『●「前川さんの身になってほしい!」: 「福井事件」という明々白な冤罪

 「この事件でも物証がなく、関係者の証言のみで前川さんは罪に問われている。しかも、前川さんは逮捕から一貫して犯行を否認をしている」。検察(名古屋高検)も酷いけど、裁判所が一体何を考えているのか、理解に苦しむ。
 この裁判所(名古屋高裁)の愚挙、批判的な記事があまり出ないのはなぜ??

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013030602000229.html

福井中3殺害 再審取り消し 検察の異議認める
2013年3月6日 夕刊

 福井市で一九八六年に起きた女子中学生殺害事件の再審請求異議審で、名古屋高裁(志田洋裁判長)は六日、「確定判決の事実認定に合理的な疑いを差し挟む余地はない」として検察側の異議を全面的に認め、前川彰司・元被告(47)の再審開始を認めた高裁金沢支部の決定(二〇一一年)を取り消した。前川さんの弁護団は五日以内に、最高裁に特別抗告する。 

 特別抗告が棄却された場合、今回の再審請求は終了する。新たな証拠を基に、何度でも再審請求はできる。

 前川さんは一貫して無罪を主張。犯人と結び付ける物的証拠はなく、「事件当時、服の胸元に血を付けた前川さんを見た」などとする知り合いの元暴力団組員らの供述が信用できるか否かが、争点だった。

 決定は、弁護団が凶器とされた包丁では付かない遺体の傷があると指摘した点を、「解剖時の計測上の誤差」などと退けた。逃走に使ったとされる乗用車に知人供述通りの血液反応が出なかったことも、「弁護側の再現実験は当時の状況と著しく異なり、供述の信用性を揺るがすものではない」と判断した。いずれも検察側の反論を採用した。

 前川さんは服役後の二〇〇四年に再審請求した。弁護側は、遺体の傷や乗用車の血液反応に関する鑑定結果を、新証拠として提出。「元組員らの供述とつじつまが合わない」と訴えた。高裁金沢支部は一一年十一月、弁護側の証拠を認め、再審開始を決定。これに対し検察側が異議を申し立てていた。

供述頼み揺れる判断
 関係者の供述しか証拠がなく、「有罪と無罪のボーダーラインにある事件」(司法関係者)と言われた前川さんの再審請求で、名古屋高裁は再び「前川さんは有罪」と認めた。今回の決定で言い分が認められたとはいえ、検察は供述頼みの立証に警鐘が鳴らされたと考えるべきだろう。

 有罪の根拠となる供述をしたのは、被害者や前川さんの仲間たちだ。別件で逮捕されたリーダー格の元暴力団組員が「前川さんから犯行をほのめかされた」などと述べ、複数の仲間が追随した。

 供述した一人は本紙の取材に「自分の覚せい剤容疑を見逃してくれると警察に言われ、うその証言をしてしまった」と話している。供述が出てきた背景も含めた慎重な捜査が必要だった。

 再審請求では、弁護側が遺体の傷や血痕の鑑定を新証拠に供述の矛盾を投げ掛け、いったんは再審開始の決定が出た。検察内部に「弁護側の指摘は重箱の隅をつつくようなもの」との声もあるが、これらの鑑定は捜査側が逮捕や起訴前にも実施できたはずで、裏付けが不十分だったと指摘されても仕方がない。

 今後の裁判でも、関係者の供述だけで立証を迫られるケースは出てくるだろう。供述の信用性をどれだけ高められるか。捜査当局には事件の検証が求められる。 (浅井俊典)

 <福井女子中学生殺害事件> 福井市の市営団地で1986年3月、包丁で50カ所前後を刺された中学3年高橋智子さん=当時(15)=の遺体が見つかり、翌年3月、前川彰司さんが逮捕された。90年の一審・福井地裁は無罪、95年の二審・名古屋高裁金沢支部は懲役7年の逆転有罪を言い渡し、確定した。前川さんは出所後の2004年7月に再審請求。11年11月に同高裁金沢支部は「再審開始」を決定し、名古屋高検は異議を申し立てた。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013030802000150.html

【社説】
再審取り消し 「異議審」に異議あり
2013年3月8日

 福井の女子中学生殺害事件で、名古屋高裁が元被告の再審開始を取り消した。検察の「異議」を全面的に認めた結果だ。せっかく出た再審の扉を閉ざす「異議審」の手続きに異議を申し立てたい。

 裁判と再審を求める訴えは、複雑な経緯をたどった。事件は福井市で一九八六年に起きた。犯人とされた男性は無実を訴え、一審は「無罪」だった。二審で有罪となり、懲役七年の刑が確定した。

 男性は出所後に裁判をやり直す再審を求め、名古屋高裁金沢支部は再審開始を決定した。だが、検察が「異議」を申し立てた結果、再審の扉が閉ざされたわけだ。

 同じ証拠に基づいているのに、なぜ裁判官によって、有罪か、無罪か変わるのか。高裁レベルで、いったん再審開始と決めたのに、なぜそれが取り消されるのか。

 理由は簡単だ。この男性が犯人だとする決定的な直接証拠が存在しないからだ。犯行そのものを目撃した証言はないし、物証もない。証言を裏付ける客観的な証拠も乏しい状態だった。

 だから、有罪とした裁判官も再審を取り消した裁判官も、積み上げられた間接証拠だけで判断している。具体的には男性の知人らの証言だ。「事件当時、服の胸元に血を付けた、この男性を見た」「現場近くまで男性を車で運んだ」という証言もあれば、元暴力団組員は「男性に犯行をほのめかされた」とも述べていた。

 だが、供述したある一人は本紙に「自分の覚せい剤容疑を見逃してくれると警察に言われ、うその証言をしてしまった」と語っている。取調官の誘導は明らかだ。他の証言も供述が捜査の過程で、変遷していることがわかっている。それでも裁判官は供述だけに寄り掛かって結論を出した。

 最高裁は一〇年に「被告が犯人でないとしたら、説明のつかない事実が間接証拠に含まれる必要がある」と新基準を出した。果たして、今回の場合、この男性しか犯人でありえないと言い切れるだろうか。疑問を覚えはしないか。

 再審開始が決定されても、異議審でそれが覆されたのは名張毒ぶどう酒事件でも同じだった。決定的な証拠がないなら、裁判所は再審を求める人に有利に証拠を読み解くべきではないのか。検察も異議審ではなく、再審過程で有罪を主張すればよい

 確定判決を覆すのは、司法の恥ではない。むしろ無実の人を救う司法の方に信頼を寄せるだろう
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●小沢一郎氏陸山会事件判決を目の前に控え: 検察審査会の罪深さ

2012年03月22日 00時00分02秒 | Weblog


gendai.netの記事(http://gendai.net/articles/view/syakai/135575)。

 この記事を読んでも、それでも心配。「採用された証拠は一つでオッケー」が頭に引っ掛かってしょうがない。

   『●小沢一郎氏陸山会事件: 採用された証拠は一つでオッケー!?

 ご存じのように検察・検察審査会サイドの指定弁護士の求刑は禁固三年。この〝事件〟発生時、マスコミが騒ぎ始めた当初の目的は十分に達成された。あの日に戻れないし、あの日の前の状況に戻すことも不可能だ。民主党は崩壊し、政権交代の意義は失われた。小泉純一郎政権時代の暗黒の政治に逆戻り。橋下徹氏の〝ハシズム〟人気でバカ騒ぎする哀しい政治状況。

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http://gendai.net/articles/view/syakai/135575

だれもヤル気がない小沢裁判 続ける意味があるのか
2012年3月9日 掲載

きょうの論告求刑も苦し紛れで中身なし
<検察、検察審、指定弁護士、大マスコミの自滅と敗北>

「小沢一郎は悪だ。罰しなければならない」――そんな思惑と悪意で進められてきた小沢裁判は、9日、論告・求刑が行われた。検察官役の指定弁護士は「審査手続きの違法性と検察審の議決は次元が異なる」「検察審の議決を経た強制起訴は適法」と指摘したが、これほどバカバカしい話もない。強制起訴した前提が大きく崩れているのだから、むなしい“形だけ求刑”だ。
   ◇    ◇
 8日、9日の朝刊各紙はこんなふうに小沢求刑公判の予定記事を書いていた。

   「大善文男裁判長は公判で、元秘書の石川知裕衆院議員が小沢元代表に
    虚偽記載を“報告し、了承を得た”と認めた検察調書をすべて採用しない
    と決めた。共謀を示す直接証拠の中で最も重要な柱を失ったことで、
    指定弁護士は状況証拠を積み上げ、論告で有罪の意見を述べる予定だ」

 検察調書とは、例の東京地検特捜部の田代政弘検事が捏造した石川知裕元秘書の調書などのこと。それが証拠採用されないとなった今、小沢を総攻撃してきた大マスコミも、「こりゃあ、有罪に持ち込むのは無理だ」と思い始めている。それで言い訳の記事を書き始めたのである。実際、指定弁護士の論告求刑の苦しかったこと。

   「間接証拠を並べて推論に推論を重ねて、小沢有罪論を展開するシナリオです。
    証拠がある簡単明瞭な事件なら、要点羅列だけで済むが、今回の論告は逆。
    決め手の証拠がないから、外堀のさらに外から埋めていって、
    やっと本丸にたどり着くことになる。だから公判で読み上げる指定弁護士の
    文章量はとてつもない。中身がない事件ほど、ダラダラした論告
    なるものですが、その典型例です」(司法記者)

 スカスカの中身なしの論告求刑をして、あとは裁判官にバトンタッチ。そういうことなのである。
 前回の証拠採用公判で大善裁判長から「違法」「不当」とケチョンケチョンに批判された東京地検特捜部はメンツ丸つぶれで、もはや戦意喪失。その検察の捏造調書をもとに強制起訴を議決した第5検察審査会のシロウト11人もバカ丸出し。そして徒手空拳で戦うしかなくなっている指定弁護士……。みんな、この小沢裁判には困っているのだ。最終的判断を押し付けられた大善裁判長だって、逆立ちするくらいの推論を積み重ねないと「有罪判決」に持ち込めないことは分かっているから、気が重いだろう。事ほどさように、だれひとりとして積極的に関与したくないのが小沢裁判なのである。

   「この裁判で明らかになったことは、検察捜査のひどい実態。検察審査会が
    検察の補完機関に使われていたこと強制起訴制度に欠陥があること。
    それが分かったことだけに意義があった」

 司法ジャーナリストの魚住昭氏がこう皮肉ったが本当だ。エラソーに小沢を裁こうとした連中が、大マスコミも含めて、次々とデタラメがばれて自滅なのだ。喜劇というかマンガである。こんな裁判を続けることに、何の意味もない。
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●何度書いても書き足りない裁判員制度

2011年01月14日 04時48分03秒 | Weblog

ゲンダイネットに出ていた記事のコピペ。前半部分の内容や表現方法には賛成しているわけではありません。とくに、「平成の毒婦」といったマスコミ用語の部分など。一方、「憲法違反」の視点など、結論部分には大いに同意します。

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http://gendai.net/articles/view/syakai/128282

裁判員裁判 大丈夫か!今年は重大事件の審理目白押し

                                【政治・経済】 2011111日 掲載


市橋、上田、木嶋ら凶悪犯がゾロゾロ

 
制度導入から3年目に入った裁判員裁判。裁判員法で定めた制度見直しの検討を来年に控え、今年は死刑求刑の可能性がある重大事件の審理が目白押しだ。
 
千葉地裁で3月までに公判期日が決まる見通しなのは、英女性殺害事件で殺人や強姦致死などの罪に問われた市橋達也被告(32)。弁護側は殺意なしと主張し、裁判員の判断に注目が集まる。
 「平成の毒婦」事件も裁判が始まる見通し。鳥取連続不審死事件では、男性2人に対する強盗殺人などの罪で起訴された上田美由紀被告(37)が、公判前整理手続きで全面否認。検察側は、上田が持っていた睡眠導入剤と同じ成分のものが2人から検出された点などの間接証拠を基に立証する方針だ。一方、埼玉などの連続不審死事件で殺人罪に問われた木嶋佳苗被告(36)は、さいたま地裁で一括審理される見方が有力だが、公判予定のめどは立っていない。

   「これらの事件に共通するのは、被告が犯行(殺意)を否認し、直接証拠に乏しい点です。
    ともに逮捕、起訴する際にマスコミで大きく報道され、公判では裁判員の心証は真っ黒だろうが、
    客観的証拠がない中で『疑わしきは被告人の利益』という原則がどこまで貫けるのか。
    注目事件だけに裁判員の精神的負担も相当重い。あらためて裁判員制度を考える上で、
    重要な事件です」(司法ジャーナリスト)

 裁判員制度を「憲法違反」として反対している九大名誉教授の斎藤文男氏(憲法学)はこう言う。

   
「すでに一部の審理でみられるように、感情的な判決公判前整理手続きによる
    法廷形骸化などが指摘されているが、この制度はやればやるほど国民から敬遠され、
    定着しなくなる可能性が高いと
思います。今後は今以上に死刑と正面から
    向き合うような重大事件の審理が増える。せめて重大事件は裁判員制度から
    外すなどの抜本的な改革をするべきです」

 
国民参加の司法制度といえば聞こえはいいが、要は負担を国民に押し付けているだけ
 
小手先の見直しでなく、即刻、廃止すべきである

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