阿部ブログ

日々思うこと

重希土類を含む海底レアアース泥を南沖鳥島で開発

2012年03月06日 | 日記
東京大学大学院 工学系研究科システム創成学専攻准教授・加藤泰浩氏は、重希土類を多量に含む海底レアアース泥について以下のように語った。

・タヒチ沖からハワイにかけての南太平洋に高濃度の海底レアアース泥(以下、REE泥)が存在する。
しかも重希土類が高濃度で堆積している事が確認された。現在中国のイオン吸着鉱からしか産出しないディスプロシウム、ユウロピウム、テルビウムなどが高濃度に濃縮している。

・この重希土類を含むREE泥がタヒチでは10m堆積しており、ハワイではなんと70mも堆積している。しかもREE泥にはトリウムやウランなど放射性物質を含ないので非常に扱いやすい優れた特性がある。

・このようなREE泥は、実は日本のEEZ域内の南鳥島海域にも存在する事がわかっている この海域のREE泥はタヒチの規模に匹敵する。特にユウロビウム、テルビウム、ディスプロシウムが豊富である。このREE泥をエアリフトで引き上げる。

・南沖鳥島におけるREE泥の回収プロジェクトを三井海洋開発と三井物産との共同研究で実施中である。

・REE抽出後の残土は、南鳥島の埋め立てに使うことが検討されている。これは東京都知事も推奨しているので、この海域でのREE泥回収は現実性を帯びている。

・このような海底資源開発の場合、ボーリング回収率は90%ないと判定が出来ないが、海底資源の場合には50%以下であり資源量の算定が困難である現実がある。

・ここ20年で熱水域の発見は増えていない。また黒鉱ベースで500万トンが平均的であり、もっと探査を増やすべきと言う東京大学大学院新領域創成科学研究科海洋技術物理学専攻教授の飯笹幸吉氏は指摘する。また彼によれば海底熱水鉱床は確認していない。正しくは海底熱水噴出孔と呼ぶべき。(ごもっとも)

・今回の我々の発見によりフランスはタヒチ沖でREE泥回収を行うだろう。何故かと言えばREE泥を実際に回収できる技術を保有する企業があるから。タヒチは確実にフランスがREE開発を行う。日本企業にはそのような技術をもっている企業が見当たらない。(海洋国家日本は偶像であることですね、残念。しかし今まで何やっていた?)


平朝彦理事がJOGMEC海底熱水鉱床開発委員会委員長とJAMSTEC理事の2つの顔ではじめて講演

2012年03月06日 | 日記
2012年2月27日(月)、東京大学・安田講堂で開催された海洋技術フォーラムによる「海洋基本計画見直しに向けた提言」と題したシンポジウムが開催された。
このシンポジウムについては、2月27日のブログにも前原誠司氏の発言を記したが、今日はシンポジウム第一部の基調講演を行った独立行政法人・海洋研究開発機構(JAMSTEC)の平朝彦理事が、「海底熱水鉱床開発計画~成果と展望~」と題してお話をされた。

以下に、平朝彦理事のお話の概要を記するが、今回は海洋研究開発機構(JAMSTEC)理事として、また独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC) の海底熱水鉱床開発委員会委員長としての2つの顔で講演される初めてとなったもの。 

・日本近海には石炭起源の石油、即ち石油石炭層が存在する。この石油資源は石炭起源であり北海道の日高かあら青森太平洋沖に至る長大な海底石炭層がある。

・海底熱水鉱床の最大の問題は、大きなものが発見されていないこと。特に巨大・超巨大熱水鉱床が発見されていない。これが今後の課題である。勿論、巨大熱水鉱床は発見されると信じている。

・海底熱水鉱床の調査海域は、小笠原のベヨネーズ海丘と沖縄トラフ。海底熱水鉱床の資源量評価は難しい。表面的にはマウンドとチムニーにしか海底に見えるだけ。海底下の調査が必要である。

・商業べースに乗せるには、海底鉱床から毎日5000トンの鉱石を揚鉱する必要がある。そうでないと経済的にペイしない。また可採埋蔵量は数十年の操業が可能な量、即ち海底地下の有価物は少なくとも5000万トン相当の資源が存在する事。最低この埋蔵量が確認されない企業は動かない。

・海底熱水鉱床における鉱物資源開発の問題の一つには、やはり生物多様性の確保が必要なこと。そこで海底下にある特定のマウンドに依存する固有種がいるかどうかの調査を行ったが、特定のマウンドに依存する特定種は観察されなかった。種の保全問題は解決しているとの認識。

・新型海洋調査船「海嶺」は1日5000トンの揚鉱が可能である。これから様々な試験をEEZ内で行う。

・さて、これからはJAMSTECの話。地球深部探査船「ちきゅう」は現在、相模原沖にて探査中。これが終わると沖縄トラフに向かう事とんる。

・沖縄トラフの長さは1000km、幅200kmと超巨大なトラフで、沖縄から鹿児島湾、菱刈鉱山にいたる長大なシステムで世界随一の規模を有する。特に伊平屋北フィールドの熱水鉱床は世界最大である。

・沖縄トラフにおける「ちきゅう」による掘削調査によって「硫化物ー硫酸塩ー珪化物」で構成される「黒鉱」の3点セットがで採取できた。これは秋田の黒鉱産出地帯との比較によって秋田の北鹿に匹敵する規模である、極めて大規模な鉱量がある事が判明。今後はもっと深部の探索・採鉱をやる必要がある。

・熱水噴出孔の上に人工のガイドベース(熱水装置)を海底のマウントに設置した。このガイドベースから海底熱水が5日間噴出し続け停止した。4か月後に再度同じ場所を観察した。同じマウント近傍を破壊すると再度熱水が噴出した。原因はガイドベースのパイプの詰まりであることが判明。最初の観察から1年後にもパイプ詰まりで噴出が停止していることを確認しているが、劣化故障したガイドベースを破壊すると再度熱水が噴出した。大量の海底熱水が確かに地下に存在している。

・それと注目すべきは1年後のガイドベース上には人工のミニチムニーが出来ていた この発見も世界発。このミニチムニーは分析の結果立派な黒鉱であった。

・また、別のマウントに穴をあけて熱水が噴出するようにするとチムニーが急速に成長する事がわかった。観測では8mを超える高さに成長していた。地下に熱水が存在する場合には、人工的に熱水を噴出させると確実にチムニーを生成し、この生成物は黒鉱であることが確認されている。この事実は人工熱水鉱床の可能性がある。今後の発展が楽しみだ。  

東武伊勢崎線と関東軍

2012年03月04日 | 日記

栃木県の矢板市には市名の由来となった「矢板家」があった。
あったと過去形になっているのは現在の矢板家当主の矢板肇氏は、神奈川県逗子に転居しているからだ。

矢板家第16代当主の矢板肇氏の父である矢板玄の遺言により矢板家の邸宅は矢板市へ寄付され、今は矢板市指定文化財に指定され「矢板市立矢板武記念館」として市の管理下にある。

矢板玄氏は、昭和電工から日本陸軍系列の特務機関を経て、戦後は「亜細亜産業」を設立し自ら社長となった。晩年は矢板信用組合理事長を努め1998年に死去。

「矢板武祈念館」にある矢板武氏は、矢板玄氏の曾お爺さん。
矢板武氏は、日光鉄道や日本最初の私鉄である日本鉄道の役員を務めた。
ちなみに日本鉄道は、上野駅を基点として大宮で分岐し高碕を経由して宇都宮までいたり、それから東北新幹線も停車する那須塩原を結ぶ、当時の私鉄にしては長大な線路を建設し、その一部はJR東北本線の一部になって現在に至る。

この縁もあり矢板玄氏の父親である矢板玄蕃氏などが、東武伊勢崎線となる鉄道建設に従事した。
この鉄道建設は、当時の日本陸軍・関東軍の訓練を兼ねての鉄道敷設であった。
当時は満州地域における南満州鉄道と関連する権益拡大とその維持に多大なる努力が傾注していた時期であり、その後、東武伊勢崎線となる鉄道敷設作業は、日本陸軍・鉄道工兵部隊が中心となって実地訓練を兼ねてのプロジェクトであった。

鉄道工兵部隊は、この訓練後、途満州し関東軍の鉄道部隊として活躍する事となり、敷設した鉄路は東武に払い下げられ現在の伊勢崎線として現在に至っている。

さて、その後、東武伊勢崎線沿線に東京スカイツリーが2012年5月22日に完成お披露目&営業開始となる。これにあわせ東武鉄道は浅草~押上間を3月17日から「東武スカイツリーライン」とするとし、最寄り駅の業平橋駅を「とうきょうスカイツリー駅」に改称すると発表している。

北極海におけるロシア海軍の動向と原子力発電プラント船&原子力機関車

2012年03月03日 | 日記
2011年9月25日のブログにもロシア北極軍について書いているが、これを補足する形で記述したい。

ロシア政府の「2020年までの北極におけるロシア連邦国家基本政策」によると、
「軍事安全保障、防衛、国境警備分野での基本政策として、北極圏でのロシア連邦の国益保護と軍事政策状況にも適った安全保障を約束するため、

 ①北極圏で機動的かつ効果的な沿岸警備システムの構築
 ②北極圏における国境警備インフラの基盤整備
 ③国境警備部隊の警備力強化と駐屯地整備を行う
 ④北極圏における海上テロリズム、密輸・不法入国、水産資源保護に関する国境警備部隊との緊密な連携を目的とすロシア連邦軍の部隊と有効戦力を保持する」としている。

また「2020年までのロシア連邦国家安全保障戦略」によると北極圏での資源エネルギーなどを巡る紛争を意識したと思われる以下の記述がある。

即ち「エネルギー資源をめぐる世界的な争奪戦において、ロシア連邦国境付近において、地域の均衡を擾乱する事態が発生した場合、軍事力行使による問題解決の可能性も排除しない」と明記している。

上記の戦略方針に沿うようにロシア陸軍は2011年北極海地域の防衛力強化の為、2個旅団を新設してる。
その一つがコラ半島のノルウェー国境付近に配備されており、この旅団は4000人規模。それと、もう1個旅団も配備される。

ロシア空軍においては2008年に、Tu-95爆撃機が北極圏(アメリカ・カナダ領域)の定期的哨戒飛行を開始。ロシア海軍もデルタⅢ級原子力潜水艦が、ソビエト崩壊後はじめてとなる北極海潜航したままカムチャッカ半島のペトロパブロフスク海軍基地に到着。
またロシアの北洋艦隊においては、諜報任務潜水艇B-90Sarovが北極海で任務遂行活動を開始し、最新鋭の砕氷監視船も新造され国境警備隊に配備されているなど活動が活発化している。

以上のようなロシア連邦軍の北極圏における活動と連動するように原子力発電プラント船が建造継続中。
原子力プラント船の第一号船 Akademik Lomonosov(2007年建造開始) は、70MWの電力が供給できる原子炉2基(加圧水型軽水炉)と発電プラントが搭載される。Akademik Lomonosov の後継艦は5~6隻が就役する計画で、北極海域での資源開発や沿岸都市向け、及び北極軍の基地向けなどの電力源として利用される。

原子力発電プラント船の配置は、311の津波被害と福島第一原子力発電所事故の影響により係留される場所は慎重に検討される必要がある。ロシアのような原子力発電プラント船に関する国際的な取り決めは存在しないが、日本政府はその係留配置の情報の把握、プラント船の運用動向の監視が欠かせない。

ロシアの北極圏における原子力利用は、原子力発電プラント船にとどまらない。原子力機関車による鉄道分野への利用を検討をロスアトムと国営ロシア鉄道社が構想検討している。北極圏に電化された鉄道の敷設は無理であり、従来の化石燃料によるディーゼル機関車は液体燃料故、極寒冷地においての運用管理は困難であることは自明。

ロシアの北極圏における原子力利用の促進は、それなりの効用が十分に期待される。移動型の原子力プラントは、社会インフラが整備しにくい、またその運営維持が難しい北極圏においては、電力のみならず熱利用も含めて、例えば原子力機関車に植物工場や淡水化プラントなどを連結して移動しながらシベリア鉄道から北極圏にいたる地域の地政的安定に寄与するだろう。

ロシアの北極圏における原子力利用はこれだけではない。The Voice of Russia(2011年3月2日)によれば、ロシア連邦政府が構想中の海底原子力発電プランについての報道がなされている。
これは北極海の海底資源開発に、海底着座型の原子力発電プラントを設置して利用する計画。
既にロシアのガスプロムは北極海における大陸棚資源開発については意志決定済みで、海底着座型原子力発電プラントにより電力&熱エネルギーが供給されると、北極海における大規模な掘削ステーション建設が可能となり、莫大なエネルギーにより海底掘削にも絶大な威力を発揮するだろう。
海底着座型原子力発電プラントは当然のことながら北極海底下の大陸棚を移動することも可能なシステムとして開発される。
そういえば、冷戦はなやかし頃、海底を移動するキャタピラ付き諜報潜水艦に関する情報があった。これを原子力によりより強力にして海底資源開発に使うのは当然の発想だ。まあ、新たな海底移動も可能な原子力推進の諜報潜水艦も開発するのだろう。

このロシアの海底資源開発に原子力を利用する影響は如実にあらわれている。既にフランスのDCNS社が、海底原子力発電プラントFlexblueプロジェクト計画を発表しているが、日本の排他的経済水域における海底資源開発においても原子力エネルギーを利用した計画構想など日本政府と企業から発表される時がくるのだろうか?

テクノロジー・アセスメント(Technology Assessment)

2012年03月03日 | 日記
テクノロジー・アセスメントとは、情報通信技術を始めとするテクノロジーは人間社会や経済にとっての利便性や利益をもたらすのみならず、時として現状のビジネス環境を根本から変えてしまう可能性がある破壊的イノベーションが生まれる事があり、これらテクノロジーの開発や産業への適用について、そのテクノロジーがビジネス環境、経営に与える影響を多角的・客観的に調査し、事前に利害損失を総合的に評価する事で、発生しうる影響、若しくは弊害に対する対応策の策定、及び当該テクノロジーを活かした新規事業創出などに資する分析評価アプローチをいう。

つまりテクノロジー・アセスメントは、早い段階から将来のさまざまな社会的・産業的、かつ既存ビジネスへの影響を与えうるテクノロジーについて中立的な立場での評価・検討を行う事により、新たな視点での経営課題や事業戦略の方向性などについて早期警戒的に問題提起を行う事により、意思決定者を支援する活動であるといえる。

○テクノロジー・アセスメントの経緯
そもそもテクノロジー・アセスメントは、1972年、米国議会においてテクノロジー・アセスメント法が通過し、1974年に連邦議会直属の機関として米国議会技術評価局(U.S. Office of Technology Assessment:通称OTA)が設立された事が嚆矢。

OTAには140人以上のスタッフが関与したと言われるが、OTAの業務内容は、各産業技術について調査研究し、報告書をまとめることであり、決して勧告は出さない点が特徴。またOTAに特に求められた点は、先進技術に対する不明確な部分を可能な限り減らすように働くことが重要視された。

OTAは1995年に廃止されるまでの23年間に約800のテーマについて調査を実施し、255の報告書に取り纏めている。
米国はOTAを廃止したものの、現在でも地球温暖化を始めとする今日の世界共通の課題、社会の中における科学技術のありかたが問われている現状にある。

米国OTAから得られた教訓としては、1点指摘すると、テクノロジー・アセスメントはともすると技術のマイナス面ばかりをとらえ、否定的見解を強調するが故に「テクノロジーアレストメント(ハラスメント)」などと皮肉をこめて呼ばれたこともあり、技術からは適切な距離感は保つものの、テクノロジー・アセスメントにおいては、対象技術のプラスの側面にも正当に光を当て、バランスのとれた調査研究、及び評価を行うことが重要である事を肝に命ずるべきである。

○OTAのテクノロジー・アセスメントの手法

「OTAメソッド」として知られるOTAのTA実施手法は、組織発足後、数年の試行錯誤を経て確立されたもので、具体的には、諮問委員会の利用、委託研究、外部及び内部レビュー、広範囲の利害関係者の参画や展望を含めた評価手法を特徴とする。

(1)TA実施の発議まで
TA実施の発議は、TA委員会の決定事項である。
発議の要請は、①各委員会委員長(または、少数党筆頭委員)による要請、②TA委員の要請、③OTA局長がTA委員会と協議の上で要請の3通り。
TAの発議要請段階に至ると、OTA事務局は、調査の必要性、関連の調査例(特に、議会内の他機関での事例)、研究プラン、スケジュール、予算等を記載した提案書を起案する。

(2)諮問委員会(Advisory Panel)
プロジェクトの実施が承認されるとプロジェクトチームが組織され、諮問委員の人選に着手する。
「諮問委員会」の設置は、OTAメソッドの最大の特徴で、当該分野の学識経験者、消費者、実業界、教育者、技術者、政策担当者等の専門家や利害関係を代表する委員を選ぶ。
諮問委員会は、報告書の草案をレビューし、代替案を示するなどの役割を果たす。諮問委員会の存在は、TAの正当性と妥当性を確保する上で、重要な役割を果すものである。
但し諮問委員の人選には苦労した。委員の選出する根拠と全体のバランスが重要視され、委員の選考は、数ヶ月に及ぶ事があったと言う。

(3)データの収集と分析
データの収集と分析、及び評価作業は、当然の事ながらプロジェクトチームが実施する。
チームは、文献調査、技術及び政策専門家に対するインタビュー、行政機関や利害関係者によるブリーフィング、外部委託調査等を行う。
時にはスパコン(?)などによるコンピュータ・シュミレーションなども行われた。
評価の枠組みとしては、
①術開発や応用の段階
②利害関係者や価値、展望についての類別
③技術影響の間接・直接、短期・長期の類別
④政策オプションやその結果についての類別

上記4ステップに沿って、報告書の内部レビューや質の管理が行われた。

(4)報告書草案の作成とレビュー報告書草案
またまた当然の事ながらチームが報告書草案を起案し、OTA内部及び外部のレビューを受ける。
このオープンなレビュー作業は、TAメソッドのもう一つの特徴であり、諮問委員会はもとより、当該テーマに関心のある専門家、利害関係者の間で実施される。しかしながらこのレビューは、チームの作業負荷を高めたが、この苦労は、評価結果のチェックアンドバランスを高め、OTA報告書の強みとなったと高く評価されている。

(5)報告書の刊行とフォローアップ
レビューを経た草案は、TA委員会の承認を経て、最終報告書として発表&刊行される。
OTAの成果物の内その半数が、技術評価分析報告書で、残りは、背景説明資料(実情分析中心の短いレポート)、特別報告書(立法に直接関与する為の報告書)、技術説明資料、事例研究、ワークショップの開催報告、会議録資料等。

OTAの評価プロセスは、当該報告書の発表&刊行で終了しない。OTAは、要請を受けると議会での証言や議会&議員スタッフに対するブリーフィングも適宜行われた。

「OTAメソッド」は、幅広い関係者の参加によりコンセンサスを得る有効な方法であり、OTA報告の強みとなった事は高く評価されている。
また、TA法では、OTAの任務として、「政策オプションの比較を行い、その結果を提供する」ことが規定されているが、特定の選択肢を推奨するかどうかは曖昧であった。現実の運用では、OTAは、選択肢の提示に留め、特定の価値判断を示すことには慎重な姿勢を貫いている。この点などはOTAの評価が分かれるところ。

日本ではテクノロジーアセスメントは普及していないが、再考の要あり。

海洋基本法/海洋基本計画見直し

2012年03月01日 | 日記

今年2012年は、海洋基本法施行後から5年が経過し総合海洋政策本部のあり方について規定により見直しが行われる。翌2013年には同じく海洋基本計画も立案から5年が経過する為、見直しが実施される。
この海洋基本法/海洋基本計画見直しを契機として、今後の海洋資源開発に弾みをつける動きが超党派の国会議員で構成される海洋基本法戦略委員会(座長:前原誠司・民主党政調会長)や東京大学・湯原特任教授らが中心となっている海洋技術フォーラムなどでその活動が活発化している。

特に尖閣諸島問題に端を発した中国の重希土類を中心とするレアアース輸出規制に垣間見える資源ナショナリズムの台頭、エネルギー・鉱物資源の権益確保をめぐる国際競争の激化など、我が国産業界に不可欠なエネルギー・鉱物資源の確実な供給確保が喫緊の問題であり、当然の如く排他的経済水域(以下、EEZ)での海洋資源開発を進めようとするのは時節柄、理にかなっている。

しかしながらこのような情勢を受けても日本企業による海洋資源開発は全く動きを見せていない。そのような中、バンクーバーに本社を置くNautilus Minerals 社が、パプア・ニュー・ギニアの領海内に鉱区を確保し、ロシア、アメリカ、カナダの鉱業会社から 100M/US$、トロント、ニューヨーク、ロンドンの各株式市場から 200M/US$を調達し、2014年の商用生産開始に向けて海中採鉱システム、陸上選鉱・港湾設備の整備を進めている。同社の狙いは世界初の商用ベースの海洋資源開発プロジェクトを成功させることにある。

日本のEEZ、大陸棚には、金属・レアアース類を含有する黒鉱型海底熱水鉱床やコバルト・リッチ・クラストなどの深海底鉱物資源の有望海域が多数発見されており、黒鉱型海底熱水鉱床では世界第1位、コバルト・リッチ・クラストでは世界第2位の潜在的資源量があると推定されている。但し潜在的可能性のある海域から、資源的に魅力のある場所を絞り込む方法は完全に確立されておらず、探査技術などの開発が必要であるなど課題も確かにある。しかしながらリスクを負いつつ果敢に海洋資源開発に挑戦するNautilus Minerals 社のような海洋ベンチャーなど民間企業の積極的関与がなくては海洋基本法/海洋基本計画の見直しも虚しいものとなるだろう。国益に資するがハイリスクなビジネスに挑戦するチャレンジャーを支援・優遇する政策が必要とされている。