「人間というやつ、遊びながらはたらく生きものさ。
善事をおこないつつ、知らぬうちに悪事をやってのける。
悪事をはたらきつつ、知らず識らず善事をたのしむ。
これが人間だわさ」
鬼平犯科帳(第2巻『谷中・いろは茶屋』)
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「人間(ひと)とは、妙な生きものよ。悪いことをしながら善いことをし、善いことをしながら悪事をはたらく。こころをゆるし合うた友をだまして、そのこころを傷つけまいとする。
鬼平犯科帳(第8巻『明神の次郎吉』)
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「死ぬつもりか。それはいけない。
どうしても死にたいのなら、
一年後にしてごらん。一年も経てば、すべてが変わってくる。
人間にとって時のながれほど強い味方はないものだ」
鬼平犯科帳(第2巻『妖盗葵小僧』)
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「人という生きものは、ふしぎなものよ」
「人なみに善(よ)いことをして見たくなるのだ。悪事によって得た金で善事をおこなう。それが、いささか、胸の中がなぐさめられる。申せば悪党の虚栄(きょえい)なのだ」
鬼平犯科帳(第11巻『土蜘蛛の金五郎』)
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「人というものは、はじめから悪の道を知っているわけではない。何かの拍子で、小さな悪事を起こしてしまい、それを世間の目にふれさせぬため、また、つぎの悪事をする。そして、これを隠そうとして、さらに大きな悪の道へ踏み込んで行くものなのだ」
鬼平犯科帳(第13巻『殺しの波紋』)
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「人のこころの底には…」
「人のこころの底には、なにが、ひそんでいるか、知れたものではないというのだ」
鬼平犯科帳(第4巻『夜鷹殺し』)
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「人の、こころの病気(やまい)というは、まことに、はかりきれぬわえ」
鬼平犯科帳(第4巻『夜鷹殺し』)
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「女という生きものには、過去もなく、さらに将来もなく、ただ一つ、現在のわが身あるのみ……ということを、おれたちは忘れていたようだな」
鬼平犯科帳(第1巻『本所桜屋敷』)
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「いやはや、人の勘ちがいというものは、
万事こうしたものなのだ。
ことに男と女の間なぞは、他人が見るとき、先ず大間ちがいをしていることが多いものさ」
鬼平犯科帳(第6巻『盗賊人相書』)