ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

美しい五月  清水哲男

2013-05-02 21:41:29 | Poem
   


  唄が火に包まれる
  楽器の浅い水が揺れる
  頬と帽子をかすめて飛ぶ
  ナイフのような希望を捨てて
  私は何処へ歩こうか
  記憶の石英を剥すために
  握った果実は投げすてなければ
  たった一人を呼び返すためには
  声の刺青を消さなければ
  私はあきらめる
  光の中の出会いを
  私はあきらめる
  かがみこむほどの愛を
  私はあきらめる
  そして五月を。


5月になると思いだす詩である。
しかしながら、この詩のなかに隠されているものをわたくしはおそらく正確には把握できていないだろうと思う。
「五月」はおそらく1968年(昭和43年)のフランスの五月革命ではないかと思える。
最後の6行は、そのままそれぞれの心の歴史にも投影されてくる。ひとはこのような季節を繰り返しながら生きてきたのではないのだろうか?
エリオットは「四月はいちばん無情な月」と書いていたけれど、ある季節に「言葉」を与えるということは、次の季節へのいざないではないだろうか?

何度読みかえしても美しい詩である。清水哲男さん30代の詩である。


(MY SONG BOOK 水の上衣   昭和45年・限定250部・非売品・・・編集:正津勉)
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