
スピーカーの振動板(コーンやドーム)は、軽くて且つ硬い事が望まれています。そこで、金属をはじめ、カーボンとかセラミックスといった硬い特殊素材を使っていることを特徴としたスピーカーユニットがいろいろと登場しています。
これら製品の能書きの中で、しばしば使われる用語に ”音速” という言葉がありますね。「音速が早い(硬くて軽い)素材を使用すれば、振動板の分割振動の共振周波数が高くなり、より広帯域で応答の良い音質が得られる」といった文言が出てきます。
*** しかし、鵜呑みは禁物です、という今日の話題です。 ***
例えば硬質なカーボン素材では、音速が毎秒10kmを超えるといったものもあります。凄いですね。ということは、計算上は、この素材で直径50cmの平板の振動板を作っても、可聴帯域内では分割振動が出ない、という事になります。多少なりとも技術のお分かりになる方ならば、そんな事あり得るか!とお思いになりますよね。(^^ 実際は、直径20mmのドームトゥイーターでさえ、共振周波数を可聴帯域外に追い出すのは、結構大変ですから。
では、音速10km/秒というのは嘘なのか?
嘘ではないのですが、メーカーの宣伝というものは未必の故意的な詐欺ですね。(^^;
では種明かしをいたしましょう。
”縦波” と ”横波” の違いを理解する必要があります。
もう少しかみ砕くと、地震のP波とS波の違いです。P波(縦波)は、震源から高速で伝わります。S波(横波)は遅れてユラユラとやってきます。これは、伝搬の仕組みの違いが原因です。
分かり易い映像がありますので、下記にリンクを張ってあります。
そして、素材の ”音速” と言われるのは、一般に ”縦波” の事で、素材自身の内部を伝搬する、最も高速な現象になります。そして ”横波” は素材の形状変形の伝番する現象で、一般に大分遅くなります。縦波は素材自身の物性が支配的ですが、横波の伝搬速度は、形状や構造によって大きく変化します。
さて、それではスピーカーの振動板のピストン運動は、どの様に伝搬するでしょうか?
文頭の写真はスピーカーの振動系のカット断面です。右側のボイスコイルで発生する高速振動(写真の左右方向)は、ボビン(※1)を経由して、コーンの付け根から外周方向に伝搬します。もうお分かりですね? コーンのピストン運動は ”横波” 伝搬ですね。(縦波も発生しますが、コーン断面に沿った方向に進んで、外周端面に抜けますから、音波には変換されません)
かくして、薄く剛性の低い板状に加工されたコーン素材の横波は、伝搬速度が遅く、分割振動からは逃れられない、という現実になります。
そして、このブログで度々登場する ”超硬振動板” では、立体補強構造により、軽く且つ高い構造剛性がありますので、横波の伝搬速度も速くなる!ということになります。
*** オマケの情報(※1) ***
上記で出てくる ”ボビン” については、構造上明らかに縦波伝搬になりますが、実際の伝搬速度はかなり遅くなります。何故だと思いますか?
それは、断面の薄いボビンの両端に、コイルとコーンという重量物が負荷として接続されているからです。ボビンはバネの様に機能する事になるので、その分の応答遅れが生じるのです。
例えば、小口径ウーファーで周波数特性上の8kHzにブレークアップ(ボビンの伸び縮み共振)がある様なお馴染みの例では、空気中の音速に換算して、約2cm分の遅れが生じます。2wayシステムの(WFとTWの)タイムアライメントを正式に調整すると、TWが意外に奥になってしまうのは、この様な訳があるのです。









