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ボンボン BOMBON 2004年 アルゼンチン

2010-11-23 | ヒューマン・ドラマ
人柄は顔に出るとも云われるが、主人公であるフアンの人の良さは一目瞭然である。
人がいいだけに損をすることも多い。
20年働いたガソリンスタンドは閉鎖され、事実上クビになったフアンは、自ら作ったナイフを売りながら方々を回っていた。
柄の部分は質の良い木材を使い、誰が見ても良質なものとわかる。
だが売れない。

途中立ち寄ったスタンドでクジが当たった。
1リットル分のオイルとサングラス。
全くツイてないわけではなかった。
しかし仕事はなかなか見つからない。

妻とはとうの昔に別居しており、今は娘家族と“妻の家”に身を寄せている。
父親の威厳などどこへやら。
〈居候三杯目にはそっと出し〉である。
洗面台のパイプが壊れているからと、新しいのを買いに行くフアン。
その道すがら、車が故障して立ち往生している女性が目に入る。
ボンネットを開けて見てみると、管を溶接する必要があった。
それを女性に告げると、家に行けば溶接機があると言う。
「でも130㎞も先なんですよ」

ロープでつないで牽引していくことにしたフアン。
女性の家では大変感謝され、お茶をごちそうになる。
「亡くなった主人が大事にしていた犬がいるんですが、主人亡き後は元気もなくて・・・」と、女性の母親が切り出した。
「あなたにもらっていただいたほうが、このコもここにいるよりは幸せだと思うんです。 血統書もありましてね。 このコの父親はチャンピオン犬だったんですよ」
困り果てるフアン。
「犬・・・ですか・・・」
人のいい彼はもちろん断れない。
大きな白い犬、猟犬であるドゴアルゼンチーノを助手席に乗せ、彼は帰路につく。
翌朝、案の定娘からは猛反対される。
「犬は絶対ダメよ!!」

ブサカワともいわれるこのドゴ犬。
よおく見ると、愛嬌たっぷりな顔立ちだ。
日本では希少な犬種である。
この白くて大きなブサカワ犬を、フアンはレチェンと呼んだ。
亡くなった元の飼い主がフランス人だったため、フランス語で“犬舎”と書かれた立て札をスペイン語風に読んでしまったのだろう。
お茶目な人である。

レチェンはとても目立つ。
「素晴らしい犬だ」と誉められる。
あれよあれよとドッグトレーナーを紹介され、ドッグショーでは優勝できるぞと太鼓判を押される。
レチェンもトレーナーのもと訓練を受ける。
そしてドッグショー当日、レチェンという名はボンボンへと変わっていた。

人への親切は、いずれ自分にもかえるという。(意地悪もそうらしい。)
フアンには何倍にもなって返ってきた。
ボンボンが来てからいろいろあった。
ボンボンはフアンを一番に信頼してくれていた。
彼にはそれが嬉しかった。
もう絶対に手離したりはしない。
信じられるのは、自分とボンボンなのだ。
いざゆかん。
一人と一匹の新たな人生に向けて。


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