日本は、恩、感じるな。
面白いというより、日本は、敵国だったのに。
面白い。
イギリスと、日本。
「戦後の皇室と英王室の交流を振り返った時、ハイライトは2012年5月、英女王エリザベス2世の「ダイヤモンド・ジュビリー(即位60周年)」で、現在の上皇さま、上皇后さまが天皇、皇后として英国を訪問した出来事だろう。
第二次大戦で戦火を交えた日英両国の友好への長い歩みの到達点を確認する旅でもあった。
午さん会で上席に
この「ダイヤモンド・ジュビリー」当時は、女王とほぼ同世代か、やや下の世代の君主がまだ多く健在で、女王の即位60周年を祝うため、君主を頂く世界27カ国のうち代理の王族も含めて22人が駆け付けた。女王の威光でもあった。
日本の両陛下のほか、スウェーデンのカール16世グスタフ国王、ベルギーのアルベール2世国王、オランダのベアトリックス女王、デンマークのマルグレーテ2世女王、ヨルダンのアブドラ国王、バーレーンのハマド国王、ブルネイのボルキア国王、リヒテンシュタインのハンス・アダム2世(いずれも当時)……。
当時、君主の長老格で、女王より在位が長かったタイのプミポン国王は体調がすぐれず、ワチラロンコン皇太子(現国王)が代理出席した。
女王主催の午さん会がロンドン郊外のウィンザー城で開かれたのは5月18日だ。女王と夫君フィリップ殿下が、各国の君主、王族とその伴侶を出迎えた。両陛下がそろって訪英するのは通算7回目で5年ぶりだった。久しぶりに対面する女王、フィリップ殿下と懐かしそうにあいさつを交わした。
午さん会の会場の
「聖ジョージの間」には12人掛けの円形テーブルが配され、
各テーブルにホスト役の英王族が1人ついて、
各国の君主・王族の接遇にあたった。
両陛下にはメインとなる女王と夫君フィリップ殿下のテーブルが割り当てられ、
天皇陛下(現在の上皇さま)には他の欧州の国王や女王を差し置いて、
女王の左隣という2番手の上席を与えられた。
女王右手の最上席はカール16世グスタフ国王が占め、美智子さまはその国王の右隣の席だった。
本来、外交儀礼において君主は国の大小に関係なく、
在位年数の長い順に上席につくのが習わしだ。
上皇さまは当時78歳で、君主の中では女王(当時86歳)に次いで高齢だったが、在位年数では23年と君主の中では比較的短かった。
実際に、午さん会前の写真撮影では、女王を中心に各国君主が在位年数の長い順に着席した。上皇さまは最前列ながら、
女王から最も遠い右端に納まった。
午さん会ではそうしたルールを無視して、
エリザベス女王が両陛下を上席につけた心配りは何に由来するものだったか。
友好への敬意
一つには、手術後間もない上皇さまがはるばる駆け付けてくれたことへの感謝があっただろう。上皇さまはこの年の2月、
心臓の冠動脈バイパス手術を受け、手術は成功したが、4月10日に公務に復帰したばかりだった。
さらに1953年の女王の戴冠式に列席しているのは、この時集った君主の中では上皇さまとベルギーのアルベール2世国王だけだ。
女王には、英王室と皇室が長年育んできた両国友好への敬意も当然あったはずだ。
戴冠式の時に皇太子だった上皇さまは弱冠19歳。
英国では戦争の傷痕はまだ生々しく、
皇太子の訪英反対を主張した新聞もあった。上皇さまが女王の隣に席を占め、食事を共にしながらなごやかに歓談するのはいまでは驚くことではないが、59年前の両国関係を知る女王と上皇さまの2人には感慨深いものがあったはずだ。」
恩がある。
日本は、敵国の国だった、日本。
皇室と、イギリスの皇室、いや、英女王エリザベス2世のおかげだろう。
敗戦国の国が、さ。