先日、ニュースで大々的に海氷面積の減少について報じられて
いました。衛星による観測ではこれまで、2005年9月の観測値である
531.5万平方キロメートルが最小でしたが、今年8月16日に観測した
海氷面積は530.7万平方キロメートルで、観測史上最小となっている
ことがわかったということです。しかも海氷は通常9月中旬まで減少
するため、海氷面積はIPCC第4次報告書が指摘した2050年の予測値に
達する可能性もあります。
氷は白色のため太陽光を反射し、熱を吸収しにくいのですが、一度
溶けて海水となれば、その深い海の色が熱を吸収します。つまり氷が
溶け海水部分が増えるほど、北極の海水は温まり、残っている氷を
さらに溶かしてしまうのです。また厚い氷に覆われていれば動きの
少ない海水も、一度溶けてしまえば流動しやすくなり、暖かい海水が
これまで以上に入り込んできます。このようにしてポジティブ・
フィードバックは進行していくのです。
予測をはるかに上回るスピードで進行する地球温暖化。
人間の予測できる範囲には限界があります。最高峰の英知を結集した
スーパーコンピューターでさえ、その予測は外れるのです。私たちは
自分たちの能力を買いかぶっているのではないでしょうか。自民党が
敗れた7月の参院選後、「謙虚」という言葉をよく耳にしました。
今、この地球の現状を目の前にし私たちが選択できる第一歩は、まさに
この「謙虚」という姿勢、自然に対する謙虚さを今一度、思い出すこと
ではないでしょうか。
このままいくと、2040年頃の夏には北極の氷はほとんど消滅し、
氷上で狩りをして生きるホッキョクグマが絶滅すると言われています。
エサとなるセイウチやアザラシも生きてはいけないでしょう。私たち
人間は自然を壊すことはできても、絶滅した種をよみがえらすことは
できません。ある種の絶滅が、さらに大きな波紋を広げるかもしれ
ません。テクノロジーの進化でも解決し得ない問題に、今こそ謙虚な
姿勢で全員が取り組むときでしょう。