「愛知(名古屋・犬山)旅行記(その6)」のつづきです。
次に紹介するのは「しんはんくみあけとふろふゑ 天の岩戸神かぐらの図」です。
これは2枚一組でして、その1枚はこんな風
なんか変です。
そもそも、作品名のうち、「しんはんくみあけとふろふゑ」は何と読むのでしょうか?
図録から解説を転記しましょう。
各図の右余白に「しんはんくみあけ(げ)とふ(う)ろふゑ」とあり、いわゆる「組上絵」「組上灯籠」であることがわかる。「上」「下」2枚組の錦絵を、図中の指示書通りに切り取り貼り合わせることで、古事記の有名な「天の岩戸」の場面を立体的に組み立てることができる。
だそうです。
会場には「立体的に組み立て」られたものが展示されていまして、私は幼少のみぎり、雑誌「小学○年生」の付録で、こうしたペーパークラフトを組み立てたことを思い出していました。
パーツが入っていた箱には切り込みが入っていて、その箱が台座になったっけなぁ とか、箱が歪んでいることが多かったっけなぁ とか…。
さらに図録から転記しますと、
組上絵の現存例は幕末期・明治期のものが圧倒的に多く、しかも実際に切り取られてしまうため、当初の状態そのままで伝世することは稀で、この「天の岩戸神かぐらの図」のように制作・刊行年代が文化年間中期(1808-13)と推定されるものは貴重である。特に本図に関しては、上下2枚揃で現存しているものはボストン美術館以外に確認されていない。
ですと
へぇ~です、まったく
こちらの作品も意表を突くというか、なんというか…
「百橋一覧」という作品で、「秋のある日壁にぼんやりと一図がみえ、それは理にかなった構造の山水にかかる橋の図で、橋の数は百を超えていた。(中略)その図を写して版画に仕立てた」(図録より)ものだそうで、じっと観ていると、「ひゃっきょう」というよりも、発狂しそうでした
一方、「寿字と唐子図」では、私の視線は捺された落款に集中
拡大しますと、
富士山です。
まさに北斎にぴったりの意匠ですなぁ…
富士山の下の三本線は、雲のようにも見えるし、「八卦」の「兌」ようにも見えます。
この落款を観て思い出したのが、かつて観た棟方志功の「東海道棟方版画 《原 裾一文字》」でした。
棟方自身の解説によれば、
この富士山は、いろいろ方法をかえて数かずの板下を描きましたが、最後にいちばん簡単で、いちばん単純な構図が、この裾の一文字を入れないときの構図でした。けれども、どうもこれだけでは、なにか自分の絵描きとしての思いというものが入らないと思い、なにか、この中に自分の秘密を入れようと思って、この裾に只一本の白を入れたのです。これが非常に利いて来まして、見ていて赤くも見え、青くも見え、紫にも見え、この富士山の変化、融通自在をもっている万全の美というものの思いができるように上がったのが、うれしくありました。
だそうですが、棟方の記憶のどこかに、北斎の落款が捺されていたのかもしれません。
最後に紹介するのは、この「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」で唯一北斎が描いたものでなかったこちらの作品です。
葛飾応為の「三曲合奏図」。
葛飾応為は、北斎の三女で、俗称は「栄」。
こちらに背を向けた琴を弾く女性の帯や着物の裾の感じが斬新で、北斎とは世代が違うことが明らか
かなり充実した展覧会だった「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」ですが、私にとっての一番の収穫は、葛飾応為の「三曲合奏図」を生で拝見できたことだったように感じています。
「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」は、今年秋(9月13日~11月9日)に上野の森美術館に巡回するようですけれど、東京じゃ凄く混むのでしょうねぇ…
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