あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

蜀山人 大田南畝ー大江戸マルチ文化人交友録 太田記念美術館 

2008-05-03 19:49:06 | 日本美術
内藤千鶴子著「写楽を追え」
これは、以前ご贔屓のいづつやさんから教えて頂いた本で、
早速買ってはみたものの、
未読のまま本棚に埋まっていたのだ。

さぁ、今読み頃です。
内藤氏の話は相当現実味を帯びていて、
ケンブリッジ大学まで、資料を追いかける情熱と、
氏の関係者からの因果で写楽を追いかける羽目になったのも
楽しい展開だった。
かの池田満寿夫も一時期写楽で盛り上がっていたことを思い出した。
中右氏の推論はコレクターとしての情熱のなせる業
だとは思うが、この内藤氏の本を前にすると、
どうなのだろう?と思うほど、
資料と史実と氏の推論の帳尻が符合しているように思えた。

写楽を現す有名な一文
「是また歌舞伎役者の似顔を写せしが、
 あまりに真を画かんとて、あらぬさまに書なしせば、
 長く世に行れず一両年にて止ム」
この文章を書いたのが、
大田南畝・蜀山人・四方赤良
(おおたなんぽ・しょくさんじん・よものあから)

彼は一体何者?
太田記念美術館で、その人となりと
残された賛が入った浮世絵などが並び、
地味ではあるけれど、
実際彼が色んな人の間に入って活躍したことがわかった。

1749~1823
謹直な下級武士でありながら、狂歌師、戯作者、
学者などとしても名をなし、多芸多才な文化人。
交流した人物が凄い。

内藤氏によると、
蔦屋VS和泉屋という版元の戦いがあったようだ。
つまり、写楽VS豊国
その写楽を蔦屋に紹介することに一役買ったのが、
南畝だったという。

それでも南畝は、豊国の役者絵に賛を寄せてもいるし、
歌麿にも寄せているし、
北斎にも寄せている。

絵師達ととても親しく仲が良かったように思う。
平賀源内、五代目市川団十郎、谷文晁、北斎、歌麿・・・
江戸の狂歌師たちのサロンはとても楽しそう。
色んな人が出入りして、
様々な本を作り、その本に挿絵を描いててもらう。
版元との交流も生まれ、絵師たちともつながる。
自分でも拙くも楽しい絵を描いた。
時代を遊ぶ文化人のなんと洒落た遊び。

写楽の描く三世沢村宗十郎の大岸蔵人の持つ
流水文の緑の扇と同じようなものが
太田記念の地下展示室にあった。
素晴らしい出来の扇だった。

他にも歌麿とのコラボ、狂歌本の展示、
彼の持っていた印判のコレクションの軸、
印刷と、狂歌師、挿絵師の密な関係、
など、普段浮世絵の展覧ではお目にかかれない貴重な
出品作品ばかりで、ちょっと難しいようだが、
良い機会だったと思う。

大田南畝、さぞ楽しい人生だったろうと思う。
狂歌本を楽しく作る仲間達にも恵まれ、
真面目に仕事をし、余暇を存分に遊ぶ、
正しい生き方だなぁ。

何らかの事情が写楽を消したのだろうが、
写楽の絵は、切れが信条。
今までになかった大首デフォルメ似顔絵が
センセーショナルに売り出された時が絶頂だったのか?

役者絵に憧れを持って手にする人達と、
描かれる役者にとっては、厳しい存在となったのも理解できる。

アタシの何様はこんな顔じゃないわ。
蔦屋さん、アタシの顔をこんな風体に描く写楽とやら、
いい加減にしておくれよ。
芝居小屋の方からも苦情が飛んでくる。
小屋や、役者を贔屓にする役人からもお咎めが来る。
方々から受けないとなると、ややこしい。
流行とは、つらいもの。

まぁ、誰が写楽であろうと、
こんなかっこいい役者絵を残した人が
一時歌舞伎の芝居小屋で一世風靡したこと。
それが凄いことなのだ。
大田南畝は、そんな世間の煩わしいことも
狂歌にして、外野で仲間と楽しんでいたことだろう。

そういえば、写楽が、当代の勘三郎を描いたら、
さぞピッタリに書くのだろうなぁとも。

これで、私の「写楽を追え」が一段落。めでたしめでたし。

詳しくは、太田記念美術館のサイトで。

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2 コメント

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Unknown (Tak)
2008-05-07 16:23:27
こんにちは。

遊びができる人間は
仕事もできるのですね。
いつの世も。
Tak さま (あべまつ)
2008-05-08 22:46:41
こんばんは。

渋い展覧会でしたね。
この高貴な遊び人達のサークル、
羨ましすぎます。

楽しく教養を武器に仲間で作る本、憧れます~~

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