チェコ・フィル ファンの日記

クラシック音楽の演奏会やCDを聴いた感想をアップしています。 クラシックファンが1人でも増えることを願いながら。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第526回定期演奏会

2019-03-24 13:50:20 | Concert Reviews
大阪フィルハーモニー交響楽団 第526回定期演奏会

<出演>
指揮:レナード・スラットキン
独唱:藤木大地(カウンター・テナー)
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指導:福島章恭)

<曲目>
バーンスタイン/ミュージカル「キャンディード」序曲
コープランド/田舎道を下って
バーンスタイン/チチェスター詩篇
コープランド/交響曲 第3番

大フィルの定期で何回か、オーケストラの音そのものががらりと変わってしまうのを見聴きしてきたが、この日がそうでした。

アメリカの大巨匠レナード・スラットキンさんが初登場し、アメリカの名曲プログラムが組まれました。会場は通常以上の入りで、演奏に期待する客の熱気もいつも以上でした。

スラットキンさんといえば、セントルイス交響楽団を世界的なオーケストラに育て上げたことで有名ですが、それももう30年前のことで、今や世界的巨匠と呼べると思います。
軽やか足取りで登場されたスラットキンさんは、長い手をキリリとしなやかに振ってキャンディードの演奏を始めました。

すごい。巨大なフェスティバルホールの空間が一瞬で楽しく賑やかな音で包まれました。
キャンディード、田舎道は約5分の短い曲ですが、それぞれ、楽しい感じ、しみじみとした感じ溢れ、これだけでもきょうのアメリカプログラムを総括しているようでした。

アメリカの交響曲の名曲にして大曲、コープランドの交響曲第3番は、前半で一気にアメリカ色になった巨大な会場に、第二次世界大戦前後の人間の深い喜怒哀楽が、本当に深く、分厚い音で表現されました。
もちろんスラットキンさんの力によるところが大きいのだと思います。
ただこれが日本でとなると、大フィルとフェスティバルホールの組み合わせでしか、ここまで豪華な演奏にはならなかったとも思います。

間違いなく、長く心に残る名演に出会うことができました。

(2019.3.24 大阪 フェスティバルホール)

チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団日本公演(2019)

2019-03-05 13:00:15 | Concert Reviews

チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団日本公演(2019)



チャイコフスキー 歌劇「エフゲニー・オネーギン」より“ポロネーズ”

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番(ピアノ:アリョーシャ・ユリニッチ)

ソリスト アンコール曲

ドビュッシー 「夢」



チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」



指揮:レオシュ・スワロフスキー



チェコでプラハに次いで大きな都市ブルノの名オーケストラが2年ぶりに来日しました。

指揮は90年代に首席指揮者を務めた現代チェコを代表する指揮者のレオシュ・スワロフスキーさん。

スワロフスキーさんは大阪交響楽団やセントラル愛知交響楽団でポストを持っていたこともあり、日本でもお馴染みの指揮者です。



ブルノ・フィルの演奏は2013年11月、同じくスワロフスキーさんの演奏でお国ものの「新世界より」を聴いたことがあります。

チェコ訛りというか、しみじみと郷愁を誘うような演奏を想像していたら、とても洗練された響きで驚いたのをよく覚えています。



この日も第1音から「巧い!」と感じる演奏でした。

スワロフスキーさんの演奏は正々堂々の直球勝負で、聴きながらあっと驚くようなところは全くなし。本当に安心しながら、チャイコフスキーの名曲を隅々まで楽しむことができました。



スワロフスキーさんの指揮姿も力みのない優雅な振り方。

チェコの名指揮者だったヴァーツラフ・ノイマンさんとズデニック・コシュラーさんお2人共を師とするだあって、この名指揮者達のお姿を思い出し、懐かしい気分にもなりました。



演奏そのものとは関係ないのですが、今回の公演チラシは、普段テレビでもあまりお目にかかることのないブルノの聖ぺテロパウロ教会の写真が大きく写っていて、チェコの名オーケストラをお迎えする気持ちが高まり、とても気持ちが良かったです。



名曲の名演奏が聴け上に、オーケストラの響きもホールの響きもすごくよかった。

それは本当に良かったのですが、ホールの響きが良かったのは、客の入りの悪さが貢献していると思います。1700人入るホールの半分も入っていなかったのではないでしょうか。

大阪という土地柄、超有名なオーケストラではないこと、ほか色々と要因はあるのでしょうが、本当に残念で、オーケストラの皆さんに申し訳ない気分です。



数々の本当の名オーケストラを招聘している今回のマネジメント会社の光蘭社さんには、次回も何とか、ブルノ・フィルの来日を実現させて頂きたいと思います。



(2019.2.23 大阪 ザ・シンフォニーホール)




シカゴ交響楽団日本公演(2019)

2019-02-08 15:00:00 | Concert Reviews
シカゴ交響楽団日本公演(2019)

■指揮
リッカルド・ムーティ

■曲目
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 op.68
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73
アンコール曲
ジョルダーノ:歌劇 「フェドーラ」第2幕 間奏曲

ベルリン・フィル、ウィーン・フィルと並ぶ世界のトップオーケストラ、シカゴ交響楽団が7度目の来日公演を行いました。
指揮はウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを5回も指揮している世界的巨匠
リッカルド・ムーティさん。ムーティさんは2010年からこのオーケストラの音楽監督を務めていて、両者の関係はいまが最も熟している時期と言えます。
また大阪でこのコンビの演奏が聴けるのは今回が初めてです。

今回の来日公演は全5公演でこの日が最終日。他の4公演は全て東京文化会館での開催で、
プログラムはヴェルディのレクイエムが2回、チャイコフスキーの交響曲第5番とリムスキー・コルサコフの「シェエラザード」が1回、ブラームスの交響曲第1、2番が1回でした。

ムーティさんの指揮もシカゴ交響楽団の演奏も生で聴くのは初めてで、フェスティバルホールの赤い階段を昇る間と、長いエスカレーターに乗っている間、非日常の世界へ向かう緊張感で胸の鼓動が高まりのをはっきり感じました。



シカゴ交響楽団と言えば重厚で豪華絢爛な響きのオーケストラというイメージがありました。
晩年の朝比奈隆さんが定期に招聘された際、ホルン奏者の増員を求めたところ、楽員から「我々で倍の音量を出すから大丈夫」と言われたというエピソードがあります。結果そのコンサートはスタンディングオベージョンになったそうです。

交響曲第1番
ムーティさんは幾分どっしりとしたお姿で、とてもゆっくり歩きながら登場されました。若々しくきびきびした印象があるムーティさんですが御年77歳。まさに大巨匠のオーラを発していて、会場の空気が一気に引き締まるのがわかりました。
指揮台に登ったムーティさんが背筋をピンと伸ばし、腕全体を大きく幾分シャープに振って引き出した荘厳な第1音に、心のなかで「おーっ」と深く唸ってしまいました。
ティンパニが片手でひとつずつ刻む音は凛々しく澄んでいて、これと共鳴する多重の弦楽器の音は息を飲むほど柔らかくて優雅。続く木管楽器はどの奏者もとても個性的な音を出していると思うのですが本当に巧い。金管も加わった合奏部分は期待通りの豪華絢爛で、全体では言葉に尽くせない程美しい。
また、個々のフレーズから1つの楽章そして曲全体が、ムーティさんの熟練のタクトで大きな1つの歌のように聴こえるのが感動的でした。

交響曲第2番
第1番のような多重な音の響きに加え、楽器間の掛け合いも特徴的で引き込まれる曲。
このスーパーオーケストラの実力が最大限に発揮されてたと思いました。
スタジオ録音のCDを聴いているような完璧さの上に、個別奏者の巧さ、個性的な音、優雅で美しい響きがひしひしと伝わり、人の唄う歌のような温かさがありました。

大曲2つのプログラムで、いずれも第3楽章はほんの少し早め、ほかはとてもゆっくりしたテンポだったと思うのですが、ゴツゴツした印象は全くなく、究極の豪華絢爛さと優美さを兼ね備えた歌になっていて、演奏以外のことは何も考えられない夢のような合計100分間を過ごすことができました。
また演奏そのものとは関係ありませんが、楽団員は国際色豊かでアジア系の方も多いことと、皆さん演奏中にあまり体を揺らさないことが印象に残りました。

「フェドーラ」から
アンコールは、ブラームスのハンガリー舞曲の何番か?と勝手に想像していたら、ハープが運び込まれ、ムーティさんが客席に向けて「イタリアのオペラ」と日本語で話し始めた後英語で曲を説明されました。そして演奏された小曲は優雅で大オーケストラ演奏の魅力がたっぷり。弦楽器中心の曲でしたが、まるできょうのコンサートのダイジェストを聴いているような気分になり、感動が深まりました。

終演後ムーティさんはCD購入者向けのサイン会を開かれました。
日本公演最終日でとてもお疲れの中だったと思うのですが、何百人ものファン1人ひとりに優しい笑顔で接していらっしゃいました。

聴き慣れている曲の、とてつもない演奏を聴いてしまったという感動と放心状態のような感覚が、その後何日も続いています。

(2019.2.4 大阪 フェスティバルホール)





大阪フィルハーモニー交響楽団 第517回定期演奏会

2018-04-10 01:00:00 | Concert Reviews
大阪フィルハーモニー交響楽団 第517回定期演奏会

三善 晃/オーケストラのための「ノエシス」
ブルックナー/交響曲 第8番 ハ短調(ハース版)

指揮:尾高 忠明




大阪フィルハーモニー交響楽団の第三代音楽監督、尾高忠明さんの就任演奏会。
プログラムのメインには、大フィルの代名詞であり、朝比奈隆さんが「ブルックナーの交響曲でいちばん完成度の高い作品」と称していた、交響曲第8番が選ばれました。

大フィルのブルックナーの第8番は私にとって数々の記憶に残る演奏があります。
朝比奈隆さんの指揮では、94年の東京定期演奏会で、フライング拍手が特に東京で今以上に盛んだった時期にも関わらず、大音量での終曲後自然発生的に数秒の無音の時間を呼び込んだり(その後は15分にも及ぶスタンディングオヴェーション)、2001年には旧フェスティバルホールで、定期演奏会ではこの曲最後の演奏となるゆっくりどっしりとしながらも神がかったような演奏をされました。
二代目音楽監督の大植英次さんの指揮では就任2年目、朝比奈隆さんの誕生日に当たる日に、指揮台に朝比奈さんの写真のみを置いて暗譜で力強くも美しい演奏をされたり、任期最後の3月31日に特別演奏会として、物凄く力の籠った緩急自在の演奏をされたりと、いずれも強烈に記憶に残る演奏ばかりです。
実演を聴くことはできませんでしたが、大植さんの音楽監督退任後首席指揮者を務めた井上道義さんは、定期ではなく兵庫県芸術文化センターでの特別演奏会でこの曲を採り上げました。

尾高さんは就任第1回目の定期演奏会でこの曲を演奏するという、大フィル史上初の試みを、圧倒的な名演奏でやり遂げられました。

この日の演奏で印象に残ったのは、朝比奈さん時代からはもちろん、大植さん時代と比べても若い奏者に入れ替わった体制で、特に木管楽器(フルート、クラリネット、オーボエ)と、金管楽器(トランペット、トロンボーン)で、大フィルらしい力強さと、はっとする程の音程の良さ、歌いかたの巧さでした。
尾高さんは終始指揮棒を持たずに演奏されましたが、いつものように人を幸せにするような身のこなしと表情で、大フィルから、大フィルらしくも新しい響きを引き出していました。
尾高さんと大フィルの付き合いは47年前までさかのぼるとのことでしたが、本当に長い間育んできた信頼関係が完成する瞬間を見聞きするようでした。
圧倒的な安定感があり、聴いていて物凄く楽で心地よいのに、約80分の曲が進むのに連れて体全体が熱くなりました。

尾高さんは今年この後定期演奏会には1回だけの登場ですが、得意のエルガーの交響曲を演奏します。また、大フィルでは大植さん以来久しぶりのベートーヴェンの交響曲全曲演奏会来月スタートします。
若々しくて、力強くて、巧くて、幸せな響きのする尾高さん×大フィル時代。これから眼が離せなくなります。



(2018.4.8 大阪 フェスティバルホール)

日本センチュリー交響楽団 山田×樫本×センチュリー、”夢の響宴”

2018-02-16 10:00:00 | Concert Reviews
山田×樫本×センチュリー、”夢の響宴”

指揮:山田和樹
ヴァイオリン:樫本大進

サン=サーンス
ヴァイオリン協奏曲 第3番ロ短調Op.61
ソリストアンコール
J.S バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番第3楽章ガヴォット

チャイコフスキー
交響曲 第4番へ短調Op.36
アンコール曲
アザラシヴィリ:ノクターン

日本の若手指揮者でいま最も世界中を駆け回っている山田和樹さんと、ベルリン・フィルの若きコンサートマスターの樫本大進さんと、日本でトップレベルの実力を誇る日本センチュリー交響楽団の一夜限りの共演。
会場はもちろん満員で、しっかり音楽に集中しようという客の熱気が溢れていました。

樫本さんの演奏を聴いてまず思ったのは、音が重厚で極めて落ち着いていて、超絶的とも言えるほど心地良いことでした。
技巧ももちろん超絶的なのでしょうが、これだけの安定感、安心感があると、超絶技巧をことさら強調することもなく、完全に樫本さんの音楽観、時間、世界の中で、この美しい曲を表現しているようで、全幅の信頼を持って聴いている側は、一瞬で樫本さんの世界引き込まれ、あっという間とも言える感動的な体験をすることができました。

チャイコフスキーの交響曲第4番、山田さんの指揮姿は若々しくて、大袈裟な振りは一切なくて、聴いている方にも分りやすいのが見事でした。
終始少しゆっくりめのテンポの中、曲のどの部分、どんなに細かい部分をとっても、「巧い」。クラシック音楽ファンなら誰もが知る名曲の、名曲である理由を完璧に紹介し、説明してもらったような気分でした。第4楽章で繰り返し現れていちばん盛り上がる第3主題の冒頭で3回、リテヌートというのでしょうか。分りやすい指揮(指示)と共に急にテンポを落とし、ステップを踏むように演奏していたのは、一瞬ハッとするもののすぐに自然に受け入れられ、ただでさえ強い記憶に残るきょうの演奏会が、より印象的なものになりました。

終演後の拍手は、ザ・シンフォニーホールでは聴いたことがないほど凄い音量でした。
またアンコール曲はもちろん初めて聴く曲でしたが、優美かつ素朴なメロディの連続で、いい曲でした。

本当に凄い演奏会だったのですが、これを実現できたのは日本センチュリー交響楽団の演奏だっらからということも忘れてはいけないと思います。

(2018.2.13 大阪 ザ・シンフォニーホール)