阿部ブログ

日々思うこと

フランスが情報活動法を制定・施行~電子傍受活動の合法化~

2015年10月13日 | 雑感
フランスが通信傍受に関する法律を7月に制定。国民の生命・財産の保全、テロや国家的利益を損なう事象について電子的手法を駆使して対象を特定する活動を情報機関に許可するもの。因みに電子傍受はフランス語でROEM:Renseignement d'Origine ElectroMagnétique。しかし、フランスが今まで通信傍受を行っていなかったかと言えば、それはNo。当然やっていた。今回「情報活動に関する法律第 2015-912号」が制定された事により、根拠法がないままに電子傍受活動を行っていた、公安組織や国防情報部隊に法的な枠組みを与え、かつ正当な管理を行えるようにするための措置が完了した。フランスにこの手の法律が今まで無かった事が不思議。
「情報活動に関する法律」の制定における背景には、シャルリ・エブド襲撃事件がある。この事件が社会全体の危機感を醸成し法整備の機運を高めることとなった。法律の目的は、フランスの独立、領土保全、国家防衛、外交政策上の重大な利害、欧州及び国際的な取決めの履行並びにあらゆる形態の外国の干渉の防止、経済、産業及び科学技術に関する侵害、テロ活動防止、フランス共和政体に対する攻撃や公共の安寧に重大な攻撃をもたらす性質の集団的暴力の抑止、組織犯罪、大量破壊兵器の拡散防止の為に電子的手段を用いて達成する事。

フランスの情報機関がこの法律に基づいて電子傍受を行うには、書面によりフランス首相からの許可を得る必要がある。情報機関とは、対外治安総局(DGSE)、国内情報中央局(DCRI)、軍事情報局(DRM)、国防保安局(DPSD)、関税情報調査局(DNRED)、対資金洗浄情報課(Tracifin)、パリ警察情報部などで、申請を受理した首相は、国家情報技術管理委員会(CNCTR:Commission nationalede contrôle des techniques de renseignement)の意見を聞いて判断を下す、が殆ど許可されるだろう事は想像に難くない。首相の諮問を受けるCNCTRは、国民議会、元老院、コンセイユ・デタ、破毀院及び郵便・電子通信規制機関(ARCEP)の代表者9人で構成される。またCNCTRは、情報機関に電子傍受活動の結果について報告させることができる。

フランスの情報機関は、音声盗聴、尾行などの監視活動の他、個人のコンピュータや電話の電子傍受、特にフランスと海外との通信の情報を収集を重視している。特に対外治安総局(DGSE)が集めた電子傍受情報は数十億件とも言われており、パリのモルティエ大通りにあるDGSE本部の地下3階に設置されたサーバーに蓄積され分析されている。DGSEのストレージ容量は、50ペタバイト以上(継続的に追加される)で、冗談か本当かは判然としないが、サーバーが発する熱だけでDGSE本部の暖房を賄えると言われている。
「情報活動に関する法律」の施行により、フランス国内のインターネット・プロバイダーには電子傍受用の装置、通称「ブラックボックス(boîte noire)」を設置する事となる。これでフランスは、法律の目的を達成する為にすべてのインターネット通信を収集する事が合法化された。今後は大手を振って、国民監視を行える事となった。