[※ 『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督) (LOFT)↑]
レイバーネット(http://www.labornetjp.org/)のコラム【<木下昌明の映画の部屋 243回> 三上智恵・大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』/住民500人を死に追いやった犯罪】(http://www.labornetjp.org/news/2018/0721eiga)。
《市川雷蔵主演の『陸軍中野学校』(1966年)をみて、日本の戦時にスパイ学校があったと知った。印象に残ったのは、主人公が国家に忠実を尽くすために恋人さえも殺す冷血漢となるシーンだった。三上智恵(ちえ)と大矢英代(はなよ)の両監督の『沖縄スパイ戦史』は、中野学校を出たスパイが戦地で何をしたか――その実態の一面を見事に切りとっている》。
《スパイに仕立てられた少年兵を仲間に銃殺させたり》…。《記憶の澱》…《軍隊というものが持つ狂気性》。
『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」』
《宮古島には七百人規模、石垣島には六百人規模のミサイル部隊と
警備部隊を配備する計画です。地元では、過疎化対策や抑止力強化の
観点から配備を歓迎する人たちもいますが、住民の意見は割れている
のが実情です。
島の主要産業である観光への影響を懸念する意見のほか、有事には
自衛隊が標的にされ、周辺住民が巻き込まれると心配する声が
聞こえてきます。底流にあるのは先の戦争の悲惨な記憶です。
大戦末期、米軍の攻撃を避けるため、この地域の住民はマラリア発生
地帯への疎開を軍部によって強制され、多くの人が罹患(りかん)して
亡くなりました。患者数は当時の人口の約半数とも言われています。
同じく大戦末期には、軍命により石垣島から台湾に疎開する際、
船が米軍に攻撃され、多くの犠牲者が出ました。
自衛隊配備でこうした戦争の記憶が蘇るのです》
『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」…
米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その1)』
《『標的の島 風かたか』三上智恵監督…とくに石垣島の場合は
地上戦がなく、空襲で178人が亡くなっているのですが、一方で、
日本軍の命令によって住民たちがマラリアが蔓延する山奥に
押し込められ、しかも日本軍は特効薬を大量に持っていたにも
かかわらず住民に使うことはなく、結果3647人も亡くなっています。
これは米軍が上陸してきたときに住民が捕虜となり、情報が筒抜けに
なることを避けるため、ゆるやかな集団自決を住民に強制した、
ということでしょう。じつは沖縄でも、この一件は「たまたま疎開した先に
マラリア蚊がいて、マラリアが蔓延してしまった」というくらいにしか
捉えていない人が多い。映画のなかで山奥に押し込められた体験を
証言してくださった方が出てきますが、この映画での新証言なんです。
この部分は、どうしても映画のなかに残しておきたかった。
軍隊がいたから、石垣島ではマラリア地獄が起きた。
軍隊の論理で死ななきゃいけない人が出てきてしまった、ということですから》
そして、現代の、アベ様の《我が軍》も、自衛隊の配備やミサイル基地建設など、《昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質》を発揮しようてしてはいないか?
《ゆるやかな集団自決を住民に強制》。《一方の大矢は、波照間島の住民約500人を死に追いやった犯罪を追及している。…米軍は現れず、彼も姿を消した。スパイだったのだ。…今日、沖縄南西諸島に自衛隊が配備され、ミサイル基地が建設されつつある。三上と大矢は、自衛隊が当時の法規を踏襲し、昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質を暴いている》。
『●加害者性と被害者性…「私たち一人一人が被害者となり、
加害者となり得る戦争。戦争はどこかで今も…」』
「【記憶の澱/NNNドキュメント’17】…。
《先の大戦の記憶を、今だからこそ「語り、残したい」という人々がいます。
…心の奥底にまるで「澱」のようにこびりついた記憶には「被害」と「加害」、
その両方が存在しました》」
『●「戦争のためにカメラを回しません。
戦争のためにペンを持ちません。戦争のために輪転機を回しません」』
『●『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督):
「「スパイリスト」…歪んだ論理が生み出す殺人」』
『●三上智恵・大矢英代監督映画『沖縄スパイ戦史』…
「戦争というシステムに巻き込まれていった人たちの姿」』
『●中山きくさん「戦争は体験してからでは遅い」、
城山三郎さん「平和の有難さは失ってみないとわからない」』
『●「改めて身に迫るのは、軍隊というものが持つ
狂気性」(高野孟さん)と、いまも続く沖縄での不条理の連鎖』
《マガジン9連載コラム「沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌」でおなじみの
三上智恵さんが、大矢英代さんとの共同監督で制作した
映画『沖縄スパイ戦史』が7月下旬からいよいよ公開…
「軍隊は住民を守らない」…「戦争や軍隊の本質を伝えたい」》。
『●「安倍政権が旗をふる「極右プロパガンダ映画」が
世界中に発信されるという恥ずかしい事態が現実に」!?』
『●『沖縄スパイ戦史』と《記憶の澱》…
「護郷隊…中高生の年頃の少年たち…スパイと疑われた仲間の処刑…」』
《▼日本軍第32軍の周辺で起きた本島中南部の激戦を「表の沖縄戦」と
すれば、映画が描くのは北部の少年ゲリラ兵部隊「護郷隊」や八重山の
戦争マラリアなどの「裏の沖縄戦」。綿密な取材による証言と資料映像で、
6月23日以降も続いた遊撃戦の実相をつづる》
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【http://www.labornetjp.org/news/2018/0721eiga】
木下昌明の映画の部屋 : 三上智恵・大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』
<木下昌明の映画の部屋 243回> 三上智恵・大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』
住民500人を死に追いやった犯罪
市川雷蔵主演の『陸軍中野学校』(1966年)をみて、日本の戦時にスパイ学校があったと知った。印象に残ったのは、主人公が国家に忠実を尽くすために恋人さえも殺す冷血漢となるシーンだった。 三上智恵(ちえ)と大矢英代(はなよ)の両監督の『沖縄スパイ戦史』は、中野学校を出たスパイが戦地で何をしたか――その実態の一面を見事に切りとっている。
三上は『標的の村』(2012年)など基地反対の住民に焦点を当てたドキュメンタリーでよく知られている。大矢は若きドキュメンタリストで『テロリストは僕だった~沖縄・基地建設反対に立ち上がった元米兵たち~』(2016年)がある。この2人が共同で沖縄戦の埋もれた戦史を掘り起こしている。
戦時下、42人の中野学校出身者が沖縄全島に派遣された。このうち「護郷隊」という秘密部隊を作り、少年兵らにゲリラ訓練をさせていた2人のスパイに、三上は光を当てる。米軍が撮った少年兵らの写真の数々と生き残った元少年兵の証言を重ねて、戦場の無残さを伝えている。スパイに仕立てられた少年兵を仲間に銃殺させたり、仲間に見捨てられた元少年兵の話などに唖然(あぜん)となる。
一方の大矢は、波照間島の住民約500人を死に追いやった犯罪を追及している。
1944年暮れごろ、一人の教師が島にやってくる。彼は住民に優しく慕われた。だが米軍が攻めてくると噂(うわさ)が立つや彼は隠していた軍刀で人々を脅し、隣の西表島に強制疎開させた。2000頭の家畜は処分し、軍隊が食用に持ち去った。着のみ着のままの住民は、マラリアと飢えで亡くなった。米軍は現れず、彼も姿を消した。スパイだったのだ。彼は戦後どうしたか。
今日、沖縄南西諸島に自衛隊が配備され、ミサイル基地が建設されつつある。三上と大矢は、自衛隊が当時の法規を踏襲し、昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質を暴いている。必見。
(『サンデー毎日』2018年7月29号)
※7月21日より沖縄・桜坂劇場、28日より東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開
〔追記〕この映画をみると、日本兵は中国ばかりでなく、沖縄からも食料を「現地調達」していたことがわかる。
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