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私は昔からその日の分しか考えなかったのに、
けっこう楽しく旅行に行ったり、
こんなふうにうまく店を持ったりできたので、
あまりお金のことを考えはしなかった。
この田舎町では全く知られていなかった飲み物
エスプレッソが全然売れなくて、
わざわざイタリアから個人輸入して買っていた粉が
大量に余ったときはちょっとまいったが、
ひょんなことからエスプレッソにミルクを入れたり
砂糖を入れたりして飲むのが
おじいさんたちの間ではやりだし、
ゲートボールの帰りに寄ってくれるようになった頃に、解決していった。
解決ってほんとうに面白くて、ちょうど「これはもうだめかも」と
思ったころに必ず訪れる。
「絶対になんとかなるだろう」と思うことをやめず、
工夫し続ければ、
なんだか全然別のところからふと、
ばかみたいな形でやってくるものみたいだ。
『海のふた』(中公文庫)/よしもとばなな
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