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花嫁と角砂糖 2011年 イラン

2015-06-03 | ドラマ
そよ風に木々がなびき、草花がおどる。
宝石のような木漏れ日が、庭に降りそそぐ。

パサンドの婚前式に親戚たちが集う。
姉たちも喜び、いそいそと式の準備に励む。
小さな姪っ子たちがはしゃいでいる。

新郎は海外に住んでおり、婚前式は新婦のみ。
相手の父親は顔を見せたが、どうもパサンドの母親も伯父も彼とは合わないようだ。
「わたしが向こうへ行くのは半年も先だから」
パサンドは大好きな伯父をこうなぐさめるが、彼はいい顔をしない。
母親もあまり嬉しそうではなかった。
でもパサンドは幸せそうだった。
姉たちが話しているのを耳にするまでは・・・。
パサンドには想いをよせていた人がいたらしい。
その人は軍に入隊して久しいようである。

翌朝、伯父さんは愛用のラジオが壊れ、やや不機嫌。
朝食を温めなおすわと、パサンドがその場を離れている間に、事故が起きてしまう。
一かけらの角砂糖をのどに詰まらせてしまったのである。

お祝い事から一転して、出席者たちは黒の喪服へと着替える。
花嫁は喪服を着ちゃだめよと、姉たちは言うが、大好きだった伯父が亡くなり、しかも、自分がそばにいたのに気付けなかった悔しさから、彼女は姉たちの反対を押し切り、喪服に袖を通す。

知らせを聞いてか、ガセムが帰ってくる。
彼も伯父さんの死をひどく悲しんでいた。
ガセムは伯母さん(亡くなった伯父さんの妻)に、自分は除隊してここに住むつもりだと話す。
隣で聞いていたパサンドは、「え?」と、信じられない様子でガセムを見る。
学生だった頃、ガセムは伯父さんの家に下宿していた。
その縁もあってか、伯父さんはガセムとパサンドが将来一緒になることを望んでいたようである。

パサンドの心が揺らぎ始める。
ところが、ガセムは一言もなく、その日のうちに隊へ戻ってしまった。
彼はパサンドが結婚することをどうも知らなかったようだ。
隠しておいた新郎&新婦のネーム入りケーキを見てしまったのである。

明け方、みんな疲れ切ってまだ眠っている。
そんな中、パサンドは一人目を覚ます。
停電がおさまり、電灯が点いたのである。
彼女はみんなが起きないよう、部屋をまわって電灯のスイッチを切っていく。
するとどこからか音楽が聞こえてくる。
音の出所を確かめると、それは、あの伯父さんのラジオからだった。
ガセムが直しておいてくれたのである。
流れてくるのは愛の歌。
パサンドは目を閉じ聞き入る。
この時、おそらく彼女は意を決したのだろう。

ラジオからの曲は、自分の気持ちに正直になりなさいという、伯父さんからのメッセージだったのかもしれない。