あるスーフィー巡礼者の日記

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ホメオパシーを巡るブッチ談話(4) 医療は様々な選択肢を用意すべきである

2010年10月28日 | 東洋医学と西洋医学
学術会議会長談話原文

「幼児や動物にも効くのだからプラセボではない」という主張もありますが、効果を判定するのは人間であり、「効くはずだ」という先入観が判断を誤らせてプラセボ効果を生み出します。

「プラセボであっても効くのだから治療になる」とも主張されていますが、ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性があることが大きな問題であり、時には命にかかわる事態も起こりかねません。こうした理由で、例えプラセボとしても、医療関係者がホメオパシーを治療に使用することは認められません。


【ビタミンKの摂取はホメオパシーに反しない】

もしマスコミが報道するように「ビタミンK欠乏による新生児出血症はホメオパシーで確実に治るから西洋医学的治療法をしてはならない」とホメオパシーの治療者が言ったのが真実だとしたらそれは大きな問題だろう。ただ、その点については、すべての関係者の言い分を聞きながら公平な判断を下す必要がある。一部の人の言い分に従って軽率な断罪を行うのは避けなければならない。

ビタミンK欠乏による新生児の貧血に対して、ホメオパシー治療者がビタミンKの摂取を禁じたというのがもし本当だとしたら、その人はちゃんとしたホメオパシーの実践者ではないだろう。

私が理解する限りホメオパシーが否定するのは、症状を一時的に抑えるが原因は悪化させる治療法である。通常は食品の中に含まれているビタミンKの欠乏が原因である出血症に対してビタミンKを摂取することは、栄養不足に対して適切な食物を摂取することと本質的に変わらない。それは自然治癒を促す行為であると言うべきであろう。

ホメオパシーで適切な食物の摂取を禁じるなどという話は聞いたことがない。もしそういうことがあったとしたら「西洋医学の薬=症状を抑えるだけの薬」という偏見に囚われた一部のホメオパシー治療者の過ちによるものと考えるべきであり、それをホメオパシーそのものの非とするのは正しい行為とは言い難い。

なお、ビタミンKの欠乏の原因の一つとして抗生物質による腸内細菌叢の破壊がある。妊婦が抗生物質を常用しているとビタミンK欠乏状態になり、そんな妊婦の母乳に栄養を依存する新生児はビタミンK欠乏性出血症になりやすい。だから、抗生剤の乱用により妊婦の腸内細菌叢を破壊しないように注意することは大切である。そのためにホメオパシーを含めた代替医療を活用することには大いに意味があるだろう。

だが、すでに抗生剤により腸内細菌叢が破壊されビタミンK不足に陥っている妊婦に対してビタミンKを補充することで新生児出血症を予防することは、ホメオパシーの考えに反するものではないと考えられる。

【ホメオパシーは原理的に他の医療との併用には向かない】

確かに、ホメオパシー治療では他の薬との併用を嫌う。それには、ちゃんとした理由がある。

ホメオパシーは「同種療法」(健常人に症状を起こす物質を少量摂取することで、自然治癒力を高めることを目指す)である。それに対して、西洋医学や漢方を含む他の多くの医学は症状や病態に対抗する(たとえば熱には解熱薬を飲む)ことを原理とする異種療法・逆症療法(アロパシー)である(なお、「アロパシー」とは、ハーネマン医師が、ホメオパシーと西洋医学の違いを明確にするために提唱した概念である)。

同種療法と異種療法の薬を併用したら、作用が相殺されてどちらの効果も出なくなってしまう。いや、より正確に言うならば、微細な刺激により自然治癒力を促すホメオパシーのレメディーの効果は、一般的により強い作用をもつ異種療法の薬の効果によって無力化されてしまうであろう。

ホメオパシーの治療者が他の治療との併用を避けたがるのは、彼らが偏狭で排他的だからではなく、ホメオパシーが他の多くの医学と異なる原理にもとづいているという事情によっているのである。

【排他的な発想が患者さんの利を害う】

だから、ちゃんとしたホメオパシー医は、「ホメオパシーにするか西洋医学(など他の医学)にするか」という選択肢を提示するはずである。

近代西洋医学の医師の中にも「漢方など近代西洋医学以外の有害で非科学的な治療をしてはならない」と言う人は沢山いる。その結果、患者さんは、有害な西洋医学の治療に頼り続け確実な有効性のある東洋医学の治療を受ける機会が奪われるということがしばしば臨床現場で起きていることは否定できない。

誤解のないように念を押して置きたいが、私は西洋医学の治療法がすべて有害だと言っているわけではない。西洋医学にも東洋医学(あるいは他の代替医療)にも、有害な治療法もあれば有効な治療法もある。同じ治療法でも、正しく使えば有効となり使い方を間違えれば有害になるということである。

ある特定の治療法に全面的に依存し、他の治療法の有効性を根拠なく否定することによって患者さんの利益が害われるのである。ホメオパシーを絶対化し西洋医学を全否定する一部の治療者には問題があるが、それをもってホメオパシー全体を闇雲に否定し、医療の現場から締めだすことは決して患者さんのためにはならないだろう。

ホメオパシーそのものの価値を否定するのではなく、患者に選択肢を提示しないことを問題とすべきではないだろうか?