「新訂 一茶俳句集 丸山一彦校注」(岩波文庫)の解説に『と非難された渡世俳諧師たちである』というのが目についた。 「身過ぎ世過ぎの是非もなく」ひたすら生きてき身としては気になって、引用されていた「塵塚談」をみたが「渡世」はあったが「渡世俳諧師」は校注者の言葉であった。
『○俳諧師宗匠といふ者元文年間三十六人ありければ夥し珍敷とて ちちの秋といふ俳書出たりとかや 今世俳諧宗匠二三百人もこれあるよし 皆風雅の道は露しらず 幇間にして口弁を以て渡世とする事也 此に限らず今世遊民の夥しき事享保元文の頃に百倍せり 歎息するに餘れり』(塵塚談 文化十一年甲戌季冬 七十八翁 小川顕道書)
さらに『与えられた季題に基づく句作りは、平均化した風雅趣味や季題趣味を蔓延させたのである。』とあるので「俳諧」の意味を調べた。 俳句の期限は「楽しく面白く」だったようだ。
俳諧(はいかい) おかしみ。おどけ。 (白川静「字通」 平凡社 漢和辞典)
俳(ハイ。 たわむれる。わざおぎ(俳優)。) わが国の俳諧は、軽みを主とする付け合いの文学である。 (白川静「字源辞典 字統」 平凡社)
①たわむれる。おどけ。 ②わざおぎ ③うたう。うそぶく。 ④徘と通じ、たちもとうる(立ち俳諧る=歩きまわる。行きつもどりつする)。 白川静「字通」(平凡社)漢和辞典
諧(カイ。 ととのう。あう。やわらぐ。) 俳諧・諧謔の語も、もとは呪語に関するものであった。 (白川静「字源辞典 字統」 平凡社)
①あう。かなう。ととのう。 ②やわらぐ。 ③たわむれ 白川静「字通」(平凡社)漢和辞典
◎俳の近くにある倍に目が行った。
倍返しの倍と思っていたら、『そむく』という意味もあることを知った。 熟語も叛く・背くものが多数あることを知った。
倍(バイ。ハイ。 おおくする。ばいまし。そむく。) 判・倍加が原義。賠償は倍償で、違約のときには倍返しする。のちに叛く意となり、倍譎(はいきつ)・倍心・倍徳のように背叛の意に用いる。 (白川静「字源辞典 字統」 平凡社)
(バイ。ハイ。 ます。ばいまし。そむく。)
①ます。ばいまし。ふえる。
②ますます。いよいよ。
③背・陪と通じ、そむく、はなれる、わける、もとる、そらよみ。
倍譎(はいきつ)そむきたがう。
倍徳(はいとく)徳義のそむく。
倍畔(はいはん)そむく
倍義(はいぎ)義に反く
倍言(はいげん)違約する
倍心(はいしん)叛意
倍道(はいどう)背理
倍反(はいはん)そむく
倍叛(はいはん)倍反
倍約(はいやく)違約する
倍理(はいり)理にそむく
(白川静「字通」 平凡社 漢和辞典)
倍(ハイ。ベ。 ①ます。くわふ。②そむく。さかふ。もとる。③そらよみする。そらんずる。)
倍反(バイハン)そむくこと。むほん。背反。謀反。 (服部宇之吉「大漢和辭典」)
だから辞書はおもしろい。