Sixteen Tones

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ファラデー家の殺人

2023-12-01 19:30:42 | 読書
マージェリー・アリンガム,渕上痩平 訳「ファラデー家の殺人」論創社 (論創海外ミステリ 2023/9).

ネット上の出版社による内容紹介は,トップ画像左のカバーに印刷された惹句と同じ.やはりカバーにあるように原題は Police at the Funeral.Funeral は葬式のことだが,現代の意味するところはぼくには分からない.
この小説は 1957 年に六興出版社から大幅にカットされた抄訳が出版されていて,このときのタイトルは「手をやく捜査網」だったという.

原書刊行から一世紀近くを経ての完訳だが,とてもおもしろかった.なぜ日本ではこの著者に人気がないのか,訳者あとがきによればあまり広い分野に手を広げたためらしい.この作品の探偵役はアルバート・キャンピオンだが,もっぱら同じ著者による冒険小説群でヒーローをつとめているらしい.彼自身この作品では冒険家を名乗っていて,唐突に 腕っぷしの強いところを見せる場面がある.

ファラデー家はケンブリッジの旧家.旧家の日常が垣間見える.ぼくはトップ画像右 冒頭のこの一族の複雑な家系図に恐れをなした.でもこの図は役に立ったし,作品そのものは読みやすかった.この図ではいちばん右下のジョイスと,その婚約者である弁護士がキャンピオンと同世代で,その親の世代が被害者たちである.そらに祖母世代のキャロラインが一族に君臨している.

存在感があるのは親世代と祖母世代の登場人物たちで,子世代はもっぱら彼らに振り回される.人種偏見に対する子世代のひそかな反発など,意外に新しさを感じさせる場面もある.
この一族が住むのがソクラテス屋敷.ソクラテスの処刑にはコニウムという毒薬が用いられたが,この作品でもコニウムが用いられる.
家系図と共にソクラテス屋敷の間取り図もあるが,必要性は感じなかった.


以下はネタばらし !!

連続殺人の最初の犠牲者が,その後に続く犠牲者たちのために罠を仕掛けてから,自殺を図った というプロット.その後 模倣作品もいくつか現れた,しかし訳者によれぱ,やはりこのオリジナルにおけるプロットの使用は効果的だそうだ.

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