深海生物研究者の日常

思いついたときに思いついたことを書きます

NGS現場の会!!

2013-09-06 23:12:18 | 日常,つぶやき
ブログに書くまでがNGS現場の会,ということでブログにしました.

NGSとは,next-generation sequencing 次世代シークエンシングのことです.2000年代中頃から市場に登場した超出力のシーケンサーを使った様々な研究を行う人々が集まって,情報交換をするのが,NGS現場の会の目的です.

今回で3回目となる研究会ですが,2年前の第1回は100名強,前回は400名,そして今回は700名弱が集まり,参加者がどんどん増えています.それだけ,この技術の応用範囲が様々な研究分野に及んでいて,新たに利用したい,利用している人が増えているということですね.

そしてシーケンサーの技術も日進月歩ですね.Mi-seqは更新によって8Gbpくらいをたたき出すようになっているようですし,IonPGMもチップや試薬の改良で出力が上がっています.ロングリードが売りのPacBioも精度が上がっているようです.そしてそれらのデータを解析するソフトもどんどん改良されています.正直全然フォロー出来てないですが,この会に参加するとそのあたりの空気に触れることが出来るので助かります.

私は前回から参加しました.もともとべとべとのウェットな人間で,そして大量のデータを扱うのも苦手な人間なので,学ぶ立場として参加しました.前回はデータがなくて,「こんなこんなことしたいです!」ってポスターを出したのですが,今年はまだまだ途中ながらデータを出すことができました.まさにこの会の存在によって手法が身近になったおかげです.

NGSは様々な研究に使われていますが,僕たちのような非モデル生物を使っている研究者は特に恩恵を得ることが出来ているのではないでしょうか.かつては大型プロジェクトでしか決定出来なかったゲノムもラボ単位で決定出来るようになり,発現している遺伝子も網羅的に解析出来るようになりました.
そういうわけで,今回は「非モデル生物シーケンスから変わる生命観」というセッションが開かれました.従来のモデル生物ではない,カメ,アブラムシ,食虫植物,アゲハチョウのシーケンスから得られた最新の知見を聞くことが出来,大変刺激になりました.

他にもいろいろと面白いセッションがたくさんありました.参加者が遠慮なくデータについて議論するために,ポジティブな意味でクローズドな会ですので具体的なことは言えませんが,本当にいろいろな研究で,いろいろな方法で,それぞれが工夫しながら使っているんだなという印象を受けました.そしてどれも魅力的で,開催時間が重なっているために聞けない演題がたくさんあってとても残念でした.

ポスター会場も,活気にあふれ,企業ブースではお酒が振る舞われたりなど,お祭りのようでとても楽しかったです.スポンサーも増え,参加者もあれだけ増えた中であの雰囲気を維持しているというのはすごいなと思いました.

夜ゼミも非モデルチームに参戦したのですが,マウスを使っているというとブーイングが起こるような状況で,みなさん本当にいろいろな生物で研究をしていて,全員とじっくり話が出来なかったのがとても残念でした.とにかく楽しかったです.

これだけの人数が集まり,登場から10年が経とうとしていて,もはや次世代ではなくなっていますが,価格・精度・リード数・リード長のどれもがこれからも改善していくであろうシーケンサーの進歩からは目が離せませんね.