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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

串田孫一の本

2010-02-16 09:13:33 | 読書
串田孫一については学生時代に友人から吹き込まれた.「アルプ」という雑誌があって,学生とは違う優雅なおとなの山遊びという雰囲気があった.ご本人は東京外語大の哲学の先生らしかったが,どの程度まじめに先生業をなさっていたか,今にして疑問に思う.もちろん串田センセーの残した文章は山に関するものが多く,岩波文庫に「山のパンセ」が入っている.

どうでもいいことをぐだぐだ書いていて,鋭さが全然なくて,おもしろくない...というのが学生時代のぼくの印象であった.でも歳をとると,どうでもいいことが,いちいち心にひっかかり,鋭いことからは逃げたくなる...というわけで,なかなか良いと思える.

退官後はしばらくFMの日曜朝の番組で自作のエッセイを朗読しておられた.抑揚が短調の感じで,まだ目が十分冷めない状態で聞くのは気持ちがよかった.

この「わたしの博物誌」は1961-62年に週刊朝日に連載されたものの単行本化.読者層を考えてか,山のことではなく,身の回りの動植物が話題になっている.
写真ひだりのクエスチョンマークが描いてあるページをめくると
「チャールズ・ダーウィンのミミズの作用による栽培壌土の形成ならびにミミズの習性観察」という論文を最近よみなおしてみて...
と始まり,「こんなうどんのきれっぱしみたいなもの...」と続く.このマークはよく見ればミミズと石ころである.という調子の本.

当時串田も,挿画の (本の装幀も) 辻まことも40台後半であった.「少年のような視線」という褒めかたもあるだろうが,ずいぶん老成していたんだ...という見方もできそう.
それにしても当時の週刊誌って高級だったんだ.

串田には「わたしの」がつかない,単なる「博物誌」という本もあって,平凡社ライブラリーに上下2巻で入っている.

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