AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

852:イリュージョン

2008年07月16日 | ノンジャンル
 視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚・・・人間の五感のうち最も扱う情報量が多いのはやはり視覚ではないであろうか。しかし、視覚は意外に落とし穴があるもの。多くのマジックは、視覚の間隙をぬったものである。曖昧で不確定な要素も多く含んでいるのである。

 オーディオ機器は、視覚と聴覚がある程度の範囲内で連携するケースが多い。もちろん多少の例外はあるのであるが、見た目的な印象と聴こえてくる音との間には、それなりの繋がり感が感じられるのである。

 しかし、先日GRFの部屋さんのお宅で聴かせていただいたPSD T4に関して言えば、視覚と聴覚の連携がまったく機能しないのであった。なにせ、そのT4のセッティングと言えば、2ウェイのコンパクトなスピーカーが床に直置き。インシュレーターを一つ使い若干の仰角が付いているが、「これはないんじゃないの・・・」というもの。



 しかし、音が出てびっくりというかきょとんというか・・・視覚と聴覚がどうしても繋がらない。コンパクトな2ウェイが、かなりラフと思えるセッティングで床に置いてある。しかし、音はその後ろにセッティングされているGRFが鳴っているとしか思えない雄大で大らかなものなのである。

 この低音がこんなコンパクトなスピーカーから出るとは思えない。しかも提示される拡がり感のあるサウンドステージがスピーカー位置からはるか後方にあるため、視界のかなり底辺に近い位置にあるかわいらしいT4から音が放たれている、という印象がもてないのであった。

 視覚と聴覚がどうしても繋がらないので、表情が上手く作れない。不可解な現象を前に一瞬視線が泳ぐ。しかし、T4が鳴っているのだと気付き、ふっと微笑む。微笑むがすぐさま視覚を正常化しようと目を見開く。見開くが正確な情報整理ができない、といった感じであった。

 このT4は、「イリュージョン」を見せてくれる。そして人間の視覚の頼りなさをも感じさせてくれる。思わず心の中で「フォー・・・」と深い溜息をついてしまった。
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